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最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~

道場訓 九十九   勇者の誤った行動 ㉞

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「くくくっ、呑気に寝ている場合じゃねえぜ」

 俺はつかつかと般若面の男に歩を進めていく。

 般若面の男は体内に相当なダメージを負っているのだろう。

 大の字に寝ながらピクリとも動かない。

 もしかすると、あまりの衝撃を受けて気絶したのだろうか。

 だとしても、まったく関係ない。

 般若面はんにゃめんの男が気絶していようが狸寝入たぬきねりしていようが、俺が今からする行為をやめる理由はまったくない。

「おい、生きてるか?」

 俺は般若面はんにゃめんの男のすぐそばまで来ると、顔をニヤけさせながらたずねた。

「…………」

 返事はない。

 本当に気絶したのだろうか。

 まあいい。

「そのまま気を失ってろよ。そうすれば気づかないままあの世にいけるかもしれねえぜ」

 そう言った直後、俺は般若面はんにゃめんの男の腹に攻撃を放った。

 靴のかかとを使った〝踵落かかとおとし〟だ。

 ドンッ!

 俺の靴のかかと般若面はんにゃめんの男の腹にめり込む。

 ビクン、と般若面はんにゃめんの男の身体が跳ねた。

 と同時に、俺の体内にぞわぞわとした言い知れぬ感情が沸き出てきた。

 歓喜かんき優越感ゆうえつかんだ。

 まるで虫けらを踏み潰すような暗い喜び。

  俺は我慢ができずに般若面はんにゃめんの男に馬乗りになった。

 そして――。

 俺は般若面はんにゃめんの男に、馬乗りの状態から突きを繰り出す。

 狙った場所は当たり前だが顔面だ。

 仮面越しに俺の突きが般若面はんにゃめんの男の顔面に叩き込まれる。

 1発――2発――3発――4発――5発――6発――。

 俺はあらん限りの力で般若面はんにゃめんの男の顔面を殴りつける。

 なかなか頑丈な仮面だな。

 10発以上殴ったところで俺は攻撃をやめた。

 信じられないことに、般若面はんにゃめんの男が被っている仮面はヒビすら入らない。

 感触的には仮面の素材は金属ではないので、4~5発程度の攻撃で完全に壊せると思っていたのだが……。

 ともあれ、仮面越しに相当なダメージを受けているのは間違いない。

 おそらく、仮面の下は俺の攻撃の衝撃が伝わったことで血まみれだろう。

 下手をすると絶命しているかもしれない。

 だとしたら拍子抜けだった。

 てっきりもっと強いかと思ったものの、これでは俺が少しばかり本気を出したのが馬鹿らしくなる。

 まあ、それはさておき。

 ふん、と俺は鼻で笑った。

「どこのどいつか知らねえが、最後にそのツラおがんでやらあ」

 俺は口角を吊り上げると、般若面はんにゃめんの男が被っている仮面を両手で掴んだ。

「さあ、一体どんなツラをしてやがるんだ!」

 直後、俺は般若はんにゃの仮面を強引にぎ取った。

「――――ッ!」

 次の瞬間、俺はあまりの驚きに目を見開いた。

 なぜなら――。
 
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