異世界に迷い込んだら神子様と呼ばれてるけど、僕にはもったいないような気がする

hina

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輝翠から助け出された夜に近くの街で一泊して、翌日馬で駆け、その日の夜に城へと帰ってきた。

日々喜さんが凄い勢いで僕の名前を呼びながら会いにきてくれて、僕はきょとんとしてしまった。

「ああ、遊様。ご無事で良かったぁ……」

日々喜さんに抱きつかれ、紫陽が「日々喜!」と鋭い声をあげている。

「く、苦しい……です」
「す、すみません。感情が高ぶって……」
「日々喜、それ以上遊に触れるな」
「構いませんよね? 遊様」
「いえ、あの……これ以上は紫陽が嫌がるので控えてもらえると、嬉しいです……」
「そんな……」

日々喜さんは落ち込んでしまって項垂れている。

「座りましょう!?」
と僕は促したけど、紫陽は首を横に振った。

「夜も遅いからもう明日にしてくれ、日々喜」
「兄上はあれこれやかましいですね! また明日、遊様に! 会いにきます! それではお休みなさい!」
「あっ、お休みなさい、日々喜さん」
「はい」

紫陽の言葉に荒ぶっていた日々喜さんは、僕に笑顔を向けたあと紫陽の部屋を出て行った。

「遊、一緒に湯浴みをしようか?」
「え!? 一人で入りますっ!」
「そうか、入りたかったな」
「そ、そのうち入ろう……」
「楽しみにしてる」

弾んだ声なのに、射竦めるような瞳の紫陽にドキドキしながら僕は浴室に逃げた。




輝翠の瑞鵬一族は優秀な神術師を輩出する一族として知られているらしい。

それを聞いて僕は輝翠に神術を教わることを思いついた。
輝翠は今、城の牢に入れられている。
僕は牢の前まで来て、輝翠に話しかけた。

「輝翠、考えてくれましたか?」
「私でよろしいのですか? 術力も封じられているので、お手本をお見せすることもかないませんが……」
「構いません。お手本がなくても神術を使うことが出来るようになるのなら」
「ならば、お受けいたします」
「ありがとう」

そうして僕は週に二回、牢に通うことになった。

紫陽はあんまりいい顔をしてなかったんだけど……。
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