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しおりを挟む僕たちはそのまま近くの喫茶店に向かって、少し距離を取って走った。心臓はまだドキドキと早い鼓動を響かせていたけれど、どうにか逃げ切ることができた安堵感に包まれていた。
喫茶店のドアを開けて中に入ると、彼女から「出来るだけ人目のつかない場所がいい」と言われたので、喫茶店の奥の方へ座る。
彼女はまだ少し息を切らしているけれど、僕よりも落ち着いているようだった。
反対に、僕は震える手をコップに乗せたまま、何も言えなかった。
「助けてくれて、本当にありがとう」
その一言が、あまりにも自然に言われたから、僕は一瞬戸惑った。
「え、あ、いえ、そんな……」
思わず僕はオドオドしながら答えると、彼女は優しく微笑んで、少しだけ頷く。
「普通の人は中々できないことだよ」
僕は顔を赤くしながら、軽くうなずくことしかできなかった。それでも、少しだけホッとする気持ちが湧き上がった。
「助けられてよかった。ドラマみたいに、かっこよく撃退できたら良かったんだけどね」
僕は言葉を絞り出し、ただそう返すと、彼女は静かに、でも少し思い詰めたような表情になった。何か言いたげなその様子に、僕は少しだけ不安を感じた。何か失礼なこと言ったかな……。
そう思っていたら、彼女はゆっくりと髪を掴み、何かをためらうようにしてから、ぐっと力を入れて――彼女が、髪をそっと引き抜いた。
「え?」
僕は驚いて声を漏らしてしまった。
僕の視界に映ったのは、見たことのある姿、まるで映画のスクリーンから飛び出したような人だった。
そこにいたのは、美少女ではなく、美男子だった。
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