とある辺境伯家の長男 ~剣と魔法の異世界に転生した努力したことがない男の奮闘記 「ちょっ、うちの家族が優秀すぎるんだが」~

海堂金太郎

文字の大きさ
37 / 76
幼少 ―初めての王都―

第37話 究極の二択と二人

しおりを挟む
「アル様、これとこれどちらがいいと思いますか?」

 3人を見送り、その後なんやかんやあったが無事服屋に着くことが出来た。
 庶民が背伸びして入るお洒落な服屋。そんな感じのところに俺たちはいる。

 そして俺は今、究極の二択を迫られていた。

 そう洋服選びである。しかも、トップスとスカートのセットだ、難問である。
 ハーバードの入試より難しいだろう。

 ハッツェンの右手には灰色の胸ポケットが付いた薄手のTシャツと黄色のロングフレアスカート。左手にはショート丈、ラウンドネックの白シャツとハイベルトのプリーツスカートが。

(なんか服だけ文明レベル高くね?)

 そう思わずにはいられない。
 ハッツェンには悪いがどうしても気になってしまったので店員さんに聞く。

「店員さん、この服すごくかわいいね?外の人はこんな格好してなかったけど何で?」
「あら坊やどうしたの?あ~それはね、ここで取り扱っている服の大半がフィリグランから取り寄せた物なのよ。でもここら辺では浮いちゃうでしょ?だから女性はみんな普段は着ずにいざという時のための一着として必ず買っておくのよ」
「へ~、そうなんだ」
 芸術の都フィリグラン―――いつか行ってみたいものだ

「あ、店員さんありがとう」
「どういたしまして、ほら連れの綺麗なお姉さんを待たせないの。早く戻ってあげなさい?……最近の子はませてるのねぇ」

 優しい人だと思ったが最後の一言は完全に余計だ。

「ごめん、ハッツェン。ちょっと気になっちゃって」

 放置されて少し不機嫌になってしまったハッツェンに謝り、現実と向き合うことにする。

(さて、どっちだ)

 この究極の二択を迫る時、女性側はほとんど答えが決まっている。そんな都市伝説を聞いたことがある。
 それなら聞くなよなと思うが女性は結構大事らしい。うん、マジで分からん。

右手と左手の洋服を交互に見る。

 (う~~~ん、一緒じゃん)

 ただここでそんなことを言ってみろ、店中の女性を敵に回すことになる。
 弱冠5歳にして女性の敵にはなりたくない。

 適当にこっちといっても、正解不正解に関わらずハッツェンは俺が選んだ方を買うのだろう。
 でも出来ることならしたくない。長考の末の不正解ならまだいいが適当はダメだ、ハッツェンが悲しむ。

「う~~~ん」

 期待を込めた眼差しで俺を見つめてくるハッツェン、そんな目で見んでくれ。
 悩んだ末に導き出した答えを恐る恐る彼女に伝える。

「俺は左手のやつがいいと思うな、」

 さぁ、どうだ?

「う~ん、理由も聞いていいですか?」

 真剣な目で両手にある洋服を交互に見つめているハッツェン

(それは、どっちなんだ…!)

 分からん、本当に分からん。
 ただ聞かれたからにはありのまま俺が思ったことを話す。

「えっと、俺が選んだ方は何というか、大人っぽいっていうのかな?その最近ハッツェン大人っぽくなってきたからさ、それを引き立ててくれるんじゃないかなぁ、と」

 言語化するとひどいな。
 ただそれを聞いた彼女は真剣に考えてくれている。

「でももう一つの方もハッツェンが髪の毛を後ろでいい感じに結わえば似合う気がする。ハッツェンスタイルいいし……」

 思ったことを全部言ってしまう、どっちつかずの回答だ。あぁ情けねぇ。
 それでも彼女は何かに納得したように頷いて店員さんに向けて

「二つとも下さい」と言った。

「畏まりました、では採寸のためこちらに来ていただいてもよろしいでしょうか?」

 店員さんに連れられ奥の方に行ってしまう。

(なんか視線を感じる)

 周りを見ると店の中にいた人が全員俺を見て「よかったね」と目線で言ってきた。

(うるさいやい)


◇◇◇


 ご機嫌なハッツェンとその後適当に王都を散策し日が暮れる前に屋敷へ戻る。
 自分の部屋へ向かう途中、昨日道案内してくれた綺麗な侍女さんに声をかけられた。

「若様、御屋形様がお呼びです」
「?わかった、すぐに行くよ。ところで君名前なんて言うの?」

 別に口説いてるわけじゃない。だからハッツェンそんな目で見ないでくれ。

「マリエルと申します」

 マリエルはそう簡潔に言った。
 改めて俺は綺麗な侍女マリエルを見る。

 年の頃は20くらい?大人っぽいんで正確な歳は分からない。透き通ったエメラルド色の長髪に優しそうな目元のおっとり癒し系美人。背丈はハッツェンよりちょい上、ギリ高身長と言ったところか。

 そして何より目を引き付けるのは胸部の御神体、服の下からでも神気が溢れ出している。ありがたや~。
 そんな俺の信仰心《邪な心》に気が付いたのか、大人な笑みを浮かべるマリエル。

「若様、女性をじろじろと見るのは紳士ではありませんよ?」
「ああ、すまない。綺麗だった揉んでつい」

 全然反省してない俺氏、言葉でセクハラしてしまっている。
 ハッツェンの目がさらに厳しくなる、そろそろヤバい。

「…マリエル、昨日はありがとうな。助かったよ」
「それが私共の役目ですからね」

 露骨な話しの逸らし方に、マリエルはクスリと笑い優しげな眼でこちらを見つめてくる、超恥ずい。

「じゃあ俺たちはこれで。父上のところに早速行かなくてはだからな」

 逃げるようにしてこの場を去ろうとする。マリエルの、ハッツェンの視線から逃れようとする、が―――

(あ、俺執務室の場所覚えてねぇや)

「…マリエル、執務室まで案内してくれないか?」
「承知いたしました」

 ―――――あぁ、恥ずい


 ◇◇◇


 マリエル、ハッツェンと会話しながら執務室に向かう。
 その会話の中で分かったのだがマリエルはなんと17歳らしい。
 見えない、雰囲気が大人っぽ過ぎるからかなぁ。
 初めは不機嫌だったハッツェンもマリエルと気が合ったらしく、楽しげに話していた。

 そんなハッツェンは今年で16歳だ。いつも周りにいるのはチビか年上しかいないみたいなので同性の同年代と知り合えて嬉しいのかもしれない。何よりだ。

 最後らへん俺は会話に参加せず楽しげに話している美少女たちをただ見ていた。
 それだけで幸せな気分になれるのだ、美少女パワーとは末恐ろしい。

 執務室の前に着いたので、マリエルにはお礼を言い、ハッツェンには父上との話が終わるまで扉の外で待ってもらう。

「アルテュールです」
「入れ」

 執務室の中に入る。父上がいない間も毎日使用人たちが掃除していたのであろう、埃っぽさ一つない。
 夕暮れの赤が窓から差し込んできている。

 それを背景に父上が高級感あふれる机で腕組みをしていた。その顔は少し疲れている。
 嫌な予感がしながらも尋ねる。

「父上、ご用件とは」
「ああ、そうだったな。はぁ」

 深くため息を吐く、一呼吸おいて―――

「明日、国王陛下と謁見することと相なった―――お前も一緒にな」
 とわけわかんないことを言った。

「マジですか?」

 素が出る。これは仕方ない。

「大マジだ」

 マジらしい

 一週間後の予定が1日後になってしまった。本当のことを言えば2年後だったのだ
 父上もさすがに嫌そうな顔をしている。

「父上も嫌なのですか?」
「いや、そういうわけではないんだが…国王陛下はこの国の王であると同時にアデリナの御父上なのだ、」

(あ~、そゆことね。嫁の父親に挨拶しに行くのが億劫なのか)

 ここに母上がいれば父上も心強いのだろうが、残念なことに母上は今ここにはいない。
 武器《母上》もなしに戦場《王城》へ突っ込むようなものである。あぁ、哀れだ。

 それと比べたら俺は大したことしないな。自分より哀れな人間《父上》を見て落ち着きを取り戻し、うんうんと頭を抱えている父上を尻目に執務室を退出する。
 前年ながら慰めの言葉を持ち合わせていない。



 部屋へと戻りハッツェン、そして何故か居るマリエルに事情を話す。
 マリエルはハッツェンが呼んだらしい。ここ俺の部屋なんすけど。

「国王陛下は家族想いでいらっしゃいますから、若様との面会が待ちきれなかったのでは?」とマリエル。「それにしても急過ぎますね」とハッツェン、俺を膝の上にのせている。

「……」

 父上のおかげで何とか立ち直ったものの、乗り気になったわけではない。
 最近また少し大きくなったハッツェンの胸に後頭部をうずめて俺はそれを聞いているだけ。
 そんな様子を見てマリエルが。

「若様は胸がお好きなのですね?」と微笑みかけてくる。

 ただ俺は動揺しない。ありのままを伝える。

「御神体を崇めて何が悪い」

 今の俺はある意味無敵なのだ、後ろに神《おっぱい》が付いているのだから。

「アル様、御神体ではありません、私のものです。今あなた様は私に癒されているのですよ?」
「…そこ重要?」
「ええ、とっても」

 ぎゅっと抱きしめてくる。全身がいい香りと柔らかさで包まれていく。

「本当に仲がいいのね」
「ええ、とっても」
「私も同じことをさせてもらいたいのだけど?」
「ぜひおねが「ダメです」……ふぁい」

 新たな桃源郷への冒険を許してもらえなかった、無念だ。

「別にとったりなんてしないわ、少しだけよ」
「ダメです」

 頑として譲らないハッツェン、大事にされているのが分かるので素直にうれしい。

「あら残念。若様、私の胸は何時でも空いていますからね?」

 妖艶な笑みを浮かべ、そう囁くマリエル。ほんと大人っぽい。

 しかし、ハッツェンからの親愛をこの身に受けている最中の俺には先ほどのようには不思議と響かなかった。

(ハッツェンを悲しませてしまうからな―――)

「その時はよろしく」

 しかし、思考とは裏腹に口が動いてしまった。

「アルさまぁ」

 もうっ、という感じのハッツェン。

「その時を心待ちにしていますね♪」

 うれしそうなマリエル。

 ―――理性と本能は別物らしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...