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序章 転生から眷族創生

第16話 芽生えた感情

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いつの時代も現実世界と違和感の有る物体が存在していた。
昔の城跡。もしくは太古の遺跡とも言う。古代の遺物。
旧世界の・・・失われた・・・などなど。

それらは一概に古くからある朽ちかけた建物だった。
石積みや石柱だと思われる半壊した物も多い。

だが、それらの遺跡には幾つかの共通点が有った。
翼の形をした物。牙や爪の印が刻印された物。
大きく全身が刻印された"それ"と解る物。

また、密かに”それ”をうやまう集団も存在していた。
そうした集団は秘匿性を重要視し、崇拝の対象物が他者に知れ渡る事を隠し、遺物を隠し、大いなる力を自分達の欲望の為に秘密主義の集団へと変わって行った。

どの者達も・・・いつの時代も、皆同じだった。

小さな人族の命ははかもろい。全てが一瞬の出来事だ。
そうして巨大な翼で空を飛ぶ絶対なる存在は忘れ去られて行った。
いつの時代も。同じ様に。どの時代も。どの種族も同じ様に・・・

※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero

地上では許可を得て七天龍の使徒フォルティス・プリムと第1ビダである出産の近いヒラソルが生活している。母娘で産まれて来る子が待ち遠しいようだ。

それとは別で龍人のラソンは兄であるフィドキアにベッタリだ。何処へ行くにも兄の後を付いて行く。フィドキアはロサテネブリスからの言い付けで、知的生命体の調査と監視を行なっている。遠くから眺めている事が多いが、種族による行動や風習などを調べ文明の進歩が有れば報告する事が目的だ。

そんな感じでラソンは見習いながらフィドキアの背中に特別な思いを寄せるようになって行く。

また、ロサとナルキッスは二体で姿を消している。
理由はオルキスの嫉妬による所だろう。
オルキスには何度も話し合い愛情を持って説得するが、神の指示を盾に堂々と浮気をしようと思うロサと、理由はどうあり浮気は浮気だと攻め立てるオルキスだった。

そしてオルキスよりも早い段階でナルキッスの懐妊が判明した。
その事を知ったオルキスは烈火の如く激昂しロサにあたった。

「何でぇ、どうしてナルキッスと子供を作るのよぉぉ」
「・・・解っているはずだぞ」
「・・・」
「我らが神々の指示だ。大神も望まれている・・・」
「でも・・・」
「必ずお前の元に戻って来ると約束しよう」
「嘘よ、いつもそう言って”他の子としてる”じゃない」
「それは・・・」

いつもの二体のやり取りだ。
激情するオルキスをなだめるロサ。その嫉妬の炎を鎮静化させるまでは、しばらくは束縛される事になるロサだが、一番愛しているのも事実なのでナルキッスに被害が及ばない様に身を挺してオルキスを慰めるのだった。

愛と言う名の感情もテネブリスからロサに教えられた事だ。
そして嫉妬も同様に教えてもらった。

「もしも、オルキスがあなた以外の者と子を作る行為をしたらどう思うの?」
眼を瞑り想像するロサ。
オルキスが他の種族と”まぐわう”光景を思い浮かべる。
すると顔が赤くなり激昂するも平然として答えた。
「そのような者がいれば八つ裂きにします」
「あなたの胸に込み上げた思いをオルキスが持っているのよ」
「あのような激情を、ですか?」
「ええ、それを嫉妬と言うわ」
困った表情のロサだ。

「でも、その感情を消す方法があるの」
「流石は我が神。それは一体・・・」
「オルキスを愛してあげる事よ」
「ハッ、それでは定期的に愛情を渡す様に致します」
どうも、男女の差なのか伝えたかった感覚が違う気がするテネブリスだ。

※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero

ナルキッスの妊娠は直ぐに七天龍の使徒フォルティス・プリムに連絡が入り、一時的に地上へ戻る事となった。

時を同じくして、ヒラソルの出産となる。
七天龍の龍人は可愛い女の子だった。赤髪赤目で名をインスティントと七天龍セプティモ・カエロから名付けられた。

第1ビダのヒラソルと産まれたばかりの龍人インスティントは、使徒のリベルタ・プリムと懐妊した第1ビダのナルキッスと共同生活を始めた。眷族は違えども姉妹の様に生活していたのでお互いに助け合う為だ。

ロサはとにかく頑張った。全ての第一ビダに配慮しながら(特にオルキス)公平に愛情を振り撒くのだ。もう一体のプリムラが成龍となり、単独創生を試して不可能であれば、プリムラとも献身的に身を持って眷族を作る事になるからだ。

そうなると、オルキスの事が厄介になる。
(あの美しいオルキスがどうしてあんなに怒るのか理解出来ん)
何故ならば、ヒラソルとナルキッスは共同生活している。ロサの目には仲良くしている風景が思い出されるのだ。
(どうしてオルキスだけが異常に固執するのか・・・ふうぅぅむ)

※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero

ある日、テネブリスが地上に降り立ちロサを呼んだ。

「ロサ、あなたに次の創生をしてもらうわ」
交配では無く創生だと言ったテネブリスだ。

「これは第1ビダのセミリャ(種子)として植物の祖となる者を創生して欲しいの」
「我が神よ。それは我らと同じく龍族でしょうか?」
「龍である必要は無いわ。今の人型でも構わない。重要なのは全ての植物を創生出来る能力よ」
「全ての植物と言われても、余り植物の知識が無いもので・・・」
「では地上の隅々を見て回れば良いでしょう」
「承知しました」
「それではプリムラを連れて行きなさい」
「プリムラをですか?」
「これは調査よ。あの子にも色んな”経験”が必要でしょ?」
「はぁ、ですが・・・」
「大丈夫。”向こう”にはアルブマからお願いしておくから」
「あ、ありがとうございます」

ロサが何を懸念しているのが知っているテネブリスが、不安を払しょくさせるように先手を打つと教えてくれた。

最近と言ってもかなり前だが、成龍となったプリムラも変身魔法を覚えて回りの手伝いをしている。プリムラが成龍になった時点で、翠嶺龍の使徒のオラティオ・プリムが第2ビダの創生を始めた。
予定ではプリムラの龍人よりも後に羽化となるだろう。
そしてテネブリスの意図は、末弟である翠嶺龍スペロからお願いされたプリムラの事だ。

「姉さん、プリムラには創生失敗と言う悲しい思いをさせたくないのです」
「だからロサに種付けさせた方が良いと言うの?」
「はい」
「でも、創生して見ないと解らないでしょ?」
「確かにその通りです。しかし、姉さん。私はオルキスにヒラソルとナルキッスの悲しい表情を見ていました。どうしても我が眷族にそのような辛い思いをさせたくない」

本当はテネブリスも知っている。それは第一ビダの悲しみもさることながら、男型男型女型と七海龍セプテム・オケアノスと同じ眷族の性別なのだ。これは本当の性別では無く思考性だ。何故なら始祖龍から三代先の使徒までは性別が無いのだから。
これはテネブリスが変身の魔法を教えた時に、どちらかを決めさせたものだ。

そしてセプテムが失敗の衝撃で自分に落ち度が無かったのか、凄く気にしていると聞いていたスペロだ。勿論アルブマとセプティモも同様に落ち込んでいたが、テネブリスが優しく話し相手になってくれたと言う。

そんな訳でロサとプリムラが植物調査と言う大義名分をもらい、大手を振って堂々と”浮気旅行”に出掛ける事となる。








Epílogo
成長日記
暗黒龍の使徒の第1ビダのセミリャ(種子)・・・予定
セミリャは単独創生の為に一体のみ(後に子孫が派生して被子が分派となる)

翠嶺龍・・・スペロ・テラ・ビルトス(男型)・・・・体長65kmの成龍。人化の時2m
翠嶺龍の使徒であるオラティオ・プリム(男型)・・・体長2km、成龍。人化の時2m
翠嶺龍の使徒の第1ビダであるプリムラ(女型)・・・体長2.2km、成龍。人化の時1.65m
翠嶺龍の使徒の第2ビダ・・・・・・・・・・・・羽化予定
翠嶺龍の龍人・・・・・・・・・・・・・・・・・まだ先

龍の使徒とはそれぞれの龍が力を与え創造した生命体(性別無)
使徒の第1ビダとは、使徒が創造した最初の生命「Primero Vida」の意(性別有、人化になり交配も可)
第1ビダが創造した龍人とは、龍、使徒、第1ビダの使命を実行し他種族との交配する者(性別有、交配のみ)
注・尺度は目安です

龍達がこの先どうなるの?
と関心を持って頂けたらブクマお願いします。
毎回大安日の更新を予定しています。
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