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9 素行不良・再審査
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「え、不合格ですか?」
パーフェクトだと思い込んでいただけにショックが大きい。体が膝から崩れた。
「結果だけでは分からないな、何がいけなかったのか知りたいものだ」
「公爵家の妨害は考えられませんか? シアさんが落ちるなんて信じられないです」
「私を世間に出したくないとか?でも実力で落ちたのかもしれませんね」
「ふぅむ、伝手を当たって調べてみよう。筆記の結果は申請すれば教えてもらえるはずだ」
「シアさん、また来年も受ければ良いじゃないですか。試験は18歳まで受けられますよ」
「これ以上頑張れないです・・・もう、どうやって勉強すればいいのか、ショック!」
どんな慰めの言葉も私には浸透せず、ただただ虚しくて、後でちょっと泣けた。
***
「素行不良? なんですかそれ・・・」
私は試験結果はトップ合格だった。でもマイナスが増えて、落ちたのだという。
なんとヘレンが校長に手紙を出して直談判していたのだ。
ハサウェイ公爵家からの申し込み用紙が破棄された事も大きなマイナスらしい。
世話係の叔母のヘレンの主張も大きく響いて、由緒正しき魔法学校に、私は相応しくないと判断された。
「合格ラインは280点、バレンシアは277点で失格だそうだ」
「まさかの聞き取り調査、公爵家への忖度。面接で私の事は分かってもらえなかったのね」
「聞き取り調査なら後見人の師匠に聞きに来るべきだと思いますが」
「あちらは長年一緒に暮らしてきたからだろう」
いいよ、構わない、逃げ出したくて寮を選んだ。一人で生きて行ければどこでもいい。
ただヘレンに阻止されたのは悔しくてたまらない。
そんなに私・・・バレンシアが憎いのか!
よし!鏡の世界でヘレンの全財産奪って、それで生活する!
私の中に悪魔が宿った。悪意には悪意だ。100倍にして返す!
だけど後日、魔法学校から連絡があって私はオーハン先生と共に再び学校を訪れた。
校長室を訪れると校長先生、女性の副校長先生、偉そうな紳士、ヘレン、アーヴィング殿下、教師らしき3名が待っていた。
副校長に促されて部屋の真ん中に置かれた椅子に座ると副校長が口火を切った。
「受験者シアさんには不合格通知を届けましたが、アーヴィング第二王子殿下より再審査の要望を承りましたので、本日シアさんの再審査を行います。宜しいでしょうか殿下?」
「ああ、公平に判断するべきだ。調査ではヘレン・マーゴット夫人の主張ばかり取り上げられている」
アーヴィング第二王子殿下──私を助けてくれるの?なんていい人!
「私は事実を述べたまでです!バレンシアは男を追って家出した不良娘です。日常の生活の態度も悪く品位に欠けます!由緒正しき当校に相応しくございません。」
男を追う、なんだそれは?ミリアンのこと?水をかけられて恨んでるのか。
「その娘は書斎に忍び込み、入学申し込み用紙と公爵印を盗んだ。許しがたい行いだ」
偉そうな紳士は公爵、バレンシアの父親か。
「シアさんに尋ねます。なぜそのような事をしましたか?」
質問するのは副校長だ。
「はい、叔母の残酷な虐待に耐えかねて学園の寮に逃げ込みたかったのです」
「嘘です!こうやって嘘ばかり・・・私は一生懸命この子を矯正しようとしたのですが、残念ながら無理でした」
「オーハン卿はシアさんをどのような娘だと思われますか?」
「非常に頭の良い、魔力に優れた娘です。魔法学校に通わせるべきです。性格はしっかりとした優しい娘ですな。冬は冷えるからと私にセーターとベストを編んでくれました」
「シアは本当に公爵印を盗んだのか?ハサウェイ公爵。そもそもバレンシアは公爵の娘ではないのか」
「殿下、この娘は忌み子です。娘とは認めておりません」
「ならば養女に出せ」
「それも考えています。今は公爵家で大人しくしておけば安全なんだ、それを勝手な事をして!」
「私は自分で自分を守れますわ、お父様。どうぞ縁を切って下さい」
お父様と呼ばれたのに腹を立てたのか公爵は初めて私と目を合わせた。
「魔道具か、そんな物はまやかしだ」
「話を戻しましょう。今はシアさんの特待生試験の話し合いが優先ですわ」
「試験結果は申し分なかった。問題はマーゴット夫人の申し立てです」
年配の校長先生がそう言うと、全員がヘレンに顔を向けた。
パーフェクトだと思い込んでいただけにショックが大きい。体が膝から崩れた。
「結果だけでは分からないな、何がいけなかったのか知りたいものだ」
「公爵家の妨害は考えられませんか? シアさんが落ちるなんて信じられないです」
「私を世間に出したくないとか?でも実力で落ちたのかもしれませんね」
「ふぅむ、伝手を当たって調べてみよう。筆記の結果は申請すれば教えてもらえるはずだ」
「シアさん、また来年も受ければ良いじゃないですか。試験は18歳まで受けられますよ」
「これ以上頑張れないです・・・もう、どうやって勉強すればいいのか、ショック!」
どんな慰めの言葉も私には浸透せず、ただただ虚しくて、後でちょっと泣けた。
***
「素行不良? なんですかそれ・・・」
私は試験結果はトップ合格だった。でもマイナスが増えて、落ちたのだという。
なんとヘレンが校長に手紙を出して直談判していたのだ。
ハサウェイ公爵家からの申し込み用紙が破棄された事も大きなマイナスらしい。
世話係の叔母のヘレンの主張も大きく響いて、由緒正しき魔法学校に、私は相応しくないと判断された。
「合格ラインは280点、バレンシアは277点で失格だそうだ」
「まさかの聞き取り調査、公爵家への忖度。面接で私の事は分かってもらえなかったのね」
「聞き取り調査なら後見人の師匠に聞きに来るべきだと思いますが」
「あちらは長年一緒に暮らしてきたからだろう」
いいよ、構わない、逃げ出したくて寮を選んだ。一人で生きて行ければどこでもいい。
ただヘレンに阻止されたのは悔しくてたまらない。
そんなに私・・・バレンシアが憎いのか!
よし!鏡の世界でヘレンの全財産奪って、それで生活する!
私の中に悪魔が宿った。悪意には悪意だ。100倍にして返す!
だけど後日、魔法学校から連絡があって私はオーハン先生と共に再び学校を訪れた。
校長室を訪れると校長先生、女性の副校長先生、偉そうな紳士、ヘレン、アーヴィング殿下、教師らしき3名が待っていた。
副校長に促されて部屋の真ん中に置かれた椅子に座ると副校長が口火を切った。
「受験者シアさんには不合格通知を届けましたが、アーヴィング第二王子殿下より再審査の要望を承りましたので、本日シアさんの再審査を行います。宜しいでしょうか殿下?」
「ああ、公平に判断するべきだ。調査ではヘレン・マーゴット夫人の主張ばかり取り上げられている」
アーヴィング第二王子殿下──私を助けてくれるの?なんていい人!
「私は事実を述べたまでです!バレンシアは男を追って家出した不良娘です。日常の生活の態度も悪く品位に欠けます!由緒正しき当校に相応しくございません。」
男を追う、なんだそれは?ミリアンのこと?水をかけられて恨んでるのか。
「その娘は書斎に忍び込み、入学申し込み用紙と公爵印を盗んだ。許しがたい行いだ」
偉そうな紳士は公爵、バレンシアの父親か。
「シアさんに尋ねます。なぜそのような事をしましたか?」
質問するのは副校長だ。
「はい、叔母の残酷な虐待に耐えかねて学園の寮に逃げ込みたかったのです」
「嘘です!こうやって嘘ばかり・・・私は一生懸命この子を矯正しようとしたのですが、残念ながら無理でした」
「オーハン卿はシアさんをどのような娘だと思われますか?」
「非常に頭の良い、魔力に優れた娘です。魔法学校に通わせるべきです。性格はしっかりとした優しい娘ですな。冬は冷えるからと私にセーターとベストを編んでくれました」
「シアは本当に公爵印を盗んだのか?ハサウェイ公爵。そもそもバレンシアは公爵の娘ではないのか」
「殿下、この娘は忌み子です。娘とは認めておりません」
「ならば養女に出せ」
「それも考えています。今は公爵家で大人しくしておけば安全なんだ、それを勝手な事をして!」
「私は自分で自分を守れますわ、お父様。どうぞ縁を切って下さい」
お父様と呼ばれたのに腹を立てたのか公爵は初めて私と目を合わせた。
「魔道具か、そんな物はまやかしだ」
「話を戻しましょう。今はシアさんの特待生試験の話し合いが優先ですわ」
「試験結果は申し分なかった。問題はマーゴット夫人の申し立てです」
年配の校長先生がそう言うと、全員がヘレンに顔を向けた。
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