異世界転移したら二人の獣人に出会って旅に同行することになりました

hina

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「ん……おはよう、スバル」
寝起きの掠れ声が色っぽいイーサンが眠そうに目を擦った。
「スバル、もう少し寝てよう……」
グレンはまだ半分夢の中のようで。
「二人とも! 近いです!!」
「だってスバルは瑞々しくて、甘い、良い匂いなんだ。我慢出来ない……」
「同……感……」

イーサンが俺の顔に頭を近付けてすりすりしてきた。サラサラの髪とふわふわの耳が擽ったい。
グレンはぎゅっと後ろから抱きついてくる。

「スキンシップ過多ですって!」

それなりに力を入れても二人を振り払えなくて、俺は一瞬固まった。

「まーまー、そんなこと言わずに」
夢うつつながらもぽんぽんと言い聞かせるように腕を上下させるグレン。
「スキンシップはコミュニケーションだろ?」
イーサンもグレンに加勢する。

「だとしても俺の心はすり減ります!」

あえて言い切って、俺は全力で勢いよく起き上がった。
まだ寝起きで油断していたのであろう二人の間から抜け出す事に成功して、立ち上がり、スニーカーを履いてテントを出ようとしたところでイーサンに止められた。

「待って。まず俺が近くに魔物がいないか確認するから、まだテントから出ないで」
「は、はい……」

そうだった。ここは異世界。俺が住んでいた安全な日本とは違う。
いや、日本でもテントから出たら野生生物がなんて話はあるかもしれないけど……。

イーサンが鋭い瞳で昨日も腰に下げていた剣を手にして、硬そうなショートブーツを履いたのを見て、俺は気を引き締めた。

昨日教えてもらったのは、テントには強力な防御結界機能がついていているとのことで。
今もテントの真ん中で宙に浮いてくるくる回っている緑色の宝石がちゃんと動いてるのが、結界が発動しているサインらしいのだ。

テント内は大丈夫でも、不用意にテントから出るのは危険なんだな。

そう考えれば、昨日川のわきの巨大な石の上で寝ちゃってよく無事だったなあなんて思う。

今の俺には魔物を倒すことはまだ出来そうにないし、素直に旅慣れた二人の言うことを聞く方が良さそうだ。

イーサンもグレンもSランクの冒険者だと言うし、魔物の倒し方を教えてもらえないだろうか。
足手まといにはなりたくないのもあるし、剣も魔法も使ってみたい。
俺に剣の才能や魔力はあるのかな。
折を見て聞いてみよう。

とりあえず出て行ったイーサンが戻るまで、まだ寝ているグレンを離れた位置から見ながら、俺はテントの中で待機することにした。
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