ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり

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第45話 呪われし者たち5

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 詰んだ。

 黒魔力を全て失った俺には最早何の力も残されていない。

 俺はロリエを助けることができなかった。

 アガントス王国から追放された時以上の絶望感が俺を襲った。

 後はせめてノースバウムの地下闘技場内に隠れている村人たちがエルフたちに見つからない事を祈るだけだ。

 バラートは勝ち誇った笑みを浮かべている。

「ふははは、万策尽きたようだな。なあに心配するな、貴様はすぐには殺さん。じっくりと苦しませた後に地獄へ送ってやろう」

「もう好きにしてくれ。貴様たちに呪いで操られるよりはましだ」

「呪われる? ……そうか、貴様は既に呪われているという事を自覚していなかったのか」

 バラートはわざとらしく大袈裟に憐れみを含んだ眼差しで俺を見ている。

「俺が……呪われている? いやそんははずはない、でたらめを言うな! 俺はロリエに触れても気分が悪くならなかった。呪われているはずがない」

「当たり前だ。貴様とロリエが受けた呪いは同じ種類のものだからな。呪い同士が反発して気分が悪くなる事はない」

「同じ……種類……?」

 ロリエは魔王アデプトに黒魔力を奪われたと聞いている。
 つまり俺も誰かに何かを奪われたという事になる。

「俺はいったい誰に何を奪われたというんだ……?」

「まあ今から死んでいく貴様が知る必要はない。おしゃべりは終わりだ、死ねルシフェルト!」

 バラートは手にした剣を振り上げた。
 今度こそやられる……!

「ルシフェルト、何を諦めてらっしゃいますの! 今すぐこっちにいらっしゃい!」

 つるに自由を奪われて身動きができないロリエが叫んだ。

「ロリエ……すまない、今の俺にはもう君を助けるだけの魔力が残っていないんだ」

「いいえ、まだ手がありますわ。今すぐこっちにいらっしゃいまし! ……はぁ、はぁ……私が意識を保っている間に……」

 つるの締め付けがきつくなってきたのかロリエは苦しそうに息を乱している。

「ロリエ!」

 こうなったらやけくそだ。
 俺は懐から護身用の短剣を取り出してロリエの下に駆け寄った。

「ははは、今更何をしても無駄だ」

 バラートは嘲笑いながらゆっくりとこちらに歩いてくる。

 俺は短剣でつるを切りつけるが少しの傷をつける事が精一杯。
 つるを切断をしてロリエを助ける事などとてもできない。

「はぁ、はぁ……ルシフェルトつるなんて放っておいてもっと私に顔を近づけて目を閉じて下さいまし」

「ロリエ、いったいなにをするつもりだ?」

「いいから早くして下さいまし」

「こ、こうか?」

 俺はロリエの言う通りに顔を近づけて目を閉じた。
 次の瞬間唇に柔らかい物が触れた感触があった。

「ん? 何の感触だ? ……いやそれよりも」

 感触と同時に俺の身体の中に膨大な量の魔力が流れてくるのを感じた。

「もう目を開けても良いですわよ」

 目を開けると顔を紅潮させたロリエが俺から目を逸らしていた。

「……初めてでしたけど上手くいきましたわ」

「ロリエ、今何をしたんだ?」

「……私、黒魔力を奪うだけでなく反対に自分の黒魔力を他人に与える事もできますのよ」

「そうだったのか……でも、どうしてロリエが黒魔力を……はっ、そうか」

 理由は簡単だ。
 俺はさっき魔王アデプトを黒魔法で消し飛ばしたまま【破壊の後の創造】スキルで創り直していない。
 それによってアデプトがロリエに掛けていた呪いは消え、失われていたロリエの黒魔力がその肉体に戻っていたのだ。
 そしてアデプトの呪いが消えた事によって新たに呪術師たちの人体操りの呪いがロリエの精神を蝕みだした。

「はぁ、はぁ……後は頼みましたわよ……」

 ロリエの意識が途切れた。

「ああ、ゆっくりとおやすみ」

 ロリエが次に動き出す時は既にエルフたちに操られている状態のはずだ。
 そうなる前に決着をつけてやる。

 俺はバラートの方へ振り返り、手を翳した。
 ここへきてようやくバラートは自分の置かれている状況を把握した。

「ま……待て、話し合おう……降参……」

「もうしゃべるな。……破壊魔法デモンズクラッシャー!」

 俺はバラートに向けてロリエから借り受けた全黒魔力を放出した。

「うぎゃあああああああああああああああああ!!!」

 俺が放った黒魔法はバラートだけでなく、その後ろにいた呪術師たちも巻き込んで大爆発を起こした。

 呪術師たちが全滅した事で魔王軍を操っていた呪いは解け、魔王軍の兵士たちは徐々に正気を取り戻していった。

「バラート様がやられた!」

「もうだめだ、逃げろ!」

 一方で生き残ったエルフの兵士たちは完全に戦意を喪失しており一目散に敗走を始めた。
 俺はそんな彼らには構わずロリエに駆け寄った。

 バラートが死亡した事でロリエの身体にまとわりついていたつるは腐り落ち、ロリエの身体が落下するのを俺は受け止めた。
 同時にビリビリに破れていたロリエの衣服の最後の切れ端がハラリと落ちた。

 思わず俺の視線がロリエの一点に集中する。

「うーん……」

 その時ロリエが目を覚ました。

「きゃっ」

 ロリエは自分の状態を把握すると可愛い悲鳴を漏らして身体を隠す。
 少し間をおいた後にじっと俺の目を見つめて言った。

「すけべ。どこを見てたのかしら?」

「いや、誤解だ。俺はお前を助けようとしただけで……とにかくこれを」

 俺は上着を脱いでロリエの身体に被せた。
 以前エンペルさんが繕ってくれた俺の上着はロリエの小さな身体を覆うには充分な大きさだった。

「……まああんたなら……ちゃんと責任を取ってくれるのでしたら別に構いませんわ」

「ぐ……いやしんぼめ。黒魔力何日分で許してくれるんだ?」

「そう言う意味ではありませんわ!」




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