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「はぁ……はぁ。はぁ……」
シルバーウルフが五匹。囲まれてしまった。ここまでか……と状況判断するけど、まだ諦めたくなかった。
でも、魔力がもう僅かしか残っていない。こんな雑魚に負けるのかと思うと高いプライドが折れたような気がした。プライドが高くてもあまり良い事はないけれど。
ルトヴィア・クート。十九歳にして破魔の魔術師として世界に知られている。それが俺。
聖魔術は使い手が少なく、極めるのが難しい。十六歳にして最終奥義を使いこなすことが出来た俺は、一気に世界にその名を知らしめたのだ。
王立魔術学院を卒業した去年から、気の向くままに旅をしている。この一年でまずは祖国を巡り、次の国へ赴こうとしていた時だった。
突発的魔獣の大量発生。その大群がのどかな平原を渡っていた。
このままでは近くの街が襲われてしまう。けど魔獣を葬る魔術は得意中の得意だし、魔力も潤沢にあるし、足りるはず。
結果、魔獣の大群は無事倒す事が出来た。魔力は底をついたけれど。
問題はその後だった。近くの森からシルバーウルフが飛び出して来たのだった。
どうせならもっと早くに出てきてくれたら。一斉殲滅出来たのに。
嘆いても仕方ない。こんなところで終わるのは不本意だが、それも運命だろう。
体力も残っていないし、街までは遠い。逃げてもすぐに追いつかれるので、仕方なしに、最後の抵抗で僅かに残った魔力で結界を張った。我慢比べといこうじゃないか。
自分の魔力の多さに胡座をかかず、マジックポーションを用意しておくんだったな。
後悔先に立たず。
もし生き延びることが叶ったなら、抜かりなくこの経験をいかそう。
無詠唱で背丈よりも長い白い杖から結界を繰り出すと、俺はその場に座り込んだ。
シルバーウルフはぐるる……と唸り、俺に飛び付こうとして、結界に阻まれる。
残念だったな。あとはこの結界がいつまで持つかだ。
その時だった。肉を切る音が聞こえ、シルバーウルフが悲鳴をあげたのは。
「え?」
「大丈夫か? 今倒すから待っててくれ」
一つに纏めた長い白金の髪に、金色の瞳。端正な顔はきりりと引き締まった表情で、均整の取れた無駄のない筋肉がしっかりついた身体はしなやかさを伝えている。
二十代前半くらいの剣士風な美しい男だった。
長い剣を鮮やかに操り、シルバーウルフを切り捨てていく。
太刀筋に迷いはなく、シルバーウルフの素早い攻撃も難無く躱している。
シルバーウルフは冒険者ギルドのランクで言えばCランクの魔物で、そこまで強い魔物ではないけれど、それでもこの人が強いことは見て取れる。
「助かりました。有難う御座います。危ないところだった……」
「いや、間に合って良かった。君は魔術師だよな?」
「はい。情けなくも魔力切れをおこしている聖魔術師です」
五匹いたシルバーウルフもあっという間に倒されて、差し出された手を掴んで立ち上がる。
「歩けるか?」
「何とか。あの、見間違えでなければ、上空から駆け付けてくれたようでしたが……」
「ああ。竜人なんだ。上空から大量の魔獣が出現してる様子が見えて、慌てていたら、大規模な聖魔術が発動しているのが見えて、狩残しがいないか念のために寄ってみたら君が襲われていた。あれだけ凄い術を行使したら魔力切れになって当然だ」
俺の容姿は肩までの柔らかい銀髪に薄い碧眼。背はあまり高くなく、顔立ちは可愛らしいと言われる。
白いローブを着ていて、緑の大きな魔石がついた白い杖を持っている。
白を纏うのは幼い頃、聖魔術が使えるとわかった時からで、聖魔術と白は相性が良く、纏っていると魔術の威力が増したりもする……らしい。そのせいかはわからないけど、今では白じゃないと落ち着かなかったりする。でもズボンの色は白じゃないけれど。
「街に到達する前に殲滅出来て良かったです」
「しかし聖魔術は凄いな。死体さえ残さない」
「魔の物だけですけどね」
聖魔術は魔獣や魔族によく効く。死体さえ消し去ってしまうほどだ。
だから俺も破魔の魔術師と呼ばれているのだ。
「俺だったら炎のブレスでこの平原を焼け野原にしていたかもしれない」
「竜になれるなんて凄いです。俺は人間だから……」
「凄腕の魔術師じゃないか。誇っていいと思う」
「まあ、それほどでも?」
素直に受け取ると何がツボったのか、クスクスと笑われる。
「いい性格をしているな」
「よく言われます」
「俺はアレクシス」
「ルトヴィアです」
「よろしくな」
「こちらこそ」
そう言って俺たちは握手をした。
シルバーウルフが五匹。囲まれてしまった。ここまでか……と状況判断するけど、まだ諦めたくなかった。
でも、魔力がもう僅かしか残っていない。こんな雑魚に負けるのかと思うと高いプライドが折れたような気がした。プライドが高くてもあまり良い事はないけれど。
ルトヴィア・クート。十九歳にして破魔の魔術師として世界に知られている。それが俺。
聖魔術は使い手が少なく、極めるのが難しい。十六歳にして最終奥義を使いこなすことが出来た俺は、一気に世界にその名を知らしめたのだ。
王立魔術学院を卒業した去年から、気の向くままに旅をしている。この一年でまずは祖国を巡り、次の国へ赴こうとしていた時だった。
突発的魔獣の大量発生。その大群がのどかな平原を渡っていた。
このままでは近くの街が襲われてしまう。けど魔獣を葬る魔術は得意中の得意だし、魔力も潤沢にあるし、足りるはず。
結果、魔獣の大群は無事倒す事が出来た。魔力は底をついたけれど。
問題はその後だった。近くの森からシルバーウルフが飛び出して来たのだった。
どうせならもっと早くに出てきてくれたら。一斉殲滅出来たのに。
嘆いても仕方ない。こんなところで終わるのは不本意だが、それも運命だろう。
体力も残っていないし、街までは遠い。逃げてもすぐに追いつかれるので、仕方なしに、最後の抵抗で僅かに残った魔力で結界を張った。我慢比べといこうじゃないか。
自分の魔力の多さに胡座をかかず、マジックポーションを用意しておくんだったな。
後悔先に立たず。
もし生き延びることが叶ったなら、抜かりなくこの経験をいかそう。
無詠唱で背丈よりも長い白い杖から結界を繰り出すと、俺はその場に座り込んだ。
シルバーウルフはぐるる……と唸り、俺に飛び付こうとして、結界に阻まれる。
残念だったな。あとはこの結界がいつまで持つかだ。
その時だった。肉を切る音が聞こえ、シルバーウルフが悲鳴をあげたのは。
「え?」
「大丈夫か? 今倒すから待っててくれ」
一つに纏めた長い白金の髪に、金色の瞳。端正な顔はきりりと引き締まった表情で、均整の取れた無駄のない筋肉がしっかりついた身体はしなやかさを伝えている。
二十代前半くらいの剣士風な美しい男だった。
長い剣を鮮やかに操り、シルバーウルフを切り捨てていく。
太刀筋に迷いはなく、シルバーウルフの素早い攻撃も難無く躱している。
シルバーウルフは冒険者ギルドのランクで言えばCランクの魔物で、そこまで強い魔物ではないけれど、それでもこの人が強いことは見て取れる。
「助かりました。有難う御座います。危ないところだった……」
「いや、間に合って良かった。君は魔術師だよな?」
「はい。情けなくも魔力切れをおこしている聖魔術師です」
五匹いたシルバーウルフもあっという間に倒されて、差し出された手を掴んで立ち上がる。
「歩けるか?」
「何とか。あの、見間違えでなければ、上空から駆け付けてくれたようでしたが……」
「ああ。竜人なんだ。上空から大量の魔獣が出現してる様子が見えて、慌てていたら、大規模な聖魔術が発動しているのが見えて、狩残しがいないか念のために寄ってみたら君が襲われていた。あれだけ凄い術を行使したら魔力切れになって当然だ」
俺の容姿は肩までの柔らかい銀髪に薄い碧眼。背はあまり高くなく、顔立ちは可愛らしいと言われる。
白いローブを着ていて、緑の大きな魔石がついた白い杖を持っている。
白を纏うのは幼い頃、聖魔術が使えるとわかった時からで、聖魔術と白は相性が良く、纏っていると魔術の威力が増したりもする……らしい。そのせいかはわからないけど、今では白じゃないと落ち着かなかったりする。でもズボンの色は白じゃないけれど。
「街に到達する前に殲滅出来て良かったです」
「しかし聖魔術は凄いな。死体さえ残さない」
「魔の物だけですけどね」
聖魔術は魔獣や魔族によく効く。死体さえ消し去ってしまうほどだ。
だから俺も破魔の魔術師と呼ばれているのだ。
「俺だったら炎のブレスでこの平原を焼け野原にしていたかもしれない」
「竜になれるなんて凄いです。俺は人間だから……」
「凄腕の魔術師じゃないか。誇っていいと思う」
「まあ、それほどでも?」
素直に受け取ると何がツボったのか、クスクスと笑われる。
「いい性格をしているな」
「よく言われます」
「俺はアレクシス」
「ルトヴィアです」
「よろしくな」
「こちらこそ」
そう言って俺たちは握手をした。
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