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第八章
53・狙われたふたり
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「うん、まことの名じゃ。よう思い出した」
なぜかりんは、老成した大人のように、静かに微笑んで頷いた。
「われが教えても良かったが、それよりみずからのほうが、いろいろ開きやすい」
「開きやすい?」
するとりんは、すっと立ち上がり、キイロの手を取った。
「まことの名でしか、守護は得られぬ。ありがたく頂戴いたします、と言え、木蘭」
「―――――ありがたく、頂戴します?」
「それで良い」
うん、とりんは頷いた、その時だった。
「蘇芳キイロだな」
暗闇から、スーツの男が現れた。
どう見てもここの客じゃない様子に、キイロはさっとりんを背後へ隠した。
「何の用です」
「お前にはない。そちらの子をよこせ」
「なに言って」
するとりんは噴出した。
「われはわれのものじゃ。誰のものでもない」
「りんちゃん、いますぐ朧様の所へ」
「必要ない。あやつはすぐ来る」
りんの言葉に、スーツの男は焦った様子を見せたが、りんの言葉通り、すぐに朧が外へ来た。
「どうしました!」
「朧様、この男がりんちゃんをよこせと」
「貴様、警察の、いや、橡局長の差し金だな?」
朧が問うと、男は口をつぐんだ。
「あきれたものだ。陛下のお情けで肩書を頂戴しても尚、このような事を」
「うるさい!貴様らになにが判る!」
そういって男は銃を構えた。
さっと朧がキイロとりんを背後で守る。
「言っておくがわたしに銃は通用しない」
「知っているとも。だが、この弾が『あるお方』の呪いを受けているとしても、涼しい顔で居られるかな?」
朧はさっと顔色を変えた。
「そこまで愚かなのか、あの方は」
「!あのお方への侮辱は許さん!」
そういって男は引き金を引いた。
朧はとっさに男の前に飛び出した。
瞬間、男の前には氷の壁のようなものが出て、弾の勢いを防いだ。
氷はすぐに消え、朧は躊躇なく男の銃を掴み、手首を捻り上げた。
「ぎゃあっ!」
「観念しろ。お前にはいろいろ喋って貰う必要がある」
男の腕を捻り上げた朧だったが、突然肩を押さえてしゃがみ込んだ。
「ぐっ」
「朧様?!」
「ハハ、馬鹿め。俺が一人で来るとでも……」
そういって男は突然、ずるずると力なく倒れ、こと切れた。
「おい?」
はっと朧が顔をあげるが、どこからか男は音もなく撃たれており、とっくにその命は消えていた。
(口封じか)
これでは身元を探すのも一苦労か、と思って朧はため息をつく。
その瞬間、肩に酷い痛みが走った。
「ぐ、」
「朧様?」
慌てるキイロに、朧は「大丈夫です」と返すが、顔色はますます悪くなる。
「すみません、いますぐ厨房へ行ってください。この時間なら青白がいます。そして縹を連れて来いと伝えて頂けますか」
「は、はい!」
キイロは朧のただならぬ様子に、厨房へ向かって走って行った。
残されたのは朧とりんの二人だった。
「やれ、情けないことよ。呪いを受けるとは」
「全くです。油断していました」
場所が場所だけに、隠れるところもないと思い込んでいたが、敵は割と厄介らしい。
「あなたたちが無事で良かったです」
「ふむ。大儀である」
飄々とりんはそう返す。
その様子に、朧は痛みを感じつつも、笑ってしまった。
「そのご様子では、随分といろいろおわかりになられるようだ」
「まあまあ判り始めたぞ。思い出しもしたし、実はなろうと思えば、もうすこし大きくもなれる」
そういえば、りんは今日はずっと同じ姿のままだ。
いつもなら、とっくにどこかで大きくなっているようなのに。
「すでにお姿も、変えられるのですか」
「意思を持って、そうならないようにしておるというところじゃ。まま、今日の服装は気に入っておるしの」
「そうですか」
朧はやっぱり笑ってしまった。
「なにがおかしい」
「いえ、こんな時でも、落ち着いておられるものだと思いまして」
りんが見た目通りの子供でない事は朧には判っている。
徐々に、元の姿に戻りつつあるのだ。
「そうじゃ、お前によい事をおしえてやろう。われはあの娘の守護についたぞ」
朧は目を見開いた。
なぜかりんは、老成した大人のように、静かに微笑んで頷いた。
「われが教えても良かったが、それよりみずからのほうが、いろいろ開きやすい」
「開きやすい?」
するとりんは、すっと立ち上がり、キイロの手を取った。
「まことの名でしか、守護は得られぬ。ありがたく頂戴いたします、と言え、木蘭」
「―――――ありがたく、頂戴します?」
「それで良い」
うん、とりんは頷いた、その時だった。
「蘇芳キイロだな」
暗闇から、スーツの男が現れた。
どう見てもここの客じゃない様子に、キイロはさっとりんを背後へ隠した。
「何の用です」
「お前にはない。そちらの子をよこせ」
「なに言って」
するとりんは噴出した。
「われはわれのものじゃ。誰のものでもない」
「りんちゃん、いますぐ朧様の所へ」
「必要ない。あやつはすぐ来る」
りんの言葉に、スーツの男は焦った様子を見せたが、りんの言葉通り、すぐに朧が外へ来た。
「どうしました!」
「朧様、この男がりんちゃんをよこせと」
「貴様、警察の、いや、橡局長の差し金だな?」
朧が問うと、男は口をつぐんだ。
「あきれたものだ。陛下のお情けで肩書を頂戴しても尚、このような事を」
「うるさい!貴様らになにが判る!」
そういって男は銃を構えた。
さっと朧がキイロとりんを背後で守る。
「言っておくがわたしに銃は通用しない」
「知っているとも。だが、この弾が『あるお方』の呪いを受けているとしても、涼しい顔で居られるかな?」
朧はさっと顔色を変えた。
「そこまで愚かなのか、あの方は」
「!あのお方への侮辱は許さん!」
そういって男は引き金を引いた。
朧はとっさに男の前に飛び出した。
瞬間、男の前には氷の壁のようなものが出て、弾の勢いを防いだ。
氷はすぐに消え、朧は躊躇なく男の銃を掴み、手首を捻り上げた。
「ぎゃあっ!」
「観念しろ。お前にはいろいろ喋って貰う必要がある」
男の腕を捻り上げた朧だったが、突然肩を押さえてしゃがみ込んだ。
「ぐっ」
「朧様?!」
「ハハ、馬鹿め。俺が一人で来るとでも……」
そういって男は突然、ずるずると力なく倒れ、こと切れた。
「おい?」
はっと朧が顔をあげるが、どこからか男は音もなく撃たれており、とっくにその命は消えていた。
(口封じか)
これでは身元を探すのも一苦労か、と思って朧はため息をつく。
その瞬間、肩に酷い痛みが走った。
「ぐ、」
「朧様?」
慌てるキイロに、朧は「大丈夫です」と返すが、顔色はますます悪くなる。
「すみません、いますぐ厨房へ行ってください。この時間なら青白がいます。そして縹を連れて来いと伝えて頂けますか」
「は、はい!」
キイロは朧のただならぬ様子に、厨房へ向かって走って行った。
残されたのは朧とりんの二人だった。
「やれ、情けないことよ。呪いを受けるとは」
「全くです。油断していました」
場所が場所だけに、隠れるところもないと思い込んでいたが、敵は割と厄介らしい。
「あなたたちが無事で良かったです」
「ふむ。大儀である」
飄々とりんはそう返す。
その様子に、朧は痛みを感じつつも、笑ってしまった。
「そのご様子では、随分といろいろおわかりになられるようだ」
「まあまあ判り始めたぞ。思い出しもしたし、実はなろうと思えば、もうすこし大きくもなれる」
そういえば、りんは今日はずっと同じ姿のままだ。
いつもなら、とっくにどこかで大きくなっているようなのに。
「すでにお姿も、変えられるのですか」
「意思を持って、そうならないようにしておるというところじゃ。まま、今日の服装は気に入っておるしの」
「そうですか」
朧はやっぱり笑ってしまった。
「なにがおかしい」
「いえ、こんな時でも、落ち着いておられるものだと思いまして」
りんが見た目通りの子供でない事は朧には判っている。
徐々に、元の姿に戻りつつあるのだ。
「そうじゃ、お前によい事をおしえてやろう。われはあの娘の守護についたぞ」
朧は目を見開いた。
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