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断罪イベント
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((ああ…思い出した))
一人は会場中の冷たい視線を受けながら、もう一人はその光景を目前に見ながら脳裏に映像が流れた。
アナスタシア・ローズウェルはここカサノア王国の公爵家の一人娘だ。
そしてこれから、処刑される未来の待つ哀れな少女でもある。
(”前回”と同じ光景…きっと今回も死ぬ運命は変わらないわ。何故もう取り返しのつかないタイミングで思い出すのかしら。)
容姿端麗、勉学も優秀で周りからの覚えもめでたかったアナスタシアが入学してすぐの学園で人気を集めるのはすぐだった。
しかしそれが一変したのは学園に【天授の精】と呼ばれる存在が入学してから。
全くの別世界から来たのだと主張するアザミ・シダによりアナスタシアの周囲は次々と彼女に傾倒していき、事態に気付いた時にはアナスタシアは孤立してしまっていた。
アザミを虐めていると本人とその周りが責め立てる事で、中立を保っていた存在もいつしかアナスタシアを弾劾する立場へと足を踏み入れていた。
実際、前世でも今世でもアナスタシアがアザミに直接話しかけたのはアナスタシアの婚約者である第三皇子と恋人かのような距離感でアザミが接していた為、婚約者のいる男性には容易に近づかないようにと遠回しに咎めた数回だけである。
だがアザミに夢中な彼らは、直接でなくても裏から手を引いているだのと捲し立てあっという間に学内一番の性悪女となってしまったのだ。
(一度目の私はこのパーティーで彼と一緒に踊るのを夢見ていた。政略結婚として決められた相手だとしてもちゃんと好きだった、愛していた。…だからこそ前世では影の監獄に入れられた後「綺麗だね」と贈られる言葉を想像して私の頭の中で踊っていたんだったわ…)
「父上、沙汰を。」
婚約者”だった”エルサード・カサノア第三皇子の声でハッと現実に意識を戻す。
しかし彼の口から出てきた言葉も声音も前世と全く変わらなかった。
またあの寒い孤独な牢に閉じ込められるのだ、とアナスタシアは諦めたようにゆっくりと視線を床に向けた。
父上、と呼ばれた男ダワレン・カサノアが口を開こうと空気を吸い込んだ。
会場にいる誰もがアナスタシアにとっていい結末にはならないだろう事を悟り固唾を飲み、当事者であるアザミでさえも注意深く関係者の動向を観察していた。
自分の願う結末になるように、と。
「ーー陛下、お待ちください。」
「…ロッシ、珍しいな。お前がこのような場で発言するとは。」
ダワレンはホールより幾分か高い座っている位置から訝しげな視線で男を見下ろした。
(そうだろうとも。私は本当につい今しがた思い出したのだ。唯のロッシ・リリーヴァではなくなった。)
「はい。少し、思うところがありまして。」
色素の薄い青い瞳がダワレンを見つめる。
暫し考え込む素振りをした後、ダワレンはロッシを側に呼んだ。
ホールには僅かな騒めきだけが残っているが、二人の会話をしっかりと聞き取れる者はいない。
「それで?」
口元で憶測されないように、ロッシはホールに背中を向ける。
「陛下はローズウェル公爵令嬢が本当にシダ嬢を虐めているとお考えですか?」
「どうだろうな。」
「…彼女を”影の監獄”に収監するのはお待ちいただきたい。あの様子では今の状態は万全ではないでしょう。精神的にも身体的にも回復した彼女が、第三皇子の言うように性悪女だという態度が出た時点で収監しましょう。」
「お前の言い方では、ローズウェル嬢はエルサードの言う所業をしていないように聞こえるな。」
「…御冗談を。私の勘ですよ。」
ちらり、とロッシはホールの中心に視線を向けた。
一人は会場中の冷たい視線を受けながら、もう一人はその光景を目前に見ながら脳裏に映像が流れた。
アナスタシア・ローズウェルはここカサノア王国の公爵家の一人娘だ。
そしてこれから、処刑される未来の待つ哀れな少女でもある。
(”前回”と同じ光景…きっと今回も死ぬ運命は変わらないわ。何故もう取り返しのつかないタイミングで思い出すのかしら。)
容姿端麗、勉学も優秀で周りからの覚えもめでたかったアナスタシアが入学してすぐの学園で人気を集めるのはすぐだった。
しかしそれが一変したのは学園に【天授の精】と呼ばれる存在が入学してから。
全くの別世界から来たのだと主張するアザミ・シダによりアナスタシアの周囲は次々と彼女に傾倒していき、事態に気付いた時にはアナスタシアは孤立してしまっていた。
アザミを虐めていると本人とその周りが責め立てる事で、中立を保っていた存在もいつしかアナスタシアを弾劾する立場へと足を踏み入れていた。
実際、前世でも今世でもアナスタシアがアザミに直接話しかけたのはアナスタシアの婚約者である第三皇子と恋人かのような距離感でアザミが接していた為、婚約者のいる男性には容易に近づかないようにと遠回しに咎めた数回だけである。
だがアザミに夢中な彼らは、直接でなくても裏から手を引いているだのと捲し立てあっという間に学内一番の性悪女となってしまったのだ。
(一度目の私はこのパーティーで彼と一緒に踊るのを夢見ていた。政略結婚として決められた相手だとしてもちゃんと好きだった、愛していた。…だからこそ前世では影の監獄に入れられた後「綺麗だね」と贈られる言葉を想像して私の頭の中で踊っていたんだったわ…)
「父上、沙汰を。」
婚約者”だった”エルサード・カサノア第三皇子の声でハッと現実に意識を戻す。
しかし彼の口から出てきた言葉も声音も前世と全く変わらなかった。
またあの寒い孤独な牢に閉じ込められるのだ、とアナスタシアは諦めたようにゆっくりと視線を床に向けた。
父上、と呼ばれた男ダワレン・カサノアが口を開こうと空気を吸い込んだ。
会場にいる誰もがアナスタシアにとっていい結末にはならないだろう事を悟り固唾を飲み、当事者であるアザミでさえも注意深く関係者の動向を観察していた。
自分の願う結末になるように、と。
「ーー陛下、お待ちください。」
「…ロッシ、珍しいな。お前がこのような場で発言するとは。」
ダワレンはホールより幾分か高い座っている位置から訝しげな視線で男を見下ろした。
(そうだろうとも。私は本当につい今しがた思い出したのだ。唯のロッシ・リリーヴァではなくなった。)
「はい。少し、思うところがありまして。」
色素の薄い青い瞳がダワレンを見つめる。
暫し考え込む素振りをした後、ダワレンはロッシを側に呼んだ。
ホールには僅かな騒めきだけが残っているが、二人の会話をしっかりと聞き取れる者はいない。
「それで?」
口元で憶測されないように、ロッシはホールに背中を向ける。
「陛下はローズウェル公爵令嬢が本当にシダ嬢を虐めているとお考えですか?」
「どうだろうな。」
「…彼女を”影の監獄”に収監するのはお待ちいただきたい。あの様子では今の状態は万全ではないでしょう。精神的にも身体的にも回復した彼女が、第三皇子の言うように性悪女だという態度が出た時点で収監しましょう。」
「お前の言い方では、ローズウェル嬢はエルサードの言う所業をしていないように聞こえるな。」
「…御冗談を。私の勘ですよ。」
ちらり、とロッシはホールの中心に視線を向けた。
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