もう何も信じられない

ミカン♬

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5 とんでもない問題児

 翌日登校すると、昨日の門前広場で私がエドアルト様に無視されたのが話題になっていました。有名人の元恋人なのでいい噂の種になっており針のむしろです。

 友人や元生徒会の仲間が慰めの言葉を掛けに来てくれました。

「あんな浮気者は早く忘れて次の恋をすればいい」

 全員が口を揃えてそう言ってくれますが、なんだか余計に落ち込んでしまいます。誰もがもう私達は終わったと思っているのですね。まだ私は彼を完全に嫌いになれないのに。

 だってね、卒業したら結婚するつもりだったんですよ?

 そうは思っても、食堂でランチタイムを過ごす二人を見て、やっぱりこの恋は終わってたんだと再確認。

 彼は私を完全無視。チラチラとこっちを気にかけているのがソーニア様で、目が合うと不敵に微笑みます。

(いいじゃない、彼は好きなタイプじゃなかったんだから)
 いつも不機嫌で意地っ張り、『面倒くさい』が口癖の扱いにくい人だったわ。


 明日はナッシュさんとアニーが来る。お爺さんは子爵家の片付けが終わるまでもう少し先。

 一人っ子の私に兄と妹が出来るような気分。悪い事ばかりじゃない、仲良く過ごせたら毎日楽しくなるに違いないわ。


 ***


 翌日は週末で学園はお休み。私はウキウキとナッシュさんとアニーが来るのを待っていました。

 昼下がりにナッシュさんと車椅子に乗ったアニーを玄関に迎え入れるとキョロキョロとあたりを見回す様子が子猫のよう。私と同じ黒髪は軽いくせ毛で目は茶色、とても可憐な従妹です。


「ようこそアニー。今日からここが君の家だよ」

「叔父様・・・こじんまりした家ね。だから平民なんて嫌だって言ったのよ」

「ふむ・・・」


 なんてことを・・・

 うちの本宅に比べたら小さな家だけどここは王都でも一等地なのですよ?

「アニー! 失敬だよ」
 慌ててナッシュさんが諫めますが、アニーは止まりません。

「だって、叔父様が貴族に戻って私を養女にしてくれるってお父様が言ったのよ? どうして平民なの?」
「それは何度も説明したじゃないか!」


「ふむ、君を養女にするなんて話は無いよ」

 叔父はどうしてそんなデタラメを言ったのかしら?

「それなら私が爵位を継ぐわ。平民なんて嫌よ」

「君に仕事ができるとは思わないが」

「お父様も仕事なんかしていなかったわ。ナッシュがやればいいのよ」

「彼はもう我が家の使用人だ。采配は私の権限だ」

「はぁ? ナッシュは私の奴隷よ!」

 こ・・これは・・・とんでもない問題児がやって来たわ。


「さぁさぁ、まずは応接室に移動しましょう。美味しいお茶を用意するわ」
 お母さんに促され、全員応接室に移動。

 ナッシュさんがアニを抱えてソファーに座らせると父が話を再開。

「言っておくが奴隷制度は廃止された。我が家に奴隷など存在しない」

「あら犯罪奴隷はいるでしょう? ナッシュがそうなのよ。私がこんな体になったのはナッシュのせいだもの、一生私に償う奴隷なの」

「君は事故で足が不自由になったんだ。彼は悪くない」

「いいえ、嫌がる私を無理やり外に連れ出したの。犯罪者だわ」

「はぁ~~~話にならないな。父から我儘娘と聞いていたがここまでとは」

 お父さん、それなら先に説明して欲しかったわ。青い顔のナッシュさん、ずっと奴隷扱いされていたの? どこまでも気の毒な人。

「本宅を君の生活に合わせるよう改造中なんだ。出来次第そっちに行ってもらうよ。君の世話係を雇うから1年間はお爺さんと二人で暮らしておくれ」

 1年間というのは、私が卒業したら本宅に戻る予定だからです。


「ナッシュは一緒よね?」

「彼は私の元で仕事を覚えてもらう。ヤンという人物に本宅を任せるからアニーはヤンになんでも言ってくれ」

「ナッシュがいないなら行かないわ。こっちに残る。お爺様は嫌いよ」

「こじんまりした家より本宅が良いだろう。広くて子爵家より大きいぞ」

 子どものまま大きくなったようなアニー。来て早々父を怒らせるなんて・・・


 母が目配せするとメイドがお茶とケーキを用意して、アニーの前に差し出しました。

「美味しそう! 食べていいの?」

「ええどうぞ」

 ああ・・・・予想通りマナーもサッパリだわ。アニーはパクパクとケーキを頬張っています。ナッシュさんは俯いてお茶にすら手を付けないし。


「さて、うちの家族を紹介しようか・・・」

 今になってやっと私は「ウェンディです」と自己紹介したのでした。



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