2 / 23
2
しおりを挟む
グレンもこの人も凄いイケメンだ。グレンは白いローブを、この人は濃紺のマントを羽織っていて、異世界感が凄い。
「ああ、起きたんだね。初めまして、俺はイーサン。白狼獣人の魔法剣士で二十三歳の冒険者だ。君は?」
「俺は昴です。学生で十八歳の人間です」
イーサンの水色の瞳を見ながら、グレンの時と同じように答えた。
グレンは蒼色の瞳をしている。
イーサンは腰まである長くサラサラな髪を後ろで一つに纏めていて、グレンはごく緩いパーマがかかっているような癖のある髪を耳朶のあたりで切り揃えている。
イーサンは凄く背が高くて、百九十を超えてそうだ。
グレンも座ってはいるけど、身長が高そう。
異世界基準はどうなってるんだと思いつつ、イーサンから差し出された手を握った。
「答えたくなかったらいいんだけど、君はどこからきたんだ? あぁ、グレンが聞いていたらすまない」
「遠いところから、とだけ……」
竜には思わず地球のことを話してしまったけど、異世界から来ました! なんて怪しすぎるもんな……。
異世界人がどういう扱いをされてるかも分からないし……。
「でも、その見た目は街では目立つから、少し僕に弄らせてくれないかな」
「え! 俺、街に行きたいんですけど、道を知らないんです……もしご迷惑でなければ、街まで着いて行ってもいいですか?」
「それは構わないよ。というか、何か訳ありっぽいし、スバルさえ良ければ、僕達と一緒に来ない? 僕もイーサンもSランク冒険者だから、スバルのこと守ってあげられるよ」
「え、でも……そんな、悪いですし……」
「そうだな……。スバル。一緒に来てくれ。スバル一人では心配だ」
イーサンがグレンに同調する。俺はそれ以上断ることも出来なくて、二人について行くことにした。
「じゃ、じゃあ……同行させて下さい」
「うん。よろしく」
「よろしくお願いします」
「さ、じゃあ、まずは黒髪黒目を変えようか」
「え!?」
「んー……淡いベージュの髪に紫眼でどうかな?」
「変えられるんですか!? というか、変えなきゃマズいですか?」
「迷い人の色だからねー……。兵に連行されて城で監禁なんて避けたいでしょう?」
「え、いや、ハイ……」
迷い人……あの竜も言っていた。俺は迷い人というものなのかもしれない。
でも城で監禁!? ってどういう事だろう……。
聞きたいけど、あんまり深くつっこむと墓穴を掘りそうで怖い。
「魔術を使うよ」
「はい、お願いします」
グレンが頷いて、グレンの両手からキラキラした細かい粒子が放たれる。
綺麗だななんて思いながら粒子に包まれていると、どうやら魔術は成功したようだ。
「はい」
グレンがどこからともなく手鏡を取り出して、僕に渡した。
「わあ……」
グレンが言った通り、鏡には淡いベージュの髪に濃い紫の瞳の俺が映っていた。
「うん。可愛い」
「か、可愛い!?」
「ああ、可愛いな」
俺、可愛いというより男だけど綺麗系だと言われていたんだけどな……。
グレンにもイーサンにも可愛いと言われてしまい、居た堪れない。
「あとは少し大きいと思うけど、街でスバルに合うマントを買うまで僕のマントを我慢して着てくれるかな? 夜は冷えるし、街でもスバルの外見は隠した方が良さそうだ」
「あ、でも俺お金持ってなくて……街で仕事を探そうと思うんですけど……」
「旅に必要なものは俺達が買うから気にするな。仕事は俺達に着いてくるだけで良い。護る者がいると強くなるからな。危険なこともあるから、もちろん報酬も渡す」
「そんな、ダメですよ……! 俺じゃ絶対足手まといだろうし」
「だが、スバルが街で一人になると拐われる可能性がある」
「え」
「うん、危ない」
「そ、そんな。まさか」
にわかには信じられない。
「スバルは隠しの嵐か、竜に連れてこられたかでこの国まで来たんだろう? この世界にはまだ街間転移魔術陣がない未開の地と言える場所もあるからな。……もしくは本当に迷い人か……。教えてはくれないんだろうが、この近辺の国では気を抜かない方がいい」
「分かりました……」
二人になら本当の事を言っても大丈夫だろうか?
まだ、見極められない。
「さて、そろそろ火を起こして、釣った魚と晩御飯を食べよっか」
「そうだな。街に行くのは明日にして、今日は夕食をとったあと、平原まで出てそこで野宿だな」
「決まりだね!」
「ああ」
俺は火を見守る役目を任されて、火が消えないように気をつけて木をくべた。
「ああ、起きたんだね。初めまして、俺はイーサン。白狼獣人の魔法剣士で二十三歳の冒険者だ。君は?」
「俺は昴です。学生で十八歳の人間です」
イーサンの水色の瞳を見ながら、グレンの時と同じように答えた。
グレンは蒼色の瞳をしている。
イーサンは腰まである長くサラサラな髪を後ろで一つに纏めていて、グレンはごく緩いパーマがかかっているような癖のある髪を耳朶のあたりで切り揃えている。
イーサンは凄く背が高くて、百九十を超えてそうだ。
グレンも座ってはいるけど、身長が高そう。
異世界基準はどうなってるんだと思いつつ、イーサンから差し出された手を握った。
「答えたくなかったらいいんだけど、君はどこからきたんだ? あぁ、グレンが聞いていたらすまない」
「遠いところから、とだけ……」
竜には思わず地球のことを話してしまったけど、異世界から来ました! なんて怪しすぎるもんな……。
異世界人がどういう扱いをされてるかも分からないし……。
「でも、その見た目は街では目立つから、少し僕に弄らせてくれないかな」
「え! 俺、街に行きたいんですけど、道を知らないんです……もしご迷惑でなければ、街まで着いて行ってもいいですか?」
「それは構わないよ。というか、何か訳ありっぽいし、スバルさえ良ければ、僕達と一緒に来ない? 僕もイーサンもSランク冒険者だから、スバルのこと守ってあげられるよ」
「え、でも……そんな、悪いですし……」
「そうだな……。スバル。一緒に来てくれ。スバル一人では心配だ」
イーサンがグレンに同調する。俺はそれ以上断ることも出来なくて、二人について行くことにした。
「じゃ、じゃあ……同行させて下さい」
「うん。よろしく」
「よろしくお願いします」
「さ、じゃあ、まずは黒髪黒目を変えようか」
「え!?」
「んー……淡いベージュの髪に紫眼でどうかな?」
「変えられるんですか!? というか、変えなきゃマズいですか?」
「迷い人の色だからねー……。兵に連行されて城で監禁なんて避けたいでしょう?」
「え、いや、ハイ……」
迷い人……あの竜も言っていた。俺は迷い人というものなのかもしれない。
でも城で監禁!? ってどういう事だろう……。
聞きたいけど、あんまり深くつっこむと墓穴を掘りそうで怖い。
「魔術を使うよ」
「はい、お願いします」
グレンが頷いて、グレンの両手からキラキラした細かい粒子が放たれる。
綺麗だななんて思いながら粒子に包まれていると、どうやら魔術は成功したようだ。
「はい」
グレンがどこからともなく手鏡を取り出して、僕に渡した。
「わあ……」
グレンが言った通り、鏡には淡いベージュの髪に濃い紫の瞳の俺が映っていた。
「うん。可愛い」
「か、可愛い!?」
「ああ、可愛いな」
俺、可愛いというより男だけど綺麗系だと言われていたんだけどな……。
グレンにもイーサンにも可愛いと言われてしまい、居た堪れない。
「あとは少し大きいと思うけど、街でスバルに合うマントを買うまで僕のマントを我慢して着てくれるかな? 夜は冷えるし、街でもスバルの外見は隠した方が良さそうだ」
「あ、でも俺お金持ってなくて……街で仕事を探そうと思うんですけど……」
「旅に必要なものは俺達が買うから気にするな。仕事は俺達に着いてくるだけで良い。護る者がいると強くなるからな。危険なこともあるから、もちろん報酬も渡す」
「そんな、ダメですよ……! 俺じゃ絶対足手まといだろうし」
「だが、スバルが街で一人になると拐われる可能性がある」
「え」
「うん、危ない」
「そ、そんな。まさか」
にわかには信じられない。
「スバルは隠しの嵐か、竜に連れてこられたかでこの国まで来たんだろう? この世界にはまだ街間転移魔術陣がない未開の地と言える場所もあるからな。……もしくは本当に迷い人か……。教えてはくれないんだろうが、この近辺の国では気を抜かない方がいい」
「分かりました……」
二人になら本当の事を言っても大丈夫だろうか?
まだ、見極められない。
「さて、そろそろ火を起こして、釣った魚と晩御飯を食べよっか」
「そうだな。街に行くのは明日にして、今日は夕食をとったあと、平原まで出てそこで野宿だな」
「決まりだね!」
「ああ」
俺は火を見守る役目を任されて、火が消えないように気をつけて木をくべた。
41
あなたにおすすめの小説
魔王に転生したら幼馴染が勇者になって僕を倒しに来ました。
なつか
BL
ある日、目を開けると魔王になっていた。
この世界の魔王は必ずいつか勇者に倒されるらしい。でも、争いごとは嫌いだし、平和に暮らしたい!
そう思って魔界作りをがんばっていたのに、突然やってきた勇者にあっさりと敗北。
死ぬ直前に過去を思い出して、勇者が大好きだった幼馴染だったことに気が付いたけど、もうどうしようもない。
次、生まれ変わるとしたらもう魔王は嫌だな、と思いながら再び目を覚ますと、なぜかベッドにつながれていた――。
6話完結の短編です。前半は受けの魔王視点。後半は攻めの勇者視点。
性描写は最終話のみに入ります。
※注意
・攻めは過去に女性と関係を持っていますが、詳細な描写はありません。
・多少の流血表現があるため、「残酷な描写あり」タグを保険としてつけています。
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
異世界転移しました。元天才魔術師との優雅なお茶会が仕事です。
渡辺 佐倉
BL
榊 俊哉はつまらないサラリーマンだった。
それがある日異世界に召喚されてしまった。
勇者を召喚するためのものだったらしいが榊はハズレだったらしい。
元の世界には帰れないと言われた榊が与えられた仕事が、事故で使い物にならなくなった元天才魔法使いの家庭教師という仕事だった。
家庭教師と言っても教えられることはなさそうだけれど、どうやら元天才に異世界の話をしてイマジネーションを復活させてほしいという事らしい。
知らない世界で、独りぼっち。他に仕事もなさそうな榊はその仕事をうけることにした。
(元)天才魔術師×転生者のお話です。
小説家になろうにも掲載しています
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
悪役の運命から逃げたいのに、独占欲騎士様が離してくれません
ちとせ
BL
執着バリバリなクールイケメン騎士×一生懸命な元悪役美貌転生者
地味に生きたい転生悪役と、全力で囲い込む氷の騎士。
乙女ゲームの断罪予定悪役に転生してしまった春野奏。
新しい人生では断罪を回避して穏やかに暮らしたい——そう決意した奏ことカイ・フォン・リヒテンベルクは、善行を積み、目立たず生きることを目標にする。
だが、唯一の誤算は護衛騎士・ゼクスの存在だった。
冷静で用心深く、厳格な彼が護衛としてそばにいるということはやり直し人生前途多難だ…
そう思っていたのに───
「ご自身を大事にしない分、私が守ります」
「あなたは、すべて私のものです。
上書きが……必要ですね」
断罪回避のはずが、護衛騎士に執着されて逃げ道ゼロ!?
護られてるはずなのに、なんだか囚われている気がするのは気のせい?
警戒から始まる、甘く切なく、そしてどこまでも執着深い恋。
一生懸命な転生悪役と、独占欲モンスターな護衛騎士の、主従ラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる