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天使の困惑~sideシェラ~
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「シェラ、大事な話がある。少しいいか?」
「はい、父様」
「今日、王家からシェラ宛に手紙が届いた」
「僕に?何だろう⋯?」
「シェラ、安心しなさい。私が先に目を通しておいたから」
「父様、ありがとうございます。それで、何て書いてあったんですか?」
「手紙は第2王子のライアス殿下からだった。シェラに折り入って頼みたい事があるから、手紙を読んだらすぐに登城するようにとの事だ」
「⋯⋯」
「シェラ、大丈夫か?」
「父様⋯、もう一度お願いします」
「ごほん、シェラ、ぼんやりしないで、よく聞きなさい」
ライアス殿下から僕に頼み事なんて、何かの間違いじゃないかな。
もし本当だったとしても、殿下の頼み事なんて、僕に叶えてあげられるかな。
ガタゴトと馬車に一人で揺られながら、さっき父様と話した事を思い出していた。
「詳しい話は、殿下から直接あるようだ。絶対シェル一人で登城するようにと書いてあるが、私も一緒に行くから心配いらないからな」
「父様、大丈夫です。父様も忙しいでしょうし、僕一人で行ってきます」
「だが、ライアス殿下だぞ。シェルは殿下の事が昔から苦手だったじゃないか」
「うぅん、苦手と言うか、殿下から話し掛けられても僕がぼんやりしてるから、殿下を怒らせてしまうんです。だから僕が悪いんです」
「ふぅ、殿下は子供の頃から、お前に絡む癖があったからな⋯。だが、殿下ももう21歳になられた。最近では公務にも力を入れておられるようだし、さすがにもう落ち着かれただろう」
ライアス殿下は僕より3つ歳上で、子供の頃のお茶会で何度も会った事がある。
僕は他人よりのんびりしてるから、皆と一緒に遊んでいても、気づいたら一人になっている事が多かった。そんな時、決まってライアス殿下が僕に話し掛けてきた。
「シェラ、また置いてけぼりか?まったく、俺がいないとお前はいつも一人じゃないか。仕方ないから、俺が一緒に遊んでやる」
「ライアス殿下、僕、一人でも平気です」
「はあっ!?お前みたいなぼんやりした奴、一人でいたら誰かに連れて行かれるぞ!」
「誰かって、誰ですか?」
「誰って⋯、誰でもいいだろ!俺が一緒にいてやるって言ってるんだから、ありがたく思え!」
殿下は自分から僕に話し掛けてきておいて、最後はいつも勝手に怒って、僕が怒鳴りつけられた。
「ぐすっ、どうして、僕を叱るんですか?」
「⋯っ!な、泣くな!お前は伯爵家の令息だろ!高位貴族なら、人前で簡単に泣くな!」
「ぐすっ、ぐすっ、ふえぇぇん」
僕が泣き出すと、王城の近衛騎士が駆け寄ってきてくれた。
「殿下、シェラ様がお可愛そうです」
「う、うるさいっ!」
「シェラ様は何故叱られているのか、分かっておられませんよ」
「そ、それは⋯、俺がシェラと遊んでやるって言ってるのに、いらないって言うから⋯」
「王族である殿下こそ、人前では冷静でいるべきではないですか?」
「そ、そんな事、言われなくても分かってる!」
「ふぅ、殿下、私が殿下の剣の師範だと言う事をお忘れですか?明日からの訓練は、もう少し厳しくした方がいいようですね」
「ぐっ」
あの時は、僕を挟んで殿下と近衛騎士が話を始めてしまい、僕はぼんやりと庭の花を眺めていた。
そんな僕に気づいた殿下は、真っ赤になって震えながら、僕を睨んできた。
「くそっ!シェラ、絶対に俺以外と遊ぶなよ!」
殿下はそう言って僕を怒鳴りつけ、僕を睨みながら、そのまま後ろ向きで走って行った。
なんか、嫌な⋯、じゃなくて懐かしい事、思い出しちゃったな。
殿下が学園に上がられる頃には、お茶会自体がなくなり、もう会う事もなくなって、すっかり忘れてしまってた。
あのお茶会は、殿下の側近を見極める為のものだったって、後で父様に聞いたんだっけ。まあ、僕が選ばれる事はなかったけど。
殿下が僕を特別に側近にしてやるって言ってたらしいけど、きっと何かの間違いだよね。
だって、僕が殿下の側近なんてなったら、また殿下を怒らせてしまう。
馬車が僕を揺らしながら、王城の正門を抜けて、荘厳な城の目の前でゆっくり止まった。
するとすぐに馬車の窓が叩かれ、ゆっくりと扉が開かれた。
「あっ、ご苦労様でした。御者さん」
僕は差し出された手を取り、一言お礼を言った。
「ごほん、シェラ、久し振りだな」
「ライアス殿下⋯?うぅん、違うよね。ライアス殿下に似ている御者さんですよね?」
「ふっ、シェラ、相変わらずぽやっとしてるな」
「えっ?ライアス殿下ですか?」
「そうだ。ようやく気づいたか?」
「ええぇっ!?」
僕の手を取ったのは、見上げる程背が高くなったライアス殿下だった。
ライアス殿下は微笑みながら、僕の手をにぎにぎと何度も握ってきた。
「はい、父様」
「今日、王家からシェラ宛に手紙が届いた」
「僕に?何だろう⋯?」
「シェラ、安心しなさい。私が先に目を通しておいたから」
「父様、ありがとうございます。それで、何て書いてあったんですか?」
「手紙は第2王子のライアス殿下からだった。シェラに折り入って頼みたい事があるから、手紙を読んだらすぐに登城するようにとの事だ」
「⋯⋯」
「シェラ、大丈夫か?」
「父様⋯、もう一度お願いします」
「ごほん、シェラ、ぼんやりしないで、よく聞きなさい」
ライアス殿下から僕に頼み事なんて、何かの間違いじゃないかな。
もし本当だったとしても、殿下の頼み事なんて、僕に叶えてあげられるかな。
ガタゴトと馬車に一人で揺られながら、さっき父様と話した事を思い出していた。
「詳しい話は、殿下から直接あるようだ。絶対シェル一人で登城するようにと書いてあるが、私も一緒に行くから心配いらないからな」
「父様、大丈夫です。父様も忙しいでしょうし、僕一人で行ってきます」
「だが、ライアス殿下だぞ。シェルは殿下の事が昔から苦手だったじゃないか」
「うぅん、苦手と言うか、殿下から話し掛けられても僕がぼんやりしてるから、殿下を怒らせてしまうんです。だから僕が悪いんです」
「ふぅ、殿下は子供の頃から、お前に絡む癖があったからな⋯。だが、殿下ももう21歳になられた。最近では公務にも力を入れておられるようだし、さすがにもう落ち着かれただろう」
ライアス殿下は僕より3つ歳上で、子供の頃のお茶会で何度も会った事がある。
僕は他人よりのんびりしてるから、皆と一緒に遊んでいても、気づいたら一人になっている事が多かった。そんな時、決まってライアス殿下が僕に話し掛けてきた。
「シェラ、また置いてけぼりか?まったく、俺がいないとお前はいつも一人じゃないか。仕方ないから、俺が一緒に遊んでやる」
「ライアス殿下、僕、一人でも平気です」
「はあっ!?お前みたいなぼんやりした奴、一人でいたら誰かに連れて行かれるぞ!」
「誰かって、誰ですか?」
「誰って⋯、誰でもいいだろ!俺が一緒にいてやるって言ってるんだから、ありがたく思え!」
殿下は自分から僕に話し掛けてきておいて、最後はいつも勝手に怒って、僕が怒鳴りつけられた。
「ぐすっ、どうして、僕を叱るんですか?」
「⋯っ!な、泣くな!お前は伯爵家の令息だろ!高位貴族なら、人前で簡単に泣くな!」
「ぐすっ、ぐすっ、ふえぇぇん」
僕が泣き出すと、王城の近衛騎士が駆け寄ってきてくれた。
「殿下、シェラ様がお可愛そうです」
「う、うるさいっ!」
「シェラ様は何故叱られているのか、分かっておられませんよ」
「そ、それは⋯、俺がシェラと遊んでやるって言ってるのに、いらないって言うから⋯」
「王族である殿下こそ、人前では冷静でいるべきではないですか?」
「そ、そんな事、言われなくても分かってる!」
「ふぅ、殿下、私が殿下の剣の師範だと言う事をお忘れですか?明日からの訓練は、もう少し厳しくした方がいいようですね」
「ぐっ」
あの時は、僕を挟んで殿下と近衛騎士が話を始めてしまい、僕はぼんやりと庭の花を眺めていた。
そんな僕に気づいた殿下は、真っ赤になって震えながら、僕を睨んできた。
「くそっ!シェラ、絶対に俺以外と遊ぶなよ!」
殿下はそう言って僕を怒鳴りつけ、僕を睨みながら、そのまま後ろ向きで走って行った。
なんか、嫌な⋯、じゃなくて懐かしい事、思い出しちゃったな。
殿下が学園に上がられる頃には、お茶会自体がなくなり、もう会う事もなくなって、すっかり忘れてしまってた。
あのお茶会は、殿下の側近を見極める為のものだったって、後で父様に聞いたんだっけ。まあ、僕が選ばれる事はなかったけど。
殿下が僕を特別に側近にしてやるって言ってたらしいけど、きっと何かの間違いだよね。
だって、僕が殿下の側近なんてなったら、また殿下を怒らせてしまう。
馬車が僕を揺らしながら、王城の正門を抜けて、荘厳な城の目の前でゆっくり止まった。
するとすぐに馬車の窓が叩かれ、ゆっくりと扉が開かれた。
「あっ、ご苦労様でした。御者さん」
僕は差し出された手を取り、一言お礼を言った。
「ごほん、シェラ、久し振りだな」
「ライアス殿下⋯?うぅん、違うよね。ライアス殿下に似ている御者さんですよね?」
「ふっ、シェラ、相変わらずぽやっとしてるな」
「えっ?ライアス殿下ですか?」
「そうだ。ようやく気づいたか?」
「ええぇっ!?」
僕の手を取ったのは、見上げる程背が高くなったライアス殿下だった。
ライアス殿下は微笑みながら、僕の手をにぎにぎと何度も握ってきた。
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