健気令息の兄ですが、生真面目執事に落ちました

まんまる

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「ハミール、話があるから、今夜私の部屋まで来てくれないか?」
「かしこまりました」
「もう、婚約したのだからもっと楽に話してくれないか」
「申し訳ありません、なかなか急には治らなくて」
「まあ、そんなところも可愛いのだがな」
「⋯っ!」


コンコン

「入ってくれ、⋯っ!ハ、ハミールどうした、その格好は!?」

部屋を訪れたハミールは寝着にガウンを着て、真っ赤になって、羞恥に耐えていた。

「⋯実はアンドリュー様が、私にお部屋に伺うように仰る前⋯『ハミールが部屋に来たら抱き寄せて、ベッドに寝かせて、そっと口付けをして、それから嫌がらなければ服を脱がせて、胸の尖りを触ったり、口に含んだり、それから······』と、呟いていらっしゃったので、脱ぎやすい格好がいいかと思いまして⋯」
「えええっ!?口に出てたのかっ!?」
「はい⋯、ですので、恥ずかしかったのですが、寝着が一番お手を煩わせないかと思ったんです」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「えっ、私何か間違えたのですか⋯?」
「ち、違う!衝撃が大き過ぎて、⋯あまりにも美しいから」

ハミールは更に赤くなり、私に背を向けてしまった。私を真っ直ぐ見つめる焦げ茶色の瞳が見えなくなり、途端に不安になった。 
私はハミールに駆け寄り、後ろから抱き締めていた。
細い肩がビクリと跳ねる。

「湯浴みをしてきたのか。いい香りだ」
「胸の尖りを口に含むと仰っていたので、綺麗に洗ってまいりました」
「あぁ、どうしてそんなに可愛いんだ」

ハミールの肩にそっと手を置きこちらを向かせる。

「ハミール、愛している。口付けをしてもいいか?」
「はい」

すうっと目を閉じたハミールに顔を近付け、恐る恐る口付けをする。触れたのが分からないくらいの口付けだったが、体中の肌がぞわりとして、切なさで胸が締め付けられる感覚がした。

「もう一度いいか?」
「はい」

今度は強めに押し付ける。柔らかい唇の感触がはっきりと分かる。

「もう一度⋯、もう一度⋯、もう一度⋯⋯」

きつく抱き合いながら互いの唇を貪った。もつれ合いながらベッドに倒れ込み、舌を絡ませ合う。そのぎこちなさにまた胸が締め付けられる。

私は肩で息をしながらも、ハミールに伝えなければならないことを口にした。

「ハミール、実は恥ずかしい話だが、私はこの歳になるまで経験がない。閨教育を受け直して、頭では理解しているが、うまくいかないかもしれない。ハミールを傷つけてしまうかもしれない。⋯だがそれでも愛しいハミールを抱きたいんだ」
「アンドリュー様、私も経験なんてありません。誰にでも初めてがあって、それは決して恥ずかしいことではありません。この歳まで経験がない二人が恋に落ちるなんて、恋の女神が与えてくださった運命のようですね」

そう言って、焦げ茶色の瞳を細めて笑ったハミールは本当の女神のように美しかった。


「ハミール、嫌でなければ寝着を脱がせてもいいか」
「はい、アンドリュー様の思うままに」

ぎこちない手つきで寝着を脱がせると、目の前に現れたのは、色白でほっそりしているのに体を這うように薄い筋肉がついた、彫刻のように美しく、なまめかしい体だった。胸の尖りは肌の色より少しだけ濃い色で 、ぷっくりとしていた。あまりの美しさに、時間が止まったように見つめてしまった。

「力仕事もあるので、このような体になりました。柔らかな体ではなく申し訳ありません」
「何を言っている。こんなに美しい体は見たことがない 」
「ありがとうございます」
「実はジェイドに閨教育を教わったんだが、頭で考えるより、愛しい相手を前にしたら、体が勝手に動くから大丈夫だと言われたんだ。その意味が今分かったよ」

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