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19.残された者の痛み
この世に生を受けた者には、いつかは必ず死が訪れる。
その死を早めるのも、天寿を全うするのを待つのも、自分次第だと言われればそうかもしれない。
自分の命は、自分のものだから。
でも、本当にそうなのだろうか⋯。
自分の命は、自分だけのものなのだろうか⋯。
両親の死、祖父母の死、そしてジルの死。
残された者は、悲しみと喪失感に飲み込まれながら、何もできなかったという自責の念と後悔に襲われる。
そんな苦しみを、僕は知っていたはずなのに⋯。
「旦那様!ルディア様をどこへ連れて行かれるのですか!」
フィンセント様が僕を抱えて自室を出ると、執事のオルランドさんが慌てて声を掛けてきた。
「ザカリー領に連れて行く」
「今からですか!?」
フィンセント様は、オルランドさんの問い掛けには答えず、真っ直ぐ玄関に向かって歩き出した。
「旦那様っ!お待ちください!」
エントランスまで追いかけて来たオルランドさんが、フィンセント様の背中に向かって叫んだ。
「オルランド⋯、後は頼んだ」
フィンセント様は足を止める事なく、それだけ言うと、玄関の扉の取っ手に手を掛けた。
オルランドさんは、フィンセント様の言葉を聞いて、一瞬目を見開いた後、泣くのを堪えるように、眉間に皺を寄せて、拳を握り締めた。
「旦那様、待っております。旦那様が無事にお帰りになるのを、使用人一同、お待ちいたしております。必ず、帰ってきてください」
「⋯⋯」
「旦那様以外、誰がいると言うのですか!ルディア様の⋯、ルディア様の魂を弔えるのは、旦那様しかおりません!」
フィンセント様の取っ手を掴む手が、ぴくりと反応して、フィンセント様が一瞬立ち止まった。
でも、フィンセント様の唇が動く事はなかった。
オルランドさんは唇を噛み締め、いつまでもその場に立ち尽くしていた。
「テラ、ザカリー領まで頼めるか?」
ブルル
「よし、いい子だ」
フィンセント様は僕の亡骸を抱え、バウアー公爵家からテラに乗ってザカリー領へ出立した。
『テラ、また無理しちゃ駄目だよ。ねえテラ⋯、フィンセント様の様子がおかしいんだ⋯。本当にこのまま、ザカリー領に行っていいのかな⋯?』
ブルル
テラはつぶらな目を伏せた。
その横顔を見ているだけで、なぜだか胸が切なくなった。
パカラッパカラッ パカラッパカラッ
『テラ!止まって!ねえ、テラ!』
あの舞踏会の夜、僕をザカリー領まで乗せてくれた時のように、テラは公爵家を出てから、一度も休まずに走り続けている。
『テラが休まないと、フィンセント様も眠れないからっ!』
本当は、何を言っても無駄だと、分かっていた。
フィンセント様がそれを望んでいないのも、テラがその思いを感じて取って走り続けているのも、胸が痛いほど伝わっていたから。
公爵家を出てから2日後、全速力で駆け抜けたテラとフィンセント様は、とうとうザカリー領に着いてしまった。
『ああ、懐かしい⋯。ここを出てから、まだ1年も経ってないのに、ここで暮らしていたのが、なんだか、遠い昔のような気がする⋯』
「テラ、頑張ったな。ありがとう」
ブルル
『テラ、ご苦労さま』
ブルル
「この前から不思議に思ってたんだが、テラはたまに、見えない何かと話してるようだな」
ブルル⋯
「もしかして、ルディア⋯か?」
『えっ!?』
「ふっ、まさかな⋯。テラにルディアが見えているなら、私はテラに嫉妬するぞ。ルディアは私の生涯ただ一人の伴侶だからな」
『フィンセント様⋯。そんな風に思ってくれてたんだ。それなのに⋯僕は⋯』
フィンセント様には、僕の魂が見えていないはずなのに、フィンセント様は、テラの視線の先にいる僕を、ぼんやりと眺めていた。
男爵家の屋敷が見えてきた。
テラの蹄の音が聞こえたのか、厩からアイクが飛び出してくる姿が見えた。
『アイクだ。ああ、元気そうでよかった⋯』
「バウアー公爵⋯と、ルディア⋯か?」
アイクは、フィンセント様に力なく抱かれている僕に気づいた。
「ルディア⋯?ルディア!ルディアっ!!ルディアに何があったんだ!!」
フィンセント様は、僕をぎゅっと抱き締め、テラの背中からゆっくりと降り立った。
「すまない⋯」
フィンセント様は僕を抱いたまま、アイクに頭を下げた。
「はっ?すまない⋯?何が!何がすまないだ!ルディアは生きてるんだろ!じゃあ、あんたは何に謝ってるんだっ!!」
フィンセント様は頭を上げようとしない。
「何とか言えよっ!!」
「⋯私のせいだ。私が未熟だったから⋯」
「そんな事を聞いてるんじゃないっ!!ルディアは生きてるんだよなっ!!」
すっと顔を上げたフィンセント様の目から、とめどなく涙が流れていた。
「ルディア⋯?ルディアっ!ルディアーー!!!ルディアあ あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!!なんで、ルディアがこんな目にっ!!俺が、どんな思いでルディアを送り出したか、あんたに分かるか!俺は⋯、俺は、ルディアを不幸にする為に、諦めたんじゃないっ!ルディアには、幸せになって欲しかったんだ!あんたしかいないと思ったから⋯、ルディアを幸せにできるのは、あんたしかいないと思ったんだっ!!あ、あ、あ゛あ゛あ゛あ゛、ルディアあ あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!!」
『アイク、ごめん、ごめんね。僕、自分の事しか考えてなかった⋯』
「ルディアを返せっっ!!」
アイクがフィンセント様から、無理矢理僕の亡骸を奪おうとした。
でも、フィンセント様は、口を固く結んだまま、僕を離そうとしない。
「これ以上、ルディアに触れるなっっ!!」
「⋯最後だから」
「何だって?」
「ザカリー家の墓を教えてもらいたい。ルディアのご両親と祖父母殿に、謝罪したいんだ。それが済んだら、君にルディアを⋯返すから」
「墓?あんたからの謝罪なんて、誰も受け取る訳ないだろ!いいから、ルディアを渡せ!」
「旦那様っ!?」
アイクとフィンセント様が、屋敷の前で揉めていると、中から壮年の男性が慌てて出てきた。
「旦那様!いつこちらへ?えっ⋯?この方は?」
「トマス、ザカリー領の事は、任せっきりですまなかった」
「いいえ、それより、この方は、ルディア様ですか⋯?」
「ああ⋯」
「そんな⋯」
トマスという男性は、きっと、バウアー公爵家からザカリー領に出向している家令なのだろう。
僕の亡骸を見て、絶句している。
「トマス、ザカリー領を、頼んでおく」
「旦那様⋯、ザカリー領は本当に良い領地です。領地のどこへ行っても、ルディア様の愛情を感じる事ができます。領民も、皆ルディア様を慕っています。だから、私も一度お会いしたかった。それがまさか、こんな形になるなんて⋯」
「すまなかった。そうか、ルディアはいい領主だったのだな。私も、分かっていたはずなのに⋯」
「旦那様⋯」
家令をしてくれているトマスさんは、がっくりと肩を落とした。
『トマスさん、僕も話してみたかった⋯』
「トマスさんからも、この人に言ってくれ!ルディアを渡そうとしないんだっ!」
「アイクさん、ここはどうか、我が主の頼みを聞いてやってください」
「だけどっ!」
「お願いします」
トマスさんは、アイクに深々と頭を下げた。
「ト、トマスさん!やめてくれ!あなたにはお世話になってる、から、くっ⋯」
アイクはフィンセント様を睨みつけた。
「用が済んだなら、ルディアをここに残して、あんたはとっとと王都に帰ってくれ!」
ありがとう、フィンセント様はそう言って、アイクに頭を下げた。
ザカリー家の墓地は、屋敷を少し山の方に入ったところにある。
歩いて行けるからと、フィンセント様は僕を抱いたまま、山道に入っていった。
その死を早めるのも、天寿を全うするのを待つのも、自分次第だと言われればそうかもしれない。
自分の命は、自分のものだから。
でも、本当にそうなのだろうか⋯。
自分の命は、自分だけのものなのだろうか⋯。
両親の死、祖父母の死、そしてジルの死。
残された者は、悲しみと喪失感に飲み込まれながら、何もできなかったという自責の念と後悔に襲われる。
そんな苦しみを、僕は知っていたはずなのに⋯。
「旦那様!ルディア様をどこへ連れて行かれるのですか!」
フィンセント様が僕を抱えて自室を出ると、執事のオルランドさんが慌てて声を掛けてきた。
「ザカリー領に連れて行く」
「今からですか!?」
フィンセント様は、オルランドさんの問い掛けには答えず、真っ直ぐ玄関に向かって歩き出した。
「旦那様っ!お待ちください!」
エントランスまで追いかけて来たオルランドさんが、フィンセント様の背中に向かって叫んだ。
「オルランド⋯、後は頼んだ」
フィンセント様は足を止める事なく、それだけ言うと、玄関の扉の取っ手に手を掛けた。
オルランドさんは、フィンセント様の言葉を聞いて、一瞬目を見開いた後、泣くのを堪えるように、眉間に皺を寄せて、拳を握り締めた。
「旦那様、待っております。旦那様が無事にお帰りになるのを、使用人一同、お待ちいたしております。必ず、帰ってきてください」
「⋯⋯」
「旦那様以外、誰がいると言うのですか!ルディア様の⋯、ルディア様の魂を弔えるのは、旦那様しかおりません!」
フィンセント様の取っ手を掴む手が、ぴくりと反応して、フィンセント様が一瞬立ち止まった。
でも、フィンセント様の唇が動く事はなかった。
オルランドさんは唇を噛み締め、いつまでもその場に立ち尽くしていた。
「テラ、ザカリー領まで頼めるか?」
ブルル
「よし、いい子だ」
フィンセント様は僕の亡骸を抱え、バウアー公爵家からテラに乗ってザカリー領へ出立した。
『テラ、また無理しちゃ駄目だよ。ねえテラ⋯、フィンセント様の様子がおかしいんだ⋯。本当にこのまま、ザカリー領に行っていいのかな⋯?』
ブルル
テラはつぶらな目を伏せた。
その横顔を見ているだけで、なぜだか胸が切なくなった。
パカラッパカラッ パカラッパカラッ
『テラ!止まって!ねえ、テラ!』
あの舞踏会の夜、僕をザカリー領まで乗せてくれた時のように、テラは公爵家を出てから、一度も休まずに走り続けている。
『テラが休まないと、フィンセント様も眠れないからっ!』
本当は、何を言っても無駄だと、分かっていた。
フィンセント様がそれを望んでいないのも、テラがその思いを感じて取って走り続けているのも、胸が痛いほど伝わっていたから。
公爵家を出てから2日後、全速力で駆け抜けたテラとフィンセント様は、とうとうザカリー領に着いてしまった。
『ああ、懐かしい⋯。ここを出てから、まだ1年も経ってないのに、ここで暮らしていたのが、なんだか、遠い昔のような気がする⋯』
「テラ、頑張ったな。ありがとう」
ブルル
『テラ、ご苦労さま』
ブルル
「この前から不思議に思ってたんだが、テラはたまに、見えない何かと話してるようだな」
ブルル⋯
「もしかして、ルディア⋯か?」
『えっ!?』
「ふっ、まさかな⋯。テラにルディアが見えているなら、私はテラに嫉妬するぞ。ルディアは私の生涯ただ一人の伴侶だからな」
『フィンセント様⋯。そんな風に思ってくれてたんだ。それなのに⋯僕は⋯』
フィンセント様には、僕の魂が見えていないはずなのに、フィンセント様は、テラの視線の先にいる僕を、ぼんやりと眺めていた。
男爵家の屋敷が見えてきた。
テラの蹄の音が聞こえたのか、厩からアイクが飛び出してくる姿が見えた。
『アイクだ。ああ、元気そうでよかった⋯』
「バウアー公爵⋯と、ルディア⋯か?」
アイクは、フィンセント様に力なく抱かれている僕に気づいた。
「ルディア⋯?ルディア!ルディアっ!!ルディアに何があったんだ!!」
フィンセント様は、僕をぎゅっと抱き締め、テラの背中からゆっくりと降り立った。
「すまない⋯」
フィンセント様は僕を抱いたまま、アイクに頭を下げた。
「はっ?すまない⋯?何が!何がすまないだ!ルディアは生きてるんだろ!じゃあ、あんたは何に謝ってるんだっ!!」
フィンセント様は頭を上げようとしない。
「何とか言えよっ!!」
「⋯私のせいだ。私が未熟だったから⋯」
「そんな事を聞いてるんじゃないっ!!ルディアは生きてるんだよなっ!!」
すっと顔を上げたフィンセント様の目から、とめどなく涙が流れていた。
「ルディア⋯?ルディアっ!ルディアーー!!!ルディアあ あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!!なんで、ルディアがこんな目にっ!!俺が、どんな思いでルディアを送り出したか、あんたに分かるか!俺は⋯、俺は、ルディアを不幸にする為に、諦めたんじゃないっ!ルディアには、幸せになって欲しかったんだ!あんたしかいないと思ったから⋯、ルディアを幸せにできるのは、あんたしかいないと思ったんだっ!!あ、あ、あ゛あ゛あ゛あ゛、ルディアあ あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!!」
『アイク、ごめん、ごめんね。僕、自分の事しか考えてなかった⋯』
「ルディアを返せっっ!!」
アイクがフィンセント様から、無理矢理僕の亡骸を奪おうとした。
でも、フィンセント様は、口を固く結んだまま、僕を離そうとしない。
「これ以上、ルディアに触れるなっっ!!」
「⋯最後だから」
「何だって?」
「ザカリー家の墓を教えてもらいたい。ルディアのご両親と祖父母殿に、謝罪したいんだ。それが済んだら、君にルディアを⋯返すから」
「墓?あんたからの謝罪なんて、誰も受け取る訳ないだろ!いいから、ルディアを渡せ!」
「旦那様っ!?」
アイクとフィンセント様が、屋敷の前で揉めていると、中から壮年の男性が慌てて出てきた。
「旦那様!いつこちらへ?えっ⋯?この方は?」
「トマス、ザカリー領の事は、任せっきりですまなかった」
「いいえ、それより、この方は、ルディア様ですか⋯?」
「ああ⋯」
「そんな⋯」
トマスという男性は、きっと、バウアー公爵家からザカリー領に出向している家令なのだろう。
僕の亡骸を見て、絶句している。
「トマス、ザカリー領を、頼んでおく」
「旦那様⋯、ザカリー領は本当に良い領地です。領地のどこへ行っても、ルディア様の愛情を感じる事ができます。領民も、皆ルディア様を慕っています。だから、私も一度お会いしたかった。それがまさか、こんな形になるなんて⋯」
「すまなかった。そうか、ルディアはいい領主だったのだな。私も、分かっていたはずなのに⋯」
「旦那様⋯」
家令をしてくれているトマスさんは、がっくりと肩を落とした。
『トマスさん、僕も話してみたかった⋯』
「トマスさんからも、この人に言ってくれ!ルディアを渡そうとしないんだっ!」
「アイクさん、ここはどうか、我が主の頼みを聞いてやってください」
「だけどっ!」
「お願いします」
トマスさんは、アイクに深々と頭を下げた。
「ト、トマスさん!やめてくれ!あなたにはお世話になってる、から、くっ⋯」
アイクはフィンセント様を睨みつけた。
「用が済んだなら、ルディアをここに残して、あんたはとっとと王都に帰ってくれ!」
ありがとう、フィンセント様はそう言って、アイクに頭を下げた。
ザカリー家の墓地は、屋敷を少し山の方に入ったところにある。
歩いて行けるからと、フィンセント様は僕を抱いたまま、山道に入っていった。
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