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報告書C  トクベツな人

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いつも通り退屈な週末を終え、クソ怠い月曜の朝だ。
また苦痛の5日間が始まるのかと思うと辞めたくなる。
貯金だけ持ってバックれようと思わなくもないが、惰性でこうしてデスクに居る。

会社のPCを立ち上げると、担当営業からメールが来ていた。
この前の不手際のお叱りの内容だ。
ビジネスとして最低限の礼儀をなぞってはいるが、怒りを隠しきれていない文面だった。
悪意を込めて解釈すると「ふざけんなアバズレ、次やらかしたら豚と交尾だぞ」といったところか。
やれるもんならやってみろ、てめぇのチンKをもぎ取ってやるからな。

そんな喧嘩腰の返事は出さずに、定型文な謝罪メールを送って終了。
さすが私、安いケンカに応じない大人のオンナ。


週頭の庶務をこなしてから、さっそく資料の画面を開いた。
例の特別な役職についてのものだ。
正直、ハコニワを観ていて不自然な点が気になっているのだ。
オリヴィエの好意と、武器屋の親父のおせっかいだ。

個体差があるとはいえ、この二人の動きは少し異常だ。
レインに与えられた性質は、基本的には他のキャラクターに嫌われるものだから。
今はヘイトが溜まりきらないように手動で管理しているが、だからといって決して好かれる理由にはならない。
何か別の要因があるのではと思い、資料の深い部分まで読みこんでいった。


『邪神の特殊な好感度設定、非好感度設定について』


なんて小項目があった。
たぶん、これじゃないかな?
クリックして詳細へと進む。

読み進めると色々わかった。
一言で言うと、「基本的には自動的に嫌われるが、一度信頼を得た相手からは強い親愛の念を抱かれる」という事らしい。
ハコニワの全キャラクターに嫌われると、邪神の軍隊とかが組織できないからだとか。
四天王とかね、そういうのも欲しいもんね。
かといってみんなから愛される邪神なんて、それは意図どおりじゃないし。

ユーザーはどうやら『ハコニワ大戦争』みたいなのを期待しているようだ。
ハコニワの住民たちが争い、勝ち負けを決めるみたいなの。
人間側と邪神側に分かれてドンパチさせたいらしく、その為の邪神という役職だ。

そしてそんな大それた背景を持つ、能力は最低で性質だけ受け継いだ『変態』の称号を持つレインきゅん。
ほんと不憫だと思う、やらかしたのは私だけど。
いや、ほんとすんませんでした。

読み進めると注釈があった。
どうやら領主、特に国王クラスを相手にすると、問答無用でヘイトがマックスになるらしい。
領主が邪神に敬愛の念を持つと、人間側をすぐ裏切っちゃう事が理由のようだ。
確かにそうなったら戦争にならないもんね、邪神側の圧勝じゃん。

という事はレイン達を王族とかに会わせちゃダメね。
きっと前以上に大変な事になってしまう。
後で本人らに釘さしとこ。
王都には近寄んないでねって。


少し温くなったカフェモカを飲みながら画面を注視する。
レインたちはどこっかなー?
ええと、この道は……ブフォッ!

思わずカフェモカを吹いてしまった。
机周りが大惨事だけど、それどころじゃない。
レインたちがブリデナ国の王都に向かっているからだ。
都まで目前という位置にいて、到着間近まで迫っていた。

ヤバい、早く止めないと!
私は急いで通信を繋ごうとしたけれども……。

「サーバが接続されていません。回線のご確認をお願いします」


画面には無情なるエラーメッセージ。


はぁ? こっちはなんもいじってねえぞ?!
何度通信しようとしてもエラー、エラー、そしてエラー。
周りも異常に気付いたのかザワつき始める。
どうやら私のPCだけのトラブルではないらしい。


しばらくすると、社内アナウンスが聞こえてきた。


「現在システム障害が発生しています、現在復旧の見込みはたっていません。繰り返します、現在システム障害が……」


あああああああ!
ふざっけんなー!
こっちは一刻を争う事態だってのに、なんで障害なんか起こしてんのよ!

どれだけ待っても一向に事態は好転しなかった。
オフィス内は阿鼻叫喚の地獄絵図だが、キレても叫んでもどうしようも無い。
レイン達に警告を出す事もできない私は、ただ画面を祈るようにして眺めていた。
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