女神が愛した精霊の話

まかだみあ

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前編

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まだ、人間と神との接触が盛んだった頃。

1柱の女神がいた。

名はセレニティ。

黄金の満月のよう豊かな美しい髪。
星屑のように煌めいた濃い藍色の瞳。

まさに絶世の美女。

人々は口々に夜の女神
または月の女神と呼んだ。

彼女の使命は、夜の世界を守る事。
人間を悪夢から守ること。

だから、夜しか動けなかった。

彼女は夜な夜な地上に降りては
人間を悪夢から救い
安らかな眠りと静寂を与えた。

優しく慈愛に満ちた女神は
自分の使命を誇らしく思っていて
怠ける事はなかった。



ある日、好きな人がいた。

名を、マレインフォレストという。
マレインフォレストは人間だった。

使命を果たそうと地上へ降りた際に
たまたま目についた男。

白銀に光る綺麗な髪の毛。
月明かりに照らされた長い睫毛。

完成された美を持つ青年。
女神はすっかり心を奪われてしまった。

それから。
毎日マレインフォレストの下へ通った。

彼は寝ているので寝顔を眺めるだけ。
それだけでセレニティの心は満たされた。


時が経つにつれて。
セレニティの中に小さな欲が生まれた。

…もっと長い時間一緒にいたいという想い。

セレニティは自分の使命を
怠けるようになった。

マレインフォレストが寝てから日が昇るまで
ずっとそばにいるようになった。


ある日。
いつも通りマレインフォレストが寝てから
いつものように寝顔を眺めて。

ふと、愛おしさのあまり初めて
彼の額にキスを贈った。


『貴方だったんですね。
 僕を見守ってくれていたのは。
 ずっと、夢でしか会えなかったので』


やっと会えました、と長い睫毛を震わせて
瞳に彼女を映した彼は。

とても幸せそうに、儚く微笑んだ。

星屑を散りばめた、藍色の瞳を細めて。



それからも
セレニティとマレインフォレストの
夜の逢瀬は続いた。

2人の間には子供も産まれた。
幸せだった。




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