日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門

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 僕はその場から逃げ出した。教室を飛び出し、走って家に帰った。心臓が痛くて、呼吸が苦しくて、全身が震えていた。

 次の日、何事もなかったように振る舞おうとしたけれど、無理だった。
 クラス中には僕が彼に告白したことが広まったいた。

 どこで漏れたのか分からない。でも、噂は瞬く間に広がり、みんなが僕を見る目が変わった。

「フラレたんだって」
「身の程知らずな……」

 クラスメイトたちの冷たい視線、ひそひそと囁かれる陰口。それが毎日、僕を包んでいった。誰も僕に近づこうとはしなくなり、僕も誰とも話せなくなった。
 
 気づけば教室の隅で、誰の目にも触れないようにひっそりと過ごすことが当たり前になっていた。
 あの日を境に、僕の見ている景色は白と黒の世界になった。鮮やかな色は、なくなってしまった。

 そんな日々が続くうちに、僕は人が怖くなった。人の目が、自分に向けられる視線が、何よりも恐ろしかった。友達もいなくなり、周りから笑われているように感じられた。

 だから、高校進学のタイミングで、僕は他県の学校に逃げるように転校した。誰も僕の過去を知らない場所で、もう一度やり直したかった。

 だけど、いざ環境を変えただけでは、自分の中に刻み込まれた恐怖や不安は消えなかった。今の僕は、ただ静かに、誰にも気づかれずに生きることしかできないのだ。

 今日は卵と牛乳が安い日だ。男子寮のある高校に入学したものの、ほとんどが地元の生徒なので自宅通学している点と、少子化ということもあり、その男子寮にはほとんどいなかった。

 食堂はなく自炊する必要があり、帰りにスーパーによるのが僕の日課だった。しかし、ふと、とある声に僕は足が止まる。

「手を離してください」

 凛とした、中性的な声だった。思わず聞こえた方へ視線を向けると――

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