【完結】空戦ドラゴン・バスターズ ~世界中に現れたドラゴンを倒すべく、のちに最強パイロットと呼ばれる少年は戦闘機に乗って空を駆ける~

ともボン

文字の大きさ
11 / 36

第十話     パイロットとしての行動  

しおりを挟む
「これってゲーセンの機械とどう違うんだろな?」

 座席のシートに手を置いていると、横から現われた空也が操縦席に座った。

「おい、教官の許可もなしに座らないほうがいいぞ」

「平気平気、鹿取教官は他の奴らから熱心に質問を聞いているから気づかねえよ」

 空也がそう答えたとおり、鹿取は他のクラスの生徒の質問に答えていた。

 空也は操縦桿を握り、足元にあった方向舵ペダルを踏み込んだ。

 本人はカーゲームのつもりだったのだろう。

 適当に操縦桿や方向舵ペダルを踏んだり離したりして感触を確かめている。

 暢気な奴だな。

 天馬は無邪気な笑顔を浮かべている空也を無視し、計基盤に取り付けられた計器類を眺めた。

 操縦席右上部分には車の速度メーターのような計器が並んでいた。

 その他にも高度電波計やエンジン回転計などが設置され、他にも小型のスクリーンや細かな計器類が実物と同じように備わっている。

「お前も座ってみるか? 結構、座り心地はいいぞ」

 空也が肩越しに天馬を見上げた。天馬は軽く首を左右に振る。

「……止めておく。俺は殴られたくないからな」

「へ?」

 空也が頓狂な言葉を発した刹那、パーン! という乾いた音が響いた。

「誰が勝手に座っていいと許可した?」

 天馬はコクピットからそっと離れる。

 空也は頭を押さえながら素早く操縦席から立ち上がった。

 空也が座っていた操縦席の横には鹿取が両腕を組んで佇んでいた。

 表情は至って無表情だったが、手に持っていた生徒名簿をメガホンのように丸めていた。

「1‐B、神田空也。もう一度訊く? 一体誰が勝手に操縦席に座る許可をした?」

 丸めた生徒名簿を鹿取はもう一方の手の掌に叩きつけ空也に尋ねた。

「いえ、誰からも許可を取っていません。申し訳ありませんでした」

 空也は手刀の形に変化させた右手を、胸の部位に水平に叩きつけた。

 戦闘陸・海・空の戦闘学校に通う生徒独自の敬礼である。

 今日の入学式ではこの敬礼をじっくり十分間練習したばかりであった。

「言葉だけの反省ならば誰でもできる。神田空也、お前には後で勝手な行動を取った罰を受けてもらう。いいな?」

「え? 罰ですか?」

「そうだ。罰の内容は追って知らせる」

 そう告げた鹿取はがっくりとうな垂れる空也を見下ろした後、続いて天馬に視線を向けてきた。条件反射で天馬は背筋を伸ばす。

「お前は同じクラスの白樺天馬だな?」 

「はい」

 返事をした天馬に対して、鹿取はじっと顔を見つめてきた。

 しばらく互いの視線が交錯していると、黙っていた鹿取が口を開いた。

「天……いや、白樺。お前は神田の近くにいたのに注意をしなかったな? ここは自衛軍ほど厳しい連帯責任を与えることはないが、同じパイロット仲間が行った不祥事を傍にいて注意しないでどうする。よってお前も神田と同様に罰を受けてもらう」

 天馬はちらりと空也を見た。

 空也は「悪い」と言った苦い顔を作っていた。

「了解しました」

 戦闘学校独自の敬礼をすると、鹿取は一度だけ頷いた。

「よし、では次の場所に移動するぞ。次の場所は第一体育館だ。今までパイロットに関係する重要な場所を案内してきたが、体育館では実際に身体を動かしてもらう」

 鹿取は腕時計を目線の高さに持ってきて、現在の時刻を確認した。

「現在の時刻は十一時十四分。今から十六分後の十一時三十分までに運動着に着替えて第一体育館に集合しろ。以上、解散!」

 鹿取の説明が終った直後、生徒たちは駆け足でシミュレーター室から出て行った。

 戦闘学校には集合時間の五分前には到着していないといけない暗黙の了解がある。

 生徒たちはそれを当然の如く知っていたため、すぐさま行動を起こした。

 五分前に集合ということは、実質的には残り10分ほどしかない。

 一旦教室に戻って着替える時間を考慮したとしてもギリギリだろうか。

 天馬と空也も急いで教室に向かった。

 騒音にならない程度に廊下を走り、階段を駆け下りて行く。

「悪いな、天馬。俺のせいでお前まで罰を受けることになっちまって」

 一緒に走っている途中、空也が低い声で話しかけてきた。

「別にいいさ。教官が言ったように無理にでも止めなかった俺にも責任がある」 

「でもよ……」

 他の生徒たちに混じりながら、天馬と空也は一階に辿り着いた。

「どうでもいいが急がないと集合時間に間に合わなくなるぞ。そうなったらもっと厳しい罰を受けかねない」

「だから」と天馬は走りながら言葉を続けた。

「今日の昼食で手を打とう」

 二人は正面玄関口脇に置いていた傘を広げ、未だ降り止まない豪雨の中を突っ走る。

 激しい雨がビニール製の傘を叩きつける音が響く。

 その中で空也はぽつりと答えた。

「なあ、昼食の件だがラーメンでいいか?」

「天ぷら蕎麦定食」

 間髪を入れず結構な値段が張るメニューを天馬が言い張ると、教室がある学舎に到着してから空也は言った。

「天ぷら蕎麦だけで勘弁してくれ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜

黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。 ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。 彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。 賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。 地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す! 森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。 美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。 さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる! 剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。 窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

処理中です...