悪役令息だと思っていたら健気令息だったので、好きになってしまった

まんまる

文字の大きさ
17 / 44

8

アンリに嫌いと言われてからこの三日間、どうやって息をしていたかも分からない。
話しかけても挨拶しかしてもらえず、夜を誘ってももちろん断られ、アンリがすぐそばにいるのに、こんなに遠く離れている感覚になったのは初めてだ。どうやって騎士団本部まで来たかも覚えていない。

「ジェイド、副団長の件だが考えてくれたか?⋯聞いているか?」
「はっ、団長、失礼しました」
「アンリ殿と領地視察に行って来たんだろ?いつもなら浮かれてる頃じゃないのか?」
「うっ、視察は滞りなく済みました」
「ほう、じゃあアンリ殿と何かあったな。なあジェイド、お前アンリ殿の噂は知っているか?」
「噂ですか?まさか昔の噂をまだ信じている者がいるとか?」
「ああ、そうだ。お前と結婚してから更に酷くなっているぞ」
「なっ!何故そのような事に?アンリは噂とは全然違います!」
「ああ、俺は4、5年前に王城でカイル様の護衛をしていた時、当時婚約者だったアンリ殿を見た事がある。一目見れば、噂は全くの嘘だと分かるが、お前がアンリ殿を屋敷からなかなか出さないせいで、噂だけ悪い方向に尾ひれをつけて大きくなっている」
「そ、そんな⋯」
「実家の公爵家にわがままを言って領地をもらい、それをお前に任せっきりにして、それで得た利益で高価な宝石や、服を買っているだとか、お前の所で扱っている商品に自分の名前を付けるようにわがままを言ったとかだ。お前がいつも疲れた顔をしているのは領地経営もさせている上に、騎士団も辞めさせないとわがままを言っているアンリ殿のせいだと皆思っているみたいだぞ。ククッ、本当は毎日寝不足なんだろ?」
「うっ⋯、団長、その噂は本当ですか?」
「そうだ。侯爵家出身でしかも剣の腕が騎士団では右に出るものがいないお前を皆が認めている。副団長の話を蹴れば、皆納得しないぞ。又ある事無い事言われるのは目に見えている。これ以上事が拗れる前に、一度アンリ殿を連れてきて皆に紹介したらどうだ。すぐに悪い噂も消えると思うがな」
「ぐっ、それは⋯」
「自分の知らないところで悪者になっているアンリ殿が気の毒だ。副団長の件もだが、よく考えろ」


まさかそんな事になっているとは、俺の考えが甘かった。誰にも見せたくなくてアンリを閉じ込めた結果がこれか。全て俺のせいだ。
副団長の件も、これ以上アンリとの時間を減らしたくなくて断ろうと思っていたが、そんな安易な考えでは駄目だ。

一度ちゃんとアンリと話そう。騎士団の皆に紹介するのは⋯その後考えよう。

あなたにおすすめの小説

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系