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最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~
道場訓 八十五 勇者の誤った行動 ㉗
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「すげえ……まさか、この国の地下にこんな場所があったなんてな」
俺は眼前に広がる光景に目を丸くさせた。
それもそのはず。
俺の目の前には高価な照明の魔道具がふんだんに使われた、昼間のように明るい華やかで煌びやかな地下の世界が広がっているからだ。
しかもヤマト国の木造建築のみならず、リザイアル王国の石造建築が不自然に融合したような建築群だったのだ。
これを見て驚くなと言うほうが無理だ。
しかも街中を歩いている連中が平然としているのも驚きだった。
多種多様な人種が、大通りに軒を連ねている店の前を通り過ぎていく。
おいおい、通行人たちにとってこの街並みは当たり前だってのか?
俺が都会に来た田舎者のように周囲を見渡していると、後ろにいたソドムとゴモラが周囲に気づかれないように小さく笑った。
「な、何がおかしいんだよ」
俺はハッと気づくと、顔を紅潮させて2人を睨みつける。
「悪い悪い。別にお前さんを馬鹿にしたわけじゃないんだ。誰だってこんな場所に初めて来たらそうなるからな」
と、ソドム。
「がははははははっ……あっ、すまんすまん。ついに大声で笑っちまった」
と、ゴモラ。
「て、てめえら……」
俺は全身からそれなりの殺気を放出する。
「待て待て。いくら俺たちが顔を隠しているとはいえ、こんなところでお前さんに暴れられたら人目につく。分かった分かった。謝るから少しは落ち着けよ。な?」
ソドムの言う通り、俺たち3人は顔どころから全身をボロ布で外套のように覆い隠していた。
ソドムとゴモラはともかく、俺は国から選ばれた勇者なのだ。
なのでアジトにつくまでは、人目を避ける格好をしてくれと頼んできたのはソドムである。
まあ、それは構わない。
俺も変に絡んできたりする奴がいたら、容赦なくぶっ殺しちまうだろうからな。
それはさておき。
「謝るのはお前じゃねえだろ、ソドム。そっちのウドの大木のほうだ」
これにはゴモラもカチンと来たようだ。
「おい、元勇者さんよ。誰のおかげでこんな往来を歩けているのか分かってんのか? 俺たちが来なかったら、てめえなんぞ死刑台送りだったんだぞ」
ふん、と俺は鼻で笑った。
「そんなことは知らねえな。現に俺はこうやって大手を振って歩けているんでね」
「こいつ……」
ゴモラは激しく舌打ちすると、俺からソドムのほうへ顔を移した。
「おい、ソドム。やっぱりこんな奴よりも、例の女のほうが実験体として相応しかったんじゃねえのか?」
例の女?
俺は頭上に疑問符を浮かべた。
そんな俺に構わずソドムは言った。
「とは言っても、すでにお前がヤマトタウンの奉行所に行ったときにはいなかったんだろ?」
まあな、とゴモラは再び苛立ち気に舌打ちする。
「あの〈鬼神会〉のクソどもが……俺たちが目星をつけていた例の女も役人に闘技場へ連れて行かせやがって」
「とはいえ、〈鬼神会〉に前もって話を通していなかった俺たちの責任があったからな。それに素質はあったと言うが、その女サムライは新魔薬に適合しなかった可能性もある。だから、ここにいる元勇者さまにお願いしたんだからな」
ほう、新魔薬を最初に飲む予定の奴は女サムライだったのか。
俺はその辺の事情をあまり聞いていなかったのだが、どうやら〈暗黒結社〉の連中は普通の魔薬を購入した奴らの中から新魔薬の適合者を見つけようとしていたらしい。
だが、何の因果か新魔薬を飲んだのは俺になった。
そして上手く適合して魔人の力を得たってわけだ。
ただ、やはり今いちよく分からない。
「なあ、お前ら〈暗黒結社〉は新魔薬なんて生み出して一体何がやりたいんだ? まさか、新種の魔薬として売り出したいってわけじゃねえだろ?」
俺は商売人ではなかったが、仮に新魔薬を商売として成立させるためにはあまりにも〈暗黒結社〉のリスクが高すぎると思った。
100パーセント飲んだ奴が魔人の力を得るのならまだしも、下手をすれば塩の塊になって死ぬ可能性がある魔薬を大金で購入する物好きなどあまりいない。
もしかすると、頭のイカれた金持ちが面白半分で購入するくらいだろう。
しかし、〈暗黒結社〉からするとそんな連中に売るために新魔薬を作ったのではないはずだ。
間違いなく、何かとんでもないことに使う気なんだろうな。
そう思ったとき、ソドムは俺の質問に「まあな」と素っ気なく答えた。
どうやら図星だったのだろう。
まあ、別にこいつらが何をしようが構いやしねえんだけどな。
そうだ。
俺にとって〈暗黒結社〉のことなど本当はどうでもよかった。
しかし、今は大人しくしている必要がある。
不完全だろうと魔人の力を手に入れた今、この力が完全に俺の制御下に置けるのかを確かめなければならない。
それさえ完全に分かれば〈暗黒結社〉の言うことを聞く必要はなくなるのだ。
とはいえ、俺の復讐相手の居所も掴むまでは利用させて貰うがな。
などと考えていると、ゴモラが「おい、それよりも早く行こうぜ。こんなところで立ち止まっていると人目につく」と言ってきた。
「そうだな。誰かさんのせいで必要以上に人目についている。さっさと行くか」
俺は周囲を見回す。
すると通行人たちがちらほらと俺たちに視線を投げかけていた。
俺は顔を隠すためにフードを深く被り直す。
「それで? お前たちのアジトはどこなんだ?」
「驚くなよ」
と、ソドムとゴモラは足早に歩き出した。
俺も置いて行かれないよう慌てて後を追う。
5分ほど歩いただろうか。
やがて俺たちは一軒の飲食店の店先にやってきた。
どこからどう見ても富裕層相手に商売をしている店だ。
それでもソドムとゴモラは躊躇なく店の中に入っていく。
おいおい、暢気に飯でも食うつもりか?
ここまで来たら仕方がない。
俺はソドムとゴモラの後を追って店の中へと入る。
「いらっしゃいませ。ご予約の方ですか?」
キリッとした身なりのウエイターがソドムに話しかけてきた。
「ああ、バッチリとな」
ソドムは懐から一枚のカードを取り出してウエイターに渡した。
そのカードには自分の尻尾を飲み込んでいる蛇の絵が書かれている。
「……かしこまりました。どうぞこちらへ」
俺たちはウエイターに店の奥へと案内された。
そこには地下に通じる階段があり、ウエイターは俺たちを案内すると「それでは失礼します」と再び店へと戻っていった。
「おい、この地下にお前たちのアジトがあるのか?」
まあな、とソドムが答えた。
「だが、あるのはアジトだけじゃないがな」
俺は意味深な言葉を吐いたソドムから地下へと通じる階段を見る。
まるで地獄へと通じているような不気味さに、俺がごくりと生唾を飲み込んだ。
俺は眼前に広がる光景に目を丸くさせた。
それもそのはず。
俺の目の前には高価な照明の魔道具がふんだんに使われた、昼間のように明るい華やかで煌びやかな地下の世界が広がっているからだ。
しかもヤマト国の木造建築のみならず、リザイアル王国の石造建築が不自然に融合したような建築群だったのだ。
これを見て驚くなと言うほうが無理だ。
しかも街中を歩いている連中が平然としているのも驚きだった。
多種多様な人種が、大通りに軒を連ねている店の前を通り過ぎていく。
おいおい、通行人たちにとってこの街並みは当たり前だってのか?
俺が都会に来た田舎者のように周囲を見渡していると、後ろにいたソドムとゴモラが周囲に気づかれないように小さく笑った。
「な、何がおかしいんだよ」
俺はハッと気づくと、顔を紅潮させて2人を睨みつける。
「悪い悪い。別にお前さんを馬鹿にしたわけじゃないんだ。誰だってこんな場所に初めて来たらそうなるからな」
と、ソドム。
「がははははははっ……あっ、すまんすまん。ついに大声で笑っちまった」
と、ゴモラ。
「て、てめえら……」
俺は全身からそれなりの殺気を放出する。
「待て待て。いくら俺たちが顔を隠しているとはいえ、こんなところでお前さんに暴れられたら人目につく。分かった分かった。謝るから少しは落ち着けよ。な?」
ソドムの言う通り、俺たち3人は顔どころから全身をボロ布で外套のように覆い隠していた。
ソドムとゴモラはともかく、俺は国から選ばれた勇者なのだ。
なのでアジトにつくまでは、人目を避ける格好をしてくれと頼んできたのはソドムである。
まあ、それは構わない。
俺も変に絡んできたりする奴がいたら、容赦なくぶっ殺しちまうだろうからな。
それはさておき。
「謝るのはお前じゃねえだろ、ソドム。そっちのウドの大木のほうだ」
これにはゴモラもカチンと来たようだ。
「おい、元勇者さんよ。誰のおかげでこんな往来を歩けているのか分かってんのか? 俺たちが来なかったら、てめえなんぞ死刑台送りだったんだぞ」
ふん、と俺は鼻で笑った。
「そんなことは知らねえな。現に俺はこうやって大手を振って歩けているんでね」
「こいつ……」
ゴモラは激しく舌打ちすると、俺からソドムのほうへ顔を移した。
「おい、ソドム。やっぱりこんな奴よりも、例の女のほうが実験体として相応しかったんじゃねえのか?」
例の女?
俺は頭上に疑問符を浮かべた。
そんな俺に構わずソドムは言った。
「とは言っても、すでにお前がヤマトタウンの奉行所に行ったときにはいなかったんだろ?」
まあな、とゴモラは再び苛立ち気に舌打ちする。
「あの〈鬼神会〉のクソどもが……俺たちが目星をつけていた例の女も役人に闘技場へ連れて行かせやがって」
「とはいえ、〈鬼神会〉に前もって話を通していなかった俺たちの責任があったからな。それに素質はあったと言うが、その女サムライは新魔薬に適合しなかった可能性もある。だから、ここにいる元勇者さまにお願いしたんだからな」
ほう、新魔薬を最初に飲む予定の奴は女サムライだったのか。
俺はその辺の事情をあまり聞いていなかったのだが、どうやら〈暗黒結社〉の連中は普通の魔薬を購入した奴らの中から新魔薬の適合者を見つけようとしていたらしい。
だが、何の因果か新魔薬を飲んだのは俺になった。
そして上手く適合して魔人の力を得たってわけだ。
ただ、やはり今いちよく分からない。
「なあ、お前ら〈暗黒結社〉は新魔薬なんて生み出して一体何がやりたいんだ? まさか、新種の魔薬として売り出したいってわけじゃねえだろ?」
俺は商売人ではなかったが、仮に新魔薬を商売として成立させるためにはあまりにも〈暗黒結社〉のリスクが高すぎると思った。
100パーセント飲んだ奴が魔人の力を得るのならまだしも、下手をすれば塩の塊になって死ぬ可能性がある魔薬を大金で購入する物好きなどあまりいない。
もしかすると、頭のイカれた金持ちが面白半分で購入するくらいだろう。
しかし、〈暗黒結社〉からするとそんな連中に売るために新魔薬を作ったのではないはずだ。
間違いなく、何かとんでもないことに使う気なんだろうな。
そう思ったとき、ソドムは俺の質問に「まあな」と素っ気なく答えた。
どうやら図星だったのだろう。
まあ、別にこいつらが何をしようが構いやしねえんだけどな。
そうだ。
俺にとって〈暗黒結社〉のことなど本当はどうでもよかった。
しかし、今は大人しくしている必要がある。
不完全だろうと魔人の力を手に入れた今、この力が完全に俺の制御下に置けるのかを確かめなければならない。
それさえ完全に分かれば〈暗黒結社〉の言うことを聞く必要はなくなるのだ。
とはいえ、俺の復讐相手の居所も掴むまでは利用させて貰うがな。
などと考えていると、ゴモラが「おい、それよりも早く行こうぜ。こんなところで立ち止まっていると人目につく」と言ってきた。
「そうだな。誰かさんのせいで必要以上に人目についている。さっさと行くか」
俺は周囲を見回す。
すると通行人たちがちらほらと俺たちに視線を投げかけていた。
俺は顔を隠すためにフードを深く被り直す。
「それで? お前たちのアジトはどこなんだ?」
「驚くなよ」
と、ソドムとゴモラは足早に歩き出した。
俺も置いて行かれないよう慌てて後を追う。
5分ほど歩いただろうか。
やがて俺たちは一軒の飲食店の店先にやってきた。
どこからどう見ても富裕層相手に商売をしている店だ。
それでもソドムとゴモラは躊躇なく店の中に入っていく。
おいおい、暢気に飯でも食うつもりか?
ここまで来たら仕方がない。
俺はソドムとゴモラの後を追って店の中へと入る。
「いらっしゃいませ。ご予約の方ですか?」
キリッとした身なりのウエイターがソドムに話しかけてきた。
「ああ、バッチリとな」
ソドムは懐から一枚のカードを取り出してウエイターに渡した。
そのカードには自分の尻尾を飲み込んでいる蛇の絵が書かれている。
「……かしこまりました。どうぞこちらへ」
俺たちはウエイターに店の奥へと案内された。
そこには地下に通じる階段があり、ウエイターは俺たちを案内すると「それでは失礼します」と再び店へと戻っていった。
「おい、この地下にお前たちのアジトがあるのか?」
まあな、とソドムが答えた。
「だが、あるのはアジトだけじゃないがな」
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