とある辺境伯家の長男 ~剣と魔法の異世界に転生した努力したことがない男の奮闘記 「ちょっ、うちの家族が優秀すぎるんだが」~

海堂金太郎

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幼少 ―初めての王都―

第60話 ぬるっと終わる

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 ギルベアトから貰ったプレゼントを会場の隅で待機していたマリエルに渡した後、まだ挨拶が終わっていない貴族たちのところへ行ったり逆に来られたり。
 その貴族の中にはリア姉が招待した二人の学園のお友達もいた。どちらも侯爵家の令嬢だ。
 会話の時間はあまり長くなかったがリア姉はとても楽しそうにしていたし、俺も頭をなでなでされたのでいい時間を過ごしたと思える。
 ただ、近くにいた貴族家の子息からは射殺すような視線で睨まれた。

(あぁ、また俺のボッチ化が進んでいく‥‥‥)

 ―――そして今。

「今後ともどうぞ良しなに。では―――ほれ、行くぞ」

 俺は微笑むリア姉の方を見て顔を赤らめていた子息の手を恰幅の良い男性が引き、連れ去っていくのを見送る。

「ふぅ~」

 これにて誕生会参加貴族家との挨拶がすべて終了した―――。
 安堵が息となって肺から溢れ出し口を通過する。

 一足先に全貴族との挨拶を終えたおばあ様と叔父様は既に会場からは姿を消している。

 ふと周りを見ると会場からは子供がどんどん消えていき、大人の割合が高くなり始めていた。
 先ほどまでの少し緊張感に欠ける雰囲気は消え去り、緊張のボルテージが徐々に上がり始めているのを肌で感じる。
 少し遠くに見えるルッツさんの、エルさんの、ティバルトの、グングの、すべての貴族たちの纏う雰囲気。
 その質が俺と話した時とは比べ物にならないほど重厚なものになっていた。

(これが本当のパーティなのか…)

 自分の見てきたものがほんの一端でしかなかったことに少なからず衝撃を受けていると父上から声がかかる。

「オレリア、アルテュール。今日はここで終わりだ。自分の部屋に戻っていなさい」

 その言葉は俺たちの誕生会がここで終わったことを意味していた。

 司会のルッツさんが終了の合図をすることはない。

 ―――貴族のパーティはぬるりと終わるのだ。

 父上が周囲に目配せをするとマリエルとアグニータが音もなく近づいてマリエルは俺の横に、アグニータはリア姉の横に着いた。
 俺たちを部屋へ送るためだ。

 貴族というのは一堂に会すれば政をしなければ済まない気質らしい。
 この会場はあと少しで誕生会ではなく貴族の社交場―――政治の場になるためお邪魔虫の俺たち子供はとっとと退場しなければならない。

「行こうか、マリエル」
「承知いたしました」

 今日はいろいろとあって疲れた。
 退場本望なのですぐマリエルに声を掛け、父上に一礼してから会場内を縦断し外へ出る。

 ギー――ゴゥン

 俺とリア姉が最後の子供《お邪魔虫》だったらしい。
 後ろを振り向くと既に会場への扉はしまっていた。

「「‥‥‥」」

 ―――俺はそこに確かな壁を見た。



 ◇◇◇



 既に夜の帳《とばり》が落ち、空には満点の星が―――。

 その星に見下ろされながら俺は生暖かい夜風に蒼の髪を揺らし自室、ではなく子供部屋へと向かう。
 ハッツェンを迎えに行くためだ‥‥‥ったのだが、ここに来て考えが変わった。

「あ、ギルベアト様から貰った贈り物ってどこにある?」
「お部屋に」

 俺がハッツェンと一緒にギルベアトからのプレゼントを開けようとする、と予測し俺の部屋にあらかじめ運んでくれたらしい。
 その予想は大当たりだったのだが今さっきハズレになってしまった。俺が子供部屋で開封しようと思いなおしたからだ。

「えっと、悪いんだけどそれを子ども部屋に運び直してくれない?」
「畏まりました。その間若様は‥‥‥アグニータさん、お願いできますか?」

 何故か後ろにいたリア姉の側につくアグニータに俺のお世話を頼むマリエル。
 アグニータは「分かりました」と答えた。その手にはリア姉用にギルベアトがプレゼントした箱が。

「アル、私も子供部屋で開けるわっ、一人で開けるよりそっちの方が楽しそうだもの」

 誕生会が完全に終わり、貴族モードから解放されたリア姉はいつも通りに戻っている。
 一緒にプレゼントの中身を開封するために俺たちの後を付けてきたらしい。それならアグニータが手に箱を持っているのも納得ができるな。
 なかなかに可愛い理由じゃないか。

「そうだね、リア姉の言う通りだ。――それじゃあ早速向かおうか。マリエルよろしくね?」
「はい」

 俺は一旦マリエルと別れ、リア姉とアグニータと共に子供部屋に向かっていく。
 これ以上廊下に立ち尽くしているわけにもいかないし、みんなの顔を見て一息つき安心したい。
 それに―――

(箱の中身は何だろな~?)

 摩訶不思議な魔法を使ったギルベアトがくれたプレゼントの中身を俺は早く知りたくてたまらなかった。
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