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謎の森1
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一人の小さな男の子が大きなテレビを嚙り付くようにして見ている。
画面の中には薄暗い巨大な厨房、意味深な笑みを浮かべてパプリカを齧る司会者、顔面二個分の高さもあるコック帽、白装束の料理人がずらりと並び、それらが壮大なBGMに合わせて映っては消える。懐かしい。昔俺が大好きだった料理番組のオープニング映像だ。
(というかこの小さな男の子、俺だ)
よく見ると男の子が来ているTシャツの背中部分には”料理の番人”と書いてあった。ファン作成の番組非公式グッズだ。何枚も同じものを持っていてジョブズのように毎日着回していた覚えがある。もっと他にあるだろう。間違いなく幼少期の俺だった。
何故走馬灯のようなものを見ているのだろうか。何か大事なことを忘れている気がする。けれども目の前の光景を見るとどうでもよくなった。料理人に憧れ始めた自分自身を見守るのもまぁ悪くない。
歯痒い気持ちに苦笑いしている間にも番組はどんどん進んでいく。目にも止まらぬ速さで。DVD版を見ていたので倍速再生が出来るのだ。
慣れた様子でDVDプレイヤーを操作する五歳児のなんとシュールなこと。俺が産まれるだいぶ前に“料理の番人”は終わってしまっている。自分一人で何度も見返すために身に付けた技術だった。
高速で映像が流れていくテレビを間近で見ながらタイミングを見計らう。
「「――ここ。」」
五歳児の俺と心の声が重なった。再生ボタンが押されるとテレビには画面一杯に一人の料理人が映し出されているところだった。
「父さん!カッコいい!」
「お父さんかっこいいね~」
子供特有の高い喜声がリビングに響き台所辺りからは女性の適当な相槌が聞こえてくる。台所に目をやると優しい目で我が子を見守る母さんがいた。う~ん若い。
話が逸れた。
そう、俺の父親はテレビ番組に出るほど有名な料理人だった。俺の目標にして永遠の憧れである。
テレビの中では大柄な男が銀色の小さなフライパンを凝視し小刻みに振るっていた。何とも不気味な光景なわけだが、俺はそれを見るだけで胸が熱くなる。昔も今も変わらない。若手のイケメン俳優よりもイケイケな男性アイドルよりも。口を結び真剣な表情でフライパンを握る父さんがカッコよかった。気付いたときには料理人を志していた。
(あれ…ここは、キッチンか)
「…気を付けろ。手元と食材を同時に見るんだ」
瞬きをする間に場面はリビングからキッチンに変わっていた。目の前には子供用の包丁を握る先ほどより少しだけ成長した昔の俺がいて、右から父さんの声がする。これは初めて料理をした時だろうから六歳か。小学校の入学式当日に頼んだ覚えがある。料理を教えてと。
「手と人参を…一緒に」
「…力み過ぎだ。力を抜け」
ただ当然ではあるがまぁ酷いこと。無口な父さんが何度も口を開いてしまうほどキッズ礼二の包丁捌きは拙かった。勢い良くまな板に叩きつけられた包丁の音がするたびに父さんの肩がぴくりと反応する。無事怪我することなく切り終えた人参は不揃いでいてとても青臭かった。
(…え、青臭い?人参が?)
目の前の光景が突然色をなくし霞んで消える。と同時にブロッコリーを生で齧った時に感じるあれを煮詰めて濃縮したような青臭さが鼻の奥で爆発した。
◇◇◇
「臭ッ!」
気絶状態から一気に覚醒状態へ。過去最高でいて最低な寝覚めの良さを感じながら起き上がると視界一杯に青々とした草木が生い茂っていた。ここはどこだろうか……というか草い、いや臭い。無茶苦茶青臭い!
「え~なになに、超臭いんですけど~」
あまりの臭さに我を忘れて口調が可笑しくなる。鼻を摘み口呼吸に切り替えることで何とか平静を保つようにする。しかしそれでもなお臭い…気がする。ポケットからハンカチを取り出して口を押えるとようやく青臭さが完全に消えた。ただ匂い問題を解決したところでより根本的な問題は何も解決していない。
(ここどこだ?)
それ即ち今俺何処にいるの問題である。空を覆いつくす木々に耳に入る生物たちの息遣い、湿った地面に横たわる女の子……ん?
「女の子だと…?」
自問自答をして二度見をした。けれどもそこには女の子が横たわっていた。より正確に言い表すと俺と手を繋いでいる制服姿の小谷が仰向けになり白目を向いていた。女の子がしていい顔じゃない。
(あ、思い出した)
白目を剥いた小谷を切っ掛けに思い出が蘇る。白い謎空間での濃密な時間。異世界転移、スキル、衝撃、暗転。どうやら俺は小谷と一緒に異世界転移を果たしたらしい。ならばまずは隣で白目のプリンセスを起こさねば。情弱に異世界の森の中はちと厳しい。
「お~い、小谷ぃ~起きろぉ~」
「もう、たべれにゃいよぉ…」
そう言えばこいつ食いしん坊キャラだっけ。声を掛けても揺すっても中々起きないので耳元で囁くことにした。
「朝ご飯が出来たわよ~起きなさ~い。起きないなら片付けちゃうわよ!」
想像する場面は朝、炊き立てのご飯の匂いが立ち込めるリビングから母親が優しくも厳しい声で娘を起こす。
「ふがっ…まって、おきりゅっ!」
効果絶大。寝坊助食いしん坊が飛び起きた。目元は二重を超えて三重になっており口からは涎がおはようございます。やはり女の子がして良い顔じゃない。普段もこのような感じで起きているのだろうと簡単に予想が付いた。
「おはよう小谷、すまないが朝食はないんだ」
「ふぇ…うそ?」
「本当だ。ただ安心してほしい、色々と状況が落ち着き次第沢山食わせてやる。…で、これからどうするかをそろそろ話し合いたいんだが出来そうか?」
「え、あ、はい…ってあれ、ここどこですかッ、森!?なんで東雲くんのような陽の者がふがふが…ふがふがふがふがっ!」
お目覚めのところ失礼。転移直後には記憶が混濁するのか、状況が掴めていない小谷の口を手で塞ぎこれ以上声が周囲に響かないようにする。もし仮に魔物なる存在がこの森にいるのであれば静かにするべき。そう判断したからだ。
(あ~涙を浮かべないで、説明するから)
残った片手の人差し指でジェスチャーをする。意図が伝わったのか小谷は暴れるのを止めて大人しくなった。抑える手を退けると小さな声で小谷が喋り始める。
「異世界転移した、のでしょうか?」
「恐らくは。周囲を見るにどうやら俺たちは森のど真ん中に放り出されたみたいだな。すごいな小谷、君の予想が当たったぞ」
「出来れば当たって欲しくなかったですけどね…。でも良かったです、東雲くんと同じところに転移できました」
「ん、どういうことだ?」
「あぁえと、その、異世界転移物のテンプレルートの中に森に放り出されるというものがあるんです」
ヌルッと始まる小谷先生の説明会。言葉の真意を理解するためにはまたラノベの知識がいるようだ。話が進み過ぎないうちに彼女の手を引き木陰に身を隠すと聞く体制に入った。常識ポイ。はいどうぞ。
「ありがとうございます。そうですね、こっちの方が安全ですね…というか東雲くん、手慣れてませんか?私が大声を出さないように手で押さえたり、今もこうして安全そうな場所に連れて来てくれたり。もしかして異世界は二度目ですってやつですか?」
「いやなに、昔父親の伝手で猟師さんの狩りに同行したことがあったんだ。そこで聞き齧った知識をもとに動いているだけ……あと最後のは何だ?またラノベのテンプレってやつか?これも覚えないといけないのか?」
「あいえ、これは覚えなくて大丈夫です」
良かった、余計なものを覚えずに済んだ。今は命に関わることだからと頑張っているが、生来興味が薄い分野の知識を覚えることは苦手なのだ。空いている容量があればすべて料理に使いたい。
「…あぁそう、では続きを頼む」
しかしそれを表に出すと小谷が悲しむ様な気がしたので努めて冷静に話の続きを促す。…何話してたっけ。
「あ、はい!えと、どうして東雲くんと一緒のところに転移できて云々でしたね」
あぁそうそう、それだ。ラノベの話が人に出来るからか嬉しそうな顔で小谷が喋り出す。
「えとえと、先ほども言いましたけど数ある異世界転移物テンプレの中には森に放り出されるというものがあるんです。そして大抵は主人公が一人ぼっちの状態で始まるんです」
主人公大変じゃない?
「探索も一人、食事の用意も一人、戦闘も一人、寝床の準備だって一人、全てが主人公の身一つに降りかかって来るんです。それでも主人公は折れることなく森からの脱出に成功し文明圏に辿り着く!」
主人公すげぇ。
「…でもそれって普通に考えれば生存確率低すぎません?自分が主人公ならまず生き延びれない…とこの種のテンプレ作品を読むたびに私思ってたんですよ」
妄想家なのか現実主義者なのかよく分からない子だな。
「でも今回の異世界転移には準備期間がありました。スキルを選択する時間と一緒に協力者を探す時間が与えられていたんです。ですから私、スキルを選んでからずっとクラスのみんなを観察していました」
あの状況で?すごいなこの子。
「危機的状況になって初めて人間の本性って表に出ると思うんです。いつもは優しいあの子もいつもは真面目なあの子もみんな自分自分自分でした。けれども東雲くんは違った。情報がないなりに考えていた。冷静でした」
必死だっただけです。誰よりも自分本位に物事を考えていた自信がある。
「だからあの時、異世界転移する直前に東雲くんを触りに行ったんです。もしかしたら同じ場所に転移できるんじゃないかって…」
…え、そんなことまで考えていたのか。いやいやいや。
「迷惑…でしたか?」
話を終えて上目遣いでそう聞いてくる小谷を見て思う。強かなんてものじゃない、こいつ化物かと。あの混沌とした状況下でよくもまぁそこまで視えていたな。普通じゃない。取り敢えずは仲間に選んでくれてありがとう…の意を込めて返事することにした。
「全然迷惑じゃないです」
「はぁぁぁよかったですぅ…ん、どうして敬語なんですか?」
「あれ、なんでかな?でもそれを言うなら小谷だって敬語じゃないか」
言えない。君のことを一瞬でも化物だと思ってしまっただなんて。誤魔化すように小谷の癖?である丁寧な口調を指摘してみると「私のこれはキャラ付け的なやつなので気にしないで下さい」と返された。キャラ付けとは何だろう。
「俺もキャラ付けした方が良いのか?」
「何言ってるんですか。東雲くんは十分されてますよ、キャラ付け」
そうなのか、ならいいのだけど。
疑問が解消したことだしそろそろ本題に戻るとしよう。足元の土を摘み鼻に近づけると強烈な土の香りがした。鼻が慣れたのだろう。先ほどと違い冷静でいられる。単に土の香りがする…というだけではない。青臭いけどどこか甘い、それでいて芳醇な香りがする。より細かな香りが混ざり合い“土”という匂いを構成しているように思えた。
(なるほど、これがスキルか)
今までに感じたことのない匂いの深みが見えた。これは間違いなく選択したスキルの影響だろう。ということでまずは選択したスキルについて小谷と話し合いたい。認識が間違っていなければ彼女と俺はこれから共に助け合っていく仲間なのだから。
「なぁ小谷、お互いのスキル情報を交換しないか?森を散策する前に君に何が出来るのか確認しておきたい。もちろん俺の方から先に開示するつもりだ、どう思う」
手先に付く土から目を放し小谷の方を見ると彼女もまた土の匂いを嗅いでいた。もしかすると同じようなスキルを選択したのだろうか。
「土の匂い嗅いで何か分かるんですかねぇ…あれ、何か言いました?」
あ、違う。多分俺がそれっぽいことしていたから真似しただけだ。二度手間であるが大事なことなのでもう一度聞くと小谷はすんなりと頷いてくれた。
「もちろんいいですよ、そのために一緒に転移してきたのですから。というか私から開示しても良いと思っているくらいですし」
「いや、その気持ちは嬉しいけど流石にここは俺からにさせてくれ。小谷は俺に沢山の情報を与えてくれたが俺はまだ手料理の一つも振舞ってやれていない」
「それは適材適所というやつですよ…でも東雲くんが言うのなら仕方ありません、聞きましょう!」
協力者でいたいのなら小谷のやさしさに甘え過ぎてはいけない。さあどうぞと聞く体勢に入った小谷に三つのうちどのスキルから話そうかと考える。名称を羅列するだけではつまらない。どうせなら一緒に効果まで理解してもらいたいものだ。
(なら【超嗅覚】からがいいか)
森の青臭さに眩暈がした時、土の匂いを嗅いだ時。三つの中で唯一身を以て効果を体験しているスキル【超嗅覚】から話すことにした。
「一つ目のスキルは超嗅覚というものだ。効果は読んで字の如く五感の一つである嗅覚の超発達。色々と不明な部分だらけだが取り敢えず森の青臭さで失神しかけた程度には嗅覚が鋭くなっている」
「ほえ~超嗅覚ですか。ABCどのランクですか?」
「Aランクだ」
「なるほど…であれば相当に強力な嗅覚であるのは間違いないですね。あ、選んだ理由を聞いてもいいです?」
「もちろんだ…複数回答でもいいか?」
「はい、喜んで」
手持無沙汰になった手で転がっていた小枝を拾い地面に①②と縦に並べて描く。それから①の横に“料理”と付け加えた。
「それではまず一つ目だな。端的に言うと、鼻の良さと調理の腕は比例関係にある…これが俺の持論だから」
「つまり、料理の腕を上げるために超嗅覚のスキルを選んだと。ブレませんねぇ…」
そゆこと。感心しているのか呆れているのか分からない様子の小谷に対して頷く。
料理は味覚だけでは成り立たない。甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の基本五味に加えて風味があって初めて料理は料理として成立する。そして料理人の腕の良さとはその風味を如何に自由に操れるかに懸かっている…と俺は考える。事実腕の良い料理人は皆揃って嗅覚が優れている。例に漏れずうちの父さんも抜群に鼻が利いた。
どれくらい鼻が利くかというと靴下探偵と家族内で異名が付くほど。うちは俺含め男二女二の四人兄弟が揃って面倒臭がりなので常時誰かしらの靴下が脱ぎっ放しで床に寝転がっており、それに怒った母さんが父さんを犯人探しに利用するのだ。犯人はその鼻から逃げることが出来ない。事件解決率は驚異の100%。
だから【超嗅覚】を一目見た瞬間に即決したよ。もちろん靴下探偵になりたいからではなく超一流の料理人になるため。一つ目にして最大の理由である。なので言ってしまうがこれから伝える二つ目の理由は後から考えたお飾りに過ぎない。だが見知らぬ森に着の身着のまま放り出された今ならば胸を張って言えるかもしれない。料理以外に役に立つと思ったのだと。
例えば索敵とか。
「…しっ、静かに」
「へ?どうかしま――」
「静かに」
「もがもが」
獣と血の匂いがした。
画面の中には薄暗い巨大な厨房、意味深な笑みを浮かべてパプリカを齧る司会者、顔面二個分の高さもあるコック帽、白装束の料理人がずらりと並び、それらが壮大なBGMに合わせて映っては消える。懐かしい。昔俺が大好きだった料理番組のオープニング映像だ。
(というかこの小さな男の子、俺だ)
よく見ると男の子が来ているTシャツの背中部分には”料理の番人”と書いてあった。ファン作成の番組非公式グッズだ。何枚も同じものを持っていてジョブズのように毎日着回していた覚えがある。もっと他にあるだろう。間違いなく幼少期の俺だった。
何故走馬灯のようなものを見ているのだろうか。何か大事なことを忘れている気がする。けれども目の前の光景を見るとどうでもよくなった。料理人に憧れ始めた自分自身を見守るのもまぁ悪くない。
歯痒い気持ちに苦笑いしている間にも番組はどんどん進んでいく。目にも止まらぬ速さで。DVD版を見ていたので倍速再生が出来るのだ。
慣れた様子でDVDプレイヤーを操作する五歳児のなんとシュールなこと。俺が産まれるだいぶ前に“料理の番人”は終わってしまっている。自分一人で何度も見返すために身に付けた技術だった。
高速で映像が流れていくテレビを間近で見ながらタイミングを見計らう。
「「――ここ。」」
五歳児の俺と心の声が重なった。再生ボタンが押されるとテレビには画面一杯に一人の料理人が映し出されているところだった。
「父さん!カッコいい!」
「お父さんかっこいいね~」
子供特有の高い喜声がリビングに響き台所辺りからは女性の適当な相槌が聞こえてくる。台所に目をやると優しい目で我が子を見守る母さんがいた。う~ん若い。
話が逸れた。
そう、俺の父親はテレビ番組に出るほど有名な料理人だった。俺の目標にして永遠の憧れである。
テレビの中では大柄な男が銀色の小さなフライパンを凝視し小刻みに振るっていた。何とも不気味な光景なわけだが、俺はそれを見るだけで胸が熱くなる。昔も今も変わらない。若手のイケメン俳優よりもイケイケな男性アイドルよりも。口を結び真剣な表情でフライパンを握る父さんがカッコよかった。気付いたときには料理人を志していた。
(あれ…ここは、キッチンか)
「…気を付けろ。手元と食材を同時に見るんだ」
瞬きをする間に場面はリビングからキッチンに変わっていた。目の前には子供用の包丁を握る先ほどより少しだけ成長した昔の俺がいて、右から父さんの声がする。これは初めて料理をした時だろうから六歳か。小学校の入学式当日に頼んだ覚えがある。料理を教えてと。
「手と人参を…一緒に」
「…力み過ぎだ。力を抜け」
ただ当然ではあるがまぁ酷いこと。無口な父さんが何度も口を開いてしまうほどキッズ礼二の包丁捌きは拙かった。勢い良くまな板に叩きつけられた包丁の音がするたびに父さんの肩がぴくりと反応する。無事怪我することなく切り終えた人参は不揃いでいてとても青臭かった。
(…え、青臭い?人参が?)
目の前の光景が突然色をなくし霞んで消える。と同時にブロッコリーを生で齧った時に感じるあれを煮詰めて濃縮したような青臭さが鼻の奥で爆発した。
◇◇◇
「臭ッ!」
気絶状態から一気に覚醒状態へ。過去最高でいて最低な寝覚めの良さを感じながら起き上がると視界一杯に青々とした草木が生い茂っていた。ここはどこだろうか……というか草い、いや臭い。無茶苦茶青臭い!
「え~なになに、超臭いんですけど~」
あまりの臭さに我を忘れて口調が可笑しくなる。鼻を摘み口呼吸に切り替えることで何とか平静を保つようにする。しかしそれでもなお臭い…気がする。ポケットからハンカチを取り出して口を押えるとようやく青臭さが完全に消えた。ただ匂い問題を解決したところでより根本的な問題は何も解決していない。
(ここどこだ?)
それ即ち今俺何処にいるの問題である。空を覆いつくす木々に耳に入る生物たちの息遣い、湿った地面に横たわる女の子……ん?
「女の子だと…?」
自問自答をして二度見をした。けれどもそこには女の子が横たわっていた。より正確に言い表すと俺と手を繋いでいる制服姿の小谷が仰向けになり白目を向いていた。女の子がしていい顔じゃない。
(あ、思い出した)
白目を剥いた小谷を切っ掛けに思い出が蘇る。白い謎空間での濃密な時間。異世界転移、スキル、衝撃、暗転。どうやら俺は小谷と一緒に異世界転移を果たしたらしい。ならばまずは隣で白目のプリンセスを起こさねば。情弱に異世界の森の中はちと厳しい。
「お~い、小谷ぃ~起きろぉ~」
「もう、たべれにゃいよぉ…」
そう言えばこいつ食いしん坊キャラだっけ。声を掛けても揺すっても中々起きないので耳元で囁くことにした。
「朝ご飯が出来たわよ~起きなさ~い。起きないなら片付けちゃうわよ!」
想像する場面は朝、炊き立てのご飯の匂いが立ち込めるリビングから母親が優しくも厳しい声で娘を起こす。
「ふがっ…まって、おきりゅっ!」
効果絶大。寝坊助食いしん坊が飛び起きた。目元は二重を超えて三重になっており口からは涎がおはようございます。やはり女の子がして良い顔じゃない。普段もこのような感じで起きているのだろうと簡単に予想が付いた。
「おはよう小谷、すまないが朝食はないんだ」
「ふぇ…うそ?」
「本当だ。ただ安心してほしい、色々と状況が落ち着き次第沢山食わせてやる。…で、これからどうするかをそろそろ話し合いたいんだが出来そうか?」
「え、あ、はい…ってあれ、ここどこですかッ、森!?なんで東雲くんのような陽の者がふがふが…ふがふがふがふがっ!」
お目覚めのところ失礼。転移直後には記憶が混濁するのか、状況が掴めていない小谷の口を手で塞ぎこれ以上声が周囲に響かないようにする。もし仮に魔物なる存在がこの森にいるのであれば静かにするべき。そう判断したからだ。
(あ~涙を浮かべないで、説明するから)
残った片手の人差し指でジェスチャーをする。意図が伝わったのか小谷は暴れるのを止めて大人しくなった。抑える手を退けると小さな声で小谷が喋り始める。
「異世界転移した、のでしょうか?」
「恐らくは。周囲を見るにどうやら俺たちは森のど真ん中に放り出されたみたいだな。すごいな小谷、君の予想が当たったぞ」
「出来れば当たって欲しくなかったですけどね…。でも良かったです、東雲くんと同じところに転移できました」
「ん、どういうことだ?」
「あぁえと、その、異世界転移物のテンプレルートの中に森に放り出されるというものがあるんです」
ヌルッと始まる小谷先生の説明会。言葉の真意を理解するためにはまたラノベの知識がいるようだ。話が進み過ぎないうちに彼女の手を引き木陰に身を隠すと聞く体制に入った。常識ポイ。はいどうぞ。
「ありがとうございます。そうですね、こっちの方が安全ですね…というか東雲くん、手慣れてませんか?私が大声を出さないように手で押さえたり、今もこうして安全そうな場所に連れて来てくれたり。もしかして異世界は二度目ですってやつですか?」
「いやなに、昔父親の伝手で猟師さんの狩りに同行したことがあったんだ。そこで聞き齧った知識をもとに動いているだけ……あと最後のは何だ?またラノベのテンプレってやつか?これも覚えないといけないのか?」
「あいえ、これは覚えなくて大丈夫です」
良かった、余計なものを覚えずに済んだ。今は命に関わることだからと頑張っているが、生来興味が薄い分野の知識を覚えることは苦手なのだ。空いている容量があればすべて料理に使いたい。
「…あぁそう、では続きを頼む」
しかしそれを表に出すと小谷が悲しむ様な気がしたので努めて冷静に話の続きを促す。…何話してたっけ。
「あ、はい!えと、どうして東雲くんと一緒のところに転移できて云々でしたね」
あぁそうそう、それだ。ラノベの話が人に出来るからか嬉しそうな顔で小谷が喋り出す。
「えとえと、先ほども言いましたけど数ある異世界転移物テンプレの中には森に放り出されるというものがあるんです。そして大抵は主人公が一人ぼっちの状態で始まるんです」
主人公大変じゃない?
「探索も一人、食事の用意も一人、戦闘も一人、寝床の準備だって一人、全てが主人公の身一つに降りかかって来るんです。それでも主人公は折れることなく森からの脱出に成功し文明圏に辿り着く!」
主人公すげぇ。
「…でもそれって普通に考えれば生存確率低すぎません?自分が主人公ならまず生き延びれない…とこの種のテンプレ作品を読むたびに私思ってたんですよ」
妄想家なのか現実主義者なのかよく分からない子だな。
「でも今回の異世界転移には準備期間がありました。スキルを選択する時間と一緒に協力者を探す時間が与えられていたんです。ですから私、スキルを選んでからずっとクラスのみんなを観察していました」
あの状況で?すごいなこの子。
「危機的状況になって初めて人間の本性って表に出ると思うんです。いつもは優しいあの子もいつもは真面目なあの子もみんな自分自分自分でした。けれども東雲くんは違った。情報がないなりに考えていた。冷静でした」
必死だっただけです。誰よりも自分本位に物事を考えていた自信がある。
「だからあの時、異世界転移する直前に東雲くんを触りに行ったんです。もしかしたら同じ場所に転移できるんじゃないかって…」
…え、そんなことまで考えていたのか。いやいやいや。
「迷惑…でしたか?」
話を終えて上目遣いでそう聞いてくる小谷を見て思う。強かなんてものじゃない、こいつ化物かと。あの混沌とした状況下でよくもまぁそこまで視えていたな。普通じゃない。取り敢えずは仲間に選んでくれてありがとう…の意を込めて返事することにした。
「全然迷惑じゃないです」
「はぁぁぁよかったですぅ…ん、どうして敬語なんですか?」
「あれ、なんでかな?でもそれを言うなら小谷だって敬語じゃないか」
言えない。君のことを一瞬でも化物だと思ってしまっただなんて。誤魔化すように小谷の癖?である丁寧な口調を指摘してみると「私のこれはキャラ付け的なやつなので気にしないで下さい」と返された。キャラ付けとは何だろう。
「俺もキャラ付けした方が良いのか?」
「何言ってるんですか。東雲くんは十分されてますよ、キャラ付け」
そうなのか、ならいいのだけど。
疑問が解消したことだしそろそろ本題に戻るとしよう。足元の土を摘み鼻に近づけると強烈な土の香りがした。鼻が慣れたのだろう。先ほどと違い冷静でいられる。単に土の香りがする…というだけではない。青臭いけどどこか甘い、それでいて芳醇な香りがする。より細かな香りが混ざり合い“土”という匂いを構成しているように思えた。
(なるほど、これがスキルか)
今までに感じたことのない匂いの深みが見えた。これは間違いなく選択したスキルの影響だろう。ということでまずは選択したスキルについて小谷と話し合いたい。認識が間違っていなければ彼女と俺はこれから共に助け合っていく仲間なのだから。
「なぁ小谷、お互いのスキル情報を交換しないか?森を散策する前に君に何が出来るのか確認しておきたい。もちろん俺の方から先に開示するつもりだ、どう思う」
手先に付く土から目を放し小谷の方を見ると彼女もまた土の匂いを嗅いでいた。もしかすると同じようなスキルを選択したのだろうか。
「土の匂い嗅いで何か分かるんですかねぇ…あれ、何か言いました?」
あ、違う。多分俺がそれっぽいことしていたから真似しただけだ。二度手間であるが大事なことなのでもう一度聞くと小谷はすんなりと頷いてくれた。
「もちろんいいですよ、そのために一緒に転移してきたのですから。というか私から開示しても良いと思っているくらいですし」
「いや、その気持ちは嬉しいけど流石にここは俺からにさせてくれ。小谷は俺に沢山の情報を与えてくれたが俺はまだ手料理の一つも振舞ってやれていない」
「それは適材適所というやつですよ…でも東雲くんが言うのなら仕方ありません、聞きましょう!」
協力者でいたいのなら小谷のやさしさに甘え過ぎてはいけない。さあどうぞと聞く体勢に入った小谷に三つのうちどのスキルから話そうかと考える。名称を羅列するだけではつまらない。どうせなら一緒に効果まで理解してもらいたいものだ。
(なら【超嗅覚】からがいいか)
森の青臭さに眩暈がした時、土の匂いを嗅いだ時。三つの中で唯一身を以て効果を体験しているスキル【超嗅覚】から話すことにした。
「一つ目のスキルは超嗅覚というものだ。効果は読んで字の如く五感の一つである嗅覚の超発達。色々と不明な部分だらけだが取り敢えず森の青臭さで失神しかけた程度には嗅覚が鋭くなっている」
「ほえ~超嗅覚ですか。ABCどのランクですか?」
「Aランクだ」
「なるほど…であれば相当に強力な嗅覚であるのは間違いないですね。あ、選んだ理由を聞いてもいいです?」
「もちろんだ…複数回答でもいいか?」
「はい、喜んで」
手持無沙汰になった手で転がっていた小枝を拾い地面に①②と縦に並べて描く。それから①の横に“料理”と付け加えた。
「それではまず一つ目だな。端的に言うと、鼻の良さと調理の腕は比例関係にある…これが俺の持論だから」
「つまり、料理の腕を上げるために超嗅覚のスキルを選んだと。ブレませんねぇ…」
そゆこと。感心しているのか呆れているのか分からない様子の小谷に対して頷く。
料理は味覚だけでは成り立たない。甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の基本五味に加えて風味があって初めて料理は料理として成立する。そして料理人の腕の良さとはその風味を如何に自由に操れるかに懸かっている…と俺は考える。事実腕の良い料理人は皆揃って嗅覚が優れている。例に漏れずうちの父さんも抜群に鼻が利いた。
どれくらい鼻が利くかというと靴下探偵と家族内で異名が付くほど。うちは俺含め男二女二の四人兄弟が揃って面倒臭がりなので常時誰かしらの靴下が脱ぎっ放しで床に寝転がっており、それに怒った母さんが父さんを犯人探しに利用するのだ。犯人はその鼻から逃げることが出来ない。事件解決率は驚異の100%。
だから【超嗅覚】を一目見た瞬間に即決したよ。もちろん靴下探偵になりたいからではなく超一流の料理人になるため。一つ目にして最大の理由である。なので言ってしまうがこれから伝える二つ目の理由は後から考えたお飾りに過ぎない。だが見知らぬ森に着の身着のまま放り出された今ならば胸を張って言えるかもしれない。料理以外に役に立つと思ったのだと。
例えば索敵とか。
「…しっ、静かに」
「へ?どうかしま――」
「静かに」
「もがもが」
獣と血の匂いがした。
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※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
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世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
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冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
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ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
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勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
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【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
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12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
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『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
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「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
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戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
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※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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