パパの見た目は15歳〜童顔の大黒柱〜

スーパー・ストロング・マカロン

文字の大きさ
154 / 154
最終章

153


春蔵はテレビを観ていた。

「お爺ちゃん、僕の作務衣さむえは?」

廊下を走り居間にやってきた冬児には見せまいと、手元にあるリモコンでテレビの電源を切った。
情報番組でが放送されて、冬児の目に事件現場の映像や評論家の意見を見聞きされるのを避けたかったのだ。

季節原家は凶悪な指名手配犯に襲われた事でメディアから執拗に取材を受けており疲弊していた。
以前に比べメディアの露出は少なくなったものの、意図しない事で有名人になってしまった後遺症がある。

普段の生活を取り戻そうと、ぎこちなく明るく振る舞っている姿が春蔵には心苦しかったのだ。

「ああ、用意はしたが。」

「どこにあるの?」

「そこの紙袋に入れてあるぞ。」

「これを着てお店に立つんだね。僕、冬休みは社会経験を積んで成長したい。」

「わかっている、わかっている。
もう何度も聞かされたからな。」

作務衣が入った紙袋を持った冬児は期待で胸を膨らませながら2階へかけて行った。
先ほどよりも更に足音に力がある。

「あいつ、さっきからバタバタうるせえな。」

外出していた夏子は玄関ドアを開けていて、サクラと遊んでいた秋奈と顔を合わせた。

「お母さん、お帰り!」

「ウフフ、ただいま秋ちゃん!
秋ちゃんが好きなドーナツ買ってきたわよ。」

マフラーから見える頬は冬の寒さで少し赤くなっていて、実年齢よりも夏子の顔はあどけなく見える。

「わぁありがとう!」

夏子が秋奈にドーナツの入ったビニールの手提げ袋を手渡した瞬間、2人は顔を見つめて気まずそうにした。

「お義父さん、すみません!
あの私達、お義父さんが作るお団子も大好きで、いつも楽しみにしているんですよ!」

「そ、そうだよ。お爺ちゃん。
でもさ、たまにはドーナツこういうのも食べたくなっちゃうんだ。
焼き肉が好きだからって、毎日焼き肉を食べられないじゃん?
そういう感じ…。」

「謝らんでくれ。
ドーナツでもクレープでもタピオカでも好きな物を食べるのが1番だぞ。」

「お爺ちゃーん!」

飛び跳ねるように冬児が走ってきた。

後を追ってサクラも駆け寄ってくる。

「おおっ、似合っているじゃないか。」

「あらっ!フユちゃん可愛いじゃない!」

「フユはオヤジみたい。」

ガラガラガラ。

少々玄関ドアの立て付けが悪い。

「わぁ!?びっくりした!」

夏子は身体をビクッとさせて声をあげた。

「まいったよ。」

「お父さん、どうかしたの?」

冬児が尋ねる。

「またウチらの話を聞きに取材班でもきたわけ?」

「あなた、そうなの?」

春蔵は辛そうな表情を浮かべながら春彦を見つめている。

「その…婦女子が。」

ガラガラガラ。

玄関ドアを開ける音がした。

「しまった!鍵をかけ忘れていた!」

年齢を問わず30名以上の女性が、季節原家の実家にやってきていた。

「あら、そういう事?
事件を解決して一躍アイドルになったわけね。
ふーん。」

白けた顔で夏子は言った。

「テレビ会社の人が言っていたけどね、今度再現ドラマをお正月にやるんだって。
僕ら家族が事件に巻き込まれたにもかかわらず、犯人をあっさり捕まえたお父さんを主役にした内容らしいよ。」

「豪華俳優人がウチらを演じるみたいだよね。
私を演じる役も気になるけどさ。
お父さんの役はきっとイケメンが演じるんじゃないかな?
だって主演なわけだよ?
あーん、誰になるんだろう!?」

秋奈はサラサラした髪を揺らした。

女性に囲まれた熱狂の渦のなか、春彦は大きな声だがどことなく頼りない声で言う。

「私は一般人ですよ。この通り、団子屋のです。
申し訳ありませんが、帰っていただけませんか?」

珍しく春彦が取り乱している。

「オヤジはオヤジでも、こんな若いオヤジはいないよ!
見た目が15歳くらいの男の子じゃん!」

春彦の遺伝子を受け継いだ低身長の冬児の頭をポンポン叩きながら、身体をくねらせて秋奈は笑った。




夏子を筆頭にを自宅から追い返した後、居間に家族が集まった。

「明日から"団子屋春夏秋冬"は生まれ変わるんだ。」

「そう、家族みんなでお店に立つものね。」

「私はちょっと…」

「お姉ちゃん!」

「冬児はまだ子供だし、秋奈も大学受験を控えておる。
店の事は気にせんでいい。
みんなの気持ちだけで充分だ。」

春蔵が言うとコタツで暖まる秋奈、冬児、夏子は優しく微笑んだ。

「ただ一つ問題があるよ。
でしょ?お母さん。」

「なに?秋ちゃん。
あっ、そうね。ウチにはがいるものね~。」

「勘弁してくれ。」

春彦は湯呑みを見つめた。

茶柱が立っていた。





























































感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

白衣とブラックチョコレート

宇佐田琴美
ライト文芸
辛い境遇とハンディキャップを乗り越え、この春晴れて新人看護師となった雨宮雛子(アマミヤ ヒナコ)は、激務の8A病棟へと配属される。 そこでプリセプター(教育係)となったのは、イケメンで仕事も出来るけどちょっと変わった男性看護師、桜井恭平(サクライ キョウヘイ)。 その他、初めて担当する終末期の少年、心優しい美人な先輩、頼りになる同期達、猫かぶりのモンスターペイシェント、腹黒だけど天才のドクター……。 それぞれ癖の強い人々との関わりで、雛子は人として、看護師として成長を遂げていく。 やがて雛子の中に芽生えた小さな恋心。でも恭平には、忘れられない人がいて─────……? 仕事に邁進する二人を結ぶのは師弟愛? それとも─────。 おっちょこちょいな新人と、そんな彼女を厳しくも溺愛する教育係のドタバタ時々シリアスな医療物ラブ?ストーリー!!

忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」

竜弥
ファンタジー
異世界に転生する直前、天貴(てんき)が選べた“持ち物”は三つ── だが、彼はひとつしか持たなかった。 残されたのは部屋と、布団と、そして──忠犬。 「クータンを頼む」。それが、最後の言葉だった。 ぽつんと現代に残された玄太は、天貴の部屋で布団にくるまりながら泣いていた。 でも、捨てられたわけじゃなかった。 天貴が“本当に”持っていきたかったのは、玄太だったのだ。 その事実を知った瞬間、忠犬は立ち上がる。 天貴の武器を手に、異世界転送の手はずを整え、 天貴が今どんな敵と向き合い、何に苦しんでいるのかを知った玄太は、叫ぶ。 ──忘れ物はおれ!…届けに行くっすから! これは、異世界に送られた大好きな先輩を追って、 “忠犬男子”が次元を越えて追いかける、少しおかしくてちょっと泣ける物語。