15 / 21
番外編 遼太が頑張るifバージョン
悪夢のような恋人たち 【遼太】(2)
しおりを挟む
「あれ……菅井?」
名前を呼ばれて目が覚めた。
あー……まずい。俺まで寝落ちしちゃったのか。眼鏡をしたまま眠ってしまって、耳が痛い。
「おはようございます」
「どうしたんだ? え、なんで……」
「先輩酔いつぶれてたんで送ったんです。帰ろうと思ったら、先輩が一緒に寝ようってしがみついて離さなかったんで」
「嘘。ごめん、迷惑かけて悪かった」
「いえ、俺も眠り込んじゃってすいません。帰ります」
「ごめんな……こんな部屋で寝させて」
先輩は部屋の惨状に目をやった。酷いという自覚はあるらしい。
「研究室の机見てるんで驚かないですよ」
「そう……」
立ち上がって上着を羽織る俺を彼はぼんやりと見ていた。俺は抱きつかれてドキドキしたのに、彼は俺の腕の中で目を覚ましても平気そうな顔だ。なんとなく面白くなくて、ちょっとだけ意地悪したくなった。
「ゴウさんって、恋人ですか?」
「え!?」
それまでこちらを見ているようで焦点が合っていなかった彼が急に目を見開いた。頬に赤みが差している。
「なんで豪のこと……」
「ゴウ行かないでって、俺のことその人と勘違いして抱きついてきましたから」
「マジか。本当にごめん。気持ち悪いことして」
「いえ? 可愛かったですよ。先輩そうやっていつも彼氏さんに甘えてるんすね」
俺がそう言うと彼は目を泳がせた。かなり動揺しているみたいだ。実験のこと以外何にも興味が無さそうに見えたのに、ゴウって人の話するだけでこんなに表情が変わるのか。
「うらやましいな。俺も好きな人にそんな風にされてみたいです」
「え?」
「俺、こんななんで。恋人もいないし……甘えられる相手がいるの羨ましいです」
先輩は俺の言葉を聞いてふっとため息混じりに笑った。
「菅井……僕も同じだよ。恋人はいるけど、上手くいってないんだ。本当なら、甘えられるといいんだろうけどな」
「そうなんですか?」
「うん。みっともない所見られたから正直に言うけど――」
先輩は彼氏とのことを話してくれた。俺が人畜無害に見えるからなのか、多少なりとも心を開く気になったからなのかはよくわからない。とにかく、先輩の彼氏は最低のクズ野郎だということはわかった。
「運命の番だからって、そんなの酷いじゃないですか」
「うん……そうかな。もう僕もよくわかんないんだ。豪としか付き合ったことないし」
「普通じゃないですよその人。先輩が可哀想だと思わないのかよ」
「ありがとう、僕のことなのにそんな怒ってくれるなんて思わなかった」
先輩が微笑む顔が痛々しくて胸が苦しくなった。俺はちょっとした意地悪気分でこの件をつついたことをちょっと後悔していた。
「先輩は、その人が好きなんですか?」
俺が聞くと彼はふと目を逸らして部屋の一角を見つめた。
「好きなんだ。どうしようもなく好きで……浮気されても、戻って来ると安心しちゃって。突き放せないんだ」
「先輩……だめだよそんなの」
「うん。自分でもわかってるんだけどな」
彼氏のやり方はほとんどDVみたいなものだ。こんな目に遭ってるせいでこの人こんな妙な雰囲気なのか。長い間、初めての恋人に大事なものを奪われ続けてるから、こんな複雑な匂いがするんだ。まだ青く、固くて食べられない果物の香りがするかと思えば、熟れすぎたフルーツのように甘くも香る。
俺を誘惑しようとして発せられるオメガの匂いは不快極まりないけど、この人は俺に興味がない。だから、俺はこの人への好奇心を抑えられないんだ。
名前を呼ばれて目が覚めた。
あー……まずい。俺まで寝落ちしちゃったのか。眼鏡をしたまま眠ってしまって、耳が痛い。
「おはようございます」
「どうしたんだ? え、なんで……」
「先輩酔いつぶれてたんで送ったんです。帰ろうと思ったら、先輩が一緒に寝ようってしがみついて離さなかったんで」
「嘘。ごめん、迷惑かけて悪かった」
「いえ、俺も眠り込んじゃってすいません。帰ります」
「ごめんな……こんな部屋で寝させて」
先輩は部屋の惨状に目をやった。酷いという自覚はあるらしい。
「研究室の机見てるんで驚かないですよ」
「そう……」
立ち上がって上着を羽織る俺を彼はぼんやりと見ていた。俺は抱きつかれてドキドキしたのに、彼は俺の腕の中で目を覚ましても平気そうな顔だ。なんとなく面白くなくて、ちょっとだけ意地悪したくなった。
「ゴウさんって、恋人ですか?」
「え!?」
それまでこちらを見ているようで焦点が合っていなかった彼が急に目を見開いた。頬に赤みが差している。
「なんで豪のこと……」
「ゴウ行かないでって、俺のことその人と勘違いして抱きついてきましたから」
「マジか。本当にごめん。気持ち悪いことして」
「いえ? 可愛かったですよ。先輩そうやっていつも彼氏さんに甘えてるんすね」
俺がそう言うと彼は目を泳がせた。かなり動揺しているみたいだ。実験のこと以外何にも興味が無さそうに見えたのに、ゴウって人の話するだけでこんなに表情が変わるのか。
「うらやましいな。俺も好きな人にそんな風にされてみたいです」
「え?」
「俺、こんななんで。恋人もいないし……甘えられる相手がいるの羨ましいです」
先輩は俺の言葉を聞いてふっとため息混じりに笑った。
「菅井……僕も同じだよ。恋人はいるけど、上手くいってないんだ。本当なら、甘えられるといいんだろうけどな」
「そうなんですか?」
「うん。みっともない所見られたから正直に言うけど――」
先輩は彼氏とのことを話してくれた。俺が人畜無害に見えるからなのか、多少なりとも心を開く気になったからなのかはよくわからない。とにかく、先輩の彼氏は最低のクズ野郎だということはわかった。
「運命の番だからって、そんなの酷いじゃないですか」
「うん……そうかな。もう僕もよくわかんないんだ。豪としか付き合ったことないし」
「普通じゃないですよその人。先輩が可哀想だと思わないのかよ」
「ありがとう、僕のことなのにそんな怒ってくれるなんて思わなかった」
先輩が微笑む顔が痛々しくて胸が苦しくなった。俺はちょっとした意地悪気分でこの件をつついたことをちょっと後悔していた。
「先輩は、その人が好きなんですか?」
俺が聞くと彼はふと目を逸らして部屋の一角を見つめた。
「好きなんだ。どうしようもなく好きで……浮気されても、戻って来ると安心しちゃって。突き放せないんだ」
「先輩……だめだよそんなの」
「うん。自分でもわかってるんだけどな」
彼氏のやり方はほとんどDVみたいなものだ。こんな目に遭ってるせいでこの人こんな妙な雰囲気なのか。長い間、初めての恋人に大事なものを奪われ続けてるから、こんな複雑な匂いがするんだ。まだ青く、固くて食べられない果物の香りがするかと思えば、熟れすぎたフルーツのように甘くも香る。
俺を誘惑しようとして発せられるオメガの匂いは不快極まりないけど、この人は俺に興味がない。だから、俺はこの人への好奇心を抑えられないんだ。
34
あなたにおすすめの小説
人生2度目に愛した人は奪われた番の息子でした
Q矢(Q.➽)
BL
幼馴染みだったαの村上 陽司と早くに番になっていた南井 義希は、村上に運命の番が現れた事から、自然解除となり呆気なく捨てられた。
そして時が経ち、アラフォー会社員になった南井の前に現れたのは、南井の"運命"の相手・大学生の村上 和志だった。同じビルの別会社のインターン生である彼は、フェロモンの残り香から南井の存在に気づき、探していたのだという。
「僕の全ては運命の人に捧げると決めていた」
と嬉しそうに語る和志。
だが年齢差や、過去の苦い経験の事もあり、"運命"を受け入れられない南井はやんわりと和志を拒否しようと考える。
ところが、意外にも甘え上手な和志の一途さに絆され、つき合う事に。
だが実は、村上は南井にとって、あまりにも因縁のありすぎる相手だった――。
自身のトラウマから"運命"という言葉を憎むアラフォー男性オメガと、まっすぐに"運命"を求め焦がれる20歳の男性アルファが、2人の間にある因縁を越えて結ばれるまで。
◆主人公
南井 義希 (みない よしき) 38 Ω (受)
スーツの似合う細身の美形。 仕事が出来て職場での人望厚し。
番を自然解除になった過去があり、恋愛感情は枯れている。
◆主人公に惹かれ口説き落とす歳下君
村上 和志 (むらかみ かずし)20 α (攻)
高身長 黒髪黒目の清潔感溢れる、素直で一途なイケメン大学生。 " 運命の番"に憧れを抱いている。複雑な事情を抱えており、祖父母を親代わりとして育つ。
◆主人公の元番
村上 陽司 (むらかみ ようじ) 38 α
半端ないほどやらかしている…。
【BL】声にできない恋
のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ>
オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。
運命はいつもその手の中に
みこと
BL
子どもの頃運命だと思っていたオメガと離れ離れになったアルファの亮平。周りのアルファやオメガを見るうちに運命なんて迷信だと思うようになる。自分の前から居なくなったオメガを恨みながら過ごしてきたが、数年後にそのオメガと再会する。
本当に運命はあるのだろうか?あるならばそれを手に入れるには…。
オメガバースものです。オメガバースの説明はありません。
さよならの向こう側
よんど
BL
【お知らせ】
今作に番外編を加えて大幅に加筆修正したものをJ庭58で販売しました。此方の本編を直す予定は御座いません。
BOOTH
https://yonsanbooth-444.booth.pm/items/7436395
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った''
僕の人生が変わったのは高校生の時。
たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。
時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。
死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが...
運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。
(※) 過激表現のある章に付けています。
*** 攻め視点
※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様
(無断転載×)
クローゼットは宝箱
織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。
初めてのオメガバースです。
前後編8000文字強のSS。
◇ ◇ ◇
番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。
美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。
年下わんこアルファ×年上美人オメガ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる