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27.晴れていく心 ※
「すごい⋯ね、ジル」
「はい、すごいです、ルディア様」
こんな田舎の男爵家の前に、豪華な馬車が2台止まっている。
1台はもちろん、フィンセント様が用意したバウアー公爵家の馬車で、結婚が決まった時に、僕を迎えに来てくれた馬車だ。
そしてもう1台は、アイクのお父上のアーボルド侯爵が用意してくれた馬車で、騎士の家系らしく、質実剛健の文字が頭に浮かぶような、大きくて立派な馬車だった。
「アイク、ジルをよろしくね」
「ああ、心配するな、ルディア」
アイクは恥ずかしがるジルを、さらりとエスコートした後、馬車に片足を掛けて僕とフィンセント様の方を見た。
「ふふっ、アイク、嬉しそうだね」
「ま、まあ、そりゃあ、父上がどうしてもと言って、俺のために馬車を用意してくれたんだ。嬉しいに決まってる」
「そうだね。僕も一度ちゃんとご挨拶しないと」
「ああ、父上も喜ぶだろう。じゃあ、行くな。ルディア、公爵、王都で会おう」
「わかった。ジルも気をつけてねっ!」
「はいっ!」
アイクとジルは、肩を寄せて見つめ合った後、満面の笑みで手を振って去って行った。
「ルディア、私達も、帰ろうか」
「わわっ!」
フィンセント様は僕を軽々と抱き上げ、愛おしそうに抱き締めて、すりっと頬ずりをした。
「はい、フィンセント様、帰りましょう」
公爵邸が近づくにつれて、忘れていた、いや、忘れたふりをしていた辛い記憶が、僕の頭になだれ込んできた。
「ルディア、大丈夫か?」
「は、はい、フィンセント様」
「ルディア、私が傍にいる、決して離さない、だから、私を信じてくれないか?」
フィンセント様は、今にも泣きそうな顔で、僕を壊れ物に触れるように、そっと抱き締めた。
正直、公爵邸にもう一度足を踏み入れるのは怖くて堪らない。
でも、もしかしたら、フィンセント様も同じなのかもしれないと思った。フィンセント様は、僕を失う怖さを知っているから。
「フィンセント様、僕、今度こそ、フィンセント様と幸せになりたい」
僕は力の限り、フィンセント様を抱き締めた。
「⋯っ!ああ、ああ、ルディア、幸せになろう。ルディアも、生まれてくる子も、私が絶対幸せにする。ルディア、愛してる」
「フィンセント様、僕も愛してます」
フィンセント様は、ほんの少し僕から体を離し、甘い熱で潤んだエメラルドグリーンの瞳で見つめてきた。
僕は何だか恥ずかしくて、でも、フィンセント様に触れて欲しくて、そっと目を閉じた。
フィンセント様の口づけは、僕の唇を包み込むような、優しい優しい口づけだった。
馬車がゆっくりと速度を落とし始め、蹄の音がぴたりと止まった。
「ルディア、行こう」
フィンセント様の温かな手が、僕の中の迷いも恐怖も全て取り去ってくれた。
「はいっ」
玄関が近づき、扉の前に立っていた護衛が扉を開けてくれた。
護衛は僕を見ると泣き崩れ、今にも膝を地面に付きそうになっている。
「あのっ、フィンセント様、護衛の方は大丈夫でしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。⋯ルディア、彼に声を掛けてくれないか?」
「は、はい」
「ジェイさん、大丈夫ですか?心配をお掛けして、すみませんでした」
「うぅっ、う゛ぐっ、ルディア様あ゛、お帰り、なさいませええ゛ぇ」
とうとうジェイさんは泣き崩れ、地面に手を付いてしまった。
「あわわっ、フィンセント様、どうしましょう」
フィンセント様は、僕が慌てる姿を見て、まだまだこれからだ、と意味の分からない事を言って笑った。
その意味は、僕がエントランスに一歩足を踏み入れるとすぐに分かった。
「「「「お帰りなさいませっっ!!」」」」
エントランスには、公爵家の使用人が全員揃っていて、頭を上げた皆の顔は、一様に涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「みん⋯な⋯、僕を待ってて⋯くれたの?」
使用人達は、泣きながら何度も何度も頷いた。
「ルディア、安心していい。ここにはもう、ルディアを害する者は1人もいない。侍女長の息のかかった者は全員解雇した。皆ルディアの世話をしたくてうずうずしてたんだ。これからは、思う存分甘えるといい。⋯本当は、甘やかすのは、私だけでいいんだが」
フィンセント様が、少し拗ねたような顔をして、僕の腰を引き寄せると、使用人達はまた泣き出してしまった。
「あわわっ」
「ルディア、仕方ない、オルランドに声を掛けてやってくれ」
「あっ、は、はい」
「オルランドさん、皆も、待っててくれてありがとう。これから、よろしくお願いします」
「うっ、う う゛っ、ルディア様が、ルディア様が、本当に、生きていらっしゃるうう゛う゛ぅ」
「わわっ」
オルランドさんが、川が決壊したように泣き出すと、つられて使用人達も声を上げて泣き出し、エントランスは大洪水になってしまった。
そんな光景を見ていたフィンセント様は、嬉しそうに僕を抱き寄せると、僕の頭に何度も口づけをした。
「ルディア、もう、ここは放っておこう」
「えっ!?」
「ルディアに見せたい物があるんだ。行こう」
フィンセント様は、僕の手を引いて、離れのある方向に歩き出した。
こっちは⋯
僕の手が、じわっと汗ばんだ。
それに気づいたフィンセント様は、ぴたりと足を止めると、僕を横抱きにして抱き上げた。
「わわっ!フィンセント様!?」
「ルディア、私が連れて行くから、目を閉じておくんだ」
僕はフィンセント様に言われるがまま、きつく目を閉じた。
「よし、着いた。ルディア、目を開けてごらん」
フィンセント様の優しい声がして、僕はそっと目を開けた。
「わあっ!すごいっ!!」
「ああ、私も見るのは初めてだが、確かにこれは、想像以上だ」
目の前に広がっていた光景を、僕はきっと生涯忘れないと思った。
辛い記憶の残る離れの建物と、厩番の古い小屋は全て取り壊され、ぐるりと柵で囲われた広い跡地には、柔らかな草がたっぷりと生い茂っていた。
その中を、気持ちよさそうに何頭もの馬が駆け抜けていく。
「ふふっ、フィンセント様、テラも気持ちよさそうですね」
「ああ、先にザカリー領から帰らせる時は、渋っていたようだが、ふっ、これで機嫌も良くなったようだな」
「はいっ!」
パカラッ パカラッ
テラは僕達に挨拶をするように、僕達の前を全速力で駆けていった。
夕食と湯浴みを済ませ、フィンセント様から誘われるように、当主の自室にきた。
その日の夕食は、とても豪華で美味しかった。
料理人達にお礼を言うと、数日前から張り切った甲斐があった、と言って泣いていた。
「料理人達も、ルディアが食事を摂っていなかったと聞いて、心を痛めていたんだ。これからは、たくさん食べてやってくれ」
「ぐすっ、はい、フィンセント様」
「そうか、そうだな、ルディアは、2人分食べないといけないな」
「へっ!?」
フィンセント様の冗談かと思って顔を見ると、フィンセント様は、ふむふむと、考え込むような仕草で頷いていた。
「ぷっ」
「ルディア、どうした?」
「フィンセント様、2人分も食べてたら、僕、あっという間に服が入らなくなってしまいます。それに、お医者様から、食べ過ぎには注意するように、念を押されてるんです」
「そ、そうだった。すまない」
「ふふっ、フィンセント様はお優しいですね」
僕が、落ち込むフィンセント様の手をそっと握ると、フィンセント様は、ぐっと僕の手を引いて抱き寄せた。
「ルディア、お帰り。ルディアと一緒にこの屋敷に戻れて、本当によかった。ルディア、これからは、この部屋がルディアの部屋だ」
「えっ⋯?」
「ルディア、ずっと私の傍にいてくれないか?いや、私がルディアから離れたくないんだ」
「フィンセント様⋯、はい、ずっと傍にいます」
「ルディア⋯」
「フィンセント様⋯」
2人の視線が熱く絡まり、自然と唇が重なった。
深い口づけを繰り返しながら、フィンセント様は、僕を横抱きに抱いて、ベッドに連れてきた。
「ルディアを確かめたい。少し触れるだけだ。いいか?」
フィンセント様は、眉根を寄せ、辛そうな表情で僕の頬を包み込んだ。
「フィンセント様、お忘れですか?お医者様はこうも言ってました。激しくしなければ、夫夫生活も大丈夫だ、って」
「だ、だが⋯」
「フィンセント様、触ってください」
「⋯っ!?」
僕は頬に触れていたフィンセント様の手を掴み、自分の左胸に置いた。
「ルディア⋯」
「フィンセント様、僕の心臓はどうですか?」
「動いている、とくん、とくんと、ちゃんと動いている」
「フィンセント様、僕、平気です。だから、直接触れてください」
僕が、フィンセント様の手をシャツの中に滑り込ませると、フィンセント様の長い指が、胸の尖りに触れた。
「あっ、んん」
僕が思わず反応すると、フィンセント様の目が見開かれた。
「ルディア、もう、知らんぞ」
フィンセント様は、あっという間に僕の服を剥ぎ取り、自分の服も脱ぎ捨て、熱を帯びた瞳で、僕を見下ろしている。
「へっ?フィンセント様っ、だめっ、だめです!激しいのは、だめですっ!」
「ふっ、ルディアは可愛いな」
「ふぇっ!?」
「ルディア、激しいのが駄目なら、じっくり可愛がるのはいいんだろ?」
「へっ⋯?やっ、やあぁぁぁ!」
フィンセント様は、僕の体を余すところなく舐め尽くした。
ようやくフィンセント様と繋がった時には、僕はもう、息も絶え絶えになっていた。
「ルディア、大丈夫か?ルディア、ルディア」
フィンセント様はずっと僕の名前を呼びながら、ゆるゆると腰を揺らし続けた。
「あぁっ、フィンセント様ぁ」
「ルディア、焦れったいか?」
「やぁっ、そんな事、聞かないでぇ」
「ふっ、すまない、ルディアがあまりにも可愛い反応をするから、つい意地悪を言った」
「ああぁぁっ、もう、もう、フィンセント様ぁ」
僕はフィンセント様の背中に爪を立てた。
「ああ、私ももう、持ちそうにない」
フィンセント様が、ゆっくりと僕の奥に進み、ぐっと腰を押し付けると、僕はあっけなく達してしまった。
フィンセント様は、僕が達したのを確かめると、僕の中から反り返った昂りを抜いて、僕のお腹の上に精を放った。
「さすがに、神の魂が入った子に、私の精を放つ訳にはいかないからな」
そんなフィンセント様の声が、薄れていく意識の中で聞こえて、僕はなんでか可笑しくて、笑ってしまった。
ふふっ、きっとフィンセント様は、また真面目な表情で考えてるんだろうな。
僕は笑いながら、フィンセント様の温かい胸の中で、深い眠りに落ちた。
「はい、すごいです、ルディア様」
こんな田舎の男爵家の前に、豪華な馬車が2台止まっている。
1台はもちろん、フィンセント様が用意したバウアー公爵家の馬車で、結婚が決まった時に、僕を迎えに来てくれた馬車だ。
そしてもう1台は、アイクのお父上のアーボルド侯爵が用意してくれた馬車で、騎士の家系らしく、質実剛健の文字が頭に浮かぶような、大きくて立派な馬車だった。
「アイク、ジルをよろしくね」
「ああ、心配するな、ルディア」
アイクは恥ずかしがるジルを、さらりとエスコートした後、馬車に片足を掛けて僕とフィンセント様の方を見た。
「ふふっ、アイク、嬉しそうだね」
「ま、まあ、そりゃあ、父上がどうしてもと言って、俺のために馬車を用意してくれたんだ。嬉しいに決まってる」
「そうだね。僕も一度ちゃんとご挨拶しないと」
「ああ、父上も喜ぶだろう。じゃあ、行くな。ルディア、公爵、王都で会おう」
「わかった。ジルも気をつけてねっ!」
「はいっ!」
アイクとジルは、肩を寄せて見つめ合った後、満面の笑みで手を振って去って行った。
「ルディア、私達も、帰ろうか」
「わわっ!」
フィンセント様は僕を軽々と抱き上げ、愛おしそうに抱き締めて、すりっと頬ずりをした。
「はい、フィンセント様、帰りましょう」
公爵邸が近づくにつれて、忘れていた、いや、忘れたふりをしていた辛い記憶が、僕の頭になだれ込んできた。
「ルディア、大丈夫か?」
「は、はい、フィンセント様」
「ルディア、私が傍にいる、決して離さない、だから、私を信じてくれないか?」
フィンセント様は、今にも泣きそうな顔で、僕を壊れ物に触れるように、そっと抱き締めた。
正直、公爵邸にもう一度足を踏み入れるのは怖くて堪らない。
でも、もしかしたら、フィンセント様も同じなのかもしれないと思った。フィンセント様は、僕を失う怖さを知っているから。
「フィンセント様、僕、今度こそ、フィンセント様と幸せになりたい」
僕は力の限り、フィンセント様を抱き締めた。
「⋯っ!ああ、ああ、ルディア、幸せになろう。ルディアも、生まれてくる子も、私が絶対幸せにする。ルディア、愛してる」
「フィンセント様、僕も愛してます」
フィンセント様は、ほんの少し僕から体を離し、甘い熱で潤んだエメラルドグリーンの瞳で見つめてきた。
僕は何だか恥ずかしくて、でも、フィンセント様に触れて欲しくて、そっと目を閉じた。
フィンセント様の口づけは、僕の唇を包み込むような、優しい優しい口づけだった。
馬車がゆっくりと速度を落とし始め、蹄の音がぴたりと止まった。
「ルディア、行こう」
フィンセント様の温かな手が、僕の中の迷いも恐怖も全て取り去ってくれた。
「はいっ」
玄関が近づき、扉の前に立っていた護衛が扉を開けてくれた。
護衛は僕を見ると泣き崩れ、今にも膝を地面に付きそうになっている。
「あのっ、フィンセント様、護衛の方は大丈夫でしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。⋯ルディア、彼に声を掛けてくれないか?」
「は、はい」
「ジェイさん、大丈夫ですか?心配をお掛けして、すみませんでした」
「うぅっ、う゛ぐっ、ルディア様あ゛、お帰り、なさいませええ゛ぇ」
とうとうジェイさんは泣き崩れ、地面に手を付いてしまった。
「あわわっ、フィンセント様、どうしましょう」
フィンセント様は、僕が慌てる姿を見て、まだまだこれからだ、と意味の分からない事を言って笑った。
その意味は、僕がエントランスに一歩足を踏み入れるとすぐに分かった。
「「「「お帰りなさいませっっ!!」」」」
エントランスには、公爵家の使用人が全員揃っていて、頭を上げた皆の顔は、一様に涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「みん⋯な⋯、僕を待ってて⋯くれたの?」
使用人達は、泣きながら何度も何度も頷いた。
「ルディア、安心していい。ここにはもう、ルディアを害する者は1人もいない。侍女長の息のかかった者は全員解雇した。皆ルディアの世話をしたくてうずうずしてたんだ。これからは、思う存分甘えるといい。⋯本当は、甘やかすのは、私だけでいいんだが」
フィンセント様が、少し拗ねたような顔をして、僕の腰を引き寄せると、使用人達はまた泣き出してしまった。
「あわわっ」
「ルディア、仕方ない、オルランドに声を掛けてやってくれ」
「あっ、は、はい」
「オルランドさん、皆も、待っててくれてありがとう。これから、よろしくお願いします」
「うっ、う う゛っ、ルディア様が、ルディア様が、本当に、生きていらっしゃるうう゛う゛ぅ」
「わわっ」
オルランドさんが、川が決壊したように泣き出すと、つられて使用人達も声を上げて泣き出し、エントランスは大洪水になってしまった。
そんな光景を見ていたフィンセント様は、嬉しそうに僕を抱き寄せると、僕の頭に何度も口づけをした。
「ルディア、もう、ここは放っておこう」
「えっ!?」
「ルディアに見せたい物があるんだ。行こう」
フィンセント様は、僕の手を引いて、離れのある方向に歩き出した。
こっちは⋯
僕の手が、じわっと汗ばんだ。
それに気づいたフィンセント様は、ぴたりと足を止めると、僕を横抱きにして抱き上げた。
「わわっ!フィンセント様!?」
「ルディア、私が連れて行くから、目を閉じておくんだ」
僕はフィンセント様に言われるがまま、きつく目を閉じた。
「よし、着いた。ルディア、目を開けてごらん」
フィンセント様の優しい声がして、僕はそっと目を開けた。
「わあっ!すごいっ!!」
「ああ、私も見るのは初めてだが、確かにこれは、想像以上だ」
目の前に広がっていた光景を、僕はきっと生涯忘れないと思った。
辛い記憶の残る離れの建物と、厩番の古い小屋は全て取り壊され、ぐるりと柵で囲われた広い跡地には、柔らかな草がたっぷりと生い茂っていた。
その中を、気持ちよさそうに何頭もの馬が駆け抜けていく。
「ふふっ、フィンセント様、テラも気持ちよさそうですね」
「ああ、先にザカリー領から帰らせる時は、渋っていたようだが、ふっ、これで機嫌も良くなったようだな」
「はいっ!」
パカラッ パカラッ
テラは僕達に挨拶をするように、僕達の前を全速力で駆けていった。
夕食と湯浴みを済ませ、フィンセント様から誘われるように、当主の自室にきた。
その日の夕食は、とても豪華で美味しかった。
料理人達にお礼を言うと、数日前から張り切った甲斐があった、と言って泣いていた。
「料理人達も、ルディアが食事を摂っていなかったと聞いて、心を痛めていたんだ。これからは、たくさん食べてやってくれ」
「ぐすっ、はい、フィンセント様」
「そうか、そうだな、ルディアは、2人分食べないといけないな」
「へっ!?」
フィンセント様の冗談かと思って顔を見ると、フィンセント様は、ふむふむと、考え込むような仕草で頷いていた。
「ぷっ」
「ルディア、どうした?」
「フィンセント様、2人分も食べてたら、僕、あっという間に服が入らなくなってしまいます。それに、お医者様から、食べ過ぎには注意するように、念を押されてるんです」
「そ、そうだった。すまない」
「ふふっ、フィンセント様はお優しいですね」
僕が、落ち込むフィンセント様の手をそっと握ると、フィンセント様は、ぐっと僕の手を引いて抱き寄せた。
「ルディア、お帰り。ルディアと一緒にこの屋敷に戻れて、本当によかった。ルディア、これからは、この部屋がルディアの部屋だ」
「えっ⋯?」
「ルディア、ずっと私の傍にいてくれないか?いや、私がルディアから離れたくないんだ」
「フィンセント様⋯、はい、ずっと傍にいます」
「ルディア⋯」
「フィンセント様⋯」
2人の視線が熱く絡まり、自然と唇が重なった。
深い口づけを繰り返しながら、フィンセント様は、僕を横抱きに抱いて、ベッドに連れてきた。
「ルディアを確かめたい。少し触れるだけだ。いいか?」
フィンセント様は、眉根を寄せ、辛そうな表情で僕の頬を包み込んだ。
「フィンセント様、お忘れですか?お医者様はこうも言ってました。激しくしなければ、夫夫生活も大丈夫だ、って」
「だ、だが⋯」
「フィンセント様、触ってください」
「⋯っ!?」
僕は頬に触れていたフィンセント様の手を掴み、自分の左胸に置いた。
「ルディア⋯」
「フィンセント様、僕の心臓はどうですか?」
「動いている、とくん、とくんと、ちゃんと動いている」
「フィンセント様、僕、平気です。だから、直接触れてください」
僕が、フィンセント様の手をシャツの中に滑り込ませると、フィンセント様の長い指が、胸の尖りに触れた。
「あっ、んん」
僕が思わず反応すると、フィンセント様の目が見開かれた。
「ルディア、もう、知らんぞ」
フィンセント様は、あっという間に僕の服を剥ぎ取り、自分の服も脱ぎ捨て、熱を帯びた瞳で、僕を見下ろしている。
「へっ?フィンセント様っ、だめっ、だめです!激しいのは、だめですっ!」
「ふっ、ルディアは可愛いな」
「ふぇっ!?」
「ルディア、激しいのが駄目なら、じっくり可愛がるのはいいんだろ?」
「へっ⋯?やっ、やあぁぁぁ!」
フィンセント様は、僕の体を余すところなく舐め尽くした。
ようやくフィンセント様と繋がった時には、僕はもう、息も絶え絶えになっていた。
「ルディア、大丈夫か?ルディア、ルディア」
フィンセント様はずっと僕の名前を呼びながら、ゆるゆると腰を揺らし続けた。
「あぁっ、フィンセント様ぁ」
「ルディア、焦れったいか?」
「やぁっ、そんな事、聞かないでぇ」
「ふっ、すまない、ルディアがあまりにも可愛い反応をするから、つい意地悪を言った」
「ああぁぁっ、もう、もう、フィンセント様ぁ」
僕はフィンセント様の背中に爪を立てた。
「ああ、私ももう、持ちそうにない」
フィンセント様が、ゆっくりと僕の奥に進み、ぐっと腰を押し付けると、僕はあっけなく達してしまった。
フィンセント様は、僕が達したのを確かめると、僕の中から反り返った昂りを抜いて、僕のお腹の上に精を放った。
「さすがに、神の魂が入った子に、私の精を放つ訳にはいかないからな」
そんなフィンセント様の声が、薄れていく意識の中で聞こえて、僕はなんでか可笑しくて、笑ってしまった。
ふふっ、きっとフィンセント様は、また真面目な表情で考えてるんだろうな。
僕は笑いながら、フィンセント様の温かい胸の中で、深い眠りに落ちた。
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