悪役令息だと思っていたら健気令息だったので、好きになってしまった

まんまる

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震える手を握り締めながら、テーブルを挟んで向かい合わせに座る。
セルジュが紅茶と茶菓子を出してくれる時に、僕と目を合わせて小さく頷いてくれた。

「ふぅ、コ、コール伯爵、ご用件を伺ってもいいですか?」
「まあまあ、アンリ殿、まだ挨拶もしてませんよ」
「あっ、す、すいません」

伯爵に指摘され、恥ずかしくて顔が熱くなり、目を逸らして思わず俯いてしまう。

「これはこれは、公爵家も子爵も、必死に隠すのが分かりますね。アンリ殿は本当に可愛らしい」

ねっとり絡みつく視線で見られ、怖くて恥ずかしくて、涙が出そうになるのを必死で堪えて話し掛けた。

「や、夜会の時は気分が悪くなってしまって、お話出来ずにすいませんでした」
「ああいやいや、お気になさらずに。その後は体調はいかがですか?」
「はい、もう大丈夫です」
「それは良かった。アンリ殿は華奢でいらっしゃるから、あの子爵の相手も大変なのでしょうね」
「えっ?」

僕の体を上から下まで視線を這わせているのが分かる。気持ち悪い。
ジェイド、ジェイド、助けて!心の中で必死にジェイドに助けを求める。

「あ、あの、仕事の事は夫がいないと、僕では分からないです。だ、だから」
「アンリ殿の体調が気になって、国に帰る前にわざわざ寄ったんですが、追い返されるとは思いませんでしたよ」
「そ、そんなつもりは」

僕、また言い方を間違えたのだろうか。隣国の貴族で、しかもカイル様の知り合いなのに、怒らせてしまったらどうしよう。

すると突然、伯爵の顔から貼り付けたような笑顔が消えた。

「ああ、せっかくの子爵家自慢の紅茶が冷めてしまったようですね。君、入れ直してきてくれ」

伯爵がセルジュに威圧的に命令する。

えっ?だめ、セルジュ、行かないで!
必死で目で訴える。

「早くしたまえ!」

「申し訳ありません。アンリ様を一人にする訳にはまいりません」
「貴様!私を誰だと思っている!」

「セ、セルジュ⋯、あっ、サシャに、侍女に頼んで持ってきてもらいますっ」
「侍女?先程裏口からそれらしき女が出ていきましたが、買い物にでも行ったのではないですか?」
「えっ?そんな⋯」
「待たされている時に見掛けましたよ」

伯爵が薄笑いを浮かべて、勝ち誇った顔で僕を見ている。

強引にセルジュをこの部屋から追い出して、何をしようとしているのだろう。

「早く持ってきたまえ!」

「⋯では、扉を開けておきます」
「ふぅ、いいでしょう」

「セルジュ⋯」
「アンリ様、申し訳ありません。すぐ戻ります」

セルジュが僕を見て一礼すると、扉を開け放ち足早に部屋を出て行った。

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