時の破壊者

辻澤桐子

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第三章 アガナの少年達

第10夜 半身を求めて

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------この世の中で、何が一番輝かしい?

     地位?名誉?---どれも素晴らしい。

     けどこの俺にとっては---------------、友情だ!!!!




------とは言っているものの、彼はその前を歩く少年が気に入っただけである。

異人であるし言葉も話せるし、何より面白い。

ファッションセンスもなかなかイケてるじゃない?

そして双子の姉と兄弟達を探している……気になるのである!!!!



「ねェユーキ、今日はどこに泊まるの?この町だよね」


「ああ」


「いつ発つの?まだ決めてないよね?」


「ああ」


「んもー、ああばっかり!時間があるならもうちょっと遊んでよ!」



するとユキと呼ばれる少年はくるりと少年の方に向き直り、顔へ詰め寄った。



「どちらかと言えば時間がないんだ。

 暇なら俺の姉や兄弟の情報を探してくれよ」


「………………」



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------彼がこの街に辿り着いたのは、つい最近のことだ。

人づてにここに来たらしいが、詳しくは話してくれない。

そのうち、って言っているんだけどいつだろう。



「俺の名前は岡本 裕生ユウキ。ユーキでいい」



------こう言っていたので、俺は裕生をユーキと言っている。

俺の名前はエスカー=リベリナウ。

両親と二人の弟がいるが、1人は盗賊、一人は牧師見習いと、双子にはあるまじき選択をしているのであまり家にはいない。

牧師見習いに行ったザムザなんてもう何年も帰っていない。

盗賊になったアザムは飯をたまに食いにくるだけだ。

だから俺は------遊び人になった!!!!



「……何でそこで遊び人になるんだよ……アホかおまえは」



独り言を喋っていたエスカーに鋭く突っ込む裕生。

ふと、裕生は気づく。

今のように弟達の話はするが、両親はどうなのか、と。



「……お前の両親……って……、どんな感じ?」



はにかみながら聞いてくる裕生に、エスカーは嬉しくなって、顔をパーっと明るくさせてこう言った。



「両親は至って普通だよ。

 苦労性とも言うかな。

 いつも疲れた顔してるケド、たまには笑うよ」



何の駆け引きもなしにあっさりと答えたので、裕生は笑みを零した。

まるで子供を……弟達を見ているようだったから。

笑みを零した裕生を見て、エスカーは口を開けて笑う。



「じゃあ今度は俺がユキに聞く番ね。

 ユキ、ここに来る前何してたの?」



今の今までやわらかい笑みを溢していた優生の顔が一瞬で曇る。

沈黙したかと思うと、じっと前を見詰めてこう言った。



「……家族に、裏切られてね」



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あり得なすぎる裕生の言に、エスカーはもれなく耳を疑った。



「え……?何?何て言ったの?」



その問いに裕生は反射的に答える。



「だから……裏切られたんだって……家族に……」



裕生の声は段々と萎んでゆく。



「家族……全員?」



聞き返され戸惑う裕生。

だが……



「……多分、俺の姉だ」



答えた。

言うか言うまいか戸惑って、裕生は漸く答えた。

とても困った顔をしている。

それを疑問に思い、エスカーはこう言った。



「お姉さんて、双子の?」


「……そうだ」



裕生も答える。



「ユーキの……半身なんでしょ?」


「……そうだな」



2人はとても暗い気持ちになった。

エスカーは聞いたことをとても後悔した。

だが、聞かずにはいられなかった。



「半身なんてそんな大切な存在……!俺も一緒に探すよ!そして本当にそうなのか……確かめよう!!!!」


「……!エスカー!」



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「嬉しいな……協力してくれるのか?」


「うん!!!!」



エスカーは嬉々として答えた。が……。



「お前、その格好で町を出るつもりじゃあないだろうな!?」


「そうだよ!!!!」



満面の笑みで答えたエスカーを、裕生は新聞を八百屋から取り出すと、棒状にして思いっきり殴った。

新聞紙はあとかたなくぐんにゃりと折れ曲がり、エスカーは涙目で訴えた。



「いったぁーーーーーい!何すんのさ!!!!」


「痛くねぇだろんなもん!」


「気分的に痛いんですーーーーぅ!あー痛ぁーーーーい、どーしよー、協力するのやめよーかなぁ!?」



と、そこに割って入ってくるは八百屋の主人……いや、おかみさん。



「うちの野菜転がすんじゃないよ!弁償しな!!」



と、2人をスパコーンと軽く殴ると掌を差し出した。



「……?何?これ……」



とエスカー。

おかみさんの掌を指差す。



「嫌な予感が……」



と裕生。

猫背気味になり目を泳がす。



「金だよ。出   し   な  」


「え」

「う」



2人の旅はまさに大根から始まったばかりである。
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