異世界に行った理由

ミカン♬

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「ミオの世界に行ってみたい!」

 遂に言い出した。いつかフリック殿下は言うと思っていた。

「トレードですよ?どうやって行くんですか」
「うん、トレードだよ。ミオだって家族と会いたいでしょう?」

「家族とトレードですって?」
「うん、対価が合わないとトレード出来ないと思うんだ。生物には生物で」

「そんな危険な事できません!失敗したらどうするんですか」
「ミオなら大丈夫。僕は信じてるよ」

 私は目でリシャールに合図を送った(めろ!)

(言い出したら殿下は聞きませんからね・・・)

(それを止めるのが従者でしょう!)

 リシャールはヤレヤレとポーズして「殿下、陛下に許可を頂きましょう」と言ってくれた。

「ちぇ、反対されるに決まってる。黙って行きたいんだよ」
「お断りします!」
 私だって家族に会いたい。萌にも会いたい。でも失敗したらどうするの。宇宙かどこかに放り出されたりしたらどうするのよ。

「うぅうう・・・ユキ・・会いたいよ・・・」
「ほら、殿下が我儘を言うからミオが泣き出したじゃないですか!」
 リシャールの大きな手が背中に回される。

「だからトレードしたら会えるんだって!」
「もうこの件は終わりです。ミオはやりたくないそうです!」

 殿下は諦めてくれたが、私の中で〈家族とトレード〉というワードが消えなかった。会いたい気持ちが膨れたからかもしれない、無意識に実家の家族を思い浮かべていた。

 目を瞑るとスクリーンに映るように家族が見えた。ユキは受験勉強、母は料理をして、父と祖父母はテレビを見ている。そこに私だけがいない。

 殿下を地球に送りだしたら実家にジッとなどしていない。外に飛び出して家族に迷惑を掛けるに決まっている。
(私みたいに交通事故にでもあったらどうするのよ!)
 それからもフリック殿下は何度か私に「地球に行きたい」と強請ったが無視していた。


 リシャールとお昼にカップラーメンを食べていると、地球で最後に食べたのもカップラーメンだったのを思い出した。
(あの日は終業式が終わって、タケに振られたんだった)

 もうどうでもいいタケの顔を思い出すと同時にユキの顔が浮かんできた。
(ユキ?)
 その顔は何故か血を流して座り込んでいる。

「え?なんで?ユキが怪我してる?」
「ユキがどうしました?」

 目を瞑ると激しく口論しているタケとユキの姿が浮かんだ。ユキは花瓶で殴られて、割れた花瓶の欠片をタケが握ってユキに切りかかっていた。

「ユキが危ない!殺されちゃうよ!」
「ミオ、私をトレードして!」
「でも」
「早く!」

 二人に何かあったら、私も生きていけない。
「神様お願い!ユキとリシャールのトレードを成功させて!」
 叫んだ瞬間、床に血だらけのユキが現れた。

「ユキ!」
「お・・ねえ・・ちゃん」

 私は拙い魔法でユキの頭を治癒し出血を止めた。
「生きてる良かった・・・」

 タケが振り回した花瓶の欠片でユキの腕が切り傷だらけだった。
「あいつ、リシャールにボコボコにされろ!」

「お姉ちゃん?え?タケは?」
「何があったのよ?なんでタケがこんな事を?」
「ちょっと言い争いになったの、そしたらアイツに殴られて・・・」

「待っててね、医者を呼んでくるわ。綺麗に傷も癒えるから」
「このままでいい!タケを訴えてやるんだから!」
 ユキは出血の割には元気そうだ。

「お姉ちゃんに会えるなんて夢みたい!」
 ユキは私に抱き着いて「一緒に帰ろうよ!」と言った。

「トレードだから向こうで一人消えるのよ」
「タケを消せばいいじゃん!」
「そうもいかないよ。帰りたいけど、帰れない」

「リシャールさんがこっちにいるから?」
「そうだリシャール!」
 目を瞑って実家を思い浮かべると気絶したタケの傍で、腰を抜かした母にオロオロするリシャールがいた。

「早く戻さなきゃ。ユキ、何があったかお母さんに説明してね」
「ええええーーーやっと会えたのに」
 ユキは私を抱き締めてもう一度「一緒に帰ろうよ!」と泣いた。

「ごめんね、リシャールが好きなの」
「こっちでお姉ちゃん幸せなの?」
「うん、もう迷わない。こっちで幸せになる。お母さん達にもそう伝えてね」

「お姉ちゃん・・・」
「ユキ、元気でね・・・」
 最後に固く私達は抱き合った。



 リシャールをこちらに戻すと、私は彼を思いっきり抱き締めた。
「有難う、本当に有難う」
 リシャールは「ご褒美が欲しいです」と言って私にキスをした。

「危険なトレードだったのに」
「妻の大切な妹を救うのは夫として当然です。帰宅された母上を驚かせてしまいましたが」
「ああ・・・」
 剣を持った異国人が仁王立ち。畳に血痕、タケは気絶しているわで、母は寿命が縮まっただろう。

「ユキは大丈夫でしたか?」
「出血の割に元気だった。応急手当てしたから大丈夫」

「ミオ、今日の事はフリック殿下には内緒でお願いします」
「そうだね、二人だけの秘密だね」

 何がユキとタケに起こったのかは後で手紙で教えて貰った。


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