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今日から学園の授業が始まる。
制服を着て、心地よい緊張を覚えながら、僕は、待っていた馬車に乗り込んだ。
王城から学園はそれほど離れていない。
僕の緊張がほぐれる前に、馬車は学園に着いてしまった。
僕は馬車の扉が開くと、何も考えずに差し出された手を取った。
馬車から降りるとすぐに、学園の大きな建物が目に入り、僕は思わず、ため息をついた。
「ふぅ」
「シルティ殿下、緊張されているようですね」
「うん、少しね⋯って、アリウス!?」
アリウスの声が聞こえて、咄嗟に声のした方を見ると、僕はアリウスに手を握られていた。
「アリウス!?こんな所で何してる⋯の⋯って、どうして、アリウスが学園の制服着てるの!?」
僕の手をぎゅっと握って離さないアリウスをよく見ると、いや、よく見なくても、アリウスは学園の制服を身に纏っていた。
アリウス、筋肉が付きすぎて、シャツの釦が今にも弾け飛びそう。
でも、そんなアリウスもかっこいい⋯って、そんなことは今はどうでもいい!
「アリウス、どうしたの!?」
「殿下、私も学び直しが必要だと思いまして、思い切って制服を着てみました」
アリウスは、いい事を思いついたと言わんばかりに、得意気な顔をしている。
「学び直しって、アリウスは確か、学園を首席で卒業したって聞いたけど⋯」
「ああ、そんな事もあったような、なかったような、どうも記憶が曖昧でして」
アリウスは、わざとらしく首を傾げて見せた。
そうこうしているうちに、門の近くにいた学生たちが、ざわざわと騒ぎ始めた。
「アリウス、とにかく今日は帰って!」
僕がアリウスの背中をぐいぐい押していると、王城の方から、見るからに慌てた様子の騎士が、馬を駆けさせてやって来た。
「団長おおっっ!!」
「チッ」
んっ? 今、アリウス、舌打ちした?
「団長!何してるんですか!今日は会議がある日ですよ!まったく、まさかと思って来てみたら、本当にここにいるとは」
「会議くらい、副団長のお前が出ればいいだろ。私は今、手が離せないんだ」
「ふぅ、団長、その格好だけは、団員には見せないでくださいよ。みんな団長に憧れているんですから。ほら、早く行きますよ。シルティ殿下、お騒がせしました」
アリウスが副団長と呼んでいる騎士は、僕に深々と一礼をして、アリウスを力ずくで引きずっていった。
アリウスは、ずるずると引きずられながら、
「狼が来たら走って逃げてください!」
と、訳の分からないことを叫んでいた。
それからというもの、アリウスは、ある時は清掃員に紛れ込み、ある時は学食の配膳係に変装し、またある時は、堂々と剣術の授業の特別講師として、学園に現れた。
これじゃあ、アリウスの方が、『イリュージョニスト』みたいだよ⋯。
でも、いくらアリウスが変装していても、滲み出る威厳を隠しきれず、すぐに生徒に気づかれて、大騒ぎになっていた。
制服を着て、心地よい緊張を覚えながら、僕は、待っていた馬車に乗り込んだ。
王城から学園はそれほど離れていない。
僕の緊張がほぐれる前に、馬車は学園に着いてしまった。
僕は馬車の扉が開くと、何も考えずに差し出された手を取った。
馬車から降りるとすぐに、学園の大きな建物が目に入り、僕は思わず、ため息をついた。
「ふぅ」
「シルティ殿下、緊張されているようですね」
「うん、少しね⋯って、アリウス!?」
アリウスの声が聞こえて、咄嗟に声のした方を見ると、僕はアリウスに手を握られていた。
「アリウス!?こんな所で何してる⋯の⋯って、どうして、アリウスが学園の制服着てるの!?」
僕の手をぎゅっと握って離さないアリウスをよく見ると、いや、よく見なくても、アリウスは学園の制服を身に纏っていた。
アリウス、筋肉が付きすぎて、シャツの釦が今にも弾け飛びそう。
でも、そんなアリウスもかっこいい⋯って、そんなことは今はどうでもいい!
「アリウス、どうしたの!?」
「殿下、私も学び直しが必要だと思いまして、思い切って制服を着てみました」
アリウスは、いい事を思いついたと言わんばかりに、得意気な顔をしている。
「学び直しって、アリウスは確か、学園を首席で卒業したって聞いたけど⋯」
「ああ、そんな事もあったような、なかったような、どうも記憶が曖昧でして」
アリウスは、わざとらしく首を傾げて見せた。
そうこうしているうちに、門の近くにいた学生たちが、ざわざわと騒ぎ始めた。
「アリウス、とにかく今日は帰って!」
僕がアリウスの背中をぐいぐい押していると、王城の方から、見るからに慌てた様子の騎士が、馬を駆けさせてやって来た。
「団長おおっっ!!」
「チッ」
んっ? 今、アリウス、舌打ちした?
「団長!何してるんですか!今日は会議がある日ですよ!まったく、まさかと思って来てみたら、本当にここにいるとは」
「会議くらい、副団長のお前が出ればいいだろ。私は今、手が離せないんだ」
「ふぅ、団長、その格好だけは、団員には見せないでくださいよ。みんな団長に憧れているんですから。ほら、早く行きますよ。シルティ殿下、お騒がせしました」
アリウスが副団長と呼んでいる騎士は、僕に深々と一礼をして、アリウスを力ずくで引きずっていった。
アリウスは、ずるずると引きずられながら、
「狼が来たら走って逃げてください!」
と、訳の分からないことを叫んでいた。
それからというもの、アリウスは、ある時は清掃員に紛れ込み、ある時は学食の配膳係に変装し、またある時は、堂々と剣術の授業の特別講師として、学園に現れた。
これじゃあ、アリウスの方が、『イリュージョニスト』みたいだよ⋯。
でも、いくらアリウスが変装していても、滲み出る威厳を隠しきれず、すぐに生徒に気づかれて、大騒ぎになっていた。
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