もう何も信じられない

ミカン♬

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15 言ってやったわ!

 二人っきりで食事をして、私に薬を飲ませると母はアニーの様子を見てくると言ったのですが少し待ってもらいました。

「大事な話があるの。エドアルト様の事で『クライン伯爵家に抗議するのはやめて』って言いましたよね。なんで抗議したんですか」

「抗議? そんな大層なモノじゃないわ。手紙を伯爵夫人に出したのよ」

「夫人とは知り合いだったの?」

「フランツの仕事は経営のコンサルタントよ。クライン伯爵家のお店とも提携しているのよ」

「そうだったの。私は両親の仕事を何もわかってないのね」

「伯爵夫人は平民なの。だからウェンディが平民だから付き合いを反対するとは思えなくて、どういうつもりか手紙で尋ねたのよ」

「それで伯爵夫人からお返事はあったの?」

「・・・言いにくいんだけど、ディーと付き合ってたのをご両親は知らなかったそうよ」

「知らなかった?」
 それはエドアルト様が私に嘘をついていたという事。 

『君が平民なので両親に付き合いを反対された。でも卒業しても気持ちが変わらなければ君を紹介しても良いそうだ。大丈夫だよ、卒業したら結婚しよう』

 どうしてそんな嘘を?
「本当に、もう彼の全てが信じられないわ」

「ディー、彼とはもう終わったんでしょう?」
「そうなの、なのに抗議を受けたから私と結婚するって『抗議されなかったら結婚なんて考えなかった』って言ったの」

「何て事を!」

「だから、もしもクライン伯爵家から婚約の申し込みが来たらお断りして欲しいの。本当に来るかどうか、またエドアルト様の嘘かもしれないけど・・・」

「これは一度話し合う必要があるわね。どこまで私のディーを愚弄するのかしら。許せないわ!」

 母が部屋を出ると廊下から「フランツ! フランツーーーー!」と叫ぶ声が聞こえます。失恋した日も同じでした。あの時は悲しくて泣いたけどもう涙も出ません。彼の優しい言葉は全部嘘だったのです。

 ちょっとだけ胸が痛みますが掌の方が痛いです。薬が効いてくるまではもう少し。

 話し合う・・・エドアルト様をうちに呼んで話し合いをするつもりかしら。その前に自分で彼と決着をつければいいだけ。はっきり言ってやるわ「嘘つき、貴方のことはもう何も信じられない」って。

 ナッシュはどうしているんだろう。アニーはショックだっただろうな・・・

 薬が効いてきたみたい・・・

 エドアルト様・・・夢の中であの綺麗な顔をぶん殴ってやりたい・・・

 *


 翌朝目覚めれば、とっくに遅刻の時間でした。

「利き手を怪我したんだから治るまでは学園をお休みしなさいね」
 朝食と薬を持ってきた母にカミラはどうしているか聞くと「客室に居ますよ。ナッシュを訴えると騒いでるわ。もうすぐ自分が訴えられるのも知らないで」とのこと。


「アニーは大丈夫だった?」
「ナッシュを怖がって本宅に戻りたがっているの」
「無理もないわ。両親と一緒に彼を虐げてきたんだもの。自分も恨まれていると思うわよね」

「ええ、それからクライン伯爵令息の件ね、一度両家で話し合うことにしたわ。今朝連絡を出したからあちらの都合のいい日に話し合いましょう」

「自分で決着をつけようと思ってたのに」

「私が余計な事をしたせいよ。それに一度ちゃんと話し合う必要があるの。もう貴方達も大人ですものね」

「分かりました。正直、エドアルト様を一人で納得させる自信が無かったの。口では勝てなくて」

「相当拗れてるみたいね。これは・・・ええ・・・いい機会だわ」

 母の口調から、何か私の知らない秘密がありそうです。


「はぁーー 結局親を頼ってしまうのね。私はまだまだ子どもだわ」

「頼って欲しいわ。私は困った時は何でもフランツに相談するの。二人で考えた方がいい案が出るのよ」
 だからいつまでも仲良し夫婦なのね。

「伯爵夫妻はどんな方なのかしら」
「素敵なご夫婦よ。ご子息の育て方には問題があったみたいだけど」

 エドアルト様を交えての話し合いは不安だけど伯爵夫妻には会ってみたいと思いました。


 学園は三日休みましたがエドアルト様はお見舞いに来ませんでした。学園とは目と鼻の先なのに。

 四日目に学園に到着すると不機嫌そうな顔で「怪我したのか」と言ってきました。
「両家で話し合いだって? 婚約についてだよな」

「そうよ、きちんと話し合いましょう。嘘はもうバレてますから」
「どの嘘がバレたのかな」

「全部嘘でしょう? 貴方のことはもう何も信じられません!」

 言ってやったわ! 胸がドキドキします。エドアルト様はどうでるかしら。




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