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第6章 エリィ始動

エリィを魅了せよ

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 俺は腕を掴まれたまま、エリィの部屋に勢いよく連れて来られた。
彼女の白くて細い手は、その見た目に相反した強い力で俺の腕を掴んでいる。
そして、そのままベッドの上に放り投げられてしまった。
や、やベぇ……! 腕が痛い……!!
エリィ……荒ぶってんなぁ……!
彼女に理性は残っているのだろうか!?

「……エ、エリィ様、ちょっと待ってください!」

「なんだ!? ゴチャゴチャ言っていないで、さっさと脱いだらどうだ……!!」

 エ、エリィ……!?
圧力が強い!!
ベッドの上で横たわる俺をニラみつけているぞ!
けど、会話をするぐらいの理性は残っているようだな……。
よし……仕掛けるぞ。
エリィに濃縮液を飲ませる作戦を!

「エリィ様……ワインでも飲みませんか? サクラダ王国で買っておいたワインはありますか? 2週間振りに会えたお祝いです!」

 俺はなるべく冷静に、ベッドの上からエリィに提案した。

「お祝い……だと!? ほう、良いことを言うじゃないか……。しかし、そんなものは必要ない!! いま必要なのは、貴様の精液だ……!」

 お、おっと……!?
『お祝い』というワードに良い反応をしてくれたが、精液への飽くなき欲求の方が勝っているようだな……!
エリィがベッドに近づいて来ているが、今日の俺は引かないぜ!

「……お酒を飲んで気持ち良くなってからのほうが、精液を搾取するのも楽しくなりますよ! 一杯ぐらいどうですか? エリィ様……!」

 頼む、俺の提案を受け入れてくれ……!

「……」

 ち、沈黙……!?
エリィが俺の提案について考えくれているのか!?
綺麗な瞳を横に逸らして沈黙している。
『一杯ぐらい飲んでもいいかな……』と考えているように見えなくもない。
よし……もう一押しだ!

「エリィ様がお酒で酔っ払ったほうが、僕の精液を美味しく感じられますよ……!」

 ……というのは、俺の勝手な予想である。
ミルフィーヌの実験から、酔った状態の方が精液を美味しく感じられるという結果が得られたんです……とか、言ってしまいたいが、エリィがミルフィーヌに詳細を聞きに行ってしまったら、ウソだとバレる可能性がある。
研究に関しては、ミルフィーヌは相手がエリィであっても嘘をつかなさそうだしな……。

「……ここ最近は、貴様の搾精ができなかったので、寝る前に毎日ワインを飲んでいた……。確かに良い気分にはなる。そ、そうだな……飲むか」

 おっとぉ!?
や、やった……!
エリィが酒を飲むってよ!!
それにしても、エリィ……寝酒をしていたのか。
ストレスが溜まると、そうなるよね。
俺も新社会人のときは大丈夫だったけど、去年あたりから寝酒→オナニーの流れが定着しつつあったぞ。

「……購入したワインは部屋の奥にある。グラスもあるぞ」

 おお、サクラダ王国で買い物をしたときに購入してワインだな!
買っておいて良かった……。
まぁ、そのせいでエリィは寝酒をたしなむようになってしまったが……。
俺にとっては好都合だった。
とにかく、これで自然に精液を混入できるぞ!

「分かりました! それでは準備して来ますね……!」

 俺はベッドから降り、エリィの横を通り過ぎて部屋の奥の方に向かった。
エリィ……ちょっと呼吸が荒いな……。
今にも襲って来そうだぜ……。
 部屋の奥にある棚の中に、たしかにワイン数本とグラスが2つあった。
早速、ポケットに忍ばせておいた精子の濃縮液を一方のワイングラスに入れた。
対象の身体に付着させるのではなく、飲ませた方が大きな効果を得られる。
これはミルフィーヌの実験から明らかになっているのだ。
俺はワイングラスを2つ持ち、エリィのところに持って行った。
本当は目の前で空のグラスに注いであげたいところだけど、それだと予めワイン本体に精液を入れておかなければならないので、俺も一緒に発情してしまう。

「……はい、エリィ様。どうぞ」

 俺はベッドの近くにある木製の小さなテーブルにワイングラスを2つ置いた。

「うむ」

 俺とエリィはベッドに横並びで座りながら、ワイングラスをそれぞれ手に取った。
そして、口をつけた。
ワインを飲む姿は上品だ。
唇がエロいな。
やはり綺麗。
極上の美女だ。
って……魅了されてはいけないぞ、俺。
 よし……エリィは一気に飲み干したぞ。
おお、色々と不安に思っていたが、容易にことを運べているぞ……。
じつは、この作戦のことをミルフィーヌに聞いてから実際に実行するまでの間、ネガティブなことばかり考えていた。
緊張し過ぎて俺の手が震え、ビンを割ってしまったり、自分にかかってしまったり、もしくはエリィにワインの件を無視されたり……色んなことを予想していた。
本番前に不安に思っていることは、たいてい起きないか、起きても対処できる……と、何かの本で読んだのを思い出した。
……ごもっともだぜ。
とにかく、あとは……待てばいいんだよな。
確かブルーに飲ませた場合は、3分かかったって言っていたよな。
同じ種族とは言え、ブルーとエリィとでは個体差があるだろうから、どのぐらい待てばいいのか分からないな。
あ、エリィ……一気に飲み干したからか、ちょっと顔が紅潮してきて可愛いぞ。
本当はチビチビ飲んでくれた方が、時間を稼げて良かったんだけどな……。
彼女のワインを足して時間を稼ぐか。
俺がワインをチビチビ飲んでも、時間を稼げるな……。

「……さて、やるか」

 えっ!? エリィが立ち上がり、俺を見下ろしながら言い放った。
『貴様の精液をむさぼり尽くすからな?』と言わんばかりの表情をしている。
……お、俺はまだ一口ぐらいしか飲んでないよ?
エリィが飲み干してから、まだ15秒前後かな?
先ほどからエリィを観察しているが、まだ濃縮液が効いている様子はない。
よし……何が何でも時間を稼ぐしかない。
目安は、あと2分45秒ぐらいである。

「……い、いやいや、エリィ様! もっとムードを大切にしましょう。順を追って事を進めた方が楽しいですよ。僕はまだ全然飲んでいませんし……」

「そうか? それが人間の作法というものか……? それは感慨深いものがある……」

 お……意外にも俺の話を聞いてくれる。
『感慨深い』……という感想も言ってくれた。
さすが芸術品を城内に飾っているお方だな……。
教養がある感じが格好良いぞ。

「が……しかし、私はもう我慢できんぞ!!」

 ……おっとぉ!?
ある程度の理解は示してくれたが、押し寄せてくる欲望には抗えないようだ……!

「……い、いや、そうは言っても、やはりムードが大切ですよ! 良いムードを作ることができれば、もっと素敵な時間になるはずです! ワインはまだ残っています。あ、そうだ……何か、おつまみを作ってきますね! 僕がいた部屋に何か食材が残っていればいいんですけど……」

 ……これも作戦である。
おつまみで良いムードが作れるわけではないが、部屋を出ることができれば確実に時間を引き延ばすことができる!
頼む……強引に迫ってこないでくれ、エリィ!!
 俺はベッドから素早く降りて、部屋の出入り口に早歩きで向かった。
買い出しに行ったときの材料、残ってるかな……?
2週間も前に買ったものだから、腐ってるかもしれないな……。
そもそも俺は料理ができないから、まともなものは作れないけどね!
って、エリィ?
追いかけて来ないけど……待っていてくれるのか?

「……ちょ、ちょっと待ってくれ! 私は2週間も待ったんだぞ……!? これ以上は我慢できん!」

「え、えっと……すぐにできますから! 焦らないで待っていて下さいね!」

 あ……エリィも部屋の出入り口に近づいてきたぞ。
俺は振り向き、エリィの方を見た。
ゆっくり歩いている……。
あ、あれ……? なんか覇気がなくなっている気がするぞ。

「そ、そんな……ヒドいじゃないか。なぜイジワルをする……?」

 えっ……!?
エリィの声が弱々しくなってきてないか!?
なんか甘えん坊系になっているんですけど……。
まさかの……幼児系パターン?
マリエーヌがアヒラメ族の精液を浴びたときとは、ちょっと違うような……?
このエリィの様子から判断すると……もうプロトンの精液が効いてきたと判断して良いのだろうか?
いや、迂闊うかつに判断してはいけないな……。
よし……もうちょっと探ってみることにしよう。
俺は、こちらにゆっくりと向かっている彼女に語りかけた。

「……エリィ様、あなたに意地悪をする気はありません。じっくり事を進めましょう。そんなに慌てずとも、夜は長いんですから……」

「……わ、わかった。待つ。飲んで、食べてからだな」

 あ、言うことを聞いてくれたぞ!
普段のエリィからは考えられないぐらい、めちゃめちゃ従順だよね?
……ちゃんと精液が効いているんだ!
よし……なんとかなる! なんとかなるぞ、これは!!
 それにしても、エリィ……完全にキャラ崩壊だな。
キャラ崩壊の兆候は俺が軟禁されているときにもあったが……。
メンヘラと思ったときもあったが、じつはM女みたいな感じなのだろうか?
彼女には、甘えたい願望があるのだろうか?
ブルーが部下だと大変そうだしな……。
アヒラメ族の精液は、本性をあらわにしてしまうのかもしれない。
ん? ということは、マリエーヌは……本質的に痴女系なのか……?
アヒラメ族の精液にやられても、俺にオフェンシブだったからな。
……まぁ、今そんなことを考えても仕方がないな。
計画通り、エリィ相手でも上手くいきそうだぞ!
しっかりと事を進めよう……!!

「エリィ様……そんなに私の精液が欲しいのであれば、今すぐに差し上げましょう。あなたの表情を見ていたら、私も我慢できなくなってきました」

 俺は両手を広げて堂々と告げた。
ちょっと強気にいこう。

「そ、そうなのか……! あ、ありがとう……よろしく頼む……」

 あれ……態度が軟化するどころじゃないぞ。
なんかモジモジしている感じがする。
もう完全にM女になってしまったようだぞ。
こんな絶世の美女がM女化していると、さすがの俺も男としての本能が呼び起こされて興奮してきてしまうぞ。
い、いやいや……!
俺はマリエーヌ一筋なんだ!
エリィに搾精されることは、あくまでも作戦の一貫である。
よし……スタンバイしよう。
俺は疾風の服を自分で脱いで、全裸になった。
すでにチンコは半ボッキの状態である。
美し過ぎるエリィの近くにいると、勝手に反応してしまうのは仕方のないことだ……。

「……ほら、エリィ様。ヌき取って下さい」

 俺は部屋の中央で、仁王立ちの状態になった。
まさか、全裸・仁王立ちの状態でエリィに指示を出す日が来るとは……。

「あ、ああ……喜んで頂こう」

 エリィが俺の目の前に立っている。
今、エリィはヒールを履いていない。
黒いドレスに裸足である。
身長が同じぐらいなので、目線も同じぐらいの高さにあり、見つめ合っている。
いつもの冷たい表情ではなく、何だか照れているので可愛い。
すぐにフルボッキの状態になってしまったぞ……。

「どうぞ……」

 そう告げると、エリィが俺の股間に尻尾の先端を近づけた。
チンコと尻尾の先端が触れるか触れないかのところで、尻尾の動きが止まる。
エリィは俺の瞳をジッと見つめた後で、亀頭を尻尾で包み込む。
こ、これは本当に気持ち良いのだが、俺は必死に声を押し殺す。
俺が喘いでしまったら、そのままエリィにコントロールされしまいそうで怖い。
よし、エリィから目を離さないぞ……!

「……ど、どうだ? 気持ち良いか?」

 エリィがうつむきながら俺に問い掛けた。
その視線は俺の性器に向いている。

「あっ! あぁ……とても気持ち良いです。す、素晴らしいですよ……エリィ様」

 喘いでしまったが、いつもよりは格段に抑えることができているはずだ。 
俺は声を抑えながら、エリィにしっかりと目を向け続ける。
やはり、彼女の様子はいつもと異なっていた。
遠慮がちに、そして恥ずかしそうに、俺の顔を見たり、股間の方を見たりしている。
やがて、尻尾が上下にスライドし始めた。
亀頭を包み込まれた俺のチンコは、天井に向かって激しくそそり立っている……!

「……どうだ? ど、どうなんだ?」

 エリィが遠慮がちに俺の様子を伺ってくる。
し、新鮮だなぁ。
エリィのこの態度。
綺麗な顔は相変わらずだ。
黒いドレスから溢れんばかりの美白オッパイの迫力もさすがだぜ……!

「くっ! うぅっ……! き、気持ち良いですよ! エリィさまぁっ!」

 エリィの尻尾の内部から分泌される液の量が多くなってきた……!
な、内部のヒダヒダが、小刻みに、そして的確に動く!
こ、これは本当に、この世のものとは思えないほど気持ち良いんだ……。
はっ! い、いかんいかん……!
俺が誘惑されてはいけないぞ!
気を抜くと、すぐさまエリィに魅了されそうになってしまう……!
マ、マリエーヌ……! マリエーヌのことを思い出すんだ!
大切なマリエーヌ! マリエーヌを助ける! マリエーヌのおっぱい!

「あぁっ!! あああぁっ……!?」

 や、やばい……!!
マリエーヌとのセックスを思い出してしまった!
俺の脳裏に焼き付いているマリエーヌの力が加わることにより、気持ち良さが跳ね上がってしまったぞ!
しかも、マリエーヌのアソコもこれだけ気持ち良かったら……とか、一瞬だけ思ってしまって、最低な男だな、俺は!
マリエーヌはマリエーヌだ……!!

「そろそろ……出るか?」

 俺の様子を見て、エリィが質問した。

「で、出ますよ……!」

 は、早いけど……まぁ、いいか。
ここで頑張って射精するのを耐えても、あまり意味はないと思う……!

「で、出てきた! ついに出てきたぞ……!」

 エリィが目を見開き、俺の股間を見つめながら喜び始めた。
俺の精子が尻尾の中にドクドクと放出される。
感覚的には、ちゃんと濃いのが出ていそうな気がする。
濃ければ美味しいのかどうかは分からんが……。
あ、エリィはすぐにバキュームしたみたいだ。
精子が吸い込まれていっているようだな……。
お……彼女は尻尾を俺のチンコから外したぞ。
次の瞬間、目の前のエリィが恍惚こうこつの表情をしながら大声を出す。

「……美、美味!! 美味だ! なんて素晴らしいんだ……!」

 エリィが部屋の中を飛び回るんじゃないかってぐらい喜んでいる。
子供みたいに無邪気な笑みを浮かべてハシャいでいるぞ。
まぁ、俺はこの2週間、ちゃんと規則正しく生活していたからな。
オナニーも最小限に抑えた。
濃いから良かったのかどうかはやはり分からないが、とにかく良質な精液だったのだろう。
まぁ、単純に2週間振りの搾精だったから喜んでいるだけかもしれないが……。
とにかく……上手くいったな。
 そういえば……エリィは満足そうなのだが、俺はいつもよりは気持ち良く感じなかったな。
まぁ、脳内マリエーヌのおかげで、すぐに絶頂に至ったが……。
アヒラメ族の精液によってエリィが魅了状態みたいになっているので、彼女の特性である周囲への『魅了』が薄れているのだろうか?
それとも、俺が近ごろM男と化しているので、このシチュエーションは全く響かなかったのか……。
まぁ、考えても分からないな。
 とにかく俺は今、賢者タイムである。
……ん? なんかエリィがモジモジし始めたぞ?

「……どうしたんですか、エリィ様?」

「そ、その……次の精液を……」

 おっと……さすがにそこは譲らないのか。

「え? もう1回ですか?」

「……」

 俺が渋ると、彼女の表情が不満そうな感じに変わってきたぞ。
こ、これはマズい流れだぞ……!

「エリィ様……そんなに欲張っちゃダメですよ。お楽しみは、また明日にしましょう」

 俺の精液の回復力は変わっていない。
2週間溜め込んだから、今日ぐらいは何連発か出しても問題ないだろう。
エリィのミルクがあれば、100発ぐらいイケるかもしれない。
しかし、そんな性生活を許していたら、俺の精液の回復力が全く変わっていないことがすぐにバレてしまう。
というわけで、あまり無駄に発射したくはない。
 ……何より、俺の感情的にもエリィに搾精される回数は最小限にしたい。
俺はエリィのことを美しいと思い、精子を搾取されてしまっているが、気持ちは本当にマリエーヌ一筋なんだよ……。
マリエーヌのアソコがエリィの尻尾のようにもっと気持ち良かったらいいのに、とかゲスいことを考えてしまったけども、本当にマリエーヌ一筋なんだ……!
 とは言え、濃縮液を使ったエリィへの誘惑はこれからも定期的に行なわなくてはならないんだけどね。
濃縮液の効果は3日ぐらいで切れてしまうからな。
再び誘惑する際は、ちゃんとエリィをコントロールするために、今回のように少なくとも1回は搾精されることが必要となりそうだが、これは仕方がない。
とりあえず今は、エリィの気持ちが収まりそうにないので、明日にもう1回だけ搾精される約束をしておこう。

「な……そんな……なぜだ? なぜ明日まで待たなければ……?」

 エリィが絶望的な表情をしている。
だ、大丈夫か……?

「美味しいものを食べ続けたら、すぐに飽きてしまいますよ。明日、また1回やりましょう」

「そ、そんな……。それでは、以前と変わらない、いや……1回だけなんて、前よりも物足りないじゃないか……。二週間も待ったのに……」

「エリィ様……お楽しみは、たまにあるからいいんですよ。たった1回だからこそ、その時を大切に思いますよね? ……今日のエリィ様は、とても幸せそうでしたよ?」

「あ、ああ……。それも……そうか。わ、わかった……」

 マ、マジか……。
言うことを聞いたぞ。
プロトンの精液の濃縮液、スゴ過ぎるだろ……。
けど、エリィの顔を見てみると、ちょっとに落ちない感じの表情に見えるな。
いきなり感情を爆発させないでね……。

「……では、今日は僕の部屋に戻りますね」

「そ、そんな……」

「同じ部屋にいたら、エリィ様は我慢できませんよね? ……ちゃんと我慢できたら、また明日に精液をあげますから」

「う、うむ……」

「約束ですよ? 今日はここでゆっくり寝て下さい」

「……うむ」

 よし……なんとかなったか?
これ以上、エリィに余計なことを言われるとボロが出てしまうかもしれない。
このまま部屋で大人しくしていてね。
 あとは、マリエーヌの救出をお願いしないとな……。

「では、マリエーヌ様を……人質にしている魔女を解放してもいいですね?」

「う……。しかし……やはりこれでは以前と頻度があまり変わらないじゃないか……。約束が違う……。本当に貴様の精液の回復は早まっているのか?」

 や、やっぱり納得していなかった……!
うぅ……ちょっと上目遣いでこっちを見ているぞ。
濃縮液の効果は、対象を完璧に服従させるようなものではないわけだな。
ミルフィーヌの研究が成功していないんじゃないか……と、疑う気持ちがエリィにはあるんだ。

「……ええ。疑っているんですか?」

「い、いや……そういうわけではないが」

 と言いながらも、エリィの目は俺を疑っている気がする。
これは……彼女をどう納得させたらいいのだろうか?
どのように説明したら、『俺の精液の回復が早まっている』という嘘を、本当のこととして納得してもらえるのだろうか?
嘘をつき通すためには、何らかの嘘の実験結果を言わなくはならない……。
そんな嘘をつくのははばかられるが、致し方ない。
ミルフィーヌも、エリィに嘘をついて別の実験をしていたわけだから、この点についてはエリィに問い詰められても俺と話を合わせてくれるだろう。
けど、『俺の精液の回復が早まっている』という嘘の実験結果を言ったところで、俺が1回あたり1発しか搾精を許していなかったら、『その実験結果は、本当なの……?』って疑われ続けちゃうよね。
論より証拠を示してね……ってことだ。
 ……い、いや、待て、ミルフィーヌの言葉を思い出せ。
ミルフィーヌが言っていた。
『この勝負は感情が大事なんだ』……と。
理論や証拠というよりは、むしろ感情だ。
エリィを感情的に説得して納得させるんだ。
彼女の感情に訴えかけろ、俺。

「……本当の気持ちを言いましょう。僕は、心からエリィ様に精液をあげたいと思った状態で、精液をあげたいんです。毎日毎日、射精していたら、僕は疲労して辛い気持ちになります」

 エッチにおいては、身体が気持ち良いというだけではなく、男女の気持ちがとても大切である。
昔付き合っていた子に、『こんなに気分が乗らないのに、エッチなんかできるかボケ!』……と、ベッドでののしられたことはある。
お互いにコンディションを整え、日頃から愛情を注ぎ合い、その上でエッチを行なうのが理想的だろう。

「エリィ様も、僕も、2人とも幸せな気持ちで行為に至りたいんです。……言いづらいんですけど、エリィ様は自分のことばっかり考えているんじゃないですか?」

 どうだ……? エリィ?
響く? 響くかな!?

「……なぁっ!?」

 ひ、響いている……!!
『も、申し訳ない……!』みたいな表情をしているぞ……!?
事前にシミュレーションしても何も浮かばなかったが、いざ本番になったら、わりと良いセリフが出てきたな。
これは今までの俺の恋愛経験の賜物たまものなのだろう。
重大な局面、俗に言うところの修羅場では、このようなアドリブ力が試される。
このようなアドリブ力は、経験によってつちかわれていくものだ。

「エリィ様……僕の気持ちも大切にして頂けますか?」

「き、気持ち……」

「そうです、エリィ様がブルーのことを考えるときのように、僕の気持ちも考えて下さい」

 エリィはパワハラ傾向にあるが、ブルーや仲間のことはちゃんと考えている一面を持つ。
城の運営をしているわけだしな。
エリィの感情に訴えかけられるか?
感情とは言っても、なんか理屈っぽい言い方になっちゃったけどね。
感情の……理屈だな!
いや、これはよく分からんが、俺の気持ち……通じてくれ!
……お? エリィの表情が穏やかになってきたぞ!?

「わかった……貴様の気持ちを考える」

 おっと!?
エリィ……堕ちちゃいました!

「では、今日はこれで終わりです。人質にされている僕の仲間の魔女……マリエーヌ様を解放してくれますね?」

「ああ。ブルーに頼んでくれ……」

「わかりました。では、また明日。お休みなさい」

「ああ、おやすみ……」

 エリィがちょっと落ち込んでいる感じだ。
自己嫌悪なのか、搾精を思い通りにできなかったからなのか、本当のところは分からないが……。
とにかく、大人しく眠りにつくようだぞ。
す、すげぇな、濃縮液のパワー。
説得も上手くいって良かった……。
なんかエリィに申し訳ない気持ちがして胸がチクチクするが……!
まぁ、こうでもしないと、みんながエリィの奴隷になるところだったからね。
致し方ない……!!
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