ダンジョン溢れる地球の世界線 ~青春に焦がれる青年は脳筋スキルで最強を目指す 「え、冒険者ってモテるの?ならなります」~

海堂金太郎

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第三章 『府中』ダンジョン編

第32話 急成長

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「よっ」
 ボカッ「ギャ―――」

「ほっ」
 ボカッ「ギョエ―――」

「せいっ」
 ボカッ「ギ―――」

 俺がメイスを一振り、二振り、三振りすると一匹、二匹、三匹と岩小鬼が吹き飛び命を散らしていく。

 第五層に入ってから既に二時間が経過していた。
 何もなければ第五層にここまで長居するつもりはなかった。
 しかし、俺は長居している。
 それは何故か。

 『何か』あったからである。

「おかしい…弱すぎる……」

 第二層に出てきた岩小鬼とここ第五層に出てくる岩小鬼が同じ強さなわけない。だが実際には第二層と同じか少し強い程度の手応えしか第五層の怪物からは感じられなかった。
 そう、『何か』とは第五層の怪物が弱すぎるということだった。より厳密には五階に入った時よりも弱くなっているといったところか。

「ギャギャッ!」

 また一匹、岩小鬼が突っ込んでくる。先ほどと同じくらいの力を込めてメイスを振るう。

「そいっ」
 ボガッ!「ギャ―――」

 また一つの命が俺の手によって赤い華を咲かせて散る。
 ただ、俺の興味は岩小鬼の命に向かない。岩小鬼が吹き飛んだ距離にあった。

「少し前の奴より飛んでるな…なのに……」

 なるべく同じ力でなるべく同じ部位を狙ったはずなのだが、戦闘を重ねるごとに殴られた岩小鬼の飛距離が明らかに大きくなっている。

「…こいつらが弱くなってるんじゃなくて、俺が強くなってるのか?」

 決して自惚れているわけではない。
 そうとしか考えられないのだ。

「ギャギャッ」
「これが俗にいう『マナ吸収』か……そいっ」
 ボガッ!「ギャ―――」

『マナ吸収』とは、ダンジョンに潜れば潜るほど、怪物《モンスター》を倒せば倒すほど冒険者の身体能力はそれに比例して成長する、という考え方だ。LvUpとも言われている。
 ダンジョンに潜る長さに比例して髪や瞳の色素が変色していく現象とよくセットで語られるものだ。
 朝陽さんはダンジョンの中でしか変化が現れない『マナ吸収』とダンジョン内外問わず変化が現れる『色素変化』を一緒にするな!と喚いていたが、一般人の俺からすればどちらも『人体に影響を及ぼすもの』で一緒だ。

 まあ兎にも角にも今俺の身体は『マナ吸収』によって成長している。怪物《モンスター》を倒せばより早く強くなれる。それさえ分かればいい。



   <土属性魔法のスキルボード>
 ―――――――――――――――――――
 右上:洞窟型ダンジョンに滞在 5.8/100時間
 右下:鉱物系怪物の討伐 52/100体
 左下:泥団子を作る 50/1000個
 左上:土属性魔法をくらう 7/100回
 ―――――――――――――――――――



「5.8時間か~…正午くらいにダンジョンダイブしたから今は大体18時ってとこかな」

 スキルボードを時計代わりにしてあとどれくらいダンジョン内に入れるだろうかと計算をする。
 今すぐ帰る気はとうの昔に失せていた。第五層の怪物を片手間で処理できるなら第六層以降に行けるはずだから。冒険できるならしてみたい。

『府中』は『渋谷』と違って帰るまでに一時間ほどかかる。23時には家に着いていたいのでここを出るのは22時前か。今から約4時間。第一層まで戻る時間を考えると3時間くらいかな?

「よし、大体の時間配分は分かった……また気を引き締め直さないとな」

 第六層に続く階段を下りながら自分に言い聞かせる。

「ギャギャッ!」
「よっと!」
 ボガッ!!「ギ―――」

 うん、そこまで変わらない。第六層についてすぐに遭遇した、ちょっとだけ大きくなっていた岩小鬼の頭を一撃で潰し、ここでもやっていけると一安心。

「第七層に向かいながら『マナ吸収』を進めてしまおう。泥団子作りは明日でいいな……お、岩角兎《ロックホーンラビット》だ。気づかれないようにしよ…」

 岩小鬼以外の怪物を見つけたら出来るだけ戦わないよう避けていく。
 仲間に荷物持ちキャリアーもいない、魔法鞄《マジック・バック》も持っていない俺は嵩張るアイテムドロップを拾うことが出来ないからだ。ついでに仲間自体もいない。うぐっ…。
 魔法鞄はダンジョン内のゲート近くにある受付《換券場》でお金を払えば借りることが出来るんだけど、砂スライムしか相手しないと思って借りてこなかったんだよな…。
 ドロップアイテムは拾わなくても一定以上の時間が経つと怪物の死体同様、炭化して消えるから捨て置いても問題ないのだけど、なんかさ、勿体ないだろ?
 だから倒しても石しか落とさない岩小鬼ばかりを狩っているというわけだ。岩小鬼がマナ石を落とさない限り俺の収入は500円である。時給100円にも満たない。ブラック企業も真っ青な効率の悪さである。

「でも貸出料金高いんだよなぁ……そいっ」
 ボガッ!!「ギャ―――」

「よいしょっ」
 ボガッ!!「ギョエ―――」

「おりゃっ」
 ボガッ!!「ギ―――」

 金勘定しながら怪物を屠る。

「そっほっやっと」
 ボガボガボガ!!「「「ギャ――」」」

 走りながら戦闘を熟す経験も大事だろうと思って走りながら屠ったりもした。

「…っと、もう十層か……」

 そんなこんなしていると第十層に繋がる階段の前に着いていた。



  <土属性魔法のスキルボード>
 ―――――――――――――――――――
 右上:洞窟型ダンジョンに滞在 7.8/100時間
 右下:鉱物系怪物の討伐 100/100体 達成!
 左下:泥団子を作る 50/1000個
 左上:土属性魔法をくらう 10/100回
 ―――――――――――――――――――


 もう十層。そうは言っても、時間はそれなりにかかっていたようだ。第六層に上がろうと決めてから既に二時間も経っている。
 怪物との対峙のみならず、周囲の警戒も集中を切らさず、絶えず行っていたから時間の感覚が狂っていたようだ。

「どうしよっかな~十層」

 第十層に繋がる階段を見下ろしながら考える。行くか、行かないか。

 砂スライムに水鉄砲を打っていた時の俺なら迷うことなく引き返しているだろう。第十層は極稀にではあるが八等級の怪物が出るからだ。
 あの死闘を昨日の今日で忘れたりしない。

 ただ今の俺は考えが違かった。
 第六層、第七層、第八層、第九層と岩小鬼を倒していくうちに自分の身体能力がめきめきと上がっていくのを実感していたのだ。
 だから分かる。
 今の俺はおそらく昨日『渋谷』で戦った小鬼頭に近い身体能力を持っている。一対一ならばなんとかなる。これもまた、あの死闘を忘れていないからこその判断だ。

「一瞬様子を見てくるか……何かあればすぐに九層に戻る階段に飛び込む。そうすればいい」

 俺は今の自分を信じ、第十層の階段を下ることにした―――。








 ―――しかし、その選択が誤りだったと第十層に足を踏み入れて数分で気づかされる。





「はっ!」
 ボガッ!!「ギャッ――」
「ふぅ、何とかなりそうだな。もう戻るか」

 第十層にいる岩小鬼を一撃で倒して、九等級ならイケそうだなと思っていた時だった。

「―――そこのあなた!逃げて!!!」

 突然女性の叫び声が耳に、黒髪の綺麗な女の子と茶髪のギャルっぽい女の子が視界に入ってきた。

「は?」

 次にドドドドと重いナニカが駆けてくる音がした。

「岩装小鬼がこちらに向かってきているの!!!」

 黒髪美少女のそのセリフと同時に俺の視界に岩で全身を覆われた大柄な小鬼―――岩装小鬼《八等級》五体が映り込む。



「…極稀って意味知ってます?」



 そう言わずにはいられなかった。
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