後宮の中で目立たず生きてます

hina

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「ゼファー様、今頃どうしてるだろう……」
「ご無事ですよ、きっと」
「リオンさん……」

夜。
夕食と湯浴みを済ませ、ソファで少しゆっくりした時間を過ごす。
いつもなら、この時間にはゼファー様が戻ってきていて、二人の時間だったのに……と思うと寂しくてたまらない。

「失礼いたします」
「ん? ハルム?」

さっき下がったはずでは。
ティーポットが置かれたワゴンを押して入ってきたのは、知らない侍従だった。
ハルムがいない時は、ゼファー様の侍従だった年配の侍従の人がついてくれるのだが、もちろんその人でもない。

一気に緊張感が漂う。

「妃殿下、覚悟!」

ワゴンを離したと思ったら、ナイフを構えてその侍従が襲いかかってきた。

「おっと」
僕は軽く身を躱す。
リオンさんは剣を抜いてその侍従の首に刃を押し当てていた。

「知らないのかもしれないけど、僕、武に優れた辺境伯家の人間だからね」
床に倒れた侍従から距離を取ってから、その侍従を覗き込んだ。

「誰か!」
リオンさんが扉の外の騎士を呼び、その侍従は拘束されて連れて行かれた。

「僕を狙うなら意識のない時にしないとね」
「ラーナ様……。これからもご油断はなさいませんように」
「うん」

困ったように笑ったリオンさんに頷いて、僕はお腹を撫でた。

なんともなくて良かった……。





「圧倒的ですね」
「まあ、こんなものだろう。投降すれば罪には問わないと広めたしな」
兵の数の差もあり、訓練された我が軍と寄せ集めのダカート軍では戦うまでもなく、結果は明らかだったものを、ダカート軍を率いるダカート妃は無駄な抵抗を続けていた。

「ダカートの兵が可哀想ですね」
「ああ。早く将を見限ってくれるといいんだが」

戦場の後方、小高い丘の上で一緒に戦況を見守っていた指揮官と話していると、手首を後ろ手に縛られた一人の男を連れ軍官が私の前に進み出てきた。

「陛下。敵将を捕らえました!」
「良くやった」
「あ、あ……陛下! お会いしたかった!」
「良く言うな、ダカート妃。こんな反乱まで起こしておきながら」
久しぶりに見たダカート妃は、窶れ、焦点の合わない瞳をぎょろぎょろと動かしていて、気味が悪い。

「陛下が悪いのです。私に冷たい態度を取られて……。だから私は、私のものにならないなら、貴方を殺して私も自決しようと……」
「なら、私だけを襲えば良かっただろう! 民を巻き込むな!」
「出来ればそうしていました……! でも今頃、陛下のご寵姫は私の放った刺客に襲われて……」
「なんだと……?」
「ふふふ。あいつだけ幸せになるなんて許せない……」
「お前……! ラーナに毒を盛ったのもお前だな!?」
「だとしたらなんだと言うのです? あいつは目障りだった! それもこれも私を大事にしない陛下が悪いのですよ……」
「くそっ……! 連れていけ。決して逃すなよ」
「はっ」

軍官に命令し、指揮官に向き直った。

「帰ろう。ラーナが心配だ」
「は、お心のままに」
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