30 / 61
本編
28
しおりを挟む
頭を上げてお茶に手を伸ばすと、目の前に鋭い爪を持つ毛深い手に載せられた球体が差し出されました。
「ラウルさん、これは?」
「迷宮にいるゴーレムの核だ」
球体を掌に受け取って繁々と観察します。確かに、先程見たゴーレムの核と似ています。
「ん?」
のそりといった感じで、球体から土の精霊が顔を出しました。不貞腐れているというか、やさぐれているというか。かなり苛々しているようです。
ただ、おかげで分かったことがあります。
「魔石と精霊が一体化した状態というのは同じようですね。ただ、精霊がかなり不機嫌です」
「一体化している精霊の様子が違う?」
ラウルさんの唸り声が低くなっています。エレノアさんは何故か笑顔で申請用紙を用意しています。
「桜華さん。ゴーレムの考察ということで、申請お願いします」
言われるままに申請書の記入。エレノアさん達との話し合いで、精霊と魔石が一体化した状態の物を精霊石と呼ぶことになりました。
「書けたか。じゃ、これをやる」
ラウルさんからポンとゴーレムの核を手渡されました。
「高いものでは?」
「俺が持っていても見るしかできないが、お前なら有効活用できるだろ。やってみろ」
「はぁ。やってみます」
ギルドを出て、人の少ない建築予定地へ。
野次馬の皆さんに離れてもらうと、核の精霊と改めて向かい合います。
とりあえず話しかけてみますが、まったく聞いてくれている感じがしません。次の手段として、地表にいた土の精霊を掬い上げて核の精霊の前に置いて説得してもらいます。
すると、鼻をくっつけては離すを繰り返し始めました。会話でしょうか。精霊同士の交流は不思議なことばかりです。
暫くすると、二人の精霊がこちらに鼻を向けると、鼻を石に着けてから互いにくっつけて離し、こちらに向けて上下に振る。これを繰り返します。
思わず小首を傾げながら考えると、土の精霊達も揃って首を傾げます。
分からないことだらけですが、順番に考えていきましょう。
まずは鼻を石にくっつける。……石。あ、もしかして魔石?
鞄から土の魔晶石を取り出して精霊の前に持っていくと、掬い上げた方の精霊が飛びついて中に入ります。少しすると光を放って精霊石へと変化。精霊が首だけ出すと核の方へ鼻を向ける。
えっと、ここで互いにくっつけるで、良いのかな。
魔晶石と核をくっつけてみると、光を発して二つが一つになり、先程よりも光の明滅が強く、精霊の力を強く感じます。
あ。これ、他のもくっつけたらどうなるのでしょうか。
大樹のお陰か様々な精霊が集まってきているので、そっちの問題もありません。
鞄から火、水、風、雷、植、光、闇の魔晶石を取り出し、それぞれへ精霊に入ってもらい精霊石に変化させて核と合わせてみます。
すると、先程より強い光が発せられ、掌で包めるほどから拳大の球形へと変化。淡い虹色の光が核の周囲を漂い、核そのものは暖かい光が力強く明滅しています。
集まってきた精霊達に見守られながら、他のゴーレム達と同じ魔方陣を生成して核へと張り付けると、魔法陣が球の中へ閉じ込められ見た事のない形へと変異。一際強く明滅を始めたので、そっと地面へと下します。
次の瞬間、核を中心として魔方陣が大きく広がり、魔方陣の下になった地面が唸り蠢く。土が核を覆うように盛り上がっていき、五メートル程の巨人が立ち上がりました。
ゴーレムのデフォルトなのかのっぺりとしていたので、手を触れて造形を開始。球体関節は当然として、折角なので凝った意匠に挑戦しましょう。
思い描くのは、少し細めの全身鎧。ついでに、左腰に幅が広めの剣と、左腕に背丈半分ほどの大きさとなる細長い盾。
暫くするとゴーレムの体に皹が入り始めたので急いで離れます。皹が全身に行き渡ると、一気に割れて中から生まれ変わった姿が現れました。
想像した通りの姿ですが、鎧の縁に蔦の装飾が追加されています。それに、想像できなかった細かい処も作り込まれています。補填してくれたのでしょうか。武具を装備していないのは残念です。
しょうがないので、複合型精霊石を再生成して、剣と盾も作り出します。本当は魔法陣も貼り付けたかったのですが、魔力切れで断念。
地面に置かれた剣と盾の状態を見ていると、ゴーレムが唐突に眼の前で膝を折って頭を垂れました。
『主上。名を』
頭の中に直接響いてくる言葉は、ピンと張りつめた弦が鳴る様な高く澄んだ声で紡がれました。慌てて周囲を見ると、不機嫌そうなラウルさんと素晴らしい笑顔のエレノアさん。距離を取っている野次馬の皆さんにディンさんと、誰も彼もそれなりに距離があります。
『主上?』
とこか戸惑ったような声。目の前にいるゴーレムからと見て間違いないようです。
「ごめんなさい。名前ですね。えっと、名前は……クストース。とある国で守護を意味する言葉です」
『クストース。私の、名前』
声と体がが若干震えています。何か失敗したのでしょうか。
『賜りし守護を意味する名、クストース。この名に恥じぬよう、主上を守る盾となり、道を切り開く剣となりましょう』
「よろしくお願いします。クストース」
屈んでくれている状態とはいえ、私より大きくて頭には手が届きそうもありません。なので、腕に触れるだけにします。
それにしても、剣と盾は喋る様子がないですね。これは嬉しいです。さすがに剣と盾も喋り出すとどうしたら良いのか分からなかったので。
クストースに立ってもらい、とりあえず建築予定地の隅で待機をお願いします。
「ちょっと行かないといけない場所があるので、ここで待っていてくれますか?」
『分かりました。どうぞ、ごゆっくり』
「ありがとう」
さてと。まずはディンさんの処へ向かいます。私が近づくと、青い顔をしながらエレノアさん達の方へと視線をちらちらと送っています。
「ディンさん、何が言いたいのか分かりますけど、そこまで必死にならなくても」
「なりますよ。まだ死にたくありません」
「ついてきてほしかったのですが、無理そうですね。代わりに、少しの間クストースに剣を教えてあげてほしいのですが、お願いできますか?」
「喜んで」
実に良い笑顔で承諾してくれました。そんなに嫌ですか。
「お願いします。では、逝ってきます」
「ご武運を」
ディンさんのビシッと決まった敬礼に見送られ、エレノアさんの下へ。ラウルさんに肩を抱かれながら、ギルドという戦場に向かいます。
「ラウルさん、これは?」
「迷宮にいるゴーレムの核だ」
球体を掌に受け取って繁々と観察します。確かに、先程見たゴーレムの核と似ています。
「ん?」
のそりといった感じで、球体から土の精霊が顔を出しました。不貞腐れているというか、やさぐれているというか。かなり苛々しているようです。
ただ、おかげで分かったことがあります。
「魔石と精霊が一体化した状態というのは同じようですね。ただ、精霊がかなり不機嫌です」
「一体化している精霊の様子が違う?」
ラウルさんの唸り声が低くなっています。エレノアさんは何故か笑顔で申請用紙を用意しています。
「桜華さん。ゴーレムの考察ということで、申請お願いします」
言われるままに申請書の記入。エレノアさん達との話し合いで、精霊と魔石が一体化した状態の物を精霊石と呼ぶことになりました。
「書けたか。じゃ、これをやる」
ラウルさんからポンとゴーレムの核を手渡されました。
「高いものでは?」
「俺が持っていても見るしかできないが、お前なら有効活用できるだろ。やってみろ」
「はぁ。やってみます」
ギルドを出て、人の少ない建築予定地へ。
野次馬の皆さんに離れてもらうと、核の精霊と改めて向かい合います。
とりあえず話しかけてみますが、まったく聞いてくれている感じがしません。次の手段として、地表にいた土の精霊を掬い上げて核の精霊の前に置いて説得してもらいます。
すると、鼻をくっつけては離すを繰り返し始めました。会話でしょうか。精霊同士の交流は不思議なことばかりです。
暫くすると、二人の精霊がこちらに鼻を向けると、鼻を石に着けてから互いにくっつけて離し、こちらに向けて上下に振る。これを繰り返します。
思わず小首を傾げながら考えると、土の精霊達も揃って首を傾げます。
分からないことだらけですが、順番に考えていきましょう。
まずは鼻を石にくっつける。……石。あ、もしかして魔石?
鞄から土の魔晶石を取り出して精霊の前に持っていくと、掬い上げた方の精霊が飛びついて中に入ります。少しすると光を放って精霊石へと変化。精霊が首だけ出すと核の方へ鼻を向ける。
えっと、ここで互いにくっつけるで、良いのかな。
魔晶石と核をくっつけてみると、光を発して二つが一つになり、先程よりも光の明滅が強く、精霊の力を強く感じます。
あ。これ、他のもくっつけたらどうなるのでしょうか。
大樹のお陰か様々な精霊が集まってきているので、そっちの問題もありません。
鞄から火、水、風、雷、植、光、闇の魔晶石を取り出し、それぞれへ精霊に入ってもらい精霊石に変化させて核と合わせてみます。
すると、先程より強い光が発せられ、掌で包めるほどから拳大の球形へと変化。淡い虹色の光が核の周囲を漂い、核そのものは暖かい光が力強く明滅しています。
集まってきた精霊達に見守られながら、他のゴーレム達と同じ魔方陣を生成して核へと張り付けると、魔法陣が球の中へ閉じ込められ見た事のない形へと変異。一際強く明滅を始めたので、そっと地面へと下します。
次の瞬間、核を中心として魔方陣が大きく広がり、魔方陣の下になった地面が唸り蠢く。土が核を覆うように盛り上がっていき、五メートル程の巨人が立ち上がりました。
ゴーレムのデフォルトなのかのっぺりとしていたので、手を触れて造形を開始。球体関節は当然として、折角なので凝った意匠に挑戦しましょう。
思い描くのは、少し細めの全身鎧。ついでに、左腰に幅が広めの剣と、左腕に背丈半分ほどの大きさとなる細長い盾。
暫くするとゴーレムの体に皹が入り始めたので急いで離れます。皹が全身に行き渡ると、一気に割れて中から生まれ変わった姿が現れました。
想像した通りの姿ですが、鎧の縁に蔦の装飾が追加されています。それに、想像できなかった細かい処も作り込まれています。補填してくれたのでしょうか。武具を装備していないのは残念です。
しょうがないので、複合型精霊石を再生成して、剣と盾も作り出します。本当は魔法陣も貼り付けたかったのですが、魔力切れで断念。
地面に置かれた剣と盾の状態を見ていると、ゴーレムが唐突に眼の前で膝を折って頭を垂れました。
『主上。名を』
頭の中に直接響いてくる言葉は、ピンと張りつめた弦が鳴る様な高く澄んだ声で紡がれました。慌てて周囲を見ると、不機嫌そうなラウルさんと素晴らしい笑顔のエレノアさん。距離を取っている野次馬の皆さんにディンさんと、誰も彼もそれなりに距離があります。
『主上?』
とこか戸惑ったような声。目の前にいるゴーレムからと見て間違いないようです。
「ごめんなさい。名前ですね。えっと、名前は……クストース。とある国で守護を意味する言葉です」
『クストース。私の、名前』
声と体がが若干震えています。何か失敗したのでしょうか。
『賜りし守護を意味する名、クストース。この名に恥じぬよう、主上を守る盾となり、道を切り開く剣となりましょう』
「よろしくお願いします。クストース」
屈んでくれている状態とはいえ、私より大きくて頭には手が届きそうもありません。なので、腕に触れるだけにします。
それにしても、剣と盾は喋る様子がないですね。これは嬉しいです。さすがに剣と盾も喋り出すとどうしたら良いのか分からなかったので。
クストースに立ってもらい、とりあえず建築予定地の隅で待機をお願いします。
「ちょっと行かないといけない場所があるので、ここで待っていてくれますか?」
『分かりました。どうぞ、ごゆっくり』
「ありがとう」
さてと。まずはディンさんの処へ向かいます。私が近づくと、青い顔をしながらエレノアさん達の方へと視線をちらちらと送っています。
「ディンさん、何が言いたいのか分かりますけど、そこまで必死にならなくても」
「なりますよ。まだ死にたくありません」
「ついてきてほしかったのですが、無理そうですね。代わりに、少しの間クストースに剣を教えてあげてほしいのですが、お願いできますか?」
「喜んで」
実に良い笑顔で承諾してくれました。そんなに嫌ですか。
「お願いします。では、逝ってきます」
「ご武運を」
ディンさんのビシッと決まった敬礼に見送られ、エレノアさんの下へ。ラウルさんに肩を抱かれながら、ギルドという戦場に向かいます。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる