公爵様、どうか僕を忘れてください

まんまる

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終章~約束~

「父しゃま!僕、神しゃまの夢見たっ!」
「ふふっ、スカイル、じゃあ、今日も父様に聞かせてくれる?」
「うん!えっとね、神しゃまは、父しゃまと一緒の髪してる!きらきらしててねー、とおっても、きれーなんだっ!」
「父様は、スカイルの金色の髪も大好きだよ」
「やったー!父しゃま、大好きっ!」

2年前、空から銀色の光が降り注ぐ中、無事に生まれてきてくれた、僕とフィンセント様の子は、夢の中で神様と会った話をよくしてくれる。

「父上っ、僕、今日も神しゃまの夢、見れる?」
「ああ、見れるさ。スカイルがちゃんと早く寝られたらな」
「わかった!僕、今日も早くねるっ!」

フィンセント様の膝の上で、寝着姿のスカイルがぴょんぴょんと飛び跳ねている。

「ほら、もう、寝るんだろ?」
「うん!ねるっ!でも、もうちょっと」

ぴょんぴょん

「ふふっ」
「ルディア、どうした?」
「フィンセント様が小さい頃も、きっと可愛いかったんだろうなって思って」
「どうだろうな。私はあまり笑わない子供だったからな。それより、私は幼いルディアを見てみたかったな」
「僕は、あまり変わらないって言われます」
「そうか。では、2人目は、ルディアに似た子が生まれてくれるのを祈るとしよう」
「へっ?2人目?」
「ルディア、そろそろ、どうだろうか」

フィンセント様は僕の腰を引き寄せ、ちゅっと軽く口づけをした。

「あっ!父上、ずるい!」
「ほら、スカイル、早く寝るんだろ?」
「はーい!」






◇◇◇◇◇

~これは、僕がまだ人の姿になれた頃のお話~



「ふわぁ、いい天気。ふふっ、今日も子供達は元気に走り回ってるなぁ」

その日、大きな湖のほとりで、日向ぼっこをしていた僕は、ぽかぽか陽気に誘われて、ついうっかりお昼寝をしてしまった。

ブルル

「ん⋯?ふあぁ、君は誰?」
「ソラだ」
「わわっ!馬がしゃべった!?」
「ははっ、馬がしゃべる訳ないだろ」
「えっ?」

僕が慌てて体を起こすと、目の前には立派な体躯の青毛の馬がいて、僕の髪に勢いよく鼻息を吹きかけていた。

「ソラ、やめろ、鼻水がつくぞ」
「えっ!?鼻水!?」
「ふっ、ふはっ、ははははは」
「ふぇっ?」

僕は慌てて頭を押さえた。

「大丈夫か?ソラが悪かったな」

声はするけど、姿が見えない。
僕は、ぱっと立ち上がり、ソラと呼ばれてる馬の後ろを覗き込んだ。

うわぁ、なんて綺麗な金色の髪だろう。
まるで太陽の光を独り占めしたみたい。

ソラの後ろには美しい男性が立っていて、僕は思わず息を飲んだ。

「あんた、ここら辺の者じゃないな」
「⋯⋯」
「どうした?」
「あっ、ごめんなさい!あなた、とてもきれいね。つい見とれちゃった」
「はっ!?そ、そんな恥ずかしいこと、普通、言うか!?」
「えっ、だって、きれいなものは、きれいでしょ?」
「だあーーーっ!もういい!」
「照れてるの?」
「照れてないっ!」
「ふふっ、ごめんなさい、もう言わない」
「⋯⋯だ」
「えっ?」
「あんたの方がきれいだって、言ったんだ!!」
「へっ!?」

この思わぬ出会いが、悠久の時を生きる僕の、たった一度の恋の始まりだった。

最初は、湖のほとりで他愛もない話をしていただけだった。
でも、握られた手が温かいことに気づき、触れた唇からは、痛いほどの切なさが伝わってきた。

そして、深く交わったあの夜、僕は愛を知った。

「俺たちは男同士だから、子を作る事はできないが、俺と結婚してくれないか」

嬉しかった。
嬉しくて泣き出してしまった僕を、あの人は、温かな胸に包み込んでくれた。


「僕、赤ちゃんができたんだ」
「えっ!?」

僕はどうしても、愛する人との子が欲しかった。
僕は自分の魂の欠片に、愛する人の精を溶け込ませ、お腹に新しい命を宿した。

「本当かっ!」

僕は、黙ってうなずいた。

「やったー!!」

あの人は何も聞かず、ただただ喜んでくれた。

生まれた赤ちゃんは、僕に生き写しだった。
あの人は、泣いて喜んでくれた。

幸せだった。 
幸せすぎて、怖いくらいだった。

でも、幸せは長くは続かなかった。
人はもろい。
あっという間に広まった流行り病は、この世の人間の半分を、あの世に連れ去ってしまった。

「逝かないで!僕が、僕が、命をあげるから!」
「よ⋯せ」
「でもっ!」
「タタラン、その⋯力は、皆に⋯使って⋯くれ」
「知ってた⋯の?」
「タタラン、愛してる」

あの人は、ふっと微笑んだ。

僕が愛した、たった一人の人、僕の魂を全て注いでも構わないほど愛しい我が子。

でも、苦しむ2人を前にして、僕にできたことは、最期の苦しみを取り去ることだけだった。

エメラルドグリーンの瞳が、ゆっくりとまぶたに覆われた。
僕は、冷たく眠る愛する人と我が子の睫毛まつげに、涙で震える唇を落とした。

その瞬間、我が子から銀色の光が溢れ出し、それが1つの光の玉になって、僕の周りをふわふわと飛び回った。
肉体を失った僕の魂の欠片が、僕のもとに戻ってきたんだ。
ふわふわと飛び回る光の玉を見ていたら、我が子が元気に走り回っていた光景を思い出し、僕は光を手の平に乗せ、嗚咽おえつした。


湖の水はとても冷たく、亡くなった人を、生前の姿のまま、深い湖底に眠らせてくれると聞いた。
僕は2人の亡骸なきがらを、ソラに手伝ってもらって、湖の底に眠らせた。

2人を送った後、僕は愛する人との約束を果たすために、国中をソラに乗って駆け巡った。
そして僕は魂を削って、空から降らせ続けた。

僕の魂の光を浴びた者は、たとえ男でも、子を宿す事ができるようになり、やがて、子供の笑い声が、国中に響くようになった。





◇◇◇◇◇

「ぐすっ ぐすっ」
「スカイル、どうしたの?」
「僕、神しゃまの夢みたんだ。でもね、神しゃま泣いてた。男の人と子供が死んじゃったんだ」
「そう、悲しいね。でもスカイル、神様は何か言ってなかった?」
「ぐすっ、言ってた」
「何て言ってた?」
「笑ってって、みんな笑ってくれたら、嬉しいって。神しゃまね、お馬さんに乗って、お空に消えちゃったんだ」
「じゃあ、神様は、お空からスカイルを見てるんだね。スカイル、神様にいっぱい笑ってあげて」
「うん!」

僕が愛しい我が子を抱き締めると、フィンセント様が、2人を包み込むように、ふわりと抱き寄せた。

「ルディア、スカイル、愛してる」

フィンセント様は、僕とスカイルの銀色の睫毛に、何度も何度も、口づけの雨を降らせた。




タタラン王国には、子供が大好きな神がいる。

その昔、神はいつでも子供の笑い声が聞こえるように、男の体でも子供が産めるようにした。






終わり


最後まで読んで頂きありがとうございました。
たくさんのお気に入り登録、いいね♡、エールもありがとうございました。
いつも励みになってます。

番外編をいくつか考えていますが、まだ形になっていません。近い内に更新しますので、しばらくお待ち下さい。

本編はこれにて完結になります。

 
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