異世界に迷い込んだら神子様と呼ばれてるけど、僕にはもったいないような気がする

hina

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手を繋ぎながら、城の庭を散策する。
池のほとりをゆっくり歩いて他愛ない会話を交わして、明るい午後の日差しを受ける。
三十分はあっという間で、まだ回れていないところの方が多かった。
池も半周も出来ていない。

「では、今日はこの辺で」
紫陽さんが僕の手を引いて振り返った。

「すごくゆったり出来ました! 是非またご一緒して下さい!」
二人で来た道を戻りながら、会話を続ける。

「はい、是非。ああ、今日の晩餐は大丈夫そうですか?」
「あ、忘れてました……。緊張する……」
「父も母達も穏やかな人達なので、心配いりませんよ」
「そうなのでしょうか……」
「私も日々喜もいますので、困ったことがあれば話を振って下さい」
「あ、そうですね! 頼りにしてます」

我ながら簡単だけど、ふっと笑う紫陽さんに安心した僕は深く考えることをやめた。
なるようにしかならないよね。

でもやっぱりちょっと怖いかも……と思って、紫陽さんの手をぎゅっと握った。

「っ……」
「紫陽さん?」
「あ、いえ。なんでもありません」
「そうですか?」

一瞬立ち止まって焦ったように見えた紫陽さんだけど、それも本当に一瞬で、もう一度見た時には普段と変わらない様子で微笑んでいた。

「遊殿」
「はい」
「次に散策する時も手を繋ぎましょうね」
「え!? え、それは……」
急な申し出に戸惑っていると、紫陽さんは「可愛い」と言って僕を抱き寄せた。

「ええ!?」
何が起こっているのか分からなくて僕は狼狽えたけど、すぐに離されたのでほっと胸を撫で下ろした。

僕、揶揄われてるのかな……?





あっという間に夜になり、僕はやっぱりガチガチに緊張していた。
豪華な料理が目の前に並ぶけど、味を楽しむどころじゃなくて、話しかけられたことにどう答えればいいんだろうとか、これから何を話しかけられるんだろうとか、箸の使い方とか見られてるかな? とか、とにかく気が気じゃなかった。

国王陛下はイケオジな男性で、正妃である紫陽さんのお母さんが綺麗な男性で、側妃である日々喜さんのお母さんが可愛らしい雰囲気の女性だった。

僕の前に国王陛下が座って、国王陛下の左側に紫陽さんのお母さん、その前に紫陽さん、国王陛下の右側に日々喜さんのお母さん、その前に日々喜さんが座っている。
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