転生したらオメガだったんだけど!?

灰路 ゆうひ

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ピクニック日和と、『首輪の効果は絶大だっ!』

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 俺は困惑している。
 なぜなら、今日は登校した瞬間から、学校中のみんなから注目されて、お祝いを言われたり、遠巻きにひそひそされたり、拝まれたり(?)しているからだ。
 ナニコレ…ナニコレ。
 え?これが首輪の影響…?雅孝の首輪の影響力、デカすぎない?

「あっ、あっ、あああ、あの、並河くんっ!オレたち、東雲くんと同じクラスなんだけど…。急に話しかけて…その、ごめんね?…ふああ…だめだっ、可愛すぎて、いい匂いすぎて、何言おうとしたのかぶっ飛んじまった…!」

「し、しっかりしろ!うっわ、何このいつにもましてガッチガチの威嚇フェロモン…!東雲くん、容赦なさすぎだろ…!ひっ、でも、こっちを見てる並河きゅん、可愛すぎて瞬きすら惜しい…!」

 それに。Sクラス組の雅孝と親衛隊の2人と一旦別れた途端、やたら整った容姿の、キラキラした男女に入れ替わりで声をかけられた。(しかもSクラスのみなさん、なぜか微妙に挙動が不審というか、キャラが濃い)
真っ赤なお顔や真っ青なお顔で、ぷるぷる震えながら、こわごわじりじり距離を縮めてくる。

 …んん?何か、俺の目には見えないような、バリアーみたいなのがはってあるの?よくわからないけど、みんな、近づきたいのに、何かの強めの抵抗を受けてるみたい。全然すっと近づいて来ないじゃん。

「おはようございます!何かご用ですか?」

 俺からそっと近寄って声をかけると、その二人はなぜか、膝から崩れ落ちて号泣しはじめた。

「ンんんっ!!ガワイイ…!うっそだろ、あの並河きゅんにおはようって言って貰えたっ…!存在を認識してもらえたっ…」

「うううっ…一生、俺なんか並河きゅんの視界に入れないって思ってたけど…!勇気を振り絞って話しかけてみて本当に良かった…!」

 並河…きゅん? 
 リアクションに困っちゃった俺がオロオロしていると、マメシバ隊のみんながずずいっと前に出て、その人たちを優しく助け起こし、

「みっちゃんの可愛さと尊さに震えて感極まる気持ちは……痛いほど!痛いほどわかりますけど。朝のホームルームのお時間が迫ってますから、ご用件をお願いします」

 と、同情に満ちたまなざしで、そっと雅孝のクラスメイトさんたちを促した。
 可愛いとか尊いとか、みんなよく俺に対して言うけど。これは仲良しのお友達同士のあれよね。定番のイジリ文句っていうか定番のネタ。そういうのだと理解している。
 いやいやいや、さすがの俺も、そのままの意味で受け取ったりしないよ?毎日身だしなみのために鏡を見て、身の程は弁えておりますので。

「あ、ごめん、並河くん!東雲くんとのこと、おめでとうございます!お幸せに!」

「おめでとうございます!どうかお幸せに!」

 満面の笑顔でお祝いされて、俺は内心(まだお付き合いしてないんだけどなあ…)と思いながら、空気を読んで「どうもありがとうございます…」と言った。
 いや、最初は必死になって訂正してたんだけど、
「またまた~!東雲くんの首輪をしてきたってことは、そういうことなんでしょ?分かってる分かってる!照れちゃっても~!」
 って言われるだけだって学習したんだ。

 俺がうかつでした。東雲親子の「洗い替え用に、気軽に着けてくれたらうれしいな!」っていう発言をそのまま鵜呑みにして、お言葉に甘えてしまった。そのことで周りからどう見えるのか、わかってなかったんだよね。
 はあ…俺ってやっぱり、オメガとアルファの常識や、恋愛方面のお勉強が足りないんじゃないかなあ。
反省。これからは、ちょっとずつ恋愛についてのお勉強もしていかないとね。

「それで…お願いなんだけど、俺たちも素敵な『運命』に出会えるように、並河くんのかわいいお声で『がんばれ』って言ってもらえないかな…?」

「そしたら、俺らめちゃくちゃ頑張れるから!幸せを掴める気がするから!お願いします!」

 なんじゃそりゃあ!
 俺は二人のご用件がナナメ上すぎて、お口を開けてぽかんとしてしまった。
 『運命』って、なんだかスケールのデカいこと言ってる!え?何だかわからないけど、俺、責任重大じゃん!

 俺はお二人にお名前を聞いて、どうか今後の人生に幸あれと心を込めて、ひとりひとり両手を取って言った。

「かずさくん、がんばれっ!」「あまねくん、がんばれっ!」

「「あああああ…!!!ありがとうございます~!!!かわいいいぃ…!」

 また再び、地面に崩れ落ちて号泣しはじめてしまったので、俺たちはご挨拶して教室に急ぐことにした。
 …マジでなんだったんだ?

「いいなあ、みっちゃんにがんばれって言われたら、百人…いや、億人力だよね~」

「ですです。めっちゃがんばれちゃうやつ!」

 教室に向かいながら、マメシバ隊のみんながしきりに羨ましがった。

「いやいやいや、俺のがんばれ!ごときにそんな効能ないからね?…というか、なんだよ『運命』に出会うって。ベートーベンかよっ?」

 俺が笑いながらナイナイ、って手を振ってたら、みんな歩く速度はそのままに、びっくりした顔で俺を見て、お互い目くばせしあって…なんとも言えない、カワイイ孫を見るおじいちゃんみたいな優しい表情で俺を見てきた。…なにさ!

「ああ…『運命』って。みっちゃんよくわかってなかったのか…」

「ホラ、みっちゃんはおニブちゃんだからさ。恋愛モノとかそういうの、お家で見せて貰ってないんでしょ」

「なんという純粋培養…ご家族、グッジョブです」

「みっちゃん…純粋無垢でかわいいです~!」

 ちょっ、またおニブちゃんって言った!失礼しちゃう!

「なんだよ~!『運命』っていったらベートーベン一択でしょうがあ!」

「「「きゃ~っ!きゃっきゃっ!」」」

 俺たちは、声を抑えつつ、若干速足で(校則で、廊下を走っちゃいけないからね!)教室に移動したのだった。



「ふんふ、ふんふ、ふ~ん♪」

 俺は、ゴキゲンで鼻歌を鼻ずさみつつ、ちっちゃくゆれながら美術の授業のお片付けで、筆洗と筆を洗っていた。
 美術室の洗い場は、同じクラスのみんなが殺到して混んじゃったから、俺とかえでくん、すみれくんをはじめとした、マメシバ隊から美術の選択授業を選択している3人は、一階下の廊下の空いてる洗い場を借りて洗ってるんだ。
 あ、なんとね、中学からはかえでくんも一緒のクラスになれたんだよ!小学校では残念ながら一回も一緒になれなかったんだけど…ラッキーだよね。うれしい!

「ふふふっ、どうした、みつき。ゴキゲンだな?」

「うん!だって、今日はこの後、みんなで外でピクニックランチでしょ?俺、ちょうどいい陽気のときに、わいわい外で食べるの大好き!」

「「「わかる~!!!」」」

「うんうん、気持ちいいもんな~」

 そうなのだ。今日は、天気もいいし、春のちょうどいいぽかぽか陽気だし。学校の外に作られたテーブル席で、ピクニック気分でランチにしようかって事になったんだ。
 ちょうど、今日のランチは屈強さんのおいしい特製サンドイッチを作って貰ってきたんだ。みんなの分もたっぷりね。
 それに、月曜日だし、かえでくんと紅林先輩もご一緒できる曜日だしね。
 かえでくんも、マメシバ隊のすみれくん、しのぶくん、あずさくんもニコニコ嬉しそう。うんうん、ピクニックってちょっと特別感があって、気分がアガっちゃうよね。

「芝生広場のスペースもあるから、今度は敷物をもってきて、本格的にピクニックっぽくしてやってみても楽しいかもね!」

 すみれくんがナイスなアイディアを出してくれたので、おれたちは「それいい~!!」と目を輝かせながら、荷物をまとめて、うきうきと他のみんなとランチの待ち合わせをしている外のテーブル席に向かった。

 ところが、その道中だった。

「…なにあれ、マジでむかつくよね~」

「ほんとほんと、見せびらかしに来るなんて、ホント性格悪いよね~」

 あっ。女の子たちが、影でこそこそ悪口を言ってるのが聞こえてきちゃった。
 ひと気のない、空いてる洗い場に洗いに来たのがあだになってしまったみたい。
 お手洗いで集まって悪口を言ってる声が、興奮してるのか結構大きな声で話していて、廊下から丸聞こえ。
 俺、結構女の子の悪口に、いい思い出なくってさ。すごく苦手なんだよね。
…俺のこと、言ってるんじゃないといいなあ…。
 できるだけ聞きたくないから、足を速めて通り過ぎようとしたら…

「「「並河、マジでイラつくよねええ~!!!」」」

…ほらああああ…。やっぱり、また俺の話してるじゃん。
俺、俺、ほんと女の子達に何かしましたっけ。むしろ、前世も含めて三十秒以上家族以外の女性と話した事すらないんですけども…。目すらあわないんですけども…?

「何あの、たっかそうな首輪!しかも、東雲様の雲のマーク、これ見よがしに自慢げに着けてきてさ~!ぜんぜん似合ってないっつの!」

「しかもさあ、お付き合いおめでとう!って言われてるのに、『あのお、違うんです、お付き合いなんてしてないんですぅ~』とか言ってたらしいよ!」

「「「え~~~!!!わざとらしい!!!」」」

「東雲様の首輪、どうせめちゃくちゃおねだりして買って貰ったくせに、しかも学校に着けて来たくせにさ、カマトトぶって、え~?お付き合いってなんですかあ?みたいな顔してんの、やりすぎててキモイよね~。」

…あっ。
聞いちゃダメだ、こんなの聞いちゃダメ。はやく通りすぎて、聞こえなかったことにしなくっちゃ。
そう思って廊下を速足で進むけど、女の子たちのイジワルな声はどこまでも追いかけてくる。

「みっちゃん…あんなの、気にしちゃダメ、です」

「そうだぜ、あんなの、良く知らないやつがやっかんで、勝手に言ってるだけだから」

マメシバ隊のあずさくんと、隣のかえでくんも心配して声をかけてくれる。
大丈夫、気にしてないよって、笑おうとして、父ちゃんのお弁当屋さんを中傷する声が聞こえて来た。

「そうそう!あのかたに比べたら、並河なんて…ただの安っぽい駅前の弁当屋の子でしょ?」

「さすがに引くわああ。東雲さまのホントの『運命』でもないくせにさあ!」

 …自分の事は、悪く言われたっていい。…本当は、悲しいけど。痛いけど。我慢できる。…でも、大好きな家族の事を、毎日頑張って働いてくれている父ちゃんの事を悪く言われるのは…。
 絵具セットのカバンの取っ手を握る手に、ぎゅっと力がこもる。くやしさで、下唇をきゅっと噛みしめる。急いでいた足が、ゆっくり止まってしまった。
動け…足…。もうこれ以上、聞きたくなんてないのに。

その時。

たったったったったっ…ドンッ!!!!

「「聞こえてんぞおらあああああ!!!!」」

すみれくんとかえでくんが、駆け出して女子トイレの入り口横の壁を蹴った。

「文句あんなら直接言えよ!!」

「影でこそこそ、いい加減な事、言ってんじゃねえぞコラ~!!」

二人が廊下から女子トイレに向かって怒鳴りつけた。
トイレの中から、ぎゃあああ!!!という悲鳴と、バタバタバタっと走り回るような足音が聞こえてきて、しーんと静まり返った。

 いやいやいや、こえーって!!
 女の子相手に、容赦なく腹から声出して怒鳴るじゃん!いや、たしかに腹は立ったけどさ。
 もっとまろやかに、優しく言ってあげてよ~。

「さっ、あんな最低なやつらほっといて、ランチ行こうぜ~」

「悪口言ってた子、全員、声でどの子かわかりました。あとで親ともども呼び出して、こってり絞ったあと、謝罪させます!」

「あ~、怒鳴ったらお腹すいちゃったよ。はやくごはん行こ!」

ぐいぐいとお背中を押されて、えっ、えっ?と思ってるうちに、俺は雅孝や紅林先輩、他のマメシバ隊のみんなの待つ待ち合わせ場所に到着したのだった。

 えっ?あれっ?お手やわらかにね?
 俺、確かに悔しかったけど、中学校に進学早々、クラスの女の子たちが転校する展開、やめてよ…?
 俺は、ちょっと頼もしすぎる友達たちに、有難さと共に若干の不安も感じたのだった。
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