白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる

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「ダレル、一体何をする気なの?」
「まあまあ、いいから、俺に任せろ。ふぅ、このままだと、2人とも片想いだと勘違いしたまま、じいさんになる未来しか見えん」
「へっ?」

結局、ダレルは王城に着くまで、今から何をするのか教えてくれなかった。

「よし、着いたな」

馬車が止まった途端、護衛が馬から降りる前に、ダレルは扉の取っ手を掴んだ。
ダレルの手にぐっと力が入り、扉が開き掛けた瞬間、外から扉が思い切り開け放たれた。

「おわっ!」

ダレルの驚く声が聞こえたと思ったら、僕は驚く隙も与えられる事なく、何かにふわりと抱き上げられていた。

「ふぇっ!?」

「ダレル王子、なぜαのあなたが、シルティ殿下と同じ馬車に乗っておられるのですか?」

「えっ?アリウス?」

僕の頭の上から響いた声は、間違いなくアリウスの声だった。

「アリウス!?どうしてここにいるの!?」
「殿下、失礼します」
「へっ?わ、わわっ!」

アリウスは僕の問い掛けには答えず、マントをひらりと広げて、僕を包んでしまった。

「キーファ団長はいいんですか?」
「⋯⋯」
「団長もαですよね。団長がそんな事をしたら、護衛にわざわざβの騎士を付けている意味がないんじゃないですか?」
「⋯私には、命を賭してシルティ殿下をお護りする務めがあります。αの脅威に怯えて、泣いておられる殿下を目の前にして、黙って見過ごす事などできません」
「はあっ!?シルティのどこを見たら、怯えているように見えるんだ!?それに涙なんて1滴も出てないだろ!って言うか、俺まだ馬車から降りてないんだけど!」
「では、そのまま、お帰りいただ⋯」
「待て待てっ!キーファ団長、その狭量さはどうかと思うぞ!」
「⋯⋯」

うぅぅ、アリウスは、いつまで僕を抱っこするつもりなんだろう。
なんか、ダレルと言い合ってるし⋯。

「ア、アリウス、ダレルは僕が招待したんだ。とりあえず、王城に入ってもらおうよ」
「いいえ、許可できま⋯」
「アリウス!ダレルは隣国の王子だよ。門前払いなんてしたら、外交問題になりかねないよ」

そんな事にはならないだろうけど、ダレルが何を企んでいるのか気になるし、いつまでもこんな所で、2人に言い合いをさせる訳にはいかない。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

ダレルはアリウスを挑発するように、アリウスの鼻先で、ふふん、と言って歩き出した。
アリウスは奥歯をギリッと鳴らして、僕を抱っこしたまま、ダレルの後に付いて歩き出した。

「ね、ねえ、アリウス、もう降ろして」

本当はこのまま、アリウスの腕の中にいたい。
でも、さっきから皆の視線が刺さって、いたたまれない。

「お願い、アリウス」
「いいえ、なりません。ダレル王子がいつ牙をくか分かりませんので」
「ダ、ダレルはそんな事しないよ!」
「いいえ、殿下はαの恐ろしさを分かっておられないのです」
「⋯守ってくれるんでしょ?」
「えっ?」
「何があっても、アリウスが僕を守ってくれるんでしょ?」

僕がアリウスの顔を覗き込むと、アリウスは一瞬目を見開いて僕をぐっと抱き締め、観念したようにゆっくりと立ち止まった。

「決して離れません」

アリウスはそう言うと、躊躇ためらいがちに、僕をそっと降ろしてくれた。


王城に入ると、侍従が客間に案内してくれた。

「俺は、シルティの部屋がよかったんだけどな」

ダレルはソファに腰を下ろしながら、わざとらしく、入り口に立つアリウスを、ちらりと見た。
アリウスは表情を変えないまま、剣のグリップを握り締め、今にも剣を引き抜こうとして、慌てて僕の護衛から止められていた。

「団長、それはやばいです!」(口パク)
「⋯チッ」(口パク)

そんなやり取りを横目で見ていたダレルが、急に真剣な表情かおで、僕に向き直った。

「シルティ、話がある」
「な、何?」
「今から、国王に会って、俺とシルティの結婚の許しをもらってくる」
「ええっ!?ダレル、どうしたの!?」
「どうもしないさ。俺は初めて会った時から、ずっとシルティが好きだった。国王と俺の父は学園時代からの友人だ。俺が頼めば首を縦に振るさ」
「でもっ!そんなこと急に言われても、ダレルは友達だし、結婚とか、考えた事もないよ」

僕がわたわたと焦っていると、護衛の叫び声が部屋中に響き渡った。

「団長っ!!それだけは、おやめ下さいっ!何卒なにとぞ抑えてください!」

驚いて声のした方を見ると、アリウスがさやから剣を引き抜き、大きな体をゆらりと揺らしながら、僕たちに近づこうとしていた。

理由は分からないけど、多分アリウスは怒っているのだろう。
でもその表情は無に等しく、それが逆に、アリウスの怒りが頂点に達しているように見えた。

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