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一方ナイジェルはまだ体調が完全では無く休暇を取らされて寄宿舎で過ごしていた。
危険な任務で命を落しそうになったと聞いても実感がない。
目が覚めるとハンナが懇親的に治療してくれていた。
王宮騎士になってからセーラという女性に付き纏われているとハンナに聞かされた。
会ってみると平凡で、興味の持てない女の子だった。
髪飾りを投げつけられて、それをハンナが踏みつけた。
「ハンナのああいうところが嫌なんだよな。美人だけど性格がきつい。髪飾りはセーラに俺がプレゼントしたのか、なんでセーラに?」
学園を卒業して憧れの王宮騎士団に入り、母親は泣いて喜んでくれた。
記憶を失って、真っ先に思い出したのが母親だった。
ナイジェルの記憶は病床の母親が入団を心から喜んでくれた時に遡っていた。
しかし、愛する母親は王宮騎士団に入って2か月後に持病の悪化で亡くなったと知った。
「母さんが死んでいたなんて。俺はここでどんな生活をしてたんだろう」
記憶がないのは気持ちが悪く、確かめたくても同僚は大勢が亡くなり、生き残った仲間達も記憶を喪失している。
ナイジェルは記憶に触れるものがないかロッカーや机の引き出しを開けてみた、すると小箱が出てきて中にはエメラルドの宝石が付いた小さな指輪が収まっていた。
「なんだ、これ?」
過去、女の子達にプレゼントなどナイジェルはしたことは無かった。
「まさかハンナに?・・じゃないよな・・・小さな指だ」
指輪を小指に填めると浮かんだのはセーラの顔だった。
「いやいや、ないない」
指輪を引き出しに戻すとナイジェルは気持ちがクサクサして、髪をかき乱しジッとしていられなくなった。
街に出て大通りをブラブラしていると警備隊の、かつて同級生だったケインと遭遇した。
「ナイジェル!お前無事でよかったな。元気になったなら連絡しろよ!」
どこかケインはナイジェルに対して非難めいた顔を向けてくる。
「あ・・・俺・・記憶がスッポ抜けているんだ。何があったか分からない」
「セーラと結婚するんだろう? 王宮騎士辞める話はどうなったんだ?」
「はぁ?俺がセーラと結婚?あり得ない。それより、なんで王宮騎士を辞めるんだよ!やっと夢が叶ったのに」
「お前・・・本当に記憶が抜けてるんだな。セーラを忘れるなんて」
「セーラは全然タイプじゃないんだけど」
「なんだ、昔のナイジェルに戻ってしまったのか。セーラとは本気だったじゃないか」
「ケイン、俺について知ってる事があれば教えてくれないか、気持ち悪いんだ、頼むよ」
仕事中だからとケインは夜にナイジェルと酒場で会う約束をして別れた。
寄宿舎に戻るとハンナが会いに来たがナイジェルはすっかり気持ちが冷めていた。
「ハンナは俺にセーラのこと嘘をついてたよな。治療してくれたのは感謝するけど、俺は君とは付き合えない」
「なによ、また私を捨てるのね!あんたみたいな軽薄男、誰も愛してくれないわよ!」
──パシン!とナイジェルの顔を平手打ちしてハンナは帰っていった。
(あ、なんかデジャブだ・・・・)
その夜ナイジェルは酒場でケインと合流し、仕事についてケインに相談していた事や、セーラと結婚する気だった事などを聞かされた。
「そうだったのか、それを聞いても何も思い出せないし薄情な俺は何も感じない」
「記憶喪失か。ナイジェルはセーラと本気で結婚を考えて同棲状態だったぞ?」
「信じられない。可愛いとは思うど、絶対俺の好きなタイプじゃない」
「仕方ないな。ナイジェルも被害者だ。誰もお前を責められないと思うよ。でもセーラとは話し合ったほうがいいぞ」
ケインはそう言い残して酒場から去り、残ったナイジェルは浴びるほど酒を飲んで吐き散らし、吐瀉物の上に倒れた。
危険な任務で命を落しそうになったと聞いても実感がない。
目が覚めるとハンナが懇親的に治療してくれていた。
王宮騎士になってからセーラという女性に付き纏われているとハンナに聞かされた。
会ってみると平凡で、興味の持てない女の子だった。
髪飾りを投げつけられて、それをハンナが踏みつけた。
「ハンナのああいうところが嫌なんだよな。美人だけど性格がきつい。髪飾りはセーラに俺がプレゼントしたのか、なんでセーラに?」
学園を卒業して憧れの王宮騎士団に入り、母親は泣いて喜んでくれた。
記憶を失って、真っ先に思い出したのが母親だった。
ナイジェルの記憶は病床の母親が入団を心から喜んでくれた時に遡っていた。
しかし、愛する母親は王宮騎士団に入って2か月後に持病の悪化で亡くなったと知った。
「母さんが死んでいたなんて。俺はここでどんな生活をしてたんだろう」
記憶がないのは気持ちが悪く、確かめたくても同僚は大勢が亡くなり、生き残った仲間達も記憶を喪失している。
ナイジェルは記憶に触れるものがないかロッカーや机の引き出しを開けてみた、すると小箱が出てきて中にはエメラルドの宝石が付いた小さな指輪が収まっていた。
「なんだ、これ?」
過去、女の子達にプレゼントなどナイジェルはしたことは無かった。
「まさかハンナに?・・じゃないよな・・・小さな指だ」
指輪を小指に填めると浮かんだのはセーラの顔だった。
「いやいや、ないない」
指輪を引き出しに戻すとナイジェルは気持ちがクサクサして、髪をかき乱しジッとしていられなくなった。
街に出て大通りをブラブラしていると警備隊の、かつて同級生だったケインと遭遇した。
「ナイジェル!お前無事でよかったな。元気になったなら連絡しろよ!」
どこかケインはナイジェルに対して非難めいた顔を向けてくる。
「あ・・・俺・・記憶がスッポ抜けているんだ。何があったか分からない」
「セーラと結婚するんだろう? 王宮騎士辞める話はどうなったんだ?」
「はぁ?俺がセーラと結婚?あり得ない。それより、なんで王宮騎士を辞めるんだよ!やっと夢が叶ったのに」
「お前・・・本当に記憶が抜けてるんだな。セーラを忘れるなんて」
「セーラは全然タイプじゃないんだけど」
「なんだ、昔のナイジェルに戻ってしまったのか。セーラとは本気だったじゃないか」
「ケイン、俺について知ってる事があれば教えてくれないか、気持ち悪いんだ、頼むよ」
仕事中だからとケインは夜にナイジェルと酒場で会う約束をして別れた。
寄宿舎に戻るとハンナが会いに来たがナイジェルはすっかり気持ちが冷めていた。
「ハンナは俺にセーラのこと嘘をついてたよな。治療してくれたのは感謝するけど、俺は君とは付き合えない」
「なによ、また私を捨てるのね!あんたみたいな軽薄男、誰も愛してくれないわよ!」
──パシン!とナイジェルの顔を平手打ちしてハンナは帰っていった。
(あ、なんかデジャブだ・・・・)
その夜ナイジェルは酒場でケインと合流し、仕事についてケインに相談していた事や、セーラと結婚する気だった事などを聞かされた。
「そうだったのか、それを聞いても何も思い出せないし薄情な俺は何も感じない」
「記憶喪失か。ナイジェルはセーラと本気で結婚を考えて同棲状態だったぞ?」
「信じられない。可愛いとは思うど、絶対俺の好きなタイプじゃない」
「仕方ないな。ナイジェルも被害者だ。誰もお前を責められないと思うよ。でもセーラとは話し合ったほうがいいぞ」
ケインはそう言い残して酒場から去り、残ったナイジェルは浴びるほど酒を飲んで吐き散らし、吐瀉物の上に倒れた。
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