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3.バウアー公爵と愛馬
陛下への挨拶が済み、一礼をして踵を返すと、会場にいるたくさんの招待客が、僕を食い入るように見ているのに気がついた。
田舎の末端貴族が、あれだけ陛下に話し掛けられたんだ、良くも悪くも、皆が僕に興味を持ってしまったのかもしれない。
でも、僕には一刻の猶予もなかった。
お祖父様がまだ病床で苦しんでいるかもしれないという時に、僕だけこんな華やかで場違いな場所にいるのが心苦しかった。
僕はこちらに向いている数多の視線を躱し、足早に会場の出口に向かった。
でも、もうすぐ出口に着くという所で、楽団の賑やかな演奏が始まり、僕は華やかに着飾った貴公子に足を止められた。
「ザカリー男爵、よろしければ、私と1曲付き合っていただけませんか?」
貴公子は都会暮らしの洗練された優雅な所作で、僕にすっと手を差し出した。
「あ、あのっ、僕、急いでいるんです。申し訳ありませんが、ダンスは他の方をお誘いください」
「あぁ、もしかして、ダンスがお得意ではない?それでしたら、あちらでワインでも飲みながら、ゆっくりお話でもいかがですか?」
「い、いえっ、僕、本当に急いでいるんです」
僕が必死に断ると、貴公子は眉をぴくりと動かし、無理矢理僕の腕に掴みかかってきた。
会場の皆は遠巻きにこちらを見ているだけで、誰も助けてくれそうになかった。
おそらく、この貴公子は高位貴族、公爵家か侯爵家あたりの子息なのだろう。
これ以上舞踏会での誘いを断れば、ザカリー男爵領に何か悪い影響が出るかもしれない。
僕が諦めて貴公子の手を取ろうとしたその時、僕の背中から低く落ち着いた、でも肌にぴりっと緊張が走るような、少し怒気を孕んだ声がした。
「ザカリー男爵はお急ぎのようだ。それに、あまりしつこいと、舞踏会の品位が下がる」
その声を聞いて、目の前の貴公子はみるみる顔を青ざめさせ、慌てて走り去ってしまった。
僕は走り去る貴公子を目で追いながら、しばらく呆気にとられて動けずにいたが、一刻も早くこの場から立ち去りたくて、声の主の顔も見ずに、頭を深く下げ、ありがとうございます、とだけ伝えて外に出た。
「ブリーズ、お待たせ。ごめんね、疲れてるだろうけど、すぐに領地に発ちたいんだ」
領地から僕を運んでくれたブリーズに話し掛けながら、筋肉の張りが少しでも和らぐように、背中や腹の毛並みに沿って手を滑らせた。
ブルル
ブリーズが頷く仕草をして答えてくれたその時、後ろから人が近づく気配がした。
「その馬には休養が必要だ」
この声は、さっきの⋯。
声のした方を振り向くと、一目で最上級の仕立てだと分かる、立派な身なりをした、僕より少し歳上と思しき本物の貴公子が立っていた。
その貴公子は、松明の朧げな灯りでもはっきりと分かる、煌めく金色の髪に、引き込まれそうな深いエメラルドグリーンの瞳をしていて、とてもこの世のものとは思えない、彫刻のような造形美を纏っていた。
綺麗な人⋯。
でも何だろう、この感覚⋯。
会った事はないはずなのに、どこか懐かしい感じがする⋯。
昔、そう、僕が生まれるずっとずっと前、どこかで⋯、って僕、何考えてるんだろう。そんなはずないのに。
それより、さっきのお礼を言わないと。
僕は頭の中に浮かびかけた光景を振り払うように、顔を左右に何度も振った。
「あっ、あのっ⋯、もしかして、さっき助けていただいた方ですか?」
貴公子は、僕の問い掛けに軽く頷いた。
「先程は、ありがとうございました」
「いや、ただ目に余ったから声を掛けただけだ。それより、その馬は、ザカリー領から走って来たのだろう?」
「えっ?あっ、は、はい」
「さすがにもう、限界のようだが」
僕に声を掛けてきた高位貴族と思しき男性は、ブリーズをちらりと見遣ると、また僕に視線を戻した。
「で、ですが、その⋯、領地にいる祖父が体調を崩していまして、それで、僕、早く帰らないといけないんです」
「そういう事情なら、私の馬を貸そう」
「えっ!?そ、そんな、とんでもないです!」
「構わない。その馬は、しばらくうちで休ませた後、領地に連れて行くから心配はいらない」
「えっ!?そ、そこまでしていただく訳にはいきません!」
「我が家には、ザカリー領の近くに飛び地の領地がある。そこに顔を出すついでだから、男爵が気に病む事はない」
「うちの領地⋯、飛び地⋯、もしかして⋯」
「ああ、すまない、まだ名乗っていなかったか。こちらから一方的に話して申し訳ない。私はバウアー公爵家当主、フィンセントだ」
「⋯っ!?公爵様!?」
バウアー公爵家と言えば、この国の三大公爵家の一つ、いや、おそらくこの国では、王家に次ぐ実力の持ち主だろう。
僕みたいな田舎の男爵が、そうそうお目にかかる事は叶わない程の人物だ。
バウアー公爵様と分かっていながら、馬を貸してくださいとは、口が裂けても言えない。
「あ、あのっ、馬の件は、お気持ちだけいただきます。気にかけてくださり、ありがとうございました」
僕はそそくさと逃げるように、杭に掛かっていた綱を手に取った。
「待ちなさい」
「ひゃっ!こ、公爵様!?」
僕は公爵様に後ろから抱き締められるように包み込まれ、綱を持つ手をぎゅっと握られていた。
温かい⋯。
また頭に何かが浮かび掛けて、すーっと消えていった。
「すまない、こうでもしないと、行ってしまうだろう?」
「は、離してください!こんなところ、誰かに見られでもしたら、公爵様の名誉に傷がついてしまいます!」
「私の心配か?それより馬の心配をした方がいいようだが」
バウアー公爵様に言われて、改めてブリーズの顔を覗き込むと、明らかに濃い疲労の色が見て取れた。
「あ⋯、ご、ごめん、ブリーズ⋯」
今ブリーズに無理をさせたら、一生治らない傷を負わせてしまうかもしれない。
僕は覚悟を決めた。
「あの⋯、公爵様、お言葉に甘えて、馬をお借りしてもよろしいですか?」
「ああ、遠慮はいらない」
いつの間にか、僕から離れていた公爵様は、柔らかな笑顔を見せてくれた。
「ありがとうございます。あの、お礼は後日、お送り致しますので」
「そんな事は、気にしなくていい」
「そんな訳にはまいりません!」
正直、公爵様を喜ばせるような品物が、うちの領地にあるかは疑わしいけど、さすがにただで馬を借りる訳にはいかない。
「⋯それでは、うちの者がこの馬を返しに行く時まで、貸した馬を可愛がってくれないか?貸すのはテラ、私の愛馬だ」
「ええっっ!?公爵様の愛馬!?」
「急いだ方がいい」
「えっ?はっ?」
「行きなさい」
「は、はいっ!あっ!僕の馬はブリーズって言います!」
「ああ、分かった」
「公爵様、ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」
僕は公爵様に深々と頭を下げた後、ブリーズの首筋を撫でて、暫しの別れを告げた。
「テラ、よろしくね」
公爵様の愛馬テラは、初めて乗る気がしないくらい、乗り心地がよかった。
僕が指示を出さなくても、僕の進むべき道を走ってくれた。
「ふふっ、テラはお利口さんだね。でも⋯、どうして公爵様はあそこにいたんだろうね。それに、どうして舞踏会に馬車じゃなくて、テラに乗って来たの?うーん?って、テラに聞いても分からないよね」
僕が呟いた独り言は、顔を撫でながら流れていく風に、一瞬で掻き消された。
僕は速度を上げ始めたテラに合わせるように、口を固く結んだ。
田舎の末端貴族が、あれだけ陛下に話し掛けられたんだ、良くも悪くも、皆が僕に興味を持ってしまったのかもしれない。
でも、僕には一刻の猶予もなかった。
お祖父様がまだ病床で苦しんでいるかもしれないという時に、僕だけこんな華やかで場違いな場所にいるのが心苦しかった。
僕はこちらに向いている数多の視線を躱し、足早に会場の出口に向かった。
でも、もうすぐ出口に着くという所で、楽団の賑やかな演奏が始まり、僕は華やかに着飾った貴公子に足を止められた。
「ザカリー男爵、よろしければ、私と1曲付き合っていただけませんか?」
貴公子は都会暮らしの洗練された優雅な所作で、僕にすっと手を差し出した。
「あ、あのっ、僕、急いでいるんです。申し訳ありませんが、ダンスは他の方をお誘いください」
「あぁ、もしかして、ダンスがお得意ではない?それでしたら、あちらでワインでも飲みながら、ゆっくりお話でもいかがですか?」
「い、いえっ、僕、本当に急いでいるんです」
僕が必死に断ると、貴公子は眉をぴくりと動かし、無理矢理僕の腕に掴みかかってきた。
会場の皆は遠巻きにこちらを見ているだけで、誰も助けてくれそうになかった。
おそらく、この貴公子は高位貴族、公爵家か侯爵家あたりの子息なのだろう。
これ以上舞踏会での誘いを断れば、ザカリー男爵領に何か悪い影響が出るかもしれない。
僕が諦めて貴公子の手を取ろうとしたその時、僕の背中から低く落ち着いた、でも肌にぴりっと緊張が走るような、少し怒気を孕んだ声がした。
「ザカリー男爵はお急ぎのようだ。それに、あまりしつこいと、舞踏会の品位が下がる」
その声を聞いて、目の前の貴公子はみるみる顔を青ざめさせ、慌てて走り去ってしまった。
僕は走り去る貴公子を目で追いながら、しばらく呆気にとられて動けずにいたが、一刻も早くこの場から立ち去りたくて、声の主の顔も見ずに、頭を深く下げ、ありがとうございます、とだけ伝えて外に出た。
「ブリーズ、お待たせ。ごめんね、疲れてるだろうけど、すぐに領地に発ちたいんだ」
領地から僕を運んでくれたブリーズに話し掛けながら、筋肉の張りが少しでも和らぐように、背中や腹の毛並みに沿って手を滑らせた。
ブルル
ブリーズが頷く仕草をして答えてくれたその時、後ろから人が近づく気配がした。
「その馬には休養が必要だ」
この声は、さっきの⋯。
声のした方を振り向くと、一目で最上級の仕立てだと分かる、立派な身なりをした、僕より少し歳上と思しき本物の貴公子が立っていた。
その貴公子は、松明の朧げな灯りでもはっきりと分かる、煌めく金色の髪に、引き込まれそうな深いエメラルドグリーンの瞳をしていて、とてもこの世のものとは思えない、彫刻のような造形美を纏っていた。
綺麗な人⋯。
でも何だろう、この感覚⋯。
会った事はないはずなのに、どこか懐かしい感じがする⋯。
昔、そう、僕が生まれるずっとずっと前、どこかで⋯、って僕、何考えてるんだろう。そんなはずないのに。
それより、さっきのお礼を言わないと。
僕は頭の中に浮かびかけた光景を振り払うように、顔を左右に何度も振った。
「あっ、あのっ⋯、もしかして、さっき助けていただいた方ですか?」
貴公子は、僕の問い掛けに軽く頷いた。
「先程は、ありがとうございました」
「いや、ただ目に余ったから声を掛けただけだ。それより、その馬は、ザカリー領から走って来たのだろう?」
「えっ?あっ、は、はい」
「さすがにもう、限界のようだが」
僕に声を掛けてきた高位貴族と思しき男性は、ブリーズをちらりと見遣ると、また僕に視線を戻した。
「で、ですが、その⋯、領地にいる祖父が体調を崩していまして、それで、僕、早く帰らないといけないんです」
「そういう事情なら、私の馬を貸そう」
「えっ!?そ、そんな、とんでもないです!」
「構わない。その馬は、しばらくうちで休ませた後、領地に連れて行くから心配はいらない」
「えっ!?そ、そこまでしていただく訳にはいきません!」
「我が家には、ザカリー領の近くに飛び地の領地がある。そこに顔を出すついでだから、男爵が気に病む事はない」
「うちの領地⋯、飛び地⋯、もしかして⋯」
「ああ、すまない、まだ名乗っていなかったか。こちらから一方的に話して申し訳ない。私はバウアー公爵家当主、フィンセントだ」
「⋯っ!?公爵様!?」
バウアー公爵家と言えば、この国の三大公爵家の一つ、いや、おそらくこの国では、王家に次ぐ実力の持ち主だろう。
僕みたいな田舎の男爵が、そうそうお目にかかる事は叶わない程の人物だ。
バウアー公爵様と分かっていながら、馬を貸してくださいとは、口が裂けても言えない。
「あ、あのっ、馬の件は、お気持ちだけいただきます。気にかけてくださり、ありがとうございました」
僕はそそくさと逃げるように、杭に掛かっていた綱を手に取った。
「待ちなさい」
「ひゃっ!こ、公爵様!?」
僕は公爵様に後ろから抱き締められるように包み込まれ、綱を持つ手をぎゅっと握られていた。
温かい⋯。
また頭に何かが浮かび掛けて、すーっと消えていった。
「すまない、こうでもしないと、行ってしまうだろう?」
「は、離してください!こんなところ、誰かに見られでもしたら、公爵様の名誉に傷がついてしまいます!」
「私の心配か?それより馬の心配をした方がいいようだが」
バウアー公爵様に言われて、改めてブリーズの顔を覗き込むと、明らかに濃い疲労の色が見て取れた。
「あ⋯、ご、ごめん、ブリーズ⋯」
今ブリーズに無理をさせたら、一生治らない傷を負わせてしまうかもしれない。
僕は覚悟を決めた。
「あの⋯、公爵様、お言葉に甘えて、馬をお借りしてもよろしいですか?」
「ああ、遠慮はいらない」
いつの間にか、僕から離れていた公爵様は、柔らかな笑顔を見せてくれた。
「ありがとうございます。あの、お礼は後日、お送り致しますので」
「そんな事は、気にしなくていい」
「そんな訳にはまいりません!」
正直、公爵様を喜ばせるような品物が、うちの領地にあるかは疑わしいけど、さすがにただで馬を借りる訳にはいかない。
「⋯それでは、うちの者がこの馬を返しに行く時まで、貸した馬を可愛がってくれないか?貸すのはテラ、私の愛馬だ」
「ええっっ!?公爵様の愛馬!?」
「急いだ方がいい」
「えっ?はっ?」
「行きなさい」
「は、はいっ!あっ!僕の馬はブリーズって言います!」
「ああ、分かった」
「公爵様、ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」
僕は公爵様に深々と頭を下げた後、ブリーズの首筋を撫でて、暫しの別れを告げた。
「テラ、よろしくね」
公爵様の愛馬テラは、初めて乗る気がしないくらい、乗り心地がよかった。
僕が指示を出さなくても、僕の進むべき道を走ってくれた。
「ふふっ、テラはお利口さんだね。でも⋯、どうして公爵様はあそこにいたんだろうね。それに、どうして舞踏会に馬車じゃなくて、テラに乗って来たの?うーん?って、テラに聞いても分からないよね」
僕が呟いた独り言は、顔を撫でながら流れていく風に、一瞬で掻き消された。
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