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直立不動の俺とティムの目の前には、父上が険しい顔をして、騎士団長の椅子に座っている。
「ブラント、何か言う事はないか?」
「それは、事件の事でしょうか?」
「⋯随分無茶をしたようだな」
「申し訳ありません。しかし、あの場はああするしか方法がなかったんです」
「一歩間違えば、死んでいたぞ」
「それは⋯」
俺が父上に問い詰められていると、ティムが俺と父上を交互に見て、ごくりと唾を飲み込んだ。
「団長!あっ、違っ⋯、ライズ侯爵!今日の事は、僕が全部悪いんです!ブラント様は、僕をかばって怪我をされたんです!あっ、ぼ、僕、ホラーン伯爵家の三男のティムと申します!僕、今、ブラント様のお家にお世話になってます!どうしてお世話になってるかと言うと⋯、あれ?僕、何の話をしようとしてたっけ?⋯あっ!申し訳ありません!ライズ侯爵の許可も得ずに、勝手に話してしまいました!」
ティムは一気に話したかと思ったら、勝手に反省して、勝手に落ち込んでしまった。
「ティム⋯、大丈夫か?」
「うぅ、ブラント様、お役に立てず、申し訳ありません」
「くっ、くっくっくっ、⋯ごほん、すまない」
父上は落ち込むティムを見て、笑いを噛み殺していたが、とうとう我慢できずに声を出して笑ってしまったようだった。
「父上、俺は、ティムの真っ直ぐで綺麗な心に、いつも癒されているんです。⋯ティムは俺の大切な人です。ティムを守る為なら、俺は何度でも刃に向かうと思います」
「ブラント、姉上からの紹介をずっと断っていたのは、ティム殿がいたからか?」
「えっ?」
「ティム殿という、心に決めた者がいたから、何人も断ったのだろう?」
「ああっと⋯、いいえ、ティムは100人目です」
「100人目?」
「はい、ティムは、伯母上が俺に紹介した相手の、100人目です」
「ひゃ、ひゃく⋯?」
父上はあんぐりと口を開けて、そのまましばらく固まってしまった。
「でも俺、今は伯母上に感謝してるんです。一生一人で生きていく覚悟をしていた俺に、ティムを巡り会わせてくれたのは、伯母上だから。父上、俺、ティムと生涯を共にすると決めました。父上から反対されても、もう、決めたんです」
俺は父上から目を逸らさずに、ティムの手をきつく握り締めた。
ティムも俺の手を握り返してくれた。
「ふぅ⋯、ブラント、お前はいつも、一人で勝手に決めてしまうな。騎士団に入る時も、家を出て行く時も、結婚も⋯。次男のお前が、家に執着していないのは分かっている。だがな、親としては、子供にもっと頼ってもらいたいんだ。母さんも、いつもお前の心配ばかりしているぞ。たまには顔を見せに帰ってきなさい。ふっ、親の方が、いつまでも子離れできなくて、情けないな」
「父上⋯」
「ブラント、軽い怪我で済んだのは、運が良かっただけだ。今回はたまたま命が助かったが⋯、頼むから、もう無茶はしないでくれ。ティム殿も同じだ。二人共、もう、自分だけの体じゃないんだろ?」
「父上⋯」
「侯爵⋯」
「ブラント、ティム殿、今度二人でうちに遊びに来なさい。きっと、母さんも喜ぶ」
「「⋯っ!はいっ!」」
俺とティムは手を繋いだまま、お互いを愛おしむように、目を細めて笑い合った。
「ブラント、何か言う事はないか?」
「それは、事件の事でしょうか?」
「⋯随分無茶をしたようだな」
「申し訳ありません。しかし、あの場はああするしか方法がなかったんです」
「一歩間違えば、死んでいたぞ」
「それは⋯」
俺が父上に問い詰められていると、ティムが俺と父上を交互に見て、ごくりと唾を飲み込んだ。
「団長!あっ、違っ⋯、ライズ侯爵!今日の事は、僕が全部悪いんです!ブラント様は、僕をかばって怪我をされたんです!あっ、ぼ、僕、ホラーン伯爵家の三男のティムと申します!僕、今、ブラント様のお家にお世話になってます!どうしてお世話になってるかと言うと⋯、あれ?僕、何の話をしようとしてたっけ?⋯あっ!申し訳ありません!ライズ侯爵の許可も得ずに、勝手に話してしまいました!」
ティムは一気に話したかと思ったら、勝手に反省して、勝手に落ち込んでしまった。
「ティム⋯、大丈夫か?」
「うぅ、ブラント様、お役に立てず、申し訳ありません」
「くっ、くっくっくっ、⋯ごほん、すまない」
父上は落ち込むティムを見て、笑いを噛み殺していたが、とうとう我慢できずに声を出して笑ってしまったようだった。
「父上、俺は、ティムの真っ直ぐで綺麗な心に、いつも癒されているんです。⋯ティムは俺の大切な人です。ティムを守る為なら、俺は何度でも刃に向かうと思います」
「ブラント、姉上からの紹介をずっと断っていたのは、ティム殿がいたからか?」
「えっ?」
「ティム殿という、心に決めた者がいたから、何人も断ったのだろう?」
「ああっと⋯、いいえ、ティムは100人目です」
「100人目?」
「はい、ティムは、伯母上が俺に紹介した相手の、100人目です」
「ひゃ、ひゃく⋯?」
父上はあんぐりと口を開けて、そのまましばらく固まってしまった。
「でも俺、今は伯母上に感謝してるんです。一生一人で生きていく覚悟をしていた俺に、ティムを巡り会わせてくれたのは、伯母上だから。父上、俺、ティムと生涯を共にすると決めました。父上から反対されても、もう、決めたんです」
俺は父上から目を逸らさずに、ティムの手をきつく握り締めた。
ティムも俺の手を握り返してくれた。
「ふぅ⋯、ブラント、お前はいつも、一人で勝手に決めてしまうな。騎士団に入る時も、家を出て行く時も、結婚も⋯。次男のお前が、家に執着していないのは分かっている。だがな、親としては、子供にもっと頼ってもらいたいんだ。母さんも、いつもお前の心配ばかりしているぞ。たまには顔を見せに帰ってきなさい。ふっ、親の方が、いつまでも子離れできなくて、情けないな」
「父上⋯」
「ブラント、軽い怪我で済んだのは、運が良かっただけだ。今回はたまたま命が助かったが⋯、頼むから、もう無茶はしないでくれ。ティム殿も同じだ。二人共、もう、自分だけの体じゃないんだろ?」
「父上⋯」
「侯爵⋯」
「ブラント、ティム殿、今度二人でうちに遊びに来なさい。きっと、母さんも喜ぶ」
「「⋯っ!はいっ!」」
俺とティムは手を繋いだまま、お互いを愛おしむように、目を細めて笑い合った。
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