白と黒

上野蜜子

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第8章

吐露と懇意 5

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長い長いキスの後で唇が離れると、じゅわ~っと流れる甘酸っぱい空気にお互い耐えられなくなり、

白石さんが照れた顔をしながら「あの…とりあえず良い時間ですし…シャワー浴びて来ます?」と言ってきたので、俺はシャワーをお借りして…

続けて白石さんがシャワー浴び終わるのを寝室で待っているわけなんだけど…

やばい。あの、これ…恋人同士ってことですよね?間違ってないですよね?

何かの間違いがない限り…9割9分9厘、俺たち両思いなんですよね?

これはつまり…恋人同士になった後の初めてのお泊まりってことになるんですよね??

ていうことは、もしかしてもしかしなくてもこの後ナニかが…ナニかがあるってことですか!?

でも付き合ってすぐにそういうことするって、どうなの!?

早すぎないですか!?

付き合って3回目ぐらいのデートでなんか良い雰囲気になって、なんかちょっと…みたいな流れが定石なのでは!?

しかもなんかあんな…子供同士の喧嘩みたいな…お互いヒートアップした言い合いの流れで…

お互いなんか火がついちゃってあんな感じになっちゃったけど…この歳になって白熱した言い合いをすることがあるなんて思わなかった。思い返すと恥ずかしくなって来た…

白石さんも荒ぶってたな。白石さんでもあんな風になるんだ…いつも一定の温度感で佇んでるイメージだっただけに、ギャップがすごい。新しい一面を見てしまった。

白石さん、あんな声出るんだ…。普段はあんな穏やかで透き通った声質なのに、大爆発!って感じだったな。泣きそうなのに眼光鋭くて、めちゃくちゃ怖かったけど……思い出すとゾクゾクしてきた。何だこの感覚。

俺も煽られて恥ずかしげもなくあんな大声で好きとか……だんだん恥ずかしくなって来た…。

ていうか…もし、そういうことになるにあたって…俺はちゃんと勃つのか…!?

白石さんの前で俺の三芳が三芳になったことはあったけど…あれはする雰囲気じゃなかったし…

一人でするのとじゃ空気感とかプレッシャーとかリアリティとか全然違うし。どうしたらいいんだ…

ていうか…上とか下とかってどうやって決めるの…!?

こんなことになるならあの時、吉川さんにぼかさずちゃんと聞いておけばよかった…!

そもそも俺、付けるものとか何も持ってないし!

逆に最後にそういう雰囲気になったのとか10年も前なのに、持ってる方が怖くないか!?

じゃあどうしたら良い!?白石さんがシャワー終えるまでにコンビニに…いや無理だろ!どう考えても物理的に無理!!

ていうか、準備するものってそれだけで良いの!?男女じゃなくて男同士だときっと勝手とか色々違うよな!?

調べておけば良かった…!だって俺振られたのにまさかこういう展開になるとは想像できないじゃん!!

じ、じゃあどうしたら…今の俺にできる最善の行動は一体…

「黒原さん、お水飲みました?」

「はひ!!!?」

ひょいっとまだ湿り気を帯びている頭で白石さんが顔を覗かせて来た。

「また二日酔いになりますよ、ちゃんと飲まないと。それでちゃんと出して来てください」

「だ、出すって!?」

「ええ?アルコールを身体からちゃんと抜いてくださいねってことですよ」

「ぬ、抜…!」

白石さんの言葉に逐一変な反応をしてしまう。

思春期の学生みたいになってる…!

白石さんはぽかんとしてるし。なんだこれ。恥ずかしすぎる!!

「黒原さんてば…どうしたんですか。明日後悔しますよ、薬飲まないで済むならそれが何よりなんですから」

「そ、そうですよね…お水たくさん飲ませて頂きます…」

寝室から移動して水を飲みにいく。

落ち着け…落ち着け黒原三芳…!

「黒原さん、明日は…朝、起きたら帰っちゃいます?」

白石さんが壁にもたれて恥ずかしそうにしながら聞いてくる。さっきの荒々しさと正反対で、しおらしい雰囲気…

「え?えっと…」

「仕事終わったらすぐ帰ってくるから…待っててくれませんか。用事とかありますか?」

「え、あ、いえ用事は何もないですけど…」

「一緒にお夕飯食べに行きましょうよ。映画のサブスクとかもあるし、良かったら…うちで1日ゆっくりしててください」

「あ、あの…白石さんのご迷惑にならないのであれば…」

「…迷惑なわけないでしょ。明日なんで僕仕事なんだろう。このまま一緒にいたいのにな」

ぽて、と後ろから肩に頭を乗せられる。

か、か、可愛い。何これ。何ですかこれ。シャンプーのしめった良い香りがする…俺の頭からも同じ匂いがしているはずなのに、なんで白石さんこんなに良い香りなの…

「あ、あの…俺もですよ…」

距離が近い。湿った毛先の束を指でつまんでみる。

顔を上げた白石さんの頬が赤い。嬉しそうな顔。ううう、可愛い…可愛いです白石さん…

「あの…じゃあ寝ましょうか…」

ど、ドキ…

寝るって…寝るって!?

どういう意味ですか!?

「そ…そうですね、良い時間ですもんね…」

白石さんに寝室に誘われ、ドキドキを抑えられないまま2人で寝室に向かう。

ね、寝る…!付き合ってる二人が!!一つ屋根の下で!!!一つのベッドで!!

何も予習してないし何も準備していないけど!!

これって、そういうことですよね!?!?

これから一体どうなってしまうんだ黒原三芳!!?


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