時の破壊者~亡国の救世主[メシア]と戦士たち~

辻澤桐子

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第四章 対峙せし母と妹

第15夜 レリーサと美生

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ここはアガナ、エスカーの家。


「ご馳走様でした!!!!」

「ごっそーさーん」


そう裕生とエスカーがごちそうさまを言い終えると、エスカーが皿をテキトーに洗った後、2人は洗面所へと行き顔を洗い歯磨きをした。

その後外に出歩く服に着替えると、2人はリュックを背負いエスカーの両親に剣二振りを貰い受けると、2人に挨拶した。


「それじゃー行ってくんね!!!!たまには帰ってくっから!!!!」

「本当にお世話になりました!!!!」


エスカーが満面の笑みで左手を振り上げ、裕生がエスカーの両親に深々とお辞儀した。

エスカーの両親は


「行くのか」

「本当にちゃんと帰ってくるのよ、体に気を付けて。二人とも無茶しないでね」


と言い2人を見送った。

遠くまで義理堅く見送るエスカーの両親に裕生が何度も振り返り手を幾度となく振るも、エスカーは振り返って2回くらい軽く手を振っただけであまり気にはしなかった。

いつもの事なのである。


「お前いっつもそんなに素気ねぇーの?」


裕生はゲンナリした顔でエスカーを見た。


「だっていつものことだしぃー?大げさなんだよなァー」


とエスカーは頭の所で手を組んで前を向いて歩いている。

あ、親不孝してんだな、と裕生は悟り、その後はあまりしつこくその事を言わなかった。


「で、そのアザムって弟がいる盗賊団んとこ行くわけ…?大丈夫なのか…?」

「ああ、盗賊団のことォ?あんまりダイジョブじゃないかなー。あのガキ共すぐ追いはぎすっから。下手すりゃ刺されるね」

「は!?!?ガキ!?!?刺!?!?!?!?」


エスカーの突然の言に裕生は混乱した。


「盗賊団ってガキなの!?!?刺されんの!?!?!?!?」

「下手すりゃねー。だから俺もあんまヤなんだけどさー、どうすっかなー。そそ、あいつらガキの集団なの。大人ほとんどいねェーの」

「マ!?!?!?!?」

「マ????」


エスカーに「マ?」の意味が伝わっていない。


「マジ?のことマ?ってゆーの!!!!ガキだとしてもこえーんだけど!!!!

どーすんの刺されたら!?!?ヤなんだけど!!!!」

「マってゆーの?俺も使お!!!!マ!!!!やっぱヤだよねェー…どうすっかなァー…」


とエスカーは頭で組んだ手を下ろして、手をリュックと剣に添えた。

2人がポツポツとある民家のある道を無言のまま歩いていると、アガナの町並みが見えてきた。


「あ、じゃー俺のダチんとこ行ってみるぅ?何とかなるかも!!!!」

「あ?お前のダチ?」

「そそ」

「まァー、いきなり盗賊団に会って刺されるよりはいいかァー…」


と、とりあえずエスカーのダチに会うことに決まるとエスカーが


「でも剣盗られねーように気を付けてね、売られるから」


と言われた裕生は「!?!?!?!?」となった。


こうして2人は取り敢えずアガナの町のエスカーのダチに会うことに決めた。





ヒール総本山。


木の上に寝そべりながらアザムが何か見ている。

紗生のリハビリだ。

ダンテと華留美とジャンとフェインが傍にいて、ジャンの金魚の糞はジャンの傍にいない。

ジャンに追い払われたのだ。

あまり人数がいすぎると紗生の邪魔になるからだ。


が、正直ジャンとフェインは席を外したかった。

華留美がいるというのでいるだけで、何かあればすぐ席を外す気でいた。


「なァー、カルミーん、オレ達席外していーかなー?」

「え?何?ジャン?何て言ったの?」

「ジャン達がここから離れたいってさ!!!!」


と、ダンテがダルそうなジャンとフェインを見かねてジャンの言葉を華留美に伝えた。

のだが、華留美はこちらの言葉を解せていない。


「え?何て言ったの?紗生姉~~~~」


と、華留美は紗生に助けを求めた。


「ジャンとその男が席を外したいって言ってるぞ」


と、リハビリして歩く練習をしている紗生が足を止めて華留美に訳して伝えた。


「あ、そうなの?いいよ、ジャン、フェイン。ここはダンテ君と私で紗生姉を見てるから。後でまた会おうね」

「サンキュー!!!!カルミん後でまた着せ替えしようぜー!!!!」

「またな」


と、ジャンとフェインは華留美の方に右手を上げて見せて付近にいた金魚の糞の所に駆けて行った。


「…あいつ女好きなんだよ、カルミん」

「え?何?」


キキキ、とダンテが笑いながら華留美に言うが華留美には伝わっていない。

比較的広いところで歩く練習をしている紗生だが、見られてる所為もあってかあまり上達しない。

というかただその場を行ったり来たりするのが正しいリハビリの仕方なのか分からなかった。


そこに木の上から見ていたアザムが不意に木の上から降り立った。


「!!!!」

「!!!!アザム!!!!」

「!!!!」


華留美が顔を赤くする。


「どうした?アザム…」


ハアハアと息を荒げながら紗生がアザムに問いかけた。


「…見てられねえな。お前ちょっと俺について来い」

「は!?!?」


そう言うとアザムはくるりと背を向き歩き出す。

が、紗生とダンテと華留美は呆気に取られている。


「ま、待ってよアザムー!!!!俺も行くよォー!!!!サキ、こっちだよ。ついて来て!!!!カルミんはジャンのとこ行って」

「え!?そ、そんなっっ」

「はっ!?!?あ!?!?」


そう言うとダンテは紗生の腕を掴みアザムの方に引っ張っていくが、紗生は上手く歩けずコケそうになる。

が、何とかダンテの早歩きについていこうと頑張って歩く。

ダンテは林の中に消えて行こうとするアザムを、紗生を連れて必死に追いかけていく。

華留美は…


「えー!?1人にしないでよー!!!!じゃ、ジャーン!!!!どこー!?!?ジャンー!!!!」


とジャンに助けを呼ぶが、皆いなくなりポツンと一人残される。


「ええー…とりあえず洞窟戻ろ…」


と、華留美はとりあえず洞窟に戻ることにした。





ここは妖精村。


ザムザの精神が整うまで二晩妖精村のベルデの家でゆるりと過ごしたら、ザムザとラムソスはベルデに魔法を教わることになった。


「さて、それではザムザ、ラムソス2人の魔法習得に向けて修行するかの。…その前に」

「「「「「?」」」」」


テーブルの上にかざしていたベルデの左手の下の水晶が徐に光る。

それをザムザ、ラムソス、スミレ、エナ、その他モブ妖精達が覗き込む。


1人は母親と思われる女性、もう1人は少女だ。

何やら暗闇の中に怪し気に佇んでいる。


「…?誰ですかこの人たちは?」

「誰…?」


ザムザ、ラムソスらの問いに、ベルデはゆっくりと答えた。


「ファヤウ…サキの母親と妹じゃ。この世界にサキや兄弟達を落とした張本人じゃ」

「「「「「!!!!」」」」」

「母親…と妹!?!?!?!?」

「この人達が…!!!!」


一同が水晶に映るその2人を注視していると、徐に母親の方の影がゆらりと動きこちらに顔を向けた。

一同は吃驚して腰を抜かしたりその場に佇んだ。


「「「「「わあ!!!!」」」」」

「貴女は…ふふ、ベルデ?ベルデね…?久しいわね…」

「「「「「「!!!!」」」」」」

「この人ベルデさんを知っていますよ!?!?何者なんですか!?!?」

「まさかレオナ一世と何か関係が!?!?!?!?」


一同が驚愕していると、ベルデが重い口を開いた。


「れ…レリーサ様…ですね…!?」

「「「「「!?!?!?!?」」」」」





「レリーサ様…ですね…!?」

「その通りよ…よく分かったわね、ふふ…」


レリーサと呼ばれる紗生の母親は妖しく笑んでいた。


「転生…したのですか…?ファヤウの…サキの母親に…。

その子は貴女の今世の娘…サキの妹ですか…?」


脂汗を流しながらベルデが水晶の中の「レリーサ様」に話しかける。

するとレリーサの後ろの影がこちらを見て話しかけてきた。


「なぁーにぃ?誰と話してるの?ベルデって誰?」

「遠い昔の知り合いよ、美生みき…」


「「「「「「ミキ!!!!」」」」」」


初めて判明した紗生の妹の名と姿に一同は驚嘆の声を上げた。


「なぁーに?初めて会った人の事呼び捨てにしないでくれる?」


と美生が年相応な反応を見せる。

ザムザは何故か少しホッとした。


「それにレリーサってだぁれぇー????母さんは利奈子りなこだよ!!!!」

「「「へ????」」」

「どういうこと…????」


美生と呼ばれる子の突然の言葉に一同は理解が追い付かなかった。

そこにベルデが説明に入る。


「レリーサ様は転生して、利奈子という女性に生まれ変わったんですね…。そして紗生達を産んだ…」

「「「「「!!!!」」」」」


ベルデの言葉に一同が一瞬で理解が追い付いた。


「ずっとこの時を待っていたのよ…あの子が…パナキが紗生に転生して成長し、私が子を沢山産み育てるこの時を…」

「「「「!?!?!?!?」」」」

「パナキ!?!?!?!?って誰!?!?!?!?」

「紗生はレオナ一世の転生した姿じゃないの!?!?!?!?」
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