幻獣の棲みか

iejitaisa

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第十四章 狼煙

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「グオォォォオォオオオオオオオオオオ!」

 ライオンの大咆哮が轟いた。
 その衝撃で、グンダルクに生えていた全ての木が傾いた。ドレイクの全身を、目に見えぬ衝撃波が打った。
 キマイラの少年は、ほとんどライオンと同じ姿になっていた。巨大だ。ブルドーザーのように巨大だ。盟約したキマイラと遜色ない大きさだろう。
 巨大なライオンは、目をぎんぎんに光らせ、四足で走り出す。
 ドレイクは、ハンバーガーの包み紙を捨てるように少女をその辺に投げる。彼女が落ちたところには、みるみるうちに血だまりが出来上がる。
 ライオンが前足を振り上げ、ドレイクの頭頂部に振り下ろす。とっさの判断で身を翻す。ライオンの前足が墜ちたところから、地面が真っ二つに裂ける。
「なんだまだ動けたのか」
 続けて繰り出される前足のパンチを、ドレイクはひょいと身を屈めて避ける。もう一度来た分は、龍のかぎ爪の柄で受ける。規格外の攻撃を受けた余波で、ドレイクの足が十センチも地面に埋まる。
「つまりお前は、目の前で、守るべき者が殺されそうになったその瞬間とき!何もせずにただ叫んでいた臆病者だ!」
「グアアァアアアアアア!」
「その怒りはオレかぁ?それとも自分に向けてんのか!ああ!?」
 どいつもこいつも腹が立つ。
 なぜ逃げない?
 なぜ戦う?
 今さら本気を出しても、フェンリルの少女は還ってこない。
「『やめろドレイク』ぅ?」
 助けなかったのはお前だ。なのになぜ、オレが悪いみたいに怒り狂う?
「甘ったれるな!」
 ドレイクは左手でライオンの前足を掴むと、龍のかぎ爪でめった刺しにした。ギャイン!と鳴き叫び、のけぞるライオンのどてっぱらにも、思いっきり突き刺す。
 生臭い血を浴びながら、ドレイクは叫ぶ。
「叫ぶだけで人が守れるのなら!この世から戦争はなくなる!」
 もう一本の前足を、両の脚を、胴体を、首を、頭を、次々と刺していく。血の雨が降る。ドレイクは頭を振り回して、それを振り払う。
「自らの未熟さをオレのせいにするな!守り人の振りをした愚か者よ!」
 ライオンはぼすん、と音を立てて縮み、人間の姿に戻る。瀕死の重傷を負った森番の肩を掴み、ドレイクはかぎ爪を振りかざす。
 森番は息も絶え絶えだ。もはや、目を開くこともできないだろう。
「これでお前を殺すのは百度目だ!最後になることを祈っている!」
 ドレイクは森番の喉元にかぎ爪を突き刺そうとした。
 それは人間がいつか死を迎えるように、太陽ほしがいつか輝きを失うように、必然的な運命さだめのように思えた。
 しかし、ドレイクはすんでのところでとめた。
 そんなことをしている場合ではなくなった。

 まず初めに感じたのは熱だ。

 圧倒的な熱だ。

 肌が焦げ、髪が縮み上がるほどの熱だ。

 それなのに、うすら寒い殺気が、背中をぞんぞんと撫でていた。

「守り人の振りをした愚か者が誰か」

 威厳をたっぷりと含んだ声が、その到来を告げる。

「私がわからせてやる」

 炎の塊と共に、フェニアス・バックスが隕石のように降り立った。
 キマイラの少年が切り刻んだ木々を一瞬で炭に変え、怒りの炎で草花を全て燃え上がらせ、守り人の王が今再び現れた。
 ドレイクは歓喜に打ち震える。
 おぉ、神よ、まだこの世界を見ているのならば。

 感謝する。

「できるといいなぁ、我が王よ!」
 顔にかかった返り血を拭い、ドレイクは笑った。
 燃えるような赤い髪の美しさに身震いする。怖れとも興奮ともつかない感情で、体中の産毛が奮い立つ。
「うおぉぉぉぉぉ!」
 茂みの向こうから、突如雄たけびが上がった。
 ドレイクが殺した少女と、瓜二つの少女が現れた。その肩には、ワタルが担がれていた。
 少女の肩からほとんど転げ落ちるように着地すると、ワタルは、無謀にもドレイクにかぶりつき、森番を奪取せんと、その肩を引っ張った。あいにく、ドレイクはフェニアスの相手で手いっぱいだ。それに森番との決着はついた。くれてやる。
 ワタルはひいひい言いながら、森番を引っ張って下がっていった。途中でヴァルブレイカーを蹴っ飛ばし、その存在に気付くと、左手で拾い上げた。
 いっぱしの高校生に、伝家の宝刀は重たいだろう。左手のヴァルブレイカーに集中すれば、右肩の森番がずり落ち、森番を背負いなおせば、ヴァルブレイカーの切っ先が地面に突き刺さる。
「へっ、なんだよ、お前は俺のこと嫌いかと」
 一人で格闘するワタルを見て、森番はごぼごぼと呟いた。
「ばっきゃろー!そんなの関係ねえだろ!待ってろ、今なんとか……!」
 フェニアスが桜色の炎を投げ飛ばし、森番とフェンリルの少女の全身が燃え上がる。
「隠れ家へ!オーガが治療する!」
 直後、茂みの向こう側から出て来たのは、血眼になって探していたホタルだ。
「行こう!諦めちゃだめ!」
 彼女は血だらけになった森番に駆け寄り、肩の下に潜り込むと、血で汚れるのもいとわず持ち上げた。
 ドレイクは一瞬、ホタルに声をかけようかと迷った。いや、この場にフェニアスさえいなかったら、間違いなく声をかけていただろう。一緒に帰りましょう、と。
 ホタルはこちらを見向きもせず、ライオンの毛皮をずりずりと引きずりながら、森番を連れて走り出す。ワタルも右肩をぐいぐい押し上げ、それについて行く。
 踊り子のような装束に身を包んだ少女は、自身と瓜二つの姉だか妹だかをかかえ、神速で走り去る。
 あっという間に、その場にはドレイクとフェニアスだけが取り残され、ドレイクは、血が騒ぐのを抑えるのに手いっぱいになる。
 もう我慢できない。
 ドレイクは一気に距離をつめる。
「ホタル様を巻き込むとは!軽率だぞフェニアス!」
 龍のかぎ爪を振り下ろしながら、ドレイクは声を荒げる。
 腰に下げたエクストリーマーを引き抜き、マグマのような色に熱しながら、フェニアスが応戦する。
「ホタルは私たちとは違う!幻獣と対話を試みる者など、この3000年、一人もいなかった!」
「ホタル様なら新たな道を切り開けると!本気で思っているのか!」
 ドレイクの一撃をフェニアスは防いだが、衝撃全てを吸収しきれず、地面に二本の跡を残しながら吹き飛んでいく。蹴爪のようなヒールがどろどろに汚れる。ドレイクは舌なめずりして、太陽にかぎ爪を光らせる。
「歳は取りたくないもんだ」
「私はお前ほど絶望していない」
 大剣の影からルビーの瞳を覗かせて、フェニアスはあの時と同じ美しさで言う。
 己が身に湧きあがる高揚感に、歓喜と困惑を覚えながら、ドレイクは目を蒼く光らせる。
「そんな幻にすがって生きてどうする……!身も心も滅ぼすだけだ!」
「何を血迷ったことを!滅ぼそうとしているのは貴様だ!」
 またか――切羽詰まった表情で言うフェニアスに、ドレイクは思う。頭に血が上る。
 なぜ誰もわかってくれない。わかろうとしない。
 オレはそれを、ただそれだけを願っているのに。
 それを実現するためだけに、故郷を捨て、愛する人を捨て、こんな外道に成り下がったのに!
 自らに降りかかる災難全てを呪って、オーサム・ドレイクは叫んだ。
「違う!オレが救いたいのは……!一人の人間だ!」
 怒りは時に、人を強くする。
 それはドレイクであっても例外ではない。
 抵抗する内なる激流を無理やり全てまとめ上げ、視界どころか、かぎ爪を握る指先まで蒼くして、腕の太さを二倍にまで盛り上げて、防御態勢をとるフェニアスを、殴るように切りつけた。
 もしこの一撃を、生身の人間に食らわせようものならば。
 一瞬で跡形もなく塵になっていただろう。
 最強と謳われた王は、エクストリーマーから熱波を発し、見事に防いだかに見えた。
 だがそれも、一瞬の幻に過ぎない。
 ドレイクの放った一撃は灼熱のバリアを乗り越え、いや破壊し、フェニアスの両肩と両膝を砕いた。
 そして、背中から炎の渦を噴出させて抗うフェニアスをそのままそら高く吹き飛ばした。



「そっと!そっと下ろして!」
「あぁ!」
 ワタルが大きな剣を投げ捨て、両手でヴァルキリーの肩を持つ。不思議な剣だ。丸い持ち手に、刃が二本、別々の方向に伸びている。
 ホタルは剣から視線を引きはがし、ヴァルキリーの背中と頭を支える。幼馴染と協力して、芝生の上に寝かせてやる。
 ドレイクはここも襲ったのだろうか。丸太の山が崩れ、芝生のあちこちに、フェン姉妹が走った痕が残っている。
「止血しなきゃ!ねぇ、ヴァルキリー、どこを刺されたの?見せて!」
 全身が血で染まっている。どこに傷を負っているのか、ぱっと見ただけではわからない。しかし、ヴァルキリーはごぼごぼと、血の泡を噴き出すだけで何も答えない。答えられないのだ。
 ワタルが、先ほど投げ飛ばした剣を拾ってきて、慎重な手つきで、ヴァルキリーの胸元の服を裂いた。ものすごい切れ味だった。繊維の引っかかりなど一つもなく、するんと切れた。ホタルは、両開きのキャビネットを開けるように、急いで衣服を外側に剥いだ。
「っ――――ヴァルキリー……あなた……」
 ホタルは言葉を失った。
 背中の後ろで、何か重たい物が落ちる音がした。振り返ると、剣を取り落としたワタルが、同じように絶句していた。
「――見ちゃダメ!」
 ホタルは幼馴染を叱りつけた。
「救急キット持ってきて!それと、何か止血に使えそうなもの――全部!」
「あ、あぁ……!」
 ワタルは魂が抜けたようにぼんやりと返事し、小屋に向かって、ふらふらと走り出した。しかし、その足もすぐに止まる。
 ホタルも、何事かと思って顔を上げた。

 初めて聞く声だった。

 まさかこんなことで聞くことになろうとは、こんなに悲痛な声だとは、思いもしなかった。

「うぅぅっ……ぅぁあああああ!お姉ぇえちゃあぁぁん……!お――!ねえぢゃあああああ!」
 
 ルーだ。
 ルーが泣いている。
 動かなくなった姉を抱きしめて、抱きしめて、狂おしいほど抱きしめて、声の限り泣きじゃくっている。
 おてんばで、いたずら好きで、あんなに元気よく走り回っていたフェン・リーリーは、妹の腕の中でこと切れていた。開かれたままのエメラルドの瞳は、真っ黒な闇を注がれたようにくすんでいた。
 ワタルは棒になったように立ち尽くし、両肩をぶるぶるふるわせながら、拳を握りしめていた。
「そんな……!」
 体中から力が抜ける。
 目の奥がわっと熱くなる。胸がつかえて、それ以上言葉が出てこない。
 代わりに登ってきた嗚咽を押し込もうと、ホタルは自分の口を手で覆った。
「あぁ――ホタル――」
 ホタルははっとして視線を落とす。膝の先で、ヴァルキリーが、今にも消えそうな声を絞り出している。
「待ってて!今オーガさんが来るから!ねえ、ヴァルキ……」
「かわいいなぁ――ホタルは、かわいぃ――」
 ぬめりとした感触が、右の手首にまとわりつく。ヴァルキリーが、血だらけの手で握っているのだ。ホタルはそこに、迷わず自分の左手を重ねた。
「やっぱり、ごほっ――ドレイクの目は節穴だ――」
 喉奥に溜まった血を吐き出しながら、ヴァルキリーは言う。
 星空をまぶしたような瞳で、穴が開くほどホタルを見つめる。
 ホタルはもう、やめてだなんて言わない。
 逃げたりもしない。
 ヴァルキリーが満足するまで、ずっと、ずっと、そうしてやるつもりだった。
 そうしてやるつもりだったのに――――
「俺の好きな人は――すぐ近くにいる――ほら――いつだって――」
 ヴァルキリーの瞳の中で瞬いていた星々が、一つ、また一つと、輝きを失っていった。
 真っ黒な、何もない闇のような色に染まるのを、ホタルはどうすることもできず見ていた。
 満足したような笑顔を貼り付けたまま、心優しき森番は息をひきとった。
「あっ、……はっ………………ひっ…………」
 ホタルは涙をこらえながら、ヴァルキリーの手を握った。折れてしまうのではないかと思うほど握りしめた。


 グンダルクの上空で、フェニアスは目を覚ました。
 ドレイクに飛ばされ、桜色の炎に身を包んだまま滑空していた。
「ダメだホタル……」
 身体がまだ治りきっていない。桜色の炎に身をゆだねたまま、フェニアスは呟くことしかできない。
「怒りにとらわれるな」


 ホタルの瞳から、涙のひとしずくが落ちていくのを、ワタルは見ていた。
 それがヴァルキリーの頬に落ちた時、幼馴染の胸のあたりで何かが光った。
 地平線に落ちる太陽を見たような光り方だった。数瞬後には、見間違いだったかと。
 何かよくないことがおこる。ワタルは直感的にそう思った。
 そして同時に、それをホタルが望んだのだと、彼にはわかった。
 ホタルは天を仰ぎ、ガッ―――と口を開いた。



 ライオンのようだった。



「ドぉレイクぁウゥゥぅぅあああ!」


 ドレイクは喜びに打ち震えて笑った。
「――――――そこか!」
 龍のかぎ爪を握りなおし、蒼き激流の流れを、両の足先に集中させた。


 ズン!と大気が揺れて、一番近くの大木の幹が、円形に消し飛んだ。開いた大穴から、蒼いかぎ爪を振りかざした大佐が飛び出してくる。
 ホタルは――そんなバカな――足下にあったヴァルブレイカーを、がに股になって立ち上がる。その両目が、ビカッ!と懐中電灯のように光る。
 大佐のかぎ爪が、ホタルの脳天めがけて振り下ろされる。
 ホタルは、ヴァルブレイカーを両手で握りしめ、その一撃を迎え撃つ。

 目の前で、巨大な爆弾が爆発したようだった。

 二人の武器がぶつかり合ったところから、稲妻のようなものが上がって、雲を割り、天を貫いた。衝撃波がホタルを襲い、頬や膝を切った。それでも彼女はその場に踏みとどまっていた。
 ワタルは、泣きじゃくっているルーの上に覆いかぶさった。突風で引きはがされそうになったが、これ以上彼女たちを傷つけたくなくて、根性でへばりついた。
「私の一撃を受け止めるとは、見事ですホタル様!しかし!」
 コートをはためかせながら、大佐が舌なめずりする。
「このまま剣を振りかざすのなら、あなたを敵と認めざるを得ない!」
「幼い子供を殺しておいて、今さら何を言うか!」
 ホタルはボロボロと涙を流しながら、金切り声を上げる。
「ウラオー博士に謝らなければ!」
「謝り方を知りもせずに!わたしが教えてやる!」
 ワタルは、幼馴染が怒り狂うのを初めて見た。
 ホタルはヴァルブレイカーをクン、と捻り、その切っ先で、大佐のかぎ爪を巻き込み、地面に突き刺した。がら空きになった大佐のどてっぱらに、左手の拳を叩きこんだ。
 細い、女子高生の腕が、ドレイク大佐をパチンコ玉のように弾き飛ばした。
 長身で、筋肉の塊である大佐を、だ。
 大佐は大穴の開いた大木に叩きつけられ、ケチャップを踏んずけたように、両方の鼻から血を噴き出した。
 ずるりと地面に墜ちた後、大佐は、屈辱の表情を浮かべながら鼻血をぬぐった。
「これは人間の力ではないな……?さりとて、盟約もしていない……!キマイラめ……いや、ホタル様のお力か!」
 大佐の瞳が、きゅっと絞られる。
 瞳の裏側から蒼い絵の具が染み出したように、サファイアと同じ色に染まる。
 目で追いきれない!
 再び爆発のような衝撃波が起こり、ワタルはルーを今一度抱きしめた。
 ホタルが、ヴァルブレイカーで大佐のかぎ爪を受け止めている。大佐はそれを無理やり弾き飛ばし、制服のスカートから覗く太ももに突き刺そうとする。ホタルはヴァルブレイカーを懸命に振り回し、それをいなす。
「ホタル様!」
 鋼と鋼の衝突が生み出す火花に顔を輝かせ、大佐が叫ぶ。
「世界にいるすべての人間が!あなた様のように高潔ではないのです!そうであればどんなによかったか!」
 大佐の攻撃速度がどんどん上がる。
「ホタル様はわがままだ!」
 ヴァルブレイカーの刀身を叩き落とし、ホタルが持ち上げるより速く、彼女の左肩を一突きにする。
「仇をとりたいと!ご学友を守りたいと!そう思いながら!私にも生きていて欲しいと思っている!」
 片手で応戦するホタルの、右足を、すねと膝を同時に切り裂く。
「教えて差し上げましょう!そんな!ことでは!誰一人守れぬ!」
 片膝をついたホタルが、ヴァルブレイカーの切っ先を上げる度、大佐は無慈悲に振り払う。
 だらりと腕を垂らしたホタルに、ミリタリーブーツの足裏を見せ、思いっきり蹴り飛ばす。
 ホタルは七転八倒し、転がっていた丸太の一つに当たってようやく止まる。
 制服のポケットからスマホが飛び出し、ぱたららら、と転がっていった。
 大佐はかぎ爪をびゅん!と振り、刃についていたホタルの血をはらった。追撃することなく、懐をごそごそやって、タバコとライターを取り出した。
 ホタルは頬についた血と泥を拭い、上半身を起こす。
 だが、右足を傷つけられ、左肩を動かせないでいる。あれではもう、戦えない。
「覚悟を決めればよろしい」
 タバコの先端に火が灯る。
「そのあとは簡単です」
 大佐は、仕事中に休憩するおっさんのように、事務的に煙をはき出す。
「違う……それは心を麻痺させてるだけ……!」
「いいえホタル様。絶対に救うと誓ったのです。抗うことのできない、世界の理から」
 ホタルは泣きそうな顔をして、大佐を見上げていた。
 それは、今ここで負けてしまう悲壮感ではなく、大佐と一生わかりあえないという絶望感から来ているように思われた。
 ホタルはそういう女の子だった。

 ボボン!とジェット機の噴射音が聞こえた。

 助かった――ワタルは安堵の念がどっとあふれるのを感じる。

 すぐ近くだ。体の芯を震わせるほど近くだ。ジェットの音は何度も鳴って、その度に近づいてくる。
 大佐がかぎ爪をギラリと光らせ、振り返る。
 その視線の先に、フェニアスが帰ってきている!
 白いロングブーツから、どどお、と炎を噴射して、フェニアスは減速した。大佐が左手でショットガンを引き抜き、すかさず撃った。
 フェニアスは顔色一つ変えずに対応した。左手で朱色の炎を放ち、右手で桜色の炎を投げた。朱色のそれはショットガンの弾を全て溶かし、桜色のそれはホタルの体に着弾した。
 蹴爪のようなヒールから出ていたジェットの炎を消し、走りながら芝生に着地すると、フェニアスは腰に携えていたエクストリーマーを熱しながら引き抜いた。
 星の誕生を見ているように、鈍い灰色の刀身が、あかい色に染まっていく。
「ぅぅううう……うあああぁぁぁぁぁぁ!」
 フェニアスの炎によって治癒されたホタルが、自分の膝を殴りつけ、立ち上がるのが見えた。ヴァルブレイカーの切っ先を大佐に向け、目を血走らせながら走り出した。
 二人の美女に命を狙われることが、これ以上ない至福の時だと言わんばかりに大佐は笑う。フェニアスのエクストリーマーをかぎ爪で受け止めると、長い足を伸ばし、ヴァルブレイカーの切っ先が届く前にホタルを蹴った。体制を立て直すと同時に、エクストリーマーの巨大な刀身を殴りつけ、フェニアスをよろめかせると、すぐさま振り向き、再度切りつけてきたホタルと刃をかわした。
 ワタルは冷や汗をかき、唾をのむ。
 まさに鬼神だ。
 それ以外に、大佐を言い表す言葉がない。
 本当に人間なのか?
 そんな考えまで、頭をよぎる。
 守り人の王であるフェニアスも、謎の力によって人智を超えたホタルも、並みの人間では到底反応できないであろうスピードで動いている。力も無限大だ。はじかれた攻撃はいずれも地面を切り裂き、空気を薙ぎ、遠くで転がる丸太の表面を凹ませている。
 その全てに大佐は対応し、その全てを上回る攻撃を、二人に浴びせていく。
 フェニアスの腕があらぬ方向に曲がり、ホタルの足から血が噴き出したのは、一度や二度では済まない。二人は桜色の炎に身を浸しながら、懸命に剣を振り続ける。
 大佐には、一太刀も届かない。
 ブーッ!ブーッ!ブーッ!と、手の平に振動が届く。地面を伝ってきた。バイブレーションだ。
 出所を探ると、数メートル先に、ホタルのスマホが落ちている。
 大佐に飛ばされた時、はずみで電源が入ったのだ。
 ひびの入った画面には、〝パパ〟の二文字と、落ち武者のようなウラオー博士の顔写真が浮かび上がっていた。
 ワタルは激しく切り結んでいる三人を見上げる。胸元で泣きじゃくっているルーと、眠っているリーを見る。待ってろよ、と声をかけ、地を這って進む。三人が繰り出す衝撃波に切られないよう、額をこすりながら。
〔ホタル?ホタルか?〕
 着信を取ると、ホタルの父親の声が、スピーカーを割って出てくる。
「おじさん!?」
〔ワタル君か!今どこにいる!〕
 ウラオー博士は切羽詰まった声で叫ぶ。
 ワタルは芝生の一帯を見渡す。
 木材だけで作られた小屋、崩れた丸太の山、見えなくなるほど高速で斬りあう三人――ダメだ――説明できない。
「今、今は……どうしたんですか!そんなに慌てて――」



〔ダインスレイヴが完成した!〕 



 ――――――――は?
 ワタルはしばらく、言葉を失った。
 モハティの基地で見た、巨大な建造物が脳裏をよぎる。
 完成した?
 あの超兵器が?
 すべてを焼き尽くす、大量破壊兵器が!?
〔モハティはすぐにでも試射を始める気だ!今すぐ戻ってくるんだ!射線上にいたら蒸発するぞ!〕
「そっ……そんな……っ!止めて!止めてくれおじさん!ホタルはまだこっちにいる!」
〔バカを言うな!ワシに止められるわけがないだろう!そんなことを言ったら、ワシがモハティに殺されてしまう!〕
 無責任な大人たちに、ワタルははらわたが煮えくり返った。
「自分の娘が死ぬかもしれないんだ!それが親の言うことが!」
〔ホタルを出せ!これであの子が死んだら!かわらんお前の責任だぞ!〕
 ウラオー博士が半狂乱になって喚き散らしている。ワタルの耳には、ひと言たりとも届かない。
 スマホをダラリと降ろし、顔を上げる。
 死力を尽くして戦う幼馴染を見る。
 リーのために、ヴァルキリーのために、ホタルは命を燃やして戦い続けている。
 体中に傷を負いながら、それでも、絶対に諦めることなく剣を振るい続けている。
 ホタルは!ホタルはどうしたんだ!という声が、トンネルの向こうからやってきたように反響している。
「間違ってる……間違ってるよ!おじさん!」
 ワタルは、手の平のスマホに向かってつばを散らす。
 リーの傍らで、ルーがずっと、ずっと、泣いている。大粒の真珠のような涙の玉粒が、エメラルドの瞳から、滝のようにこぼれ落ちている。
 血だらけなのに、穏やかな顔で眠っているヴァルキリーが見える。
 アイングラードの谷で見た、人の所業とは思えない火葬が脳裏に蘇る。
 苦しかったろう。
 無念だったろう。
 彼女たちが命をかけて守ろうとしたものが、ワタルには見える。 
 ホタルもわかっている。だから命をかけて戦い続けている!
「なんで奪うんだよ!」
 声が震える。
「なんで何もしてない人たちから!住むところも!守るべきものも!命までも奪うんだよ!」
 体が震える。
 許せない気持ちが、怒りが、心臓の奥から湧き出て、全身にめぐる。
「俺たちにいったい、なんの権利があるっていうんだよ!」
〔わけのわからんことを言うな!ホタルをだせ!ホタルだけでも助けるんだ!ホタルを――!〕
 ワタルはスマホを投げ捨てた。
 もう、人間界げかいに、自分の帰る場所はない。
「ホタル!!!」
 声を限りに叫ぶ。
「ダインスレイヴが撃たれる!」
 ホタルが、フェニアスが、そして大佐までもが、ワタルの言葉に一瞬、動きを止める。
「全部吹き飛ぶぞぉ!」
 それを聞いた途端、フェニアスがルビーの瞳をぎゅっと引き絞った。体の奥底から、銀朱とも言える鮮やかな炎を燃え上がらせた。
 それはいっとき、空を埋め尽くすほどの高さまで燃え上がり、大きなおおきな翼を広げた。

 不死鳥――――――

 炎が啼いている。
 ワタルには聞こえる。
 不死鳥を模った炎は、嘴をそら高く掲げたかと思うと、反転、業火の濁流となって、大佐に襲いかかった。
「あらら」
 猛き狂う炎の向こう側で、大佐が諦めたように呟くのが聞こえた。
 竜巻が家屋を巻き上げるように、津波が舟を押し流すように、銀朱の不死鳥は、無類の強さを誇った軍人を、地平線の彼方へ吹き飛ばした。
 大佐の姿を目で追っていたホタルが、突然、両肩を跳ね上げた。胸を突かれたような、苦悶の表情をしていた。糸の切れた操り人形のように、膝から崩れ落ちた。
 すぐに駆け寄って、彼女が倒れこんでしまう前に、その体を抱きかかえた。
 ライオンの咆哮のようなものが背中から聞こえ、ワタルは振り返った。
 ちょうど、うじゃうじゃと蛇の生えたヤギのお尻が、グンダルクの森の中へ消えていくところだった。
 ホタルの体は、石炭を入れた蒸気機関のように熱い。なのに震えている。
 得体のしれない何かが、彼女の中の、生きるための力までも、戦いのために使ってしまったのだろうか?
「すぐに手当を!」
 ワタルは、近寄ってきたフェニアスに、ほとんど睨みあげながら訴える。
「ダメ……ダメぇ……」
 紫色になった唇で、ホタルは今にも消えてしまいそうな声で言う。
「ホタル、でも……」
「お城にいる人たちを、逃がさなきゃ!」
 彼女の小さな手が、自分の胸を押す。その弱々しさに、ワタルは思わず、力強く抱きしめたくなる。ホタルはそれすらも拒否して、フェニアスに向かって叫ぶ。
「一人でも多く助けなきゃ!」
「しかし……」
 フェニアスはルビーの瞳をさまよわせる。
 歴戦の王を迷わせるほど、ホタルは弱りきり、そして力強かった。
「だってあの人たちは!フェニアスさんのために戦ったんでしょう?」
 ホタルの言葉に、フェニアスははっとして顔を上げる。
「ヴァルキリーだって、リーちゃんだって!フェニアスさんを信じて最後まで戦ったんだよ!私だけ、こんなところで寝てられないよ!」
 ホタルの声に応えるように、ワイバーンの翼を折りたたんだオズワイルドが急降下、薙刀で地面を巻き上げながら着地する。
 ジャマな丸太を一刀両断したオーガが、巨大な斧を肩に担いで、のっしのっしとやってくる。
 緑の翼をはためかせたベルナルグが、上空を通過する。彼は鳥足の先でつまんでいた甲羅を地に落とす。それが地面に突き刺さろうかという時、リンドに手を引かれたゲンキが現れて、右肩で受け止めてみせる。
 臣下たちの集結を目の当たりにして、フェニアスの瞳に炎が灯る。今度は揺るぎない視線をホタルに投げかけ、小さく頷く。
「オズワイルド!」
 城のある方角へ歩みを進めながら、フェニアスは腹心の部下を呼ぶ。
「はっ!」
 地面から薙刀を引き抜き、銀髪の男は付き従う。
「城への奇襲をかけろ、制圧は目的にするな。一点突破だ。奴らの最終兵器が放たれる前に、一人でも多く森へ逃がせ!」
「わかりました。我が王は?」
 オズワイルドの問いに、フェニアスは短く応えた。
 そのシンプルな言葉は、絶対の宣言だった。
「根本を叩く」



 あぁ、熱い。
 眼下を滑るように流れる緑のじゅうたんに、ドレイクは顔をしかめた。
 フェニアスがひねり出した炎は消し去ったが、いかんせんものすごい威力だった。慣性の法則でまだ飛んでいる。あと、コートが、裾の方からちりちり燃えている。
 空中で身をたたみ、燃えている部分を手でバンバンはたいた。
 鎮火したころ、城下町が見え始めた。ドレイクは特大のクレーターを残しながら着地し、度肝を抜かれて尻もちをついた兵士や、囚われの守り人をしり目に歩いた。
「大佐!お戻りになられたので?」
 中心の城へ近づくと、いくらか階級の高い兵士が駆け寄ってきた。大きなヘッドセットを頭につけた、連絡係だちょうどいい。
 足に繋がれた鎖をジャラジャラいわせながら、囚人たちが役務につかされている。城へ続く道、そのうち、石畳のないわき道を掘って、地雷を埋めているのだ。フェニアスが脱走したあの時から、最優先で進められているだ。彼らの様子を横目で見ながら、ドレイクは足早に通り過ぎる。
「全軍に通達、捕虜の動きに注意しろ、反抗するようなら殺して構わん。発砲を許可する」
「はっ……いえ、なにが――」
「いいか、これから火柱が三本上がる」
 困惑する部下に、ドレイクは親指と人差し指、中指を立てる。
「一本なら生存確認、二本なら撤退の合図」
「……三本上がると、どうなるので?」
 連絡係はゴクリと唾を飲み、カツンとブーツを鳴らして立ち止まった。
 ここは城の中――王の間のある五階へと続く、階段の踊り場だ。
 ドレイクも立ち止まり、踊り場に設けられた窓へと鼻先を近づけた。
「――攻撃開始だ」
 そう言った途端、グンダルクの森から一筋の炎が立ち上った。
 紅蓮の炎だ。先端が最も光り輝き、後に続く部分は赤い煙のように見える。けっして破裂することのない花火のように、ぐんぐん駆け上っていく。
 兵士が怯えたように窓のそばから離れた。
 城下では、鎖に繋がれた守り人たちが、作業の手を止め見入っている。おぉ、おぉ、という声があちこちでつぶやかれ、歓声にも似た響きで城壁を揺さぶる。
 フェニアス様だ――その名が、幾度となく呟かれる。
 本来であればそれを注意すべき兵士たちも、鉄製のヘルメットをわずかに傾け、アホみたいに口をぽかんと開け、見上げている。歪んだ窓ガラス越しでもよく見える。
 続いて二本目が打ち上げられる。兵士たちはようやく異常事態に気付き、みな銃に手をかけた。しかし、確信を持てないでいる。引き金に指を伸ばすことができず、銃口を上げる者も、まだ誰一人としていない。
 対照的に、守り人たちは一斉に静まり返った。
 ただの一人も鎖を鳴らさず、呼吸の音さえ漏らさず、固唾をのんで見守っている。
(二本で止まるはずがない)
 ドレイクは気持ちを昂らせる。
(守り人たちがいるのは城だ。それでは伝わらない。逃げる場所などない。)
「頼む……もう一本……もう一本あがってくれ……!」
 守り人の一人がそうつぶやくのが、ドレイクには聞こえた。何度も、どこからも聞こえた。
 みながそう願っていた。
 みなが信じていた。
 これは、撤退の合図ではない。

 そして、彼らの願いは届いた。

 空は三度、輝いた。

 守り人たちの雄たけびが、咆哮が、地鳴りとなって城を揺らした。
 グンダルクの上空を、炎を伴って飛んでくる。
 フェニアス・バックスが帰ってくる!
 歓喜の爆発が起き、城下にいた兵士が全員尻もちをついた。歪んだ窓ガラスが、カタカタと音たてて震えた。

 王の帰還だ。

 開戦だ。
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