防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり

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第31話 暗躍する者


「何? あの小娘達が氷竜を討伐して戻ってきただと? そんな馬鹿な事があるか! 何かの間違いだろう」

「い、いえ……勇者チル達は確かに氷竜の首を持って帰ってきました」

「……もうよい、下がれ!」

「はっ、失礼いたします」

 玉座に座るムスヒは報告に来た側近を下がらせると、傍らに控える王妃クシナダに問いかける。

「氷竜があんな尻の青い小娘如きに討たれるなどとても信じられん。これは一体どういう事だ?」

 クシナダは人差し指であごに触れ、少し考えてから答える。

「そうね、本当にあのおチビちゃんだけでやったのかしら?」

「誰か手を貸した者がいるというのか? しかし一体誰が……」

「氷竜を討伐できる力を持つ者なんてこの国には数える程しかいません。すぐに特定できると思うわ。しばらくあの子達を監視しましょう。ヨイヤミ、いらして?」

「はっ、ここに!」

 クシナダが一人の女性の名を呼ぶと、ムスヒの背後から返事をする声が聞こえた。

「何者だ!?」

 ムスヒが驚き振りむくが、そこには人の姿はない。
 しかしムスヒは確かに人の気配を感じた。

「ヨイヤミ、陛下の御前よ。姿を現しなさい」

「いえ、あの……私はこのままで……」

 その返事を聞いたクシナダは深くため息をつく。

「まったく、あなたは相変わらずね。まあいいわ。あなたは今から勇者パーティの監視に当たりなさい。何か不審な点があればすぐに報告する事」

「はい、承知いたしました」

 その声を最後に先程まで謁見の間の中に漂っていたひとりの気配が消える。

「クシナダ、今の声は何者だ?」

「うふふ……彼女は私の子飼いの駒よ。女性だけの戦闘部族であるアマゾネスの生き残りで、闇の魔力を操り姿をくらます事ができる能力の使い手よ」

「ほう、アマゾネスか……確か10年前に魔族との争いに破れて滅びたと聞いていたが、生き残りがいたのか」

「ええ、私が今にも崩れ落ちそうな建物の中で泣き叫んでいたあの子を保護したのです。あの時は本当に気の毒で目も当てられませんでしたわ」

「ふっ、どの口が言う。まあいい、それで何故奴は俺の前に姿を現さなかった」

「簡単なお話よ。あの子は女性だけの世界で生まれ育ったから男性に対しての免疫がないのよ。だからあなたの前に姿を現せなかったのよ」

「はあ? ……そんな者が役に立つのか?」

「ええ、その為に勇者パーティのメンバーを女性だけで統一したのよ」

「そうか、ならばいい。それでは次の勇者パーティの討伐対象についてだが……」



◇◇◇◇



「クサナギの兄貴! チルちゃん達の次の討伐対象が分かりましたぜ!」

 火焔山の村で魔力を高める為に瞑想をしていた俺にジセンが駆け寄ってきた。

「次は幻獣の森を支配している鈺熊ゴールデンベアの討伐に向かうようです」

「鈺熊か……それはまた厄介な相手だな」

 鈺熊はその名の通り毛並みが黄金色に輝く巨大な人食い熊だ。

 その大木のような腕から振り下ろされる爪の一撃は、野良竜程度なら一撃で八つ裂きにされる程の威力があるという。

 そしてその光り輝く毛皮は剣も矢も通さないだけでなく魔法に対しての耐性にも優れ、防具の素材としての価値は計り知れない。
 王都では同じ質量の金塊と取引されるという。

「ムスヒの奴、また明らかにチル達には荷が重い魔獣の討伐任務を与えやがって」

「クサナギの兄貴、チルちゃん達だけで大丈夫ですかね? また助けに向かった方が宜しいんじゃないですか?」

 ジセンは心配そうな様子でそう申し出る。

「いや、その必要はないさ。こんな事もあろうかと既に彼女達には強力な助っ人を送り込んである」

「おお、さすがクサナギの兄貴だ。抜かりないですね」

「それよりもムスヒ陛下の調査はどうなっている? あのお方はいったい何を考えているのか……」

「申し訳ありません、それについてはもう少し時間を下さい。何分、王宮内の警備が厳しくてなかなか潜り込めず……」

「そうだな、それじゃあその件についてはあの人達の協力を要請するか……」



◇◇◇◇



 その頃、チル達勇者パーティは幻獣の森へ到着していた。

 邪悪なものの存在を察知する能力を持つネネコを先頭に、四人は陣形を保ちながら奥へ進む。

 間もなくネネコのアンテナに何かが引っかかった。

「皆様、すぐ後ろから何かがついてきています!」

 ネネコの言葉にチル、サクヤ、サギリの三人は即座に振り返り武器を構える。

 しかし彼女達の視界には動くものは見当たらなかった。

「……何もいませんね」

 チルがそう言いかけた時だった。

 ガサガサと足元の草が揺れたと思うと、角の生えた小さな兎が飛び出してきた。

「うわ、びっくりした!」

 チルがロングソードを振り回すと、それに驚いた角兎は一目散に逃げ出す。

「……ネネコさん、邪悪な気配がしたのって今の兎の事ですか?」

 ネネコは首を傾げながら答える。

「そうかしら? ……そうかもしれません」

 森の中にはほぼ人畜無害な小さな魔獣も多く生息している。
 ネネコは小さな気配は無視してもいいかもしれないと思った。

「まったく、驚かせてくれるでござるな」
「それでは先へ進みましょう」

 四人は気を取り直して再び森の奥へ進み出した。

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