【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

文字の大きさ
85 / 104
最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~

道場訓 八十五   勇者の誤った行動 ㉗

しおりを挟む
「すげえ……まさか、この国の地下にこんな場所があったなんてな」

 俺は眼前に広がる光景に目を丸くさせた。

 それもそのはず。

 俺の目の前には高価な照明の魔道具がふんだんに使われた、昼間のように明るいはなやかできらびびやかな地下の世界が広がっているからだ。

 しかもヤマト国の木造建築のみならず、リザイアル王国の石造建築が不自然に融合ゆうごうしたような建築群けんちくぐんだったのだ。

 これを見て驚くなと言うほうが無理だ。

 しかも街中を歩いている連中が平然としているのも驚きだった。

 多種多様な人種が、大通りにのきつらねている店の前を通り過ぎていく。

 おいおい、通行人たちにとってこの街並みは当たり前だってのか?

 俺が都会に来た田舎者のように周囲を見渡していると、後ろにいたソドムとゴモラが周囲に気づかれないように小さく笑った。

「な、何がおかしいんだよ」

 俺はハッと気づくと、顔を紅潮させて2人をにらみつける。

「悪い悪い。別にお前さんを馬鹿にしたわけじゃないんだ。誰だってこんな場所に初めて来たらそうなるからな」

 と、ソドム。

「がははははははっ……あっ、すまんすまん。ついに大声で笑っちまった」

 と、ゴモラ。

「て、てめえら……」

 俺は全身からそれなりの殺気を放出する。

「待て待て。いくら俺たちが顔を隠しているとはいえ、こんなところでお前さんに暴れられたら人目につく。分かった分かった。謝るから少しは落ち着けよ。な?」

 ソドムの言う通り、俺たち3人は顔どころから全身をボロ布で外套マントのようにおおい隠していた。

 ソドムとゴモラはともかく、俺は国から選ばれた勇者なのだ。

 なのでアジトにつくまでは、人目を避ける格好をしてくれと頼んできたのはソドムである。

 まあ、それは構わない。

 俺も変にからんできたりする奴がいたら、容赦ようしゃなくぶっ殺しちまうだろうからな。

 それはさておき。

「謝るのはお前じゃねえだろ、ソドム。そっちのウドの大木のほうだ」

 これにはゴモラもカチンと来たようだ。

「おい、元勇者さんよ。誰のおかげでこんな往来おうらいを歩けているのか分かってんのか? 俺たちが来なかったら、てめえなんぞ死刑台送りだったんだぞ」

 ふん、と俺は鼻で笑った。

「そんなことは知らねえな。現に俺はこうやって大手を振って歩けているんでね」

「こいつ……」

 ゴモラは激しく舌打ちすると、俺からソドムのほうへ顔を移した。

「おい、ソドム。やっぱりこんな奴よりも、例の女のほうが実験体として相応ふさわしかったんじゃねえのか?」

 例の女?

 俺は頭上に疑問符を浮かべた。

 そんな俺に構わずソドムは言った。

「とは言っても、すでにお前がヤマトタウンの奉行所ぶぎょうしょに行ったときにはいなかったんだろ?」

 まあな、とゴモラは再び苛立いらだち気に舌打ちする。

「あの〈鬼神会きじんかい〉のクソどもが……俺たちが目星をつけていた例の女も役人に闘技場へ連れて行かせやがって」

「とはいえ、〈鬼神会きじんかい〉に前もって話を通していなかった俺たちの責任があったからな。それに素質はあったと言うが、その女サムライは新魔薬ウロボロスに適合しなかった可能性もある。だから、ここにいる元勇者さまにお願いしたんだからな」

 ほう、新魔薬ウロボロスを最初に飲む予定の奴は女サムライだったのか。

 俺はその辺の事情をあまり聞いていなかったのだが、どうやら〈暗黒結社あんこくけっしゃ〉の連中は普通の魔薬まやくを購入した奴らの中から新魔薬ウロボロスの適合者を見つけようとしていたらしい。

 だが、何の因果いんが新魔薬ウロボロスを飲んだのは俺になった。

 そして上手く適合して魔人の力を得たってわけだ。

 ただ、やはり今いちよく分からない。

「なあ、お前ら〈暗黒結社あんこくけっしゃ〉は新魔薬ウロボロスなんて生み出して一体何がやりたいんだ? まさか、新種の魔薬まやくとして売り出したいってわけじゃねえだろ?」

 俺は商売人ではなかったが、仮に新魔薬ウロボロスを商売として成立させるためにはあまりにも〈暗黒結社あんこくけっしゃ〉のリスクが高すぎると思った。

 100パーセント飲んだ奴が魔人の力を得るのならまだしも、下手をすれば塩の塊になって死ぬ可能性がある魔薬まやくを大金で購入する物好きなどあまりいない。

 もしかすると、頭のイカれた金持ちが面白半分で購入するくらいだろう。

 しかし、〈暗黒結社あんこくけっしゃ〉からするとそんな連中に売るために新魔薬ウロボロスを作ったのではないはずだ。

 間違いなく、何かとんでもないことに使う気なんだろうな。

 そう思ったとき、ソドムは俺の質問に「まあな」と素っ気なく答えた。

 どうやら図星だったのだろう。

 まあ、別にこいつらが何をしようが構いやしねえんだけどな。

 そうだ。

 俺にとって〈暗黒結社あんこくけっしゃ〉のことなど本当はどうでもよかった。

 しかし、今は大人しくしている必要がある。

 不完全だろうと魔人の力を手に入れた今、この力が完全に俺の制御下せいぎょかに置けるのかを確かめなければならない。

 それさえ完全に分かれば〈暗黒結社あんこくけっしゃ〉の言うことを聞く必要はなくなるのだ。

 とはいえ、俺の復讐相手の居所もつかむまでは利用させて貰うがな。

 などと考えていると、ゴモラが「おい、それよりも早く行こうぜ。こんなところで立ち止まっていると人目につく」と言ってきた。

「そうだな。誰かさんのせいで必要以上に人目についている。さっさと行くか」

 俺は周囲を見回す。

 すると通行人たちがちらほらと俺たちに視線を投げかけていた。

 俺は顔を隠すためにフードを深くかぶり直す。

「それで? お前たちのアジトはどこなんだ?」

「驚くなよ」

 と、ソドムとゴモラは足早に歩き出した。

 俺も置いて行かれないよう慌てて後を追う。

 5分ほど歩いただろうか。

 やがて俺たちは一軒の飲食店の店先にやってきた。

 どこからどう見ても富裕層相手に商売をしている店だ。

 それでもソドムとゴモラは躊躇ちゅうちょなく店の中に入っていく。

 おいおい、暢気のんきに飯でも食うつもりか?

 ここまで来たら仕方がない。

 俺はソドムとゴモラの後を追って店の中へと入る。

「いらっしゃいませ。ご予約の方ですか?」

 キリッとした身なりのウエイターがソドムに話しかけてきた。

「ああ、バッチリとな」

 ソドムは懐から一枚のカードを取り出してウエイターに渡した。

 そのカードには自分の尻尾しっぽを飲み込んでいるへびの絵が書かれている。

「……かしこまりました。どうぞこちらへ」

 俺たちはウエイターに店の奥へと案内された。

 そこには地下に通じる階段があり、ウエイターは俺たちを案内すると「それでは失礼します」と再び店へと戻っていった。

「おい、この地下にお前たちのアジトがあるのか?」

 まあな、とソドムが答えた。

「だが、あるのはアジトだけじゃないがな」

 俺は意味深な言葉を吐いたソドムから地下へと通じる階段を見る。

 まるで地獄へと通じているような不気味さに、俺がごくりと生唾なまつばを飲み込んだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...