白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる

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アリウスの静かなる怒気に当てられ、僕とダレルは身動き一つ取れなかった。
アリウスが、ゆらゆらとこちらに近づいてくる。
僕はごくりと唾を飲み込み、乾いた喉をどうにか動かした。

「アリウス!駄目っ!剣を仕舞って!」
「シルティ殿下、いくら殿下のお願いでも、それだけは聞けません。こやつだけは、今ここで切り捨てます」
「なっ、なんて事言うの、アリウス!」

アリウスは、ゆっくりと剣を上段に構えた。
僕は慌ててソファから立ち上がり、アリウスの目の前で両手を広げた。

「アリウス、本当にどうしたの!?」
「シルティ殿下、退いてください」
「退く訳ないでしょ!アリウスが罪を犯そうとしているのに!」

僕は、涙が零れそうになるのを必死で堪え、ふるふると震える腕を精一杯広げた。

その時、いつも軽口しか言わないダレルの、低く重たい声が響いた。

「そんなに大事なら、早く自分のものにすればいいだろ?いい歳した大人なんだから、いい加減、純愛ごっこはやめたらどうだ?」

「ダレル⋯?」

アリウスの事がまだ気掛かりだったけど、僕は両手を広げたまま、後ろを振り向いた。
さっきまで座っていたのに、ダレルは立ち上がって、アリウスをめつけていた。

「いい加減にしろ!あんたが何でブチ切れているのか、本人に全然伝わってないんだよ!このままじゃ、本当に誰かに掻っ攫われるぞ!身分の違いだか、歳の違いだか、何を気にしてるのか知らないが、あんたがこのまま動かないんだったら、俺は本気で奪いに行くからな!」
「⋯⋯」
「⋯団長、何か言ってくれないと、俺だけ熱くなって恥ずかしいだろ」
「いい歳した⋯歳の違い⋯」
「どこに引っ掛かってるんだよっ!」

ダレルはアリウスに向かって一気にまくし立て、肩ではぁはぁ息をしている。

ダレルの言いたい事が伝わったのか、それとも、ダレルの勢いに押されたのか、アリウスはすっと剣を下ろして、鞘に収めた。

「団長!何とか言えよ!」
「⋯本気ですか?」
「はっ?」
「シルティ殿下の事、本気ですか?」
「俺が本気だったら、団長は諦めるのか?」
「⋯⋯」
「そんなしょぼい覚悟しかないなら、中途半端にシルティに触れるな!シルティが可哀想だろ!」

えっと⋯、さっきから僕の名前が出てくるけど、2人は一体何の話をしているんだろう?
なぜか護衛が泣きながら、音のしない拍手を送ってるし。

このままでは埒が明かないと思い、僕は2人に声を掛けた。

「あのっ、2人とも一旦落ち着こうよ。ダレル、さっき僕に言ったのは冗談だよね?その、僕と結婚するって」
「冗談かどうかは、団長次第だ」
「えっ?どうしてアリウスが出てくるの?」
「シルティ、俺はできる限りの事はやった。これで駄目なら諦めろ。まあ俺としては、そっちの方がいいけどな」
「へっ?」

ダレルが僕の肩に軽く手を置くと、アリウスの眉がぴくっと上がった。
そんなアリウスを横目で見ながら、ダレルは客間を出ていった。

ダレルは何をしたかったんだろう?




その日の夜だった。

父様から呼ばれて王の執務室に行くと、なぜかアリウスがいて、僕たちは並んで父様の前に立たされた。

「シルティ」

父様の声が、少し上ずって聞こえた。

「はい、父様」

「シルティ、アリウスとの結婚が決まった」
「ん?」
「ごほん、もう一度言う。お前たちの結婚が決まった」
「へっ?」
「だから、シルティはアリウスと結⋯」
「本当ですかっ!?本当に僕、アリウスと結婚できるんですかっ!?」
「ああ、さっきから、そう言っているだろう?まあ、シルティがどうしても嫌だと言⋯」
「分かりましたっ!僕、お受けしますっ!」
「そ、そうか⋯」

僕は、父様のがっくりと肩を落とす姿にばかり目がいって、アリウスがぐっと拳を握り、よしっ、と呟いた声は聞こえていなかった。

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