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第32話:屈辱の影、希望のドレス(八月)
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「鈴木さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。ありがとう…」
小林由佳ちゃんは僕を心配してくれた。
あの日から、武田先輩からの直接的な嫌がらせから一転、言葉による遠距離攻撃に切り替わっていた。
「来た来た!いつも女とウロウロしているヤツが!」
「あいつは普段何してんだぁ?!」等
また、営業課だろう数人の部下達を引き連れていて、彼らを威圧で納得させてるように見えた。
「あの野郎…」
高橋あやかは怒りのあまり唇を噛み締めていた。朝早々、唇を綺麗に纏ったばかりの口紅が台無しになると思った時、佐々木課長はピシャリと叱り始めた。
「高橋さん!何ですかその口は!その汚い言葉も慎みなさい!貴女の悪い癖ですよ!」
彼女の豪快さや男勝りなところ、怒ると喋り方や仕草も荒々しくなるのは、課長も知ってるようだった。
「す、すみません。しかし、武田さんが…」
あやかは我に返り、顔色が噛み締めた部分の口紅と一緒に失った。
「…営業課長にも注意するように言いましたが、廊下で待ち伏せして、しかもあんな離れた所から…」
これが一週間ほど続いた。特に由佳ちゃんと一緒の時が、狙っているのか頻繁で日を追うごとに笑顔が失っていくのを感じた。それでも気遣いをする彼女の生真面目さに嬉しかったが、僕のせいで彼女を巻き込んでしまっている罪悪感や無力感が混じり、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
「流石に…しばらく毎日OLとして勤務したほうが…」
武田先輩との接触を避けるため、男性の姿ではコピーや掃除、データ入力など部屋からでない雑務をしていたが、やれることに限りがあった。
「けど…今まで偶然武田に知られてなかったけど、もし知られたら…」
更なる嫌がらせを受けるだろう…。とオフィス内の皆が感じとれた時、静まる返る中一人の女性が元気よく訪れた。
「失礼しまーす!いつもお世話になっております村上理子と申しますぅ!突然で恐縮ですが課長の佐々木様と鈴木様はいらっしゃいますか?」
その姿はノースリーブの白いカッターシャツにサイドスリットが深いの黒いロングスカート。ピンヒールのサンダル、サングラスに高そうな金のネックレスやイヤリングをしていた。
突然ショーが始まり、主役が観客席の出入口から登場したかのように皆が一斉に振り向いた。近くにいた由佳ちゃんが迎える。
「はい…。貴女は確か…広報誌の編集長?」
由佳ちゃんは顔は覚えていたが、あの時は撮影に夢中で名前まで把握はしてなかった。そういえば、僕もだった。
「はい!あの時は大変お世話になりました。近くを通りかかったので立ち寄らせていただきましたが、お二人は?」
由佳ちゃんは応接用のソファに案内し、僕と課長も席から立ち上がり、向かった。
「あら、村上様。お暑い中ようこそ。ところで、今日は…?」
課長は見慣れた様子で飲み物を勧めた。
「いえ、休暇中だし、車で来たので。実は、あの広報誌で鈴木さんの写真がとても好評で、それで弊社から感謝の気持ちを込めて、これを鈴木さんに!これで御社の創立記念日のパーティーを楽しんで下さい!」
それは、深海をイメージした青く、スレンダーなタイトドレスとハイヒールだった。ノースリーブでVネックで胸元が開いていて、サイドスリットが深いスカートが上品に決まっていた。
「ありがとうございます。…っ!村上様、実は…」
課長は何かを思いつき、編集長に事情を話した。その時の課長は神妙な面持ちで頭を低くしていた。
「…と言う訳で、鈴木君の立場が揺らいでいる状態なのです。そこで相談なのですが今度のパーティーで功労賞の発表があって、鈴木君を上層部に推薦させようと思うのです。村上様からも社内で署名を集めていただけないかと…」
「なるほど…、分かりました!弊社の社員にお願いしてみます。ただ署名は勿論ですが、今度私からも御社の上層部へ伺いましょう!そして、皆でお願いするんです!」
「ありがとうございます!私からも直接、お願いに伺います!」
「あの…僕は背広でいいです。それに推薦だなんて…」
ドレス見た途端、雨が止みかけたような気持ちになったが、武田先輩を意識すると、分厚い雲からまた雨が降り注いでいた。
「鈴木君、何を怯えているの?」
「いえ、その…」
「貴方は何も間違ったことはしてないでしょう!それに、この広報誌は多くの人から評価されている。それがまだわからないの!?」
課長からの怒号が、僕の心にある厚い雲をひと突きしてくれた。
「鈴木君、貴方の貢献は、誰にも否定させない。あのドレスを着て、堂々と貴方自身を証明するのよ。誰かの心ない言葉に、貴方自身の輝きを曇らせてはいけないわ。このドレスは、貴方がもたらした価値の証よ。臆することなく、堂々と胸を張って、その舞台に立ちなさい。貴方が輝くことが、武田への何よりの反論になるわ」
「そうよ!私もついてるわ!
「何なら、さっきの編集長みたいな登場してみんなを驚かせましょう!」
みんなが雲を取り払ってくれる。味方の多さ、あまりの嬉しさに言葉にできなかったが、僕は頷いた。
「じゃあ決まりね!早速行動に移りましょう!」
編集長が帰った後、課長は早速社員を集めた。これまで僕がお世話になった人達にも協力を求めるようだ。
「明日、小林さん達はホテル側へ、高橋さん達は遠いけど出張先の協会へ協力を求めに伺って」
その後、あやかや由佳によるとみんな快く署名に応じてくれたそうだ。後日課長の他、署名簿を持った編集長、ホテルの支配人、協会会長が揃い、常務や人事部長らに頭を下げてお願いしてくれた。
「この広報誌の大反響のおかげで、化粧品やブライダル業界から彼に関する問い合わせや好評を頂いており発行部数も過去最大です」
「また、当ホテルの宿泊や結婚式の予約も増えていて、お客様からこれがきっかけで予約したとの声をアンケートやサンキューレターから頂いております。鈴木様の協力なしではあり得なかったことです」
「佐々木様から、鈴木君が足湯カフェのイベントで働いている浴衣姿の写真を背景しました。評判がとても良く、浴衣等は協会から寄付をいたします」
ただ候補者は武田先輩らもいて、各部署へのアピールが凄かった。そこで課長は自由に歩けない僕の為に嘆願書まで提出してくれた。
果たして…結果は…。
「大丈夫だよ。ありがとう…」
小林由佳ちゃんは僕を心配してくれた。
あの日から、武田先輩からの直接的な嫌がらせから一転、言葉による遠距離攻撃に切り替わっていた。
「来た来た!いつも女とウロウロしているヤツが!」
「あいつは普段何してんだぁ?!」等
また、営業課だろう数人の部下達を引き連れていて、彼らを威圧で納得させてるように見えた。
「あの野郎…」
高橋あやかは怒りのあまり唇を噛み締めていた。朝早々、唇を綺麗に纏ったばかりの口紅が台無しになると思った時、佐々木課長はピシャリと叱り始めた。
「高橋さん!何ですかその口は!その汚い言葉も慎みなさい!貴女の悪い癖ですよ!」
彼女の豪快さや男勝りなところ、怒ると喋り方や仕草も荒々しくなるのは、課長も知ってるようだった。
「す、すみません。しかし、武田さんが…」
あやかは我に返り、顔色が噛み締めた部分の口紅と一緒に失った。
「…営業課長にも注意するように言いましたが、廊下で待ち伏せして、しかもあんな離れた所から…」
これが一週間ほど続いた。特に由佳ちゃんと一緒の時が、狙っているのか頻繁で日を追うごとに笑顔が失っていくのを感じた。それでも気遣いをする彼女の生真面目さに嬉しかったが、僕のせいで彼女を巻き込んでしまっている罪悪感や無力感が混じり、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
「流石に…しばらく毎日OLとして勤務したほうが…」
武田先輩との接触を避けるため、男性の姿ではコピーや掃除、データ入力など部屋からでない雑務をしていたが、やれることに限りがあった。
「けど…今まで偶然武田に知られてなかったけど、もし知られたら…」
更なる嫌がらせを受けるだろう…。とオフィス内の皆が感じとれた時、静まる返る中一人の女性が元気よく訪れた。
「失礼しまーす!いつもお世話になっております村上理子と申しますぅ!突然で恐縮ですが課長の佐々木様と鈴木様はいらっしゃいますか?」
その姿はノースリーブの白いカッターシャツにサイドスリットが深いの黒いロングスカート。ピンヒールのサンダル、サングラスに高そうな金のネックレスやイヤリングをしていた。
突然ショーが始まり、主役が観客席の出入口から登場したかのように皆が一斉に振り向いた。近くにいた由佳ちゃんが迎える。
「はい…。貴女は確か…広報誌の編集長?」
由佳ちゃんは顔は覚えていたが、あの時は撮影に夢中で名前まで把握はしてなかった。そういえば、僕もだった。
「はい!あの時は大変お世話になりました。近くを通りかかったので立ち寄らせていただきましたが、お二人は?」
由佳ちゃんは応接用のソファに案内し、僕と課長も席から立ち上がり、向かった。
「あら、村上様。お暑い中ようこそ。ところで、今日は…?」
課長は見慣れた様子で飲み物を勧めた。
「いえ、休暇中だし、車で来たので。実は、あの広報誌で鈴木さんの写真がとても好評で、それで弊社から感謝の気持ちを込めて、これを鈴木さんに!これで御社の創立記念日のパーティーを楽しんで下さい!」
それは、深海をイメージした青く、スレンダーなタイトドレスとハイヒールだった。ノースリーブでVネックで胸元が開いていて、サイドスリットが深いスカートが上品に決まっていた。
「ありがとうございます。…っ!村上様、実は…」
課長は何かを思いつき、編集長に事情を話した。その時の課長は神妙な面持ちで頭を低くしていた。
「…と言う訳で、鈴木君の立場が揺らいでいる状態なのです。そこで相談なのですが今度のパーティーで功労賞の発表があって、鈴木君を上層部に推薦させようと思うのです。村上様からも社内で署名を集めていただけないかと…」
「なるほど…、分かりました!弊社の社員にお願いしてみます。ただ署名は勿論ですが、今度私からも御社の上層部へ伺いましょう!そして、皆でお願いするんです!」
「ありがとうございます!私からも直接、お願いに伺います!」
「あの…僕は背広でいいです。それに推薦だなんて…」
ドレス見た途端、雨が止みかけたような気持ちになったが、武田先輩を意識すると、分厚い雲からまた雨が降り注いでいた。
「鈴木君、何を怯えているの?」
「いえ、その…」
「貴方は何も間違ったことはしてないでしょう!それに、この広報誌は多くの人から評価されている。それがまだわからないの!?」
課長からの怒号が、僕の心にある厚い雲をひと突きしてくれた。
「鈴木君、貴方の貢献は、誰にも否定させない。あのドレスを着て、堂々と貴方自身を証明するのよ。誰かの心ない言葉に、貴方自身の輝きを曇らせてはいけないわ。このドレスは、貴方がもたらした価値の証よ。臆することなく、堂々と胸を張って、その舞台に立ちなさい。貴方が輝くことが、武田への何よりの反論になるわ」
「そうよ!私もついてるわ!
「何なら、さっきの編集長みたいな登場してみんなを驚かせましょう!」
みんなが雲を取り払ってくれる。味方の多さ、あまりの嬉しさに言葉にできなかったが、僕は頷いた。
「じゃあ決まりね!早速行動に移りましょう!」
編集長が帰った後、課長は早速社員を集めた。これまで僕がお世話になった人達にも協力を求めるようだ。
「明日、小林さん達はホテル側へ、高橋さん達は遠いけど出張先の協会へ協力を求めに伺って」
その後、あやかや由佳によるとみんな快く署名に応じてくれたそうだ。後日課長の他、署名簿を持った編集長、ホテルの支配人、協会会長が揃い、常務や人事部長らに頭を下げてお願いしてくれた。
「この広報誌の大反響のおかげで、化粧品やブライダル業界から彼に関する問い合わせや好評を頂いており発行部数も過去最大です」
「また、当ホテルの宿泊や結婚式の予約も増えていて、お客様からこれがきっかけで予約したとの声をアンケートやサンキューレターから頂いております。鈴木様の協力なしではあり得なかったことです」
「佐々木様から、鈴木君が足湯カフェのイベントで働いている浴衣姿の写真を背景しました。評判がとても良く、浴衣等は協会から寄付をいたします」
ただ候補者は武田先輩らもいて、各部署へのアピールが凄かった。そこで課長は自由に歩けない僕の為に嘆願書まで提出してくれた。
果たして…結果は…。
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