神の手は祈りの形をしていない 〜「将来、異能力で犯罪を犯す」と予知されて隔離されたボクら。最弱能力で未来を塗り替える〜

陽々陽

文字の大きさ
50 / 62
013_その恋の、結末

013_2

しおりを挟む
 ましろに肯定されたような気がして、ユウは顔をほころばせた。

ユウ「そうだろ? ホントに、すごいんだ!」

 ましろは、少し困った顔で微笑んだ。

ましろ「でも、木がちょっとかわいそうかな……」

 ましろの言葉に驚いて、ユウは改めて木を見た。
 ……たしかに、刻まれた無数のキズが痛々しく見える。

ユウ「……別に、そんなこと……」

 急にばつが悪くなって、ユウは目を逸らした。

 ましろは地面から突き出した木の根に腰を下ろした。
 ユウは少し迷って、ましろのすぐ隣……肩が触れそうなくらい近くに座った。

ましろ「ルイくんと……ケンカした?」

 ユウはじっと地面の一点を見た。言葉を選んでから、口を開ける。

ユウ「アイツが、ボクのこと……泥棒みたいに、言うんだ」

 思い出すと、また腹の奥が熱くなってくる。

ましろ「それが、ユウくんはイヤなんだね」

ユウ「そりゃそうさ! トーマ……友達が能力をなくした原因みたいに言われてさ!

 本当なんだ! 本当に、ボク……」

 ユウは大きく息を吸った。

ユウ「ボクは盗ってない……盗ってないんだ……」

 涙がこぼれそうになって、膝に顔を埋めた。
 ましろはじっとユウの次の言葉を待った。

 少しの沈黙が過ぎて、ユウは顔を上げた。

ユウ「この、能力はさ、トーマに……その……

 託された……って思うんだ。

 そりゃ最初はいろいろあったけどさ……トーマも能力のコツを教えてくれたり、最後も練習しろって……
 だから、きっと……託されたんだって……

 今なら……トーマもそう思ってくれる……」

ましろ「……本当に?」

 ましろはじっと、ユウの瞳を見た。

ましろ「本当に、そう思う……?」

 ユウもましろの目を見た。目を逸らすことが出来ない。

 ぽろりと、ユウの目から涙がこぼれた。

ユウ「……本当は……」

 堰を切ったように、涙があふれ出した。

ユウ「……本当は、そんなはずないって……わかってる……」

 ユウは涙を拭った。しかし涙はさらに湧き出す。

ユウ「……トーマはまだ苦しくて、悔しくて……でもボクのために平気な顔しようとして……

 ……ボク……
 ……きっと、ボクが悪いんだ……
 トーマの異能力……は、きっと……ボクのせいで……」

 拭っても拭っても、涙が溢れた。

ユウ「……どうしてこうなったか、全然わかんないけど……
 多分、ボクのせいなんだ……
 ……ボクのせいで、トーマが、トーマが……

 ボク、どうしていいか……わからなくて……」

 ぱちん、と音がするほどの勢いで、ましろはユウの顔を両手で挟んだ。

ましろ「許すよ!」

 突然のましろの大声に、ユウの涙は一瞬、止まった。

ましろ「わたしが、許すから!」

 浮き島の隅まで響くくらいの声で、ましろは、もう一度叫んだ。
 夕焼けは二人を赤く染め、長く伸びる影を一つにした。

ましろ「本当は、なにが起きたのか、分からないし……
 わたしに言われても、困るかもしれないけど……

 ユウに、悪意がないって……わざとじゃないって……
 それは信じられるから。

 大丈夫!
 わたしが、ユウのこと許したから……ね?
 大丈夫……」

 ユウの涙は留めなく溢れた。
 しかしその涙は、さっきまでの涙と少し、違うような気がした。

ましろ「……大丈夫……大丈夫……」

 泣きじゃくるユウに、ましろは何度も言い聞かせた。

********

ユウ「……ごめん……」

 ひとしきり泣いてから、ユウは顔をそらした。

ましろ「それも、許します」

 ましろは優しい笑みを浮かべた。

ましろ「だから……もう、自分の心にウソついちゃ、ダメだよ……?」

 ましろの言葉が、ユウの中にすっと溶け込んだ。

 だから、かもしれない。

 ユウは思わず、なんの準備もしていない心を言葉にした。

 言葉にして、しまった。

ユウ「……ましろ……」

ましろ「ん?」

ユウ「ボクは……君が、好きだ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。 現代では中世近世史を研究する大学講師。 史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。 ならば変える。 剣でも戦でもない。 政治と制度、国家設計によって。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、 戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。 これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。 戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。 (2月15日記) 連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。 一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (当面、月、水、金、土、日の更新)

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...